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2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック。56年という時を経て、再び首都・東京で行われる一大イベントに日本中から大きな期待が寄せられています。

一方で、増加する訪日外国人旅行者の宿泊施設不足が懸念されていましたが、みずほ総合研究所(以下、みずほ総研)は予想を一転して「宿泊施設不足はそれほどひっ迫しない」という新たな試算を発表しました。その背景には、ホテル新設計画の急増だけでなく、近年需要が拡大する民泊の存在があるようです。

この記事では、東京オリンピックに向けてニーズが高まる民泊の現状や課題、それに伴う法整備の新たな動きについてお伝えします。

目次

  1. 東京五輪に向けて進む準備
    ・客室数は不足するのか
    ・1964年の東京オリンピック
  2. 民泊新法における現状と課題
  3. 旅館業法の規制緩和について
  4. まとめ

1.東京五輪に向けて進む準備

・客室数は不足するのか

2017年の訪日外国人旅行者数は2,800万人を超え、ますますインバウンド需要が高まる日本。こうした需要の拡大を受け、政府は2020年までの訪日外国人旅行者数2,000万人という目標をさらに倍の4,000万人まで引き上げました。

2017年9月に発表されたみずほ総研のレポートでは、現在のペースが続けば2020年までに4,000万人という政府目標は射程圏内であると予想しています。

さらに、これまで懸念されてきた訪日外国人旅行者の宿泊施設不足に関しても、2016年に発表した試算を大きく転換し「宿泊需給は従来予想ほどひっ迫しない可能性が高まっている」と発表しました。

同レポートの「図表15 2020年の不足客室数予測値(P15)」では、2020年の不足客室数は3,800室程度、ホテル客室数が計画を下回る場合でも最大23,000室と予想しており、2016年当時の試算(最大33,000室)を大幅に縮小する結果となっています。

その背景としては、宿泊施設不足への懸念が高まるにつれて、東京都や大阪府など都市圏を中心にホテルの新規建設・改装計画が急増したことを挙げています。それに加えて、クルーズ船を利用した訪日旅行や民泊の普及により、ホテルを利用しない旅行者が急増していることも需給状況を変化させた一因となっているようです。

また、ホテルの新設計画が増加するにしたがって従業員不足や五輪後のホテル過剰問題という新たな懸念も浮上しており、同レポートは民泊へのシフトを検討すべきだと指摘しています。

・1964年の東京オリンピック

近年、シェアリングエコノミーの旗手である「Airbnb(エアビーアンドビー)」の台頭によって民泊という言葉が浸透してきましたが、その起源は1964年の東京オリンピックにさかのぼります。

当時、宿泊施設不足を懸念した東京都の訴えによって約600世帯が外国人旅行者を受け入れました。現在よりも海外の文化に触れる機会が少なかった時代において、この交流はホストにとっても旅行者にとっても貴重な経験だったに違いありません。

現在でも民泊を通じた異文化交流が行われている一方、利用者の増加によって騒音やゴミ被害などのトラブルが増えていることも事実です。個人のモラルや国による文化・マナーの違いだけでなく、民泊サービスをめぐる法整備の曖昧さや不透明さも問題視されており、早急な対策が求められています。

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2.民泊新法における現状と課題

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こうした問題に対応すべく、政府は民泊サービスに関する法整備に取り組んできました。そして2017年、ついに「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が成立し、2018年6月15日より施行される予定となっています。

民泊新法は、ホテルや旅館など従来の宿泊営業形態について定めた「旅館業法」とは異なり、住宅での民泊サービスについて規定した新しい法律です。

「民泊」の定義としては「年間提供日数が180日(泊)を超えないこと」など、いくつかの条件が挙げられています。民泊新法の詳しい内容については下記の関連記事でも解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

民泊新法では年間提供日数の上限などについて各自治体が独自に規定することを認めており、6月の施行に向けて全国の自治体がルールの策定に取り掛かっています。

京都市では生活環境の悪化防止を目的として「住居専用地域については、閑散期の1~2月(約60日)に限定して営業を認める」という案を検討しており、自治体によっては民泊の運営自体が難しい地域も出てくることが予想されます。

ただし、民泊の普及を促進したい政府は自治体ごとの規制を必要最小限に留めるよう求め、営業日数を制限する場合は区域や期間を具体的に明記するよう規定しています。

関連記事:

遂に民泊新法が成立!その概要と施行時期、気になる今後の市場動向

 

3.旅館業法の規制緩和について

民泊サービスの普及に伴い、先ほど触れた「旅館業法」にも新たな動きが出てきました。

旅館業法は、ホテル・旅館・簡易宿所など従来の宿泊営業形態について定めた法律です。民泊新法と違って営業日数の制限などがない一方、営業形態によってさまざまな要件が定められています。

この旅館業法についても、民泊の普及をはじめとした宿泊業界の変化に対応すべく、改正が進みつつあります。

2017年12月15日に公布された「旅館業法の一部を改正する法律」では、従来分かれていた「ホテル営業」と「旅館営業」という2つの営業種別を「ホテル・旅館営業」に統合しました。また、違法な民泊サービスの広がりを踏まえ、無許可営業者に対する取り締まりを強化する内容も盛り込んでいます。

この法改正に伴って2018年1月31日に新たな政令が公布され、従来はホテルと旅館で別々に規定していた最低客室数や最低床面積、暖房設備の有無といった要件を廃止・緩和しました。

この政令は民泊新法と同じく2018年6月15日の施行を予定しており、民泊新法の成立と旅館業法の規制緩和という2つの動きによって、宿泊業界は新たな局面を迎えようとしています。

今後の動きとしては、法改正によって「ホテル・旅館営業」と「簡易宿所営業」を区別する必要性が曖昧になりつつあることから、厚生労働省はさらにこの2つの営業種別を統合する案を検討しているようです。

また、政令では指紋認証などのICT(情報技術)設備で本人確認などが可能な場合はフロントの代替設備として認めており、ICTの導入にも注目が集まっています。

2018年1月には一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会と日本電気株式会社(NEC)らによってICTを活用した訪日外国人へのおもてなしサービスの実証実験も行われており、今後はこうした技術革新によって宿泊サービスの効率化・多様化が進んでいくのではないでしょうか。

 

4.まとめ

2016年のリオ五輪で公式サプライヤーに選ばれたエアビーアンドビーの発表によると、期間中に同サービスを利用した人は85,000人に上り、全体の経済活動は推計約1億ドルとされています。

来る東京五輪においても、経済効果はもちろんのこと、民泊を通じた国際交流の増加によって“平和の祭典”としての役割がより深まることが期待されます。

多くの外国人旅行者が訪れるオリンピックにとって、民泊の存在は今後なくてはならないものになるかもしれません。

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