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日本は近年中に超高齢化社会へと突入、医療・介護業界における人材不足や待遇改善などの問題は深刻で、政府もさまざまな対策に乗り出しています。しかし、拘束時間の長さや労働条件の厳しさから、資格・経験を活用できない人が多いのが現実です。

有資格者が医療・介護の現場で自身のスキルを活かして働くためには、収入などの待遇改善や、各々の都合に合わせて働ける環境の提供が急務です。特に時間などに制約がある育児中や介護中の潜在看護職・介護職の人にとっては、スポットや短時間勤務ができるマッチングサービスの普及が活躍の可能性を広げる糸口であることは間違いありません。

また現場の負担を軽減するためにIoT技術による医療サービスも今後必要不可欠であるといえるでしょう。医療・介護分野において、広がろうとしているシェアリングエコノミー事例や、現場を効率化するための医療サービスについてご紹介します。

目次

  1. 医療界のUber「なでしこナース」について
    ・サービスの概要
    ・サービスを始めた理由
    ・運営会社について
    ・その他の医療・介護のマッチングサービス
  2.  海外でも進む医療シェアリングサービス
  3. IoT技術が促進する医療サービス
  4.  まとめ

1.医療界のUber「なでしこナース」について

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https://nadeshikonurse.jp/

サービスの概要

常勤前提・夜勤ありなど、過酷な労働条件の職種としてトップクラスともいえる看護師。日本医療労働組合連合会による2017年度看護職員の労働実態調査では、在職中の看護師のうち約7割が「辞めたい」と思っているということです。また、不規則な労働時間や過酷な労働環境に不安を抱き、産後や育児中の復職に踏み切れない潜在看護師も多くいます。

このように“在職中でももっと柔軟な働き方を求める人”や“育児や介護などにより時間制約があり資格を持ちながら働けない人”と、“看護師不足の医療現場”とを直接マッチングさせるサービスが「なでしこナース」です。単発や短期・非常勤などの案件に特化した求人紹介サービスであるため、週1~2回だけ、午前のみ、自宅近隣のみなど、希望に沿った働き方が見つけやすいということが大きな利点です。

求職者はあらかじめ資格や職歴などの情報を登録しておくことでスマートフォンなどから簡単に応募ができ、求人側も採用までの流れを簡略化できます。契約ごとに双方が評価を行うので、サービスの質向上や労働環境の向上も期待でき、まさに時代に沿ったUber型の人材紹介サービスであるといえるでしょう。また登録や応募、制約ごとにポイントが付与されるシステムで、たまったポイントを商品や電子マネーと交換することも可能です。

サービスを始めた理由

2017年の時点で就業中の看護師は、日本全体で160万人、資格を保有しながら就業していない潜在看護師数は71万人と推計されています。2025年には国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となり、看護師不足はこれまで以上に深刻な問題となります。医療現場の拘束時間の長さや労働環境の過酷さが問題解決を阻んでいるのが現状です。

「なでしこナース」は看護師として働きたくても働けない(または働き続けることが困難と感じている)象徴的なモデルとして、以下のペルソナを設定しました。

1.育児などに一区切りついたが長時間労働にためらいを感じ復帰できない元看護師

2.生活の助けにパートに出たいが看護師に比べ時給が低いことにためらっている有資格者

3.家庭との両立が困難なことなどから、機会があれば辞めたいと考える現役看護師

これらの問題はすべて、時間とそれに見合った収入が課題です。そこで看護業務を細分化・明確化して各々の負担を軽減することが解決の糸口になるのではと考えられました。そのためには多様な働き方を選べるシステムが必要です。そこで普及率の高いスマートフォンなどに特化したマッチングサイト「なでしこナース」が作られたのです。同じ拘束時間で資格を活かせて、一般的なパートより収入も高めであれば、看護師として働きたいと考える人は増えると考えられます。

厚生労働省も看護師のキャリアと働き方支援サイトを立ち上げるなど看護師の人材確保に取り組んでいますが、具体的に進めるためには、こうした新しく自由で多様な働き方、スキルシェアリングの仕組みを作ることは今後必須だといっても過言ではないでしょう。

運営会社について

「なでしこナース」を運営する4U Lifecare(フォー・ユー・ライフケア)株式会社は、2016年、ITのスペシャリストである宇陀栄次氏と、医療のスペシャリストである武藤真祐氏の共同で創業されました。目指すのは「ITによる医療変革」。年々高齢化する社会において、医療や介護現場の人材不足は深刻な問題です。同社は看護師だけでなく、今後も医師・薬剤師・技師など他の医療人材のマッチングサービスや、医療現場での人材獲得や活用についてのヘルスケアコンサルティングなど、新しい医療実現のためのサービスを展開していく予定です。医療現場の効率化、在宅医療や介護における家族の負担軽減など、さまざまな医療・介護の課題をITとの連携で解決しつつ、新しいヘルスケアの形を日本へ導く考えです。

その他の医療・介護のマッチングサービス

「なでしこナース」以外にも、日本国内において人材と現場とのマッチングサービスを普及しようという動きは強まっています。医療だけでなく介護の分野においても、今後の高齢化社会と人口減少に向けた人材不足は深刻で、その根源である労働環境や待遇改善のためには各々の都合に合わせられる多様な働き方が求められます。

 シェアメディカル×FastDoctorが提携「スマート往診システム」

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https://fastdoctor.jp/

スキルのシェアリングとして、もっともニーズがあるともいえる医療・介護分野では、まさにUber型の医療サービスが開始されようとしています。医療用チャットサービス「メディライン」を展開する株式会社シェアメディカルは、夜間往診サービスを運営する株式会社FastDoctorと戦略的提携し、患者と医師とをマッチングさせるサービス「スマート往診システム」を開発。今後も医療の未来に向けさまざまなモデルの提案や活動を行います。

 介護のマッチングサービス「I care you」と「CrowdCare」

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https://www.icareyou.jp/caregivers

株式会社SENSECAREが展開するのは、ヘルパーと要介護者をマッチングさせるサービス「I care you」。例えば外出の付き添いなどは介護保険適用外となりますが、それら生命を維持するために必須ではない機能の介助サービスが対象となります。専門知識と経験に長けたヘルパーが対応するため要介護者は安心して利用できます。

サービス提供者として登録できるのは、介護福祉士・看護師・准看護師・理学療法士いずれかの資格を有する人に限られ、さらに厳選なる審査が行われます。交通費込2,500円という高水準の時給で、自身が登録したスケジュールに合わせて働くことができます。

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https://www.crowdcare.jp/

在宅高齢者向けの介護や生活支援マッチングサービス「CrowdCare(クラウドケア)」。こちらも、「I care you」と同じく介護保険制度対象外となる外出の付き添いなどが対象となります。こちらは家族の家事手伝いや買い物代行等にも利用でき、また要介護認定を受けていない人でも利用できます。またサービス提供者は、家事手伝いや生活支援など仕事内容を選ぶことができるため、内容によっては介護職の資格がなくても働けます。自分の空き時間を利用でき、1,500~2,000円と比較的高水準の時給を得ることができます。

 

2.海外でも進む医療シェアリングサービス

海外、特にシェアリングエコノミー先進国であるアメリカでは、医療のシェアリングサービスも着々と進んでいます。

Forwardの移動式クリニック

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https://goforward.com/

米サンフランシスコとロサンゼルスにクリニックを持つ会員制ヘルスケア企業Forward社は、訓練された医師と最先端技術によって予防医療・健康増進に取り組む施設です。同社は2017年に移動式のトレーラークリニックを公開、移動困難者や過疎地などに向けての医療サービスに挑みます。この企業の創業者の1人は「Uber」の初期メンバーでもあることから、今後シェアリングエコノミーやITで医療を変えていく可能性が大いに期待されます。

医療派遣サービスアプリ「Pager」「Heal」

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https://pager.com/

米ニューヨークに拠点を置く「Pager」。いつでも医療の専門家と電話やチャットで相談ができ、ニューヨーク在住であれば2時間以内に医師が派遣されるというサービスを展開しています。価格は割高となっていますが、今後も利便性を求める顧客を対象に、オンデマンドでの幅広い医療サービス提供を目指すとみられます。

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https://heal.com/

米ロサンゼルス拠点で、サンフランシスコでもサービス提供を始めた「Heal」。こちらも「Pager」と同じく、オンデマンドで医師を派遣するサービスです。アプリの地図上で予約すれば、もっとも近くにいる登録医師が60分以内に訪問してくれるという、まさにUber型の医療サービスだといえます。

このように海外では医療とITが掛け合わさり、着々と医療のシェアリングサービスが普及しています。

 

3.IoT技術が促進する医療サービス

医療機器の分野においても、IoT(モノのインターネット)やAI(人口知能)などを利用した商品やサービスが次々と展開されています。スウェーデンのAifloo社では、高齢者を遠隔操作で見守るシステム 「Aifloo Band」を開発。リストバンドを着用した高齢者などの行動や睡眠などを検知して、AIがモニタリングを行うというものです。これにより、高齢者などは自立した生活を送りながら離れた家族に安心を届けることができます。

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http://www.aifloo.com/

また日本国内においても、パラマウントベッド株式会社が、ベッドサイドケア統合情報システム「スマートベッドシステム」を発売。一般的に装着装置や体温などのデータは、看護師がパソコンで入力する必要がありますが、このシステムによりベッドサイドで数値データを検知しそのまま情報として保存・表示することができます。患者の睡眠や心拍数・バイタルライン、また点滴交換などの看護業務リマインダー機能も搭載されているため、患者情報の共有・早期対応・業務支援など医療現場での効率化や正確さ・患者サービス向上を図れます。

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http://www.paramount.co.jp/sbs/index.html

日本医療の未来を明るいものにするためにも、これらIoTやAIでの医療サービスへの期待が高まっています。シェアリングエコノミーとIoTについては関連記事もご参照ください。

関連記事

IoTがシェアリングエコノミーを推進する。今後の展望と国内の事例を解説

 

4.まとめ

2025年には団塊世代が75歳以上となり、急速に超高齢化が進む日本。スキルシェアリングという観点において、医療・介護は今後もっとも人材を必要とされる分野です。

一方で有資格者でありながら、時間・空間の制約や過酷な労働条件によって、スキルを活かせる現場で働きたくても働けないという人も数多く存在します。それらをマッチングさせることが、医療・介護現場においてもっとも効率的な解決策であり、日本の医療・介護の未来を救済する方法だといえるのではないでしょうか。

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