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シェアリングエコノミーの1分野とされているカーシェアリングは、レンタカー事業をベースとしてはじまったことと国内の都市部には普及する要件が揃っていたこと、2004年に対面で車両の貸し出し業務を行う義務がなくなったことなどから、国内の市場規模はどんどん拡大しています。本記事では、「カーシェアリング比較360°」(株式会社ジェイティップス運営)のデータをもとに、国内カーシェア市場をまとめました。

※編集部注:2017年11月28日に加筆修正しました。

※編集部注:2017年3月31日に加筆修正しました。

目次

1.2017年の国内カーシェア市場に関して

  • そもそもカーシェアとは?
  • 成長し続ける国内市場
  • 全国で増え続けるカーステーション
  • 会員数における各社の動向

2.2020年の国内カーシェア市場に関して

  • 国内市場規模は295億円に?
  • 広がるカーシェア提携の動き
  • 新規参入する企業と急がれる法整備

3.世界のカーシェア市場について

  • 世界のカーシェア事情
  • 欧米の大手自動車メーカーが新規参入

4.まとめ

1.2017年の国内カーシェア市場に関して

そもそもカーシェアとは? 

世界に波及するシェアリングエコノミーの中で、その草創期から市場拡大を担ってきたカーシェアリングは、車を持っていない人でも車を気軽に使えるようにしたサービスです。

カーシェアには2タイプのサービスがあり、ひとつはカーシェア事業者が運営するもので国内の最大手にはタイムズカープラスがあります。現状は点在する駐車場を利用して、車の貸し出しをしています。もうひとつはP2Pのカーシェアで、車を所有する個人が借りたい人に貸し出すもの。国内ではAnyca、国外ではTuroやGetaroundらが知られています。

車を借りるという点ではレンタカーが以前からありましたが、レンタカーとカーシェアの違いはレンタカーの場合長時間で不定期の利用が中心ですが、カーシェアは短時間で定期的な利用が対象です。またレンタカーは対人で手続きをしますが、カーシェアではスマートフォンやICカードを利用して予約や開錠が可能なこともサービスの違いです。

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またシェアリングエコノミーの一分野であるライドシェアでは、国内のnottecoや海外のUber、Lyftらがありますが、どれも移動をシェアするもので、車+ドライバーありきのサービス。車自体を貸し借りするものではありません。

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成長し続ける国内市場

  • タイムズ カー プラス(14337台)
  • オリックスカーシェア(2278台)
  • カレコ・カーシェアリングクラブ(924台)
  • カリテコ(312台)
  • アース・カー(264台)

2016年3月 各社車両台数

2015年以降、カーシェア市場での影響力は主要5社に絞られてきたとされています。主要5社とは、駐車場運営のパーク24グループ会社が経営する業界最大手「タイムズカープラス」、カーリース・レンタルで知られるオリックス自動車の「オリックスカーシェア」、三井不動産の子会社三井不動産レアルティの「カレコ・カーシェアリングクラブ」、名古屋を中心に展開している「カリテコ」、全国にフランチャイズ展開してる「アースカー」です。

2016年1~3月の集計によると、この主要5社の総車両台数は18,115台とされていますが、そのうちの14,000台以上を首位の「タイムズカープラス」が占めていて、業界最大手の地位はもう揺るぎないものにみえます。業界3位の「カレコ・カーシェアリングクラブ」は増加数72台、伸び率8.5%と規模拡大が続いています。

全国で増え続けるカーステーション

2016年第一四半期にて、カーステーションでも業界1位の「タイムズカープラス」は伸び率こそ3.2%ではありますが、増加数は224ヵ所で2位以下を大きく引き離しています。一方2位の「オリックスカーシェア」は6ヵ所の増加にとどまり、3位の「カレコ・カーシェアリングクラブ」が38ヵ所増え、伸び率も5.6%と成長を続けていると言えます。

これまで福井・島根・鳥取・佐賀はカーシェアリング空白県でしたが、2016年6月「タイムズカープラス」が鳥取県に初出店したと発表されました。鳥取県には工業団地が多く、県外の法人会員から鳥取出店の要望がかねてよりあったということで、鳥取駅近くに設置された模様です。このように人口が密集している地域でなくても、法人や自治体などの定期的な利用が見込まれるエリアであれば、今後ほかの空白県での展開も十分ありえるでしょう。

  • 主要5社合計ステーション数

主要5社合計ステーション数推移

会員数における各社の動向

会員数の推移においても「タイムズカープラス」は圧倒的首位。現在の会員数だけでなくのその増加率も突き抜けています。現状ではまさに桁違いと言わざるを得ません。法人に強いとされる「オリックスカーシェア」も会員数では順調に増加しています。「カレコ・カーシェアリングクラブ」は若干の低迷期。2016年には車両台数やカーステーションの大幅な強化がなされたので、2017年の盛り返しに期待がかかります。

「タイムズカープラス」は、2016年3月の会員数60万人達成で話題になりましたが、それからたった6ヵ月で早くも70万人を突破し、業界シェア7割を誇っています。増加に合わせるように駐車場数も伸びており、2017年10月時点では直営と管理を受託している駐車場を合わせると全国に18,255ヵ所。前年10月と比較すると、1ヵ月ですでに1,000ヵ所増えていることになります。こうしてみると短期間で驚異的に数値を伸ばしていることがわかります。カーシェアリングのようなサービスはインフラがある程度整い始めると規模のメリットから事業者の採算性も上がり、ユーザーの便利性も高まり、利用が促進されると言われますが、今がまさにその状況なのでしょうか。

 

2.2020年の国内カーシェア市場に関して

国内市場規模は295億円に?

矢野経済研究所の調べでは、2014年のカーシェア市場規模は前年比40%以上増加で154億円でした。要因として、カーステーションや車両数の増加によって、基盤が充実しユーザーの利便性が高まってきたことが挙げられています。また法人利用が増えたことも要因のひとつとされています。

2020年のカーシェア市場規模は、2014年比でおよそ倍の295億円と予測されています。「カーシェアリング比較360°」は2015年業界全体でカーシェアの会員数は70万人に達しているとした上で、100万人へのカウントダウンはもう始まっていると報じました。現在自社車両20,000台の「タイムズカープラス」が、2020年には30,000台まで増やす考えを明らかにしているとこのことで、市場規模の予測とも連動しているようです。

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カーシェアリングのようなインフラサービスは規模のメリットが作用する事業だと言えます。カーステーションや車両数の増加にしたがって事業者の採算が向上し、ユーザーの利便性も高まっていきます。利用者数が頭打ちになるまでは、しばらくは市場規模の成長が望めるのではないでしょうか。

今後は市場規模だけでなく、サービスの多様化にも注目が集まっていくでしょう。利用できる車両タイプにも幅が出てくると考えられます。2015年には「タイムズカープラス」がサークルKサンクスやファミリーマートとの提携を発表しました。コンビニの立地によっては大きく利便性が向上するだけでなく、車への興味が低いとされる若年層への認知獲得効果も期待できそうです。また、コンビニは海外でも知名度があるので訪日外国人の利用促進につながるのではないかと、この提携に注目が集まっています。

広がるカーシェア提携の動き

国内のカーシェアリング事業者では、オリックスカーシェアリングが駐車場シェアサービスの軒先パーキングと提携して、オリックスカーシェアの会員であれば軒先パーキングを予約時表示価格から1割引きで利用できるサービスを開始しました。

トヨタはライドシェアのUberとの協業に続き、米P2PカーシェアサービスのGetaroundとの協業を発表しました。これによりトヨタはGetaroundユーザーにレクサスのリースプログラムの提供と、Getaroundの市場であるサンフランシスコで、自社が開発したスマートキーボックスのプログラム実証を開始することになります。このスマートキーボックスとは、インターネットとつながった車のダッシュボックスに設置すると、スマホ経由でキーの開閉をしたり、エンジンを始動させたりできるデバイスです。

トヨタはこのスマートキーボックスをはじめ、これまで開発してきたシステムやプログラムをモビリティサービスプログラムと名付け、自社のサービスプラットフォームとし、これを利用して今後さまざまな事業者と提携し、新たなモビリティ社会の創造に挑むとしています。

また、トヨタの金融サービス部門と連携することで、GetaroundオーナーはGetaroundで得た収益からトヨタ車の購入代金を引き落とせるようになります。オーナーを自動的に招くことができるのですから、当然のごとくトヨタは自社の市場シェアを拡大させることができ、双方にとってプラスに。メリットが大きいため、最近ではトヨタ以外の車メーカーもカーシェアに参入してきています。

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新規参入する企業と急がれる法整備

今年5月に投資ファンドを立ち上げたソフトバンクグループはuberに出資することが明らかになりました。孫正義社長はカーシェアを「非常に重要な業界」と位置づけ、全世界でライドシェア事業の拡大を狙っていく予定だとコメントしています。一方で、NTTドコモもカーシェアリングサービス「dカーシェア」を11月から提供することを発表。さらにHondaもこれまで行ってきたレンタカーサービスにカーシェアの特徴を組み入れた新ブランド「EveryGo」を立ち上げました。続々と参入企業が増えてきており、今後もこの傾向はしばらく続きそうです。

このように経済界でも大きな注目を集めているカーシェアリングですが、法整備がまだ整っていないことが問題となっています。営業許可を取らずに自家用車で配送サービスを行い、報酬を得ることは現行では違法にあたります。また、タクシードライバーなどが保有している免許は通常の自動車免許と違い、二種免許と呼ばれる商業活動用のもの。さらに、プロのタクシードライバーは事故対応できる自動車保険に加入していますが、ライドシェアのドライバーたちは、事故のことを考慮していないことがほとんどでしょう。本職のタクシードライバーとカーシェアのドライバーの立ち位置の違いをどうするのか、事故や問題が起きたときにどう対応していくのかなど、問題は山積みです。法整備がまだ追いついていないため、いざというときの危険性をはらんでいることは否めません。市場拡大と同時に、一刻も早い法整備が期待されます。

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3.世界のカーシェア市場について

世界のカーシェア事情

『公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団』の2017年5月に発表した調査結果によると、我が国のカーシェリング車両ステーション数は12,913ヵ所。車両台数は24,458台。会員数は、1,085,922人です。会員数は遂に100万人を超え、前年より28%増となっています。

ちなみに2016年の日本の会員数は846,240人で、これを2016年時点の人口で割ると2014年度より0.26ポイント上昇しています。

これに対し、他の主要諸国の状況はどうでしょうか。2016年の調査によると、国民全体に対するカーシェアリング普及率は、2013年時点で、アメリカ0.29%、ドイツ0.33%、イギリス0.26%、カナダ0.40%という結果になりました。

1987年に世界で初めてカーシェアリングが誕生したスイスでは、普及率1.31%と群を抜いています。1997年以降、スイス政府がエネルギー対策の一環として、カーシェアリングを公共機関の一つに位置づけてから、急成長を遂げました。高い普及率も政府のバックアップあっての数値といえます。

スイスでカーシェアリングが誕生した翌年に、ドイツで導入されました。循環型持続社会への意識が高いドイツ人に自然と受けいれられ、2015年時点で、国内の利用者は104万人に上りました。普及率は1.2%となり、2013年より0.87ポイントも上昇。スイスの普及率に近づきました。

アメリカでは、レンタカー大手のAvis Budgetがカー シェアリング大手のZipcarを買収し、全米500以上の都市でカーシェアを展開しています

米ブルッキングス研究所のレポートでは、2014年に全世界で140億ドルだったシェアリングエコノミーの市場規模はさらに拡大し、2025年までには3350億ドル規模に到達すると予想されています。今後も、世界全体でカーシェアリングの普及が急激に進んでいくことでしょう。

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欧米の大手自動車メーカーが新規参入

カーシェアリングの急成長とともに、新車販売台数の減少も指摘されています。これに危機感を抱いた世界有数の自動車メーカーであるフォード、BMW、GMが続々とカーシェアリング市場に参入しています。

フォードは、2016年9月にサンフランシスコの乗り合いバスサービスの「Chariot」を買収し、自転車シェアのスタートアップ企業であるMotivateへのスポンサーシップを開始すると発表しました。自社の子会社となる「フォード・スマート・モビリティ」のサービスを、サンフランシスコを皮切りに、今後1年半以内に全米5都市に拡充していくとのことです。

BMWは2016年4月より「ReachNow」というカーシェアサービスを開始しました。スマホのアプリだけで、同社のminiを1分単位でいつでもどこまで借りることができ、どこでも乗り捨て可能というシステムが受け入れられ、エリア拡大を計画しています。

アメリカのGM社も、2016年1月に、ライドシェア大手Lyftに5億ドルの出資を行い、カーシェアサービスの「Maven」を創設しました。ワシントンDCやシカゴでサービスを開始。2014年3月には、自動運転技術のベンチャー企業である「Cruise」を10億ドル(約1,100億円)という破格の値段で買収しました。今後は、 Lyftと共同で、自動運転車によるライドシェアを計画中であることを発表しています。

 

4.まとめ

今後市場が拡大するにつれて、カーシェアサービスは規模のメリットからますます認知度も高まり、もっと身近なものになっていくでしょう。これまで利益が相反すると考えられていた自動車業界も、世界的にカーシェアサービスとの共生路線に向かっており、この業務提携によって、自動車業界の活性化も期待されています。将来は人やモノを移動させる手段はもはや所有ではなくシェア(共有)が当たり前になるのでしょうか。これからもカーシェアリングから目が離せません。

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