Pocket

かつては、日本人らしい助け合いのコミュニケーションとして、旅行者を一般の家庭で宿泊させてあげる「民泊」の習慣がありました。

次第に見知らぬ他人同士での警戒が強まり、そうした習慣は少なくなってしまいましたが、近年新たなビジネスとして、民泊が「空き家増加」や「宿泊先不足」といった社会問題を解決する手段になるのではないかと、期待を集めています。

実際、日本国内の民泊物件数は増加傾向にあり、2018年2月時点でAirbnbに掲載されている物件数は約6万2,000件に達したと報じられました。2015年同時期の時点の数字が1万2,000件、2016年同時期の数字が4万8,000件と、ここ2年ほどで爆発的な成長を見せています。

世界の都市ランキングの数字からもわかるように、2016年には日本の物件登録数は大きく増加しました。これにはAirbnbも「日本には、世界中から来る旅行者を虜にさせる魅力的な文化や歴史があり、2016年のAirbnb利用のインバウンドゲスト数がすでに300万人を突破したことを嬉しく思っております。 日本は、最も人気が高く、急成長を遂げている国の1つです」とコメントを残しています。

※編集部注:
2018年3月28日に加筆修正しました。

目次

1.「民泊」とは

  • 言葉の定義
  • 「旅館業」「民宿」との違い
  • 民泊新法によって定められた「住宅宿泊事業」とは
  • 国内日本人向けと海外観光客向けの各イメージ

2.なぜ民泊ビジネスがここまで盛り上がっているのか

  • 民泊仲介サービス「Airbnb」によって、プレイヤーが参入しやすい環境が整った
  • インバウンド客(外国人観光人)増加による宿泊ニーズの高まり

・空き家(および空きスペース)増加問題への対策

3.民泊に関わる法律について

  • 民泊新法(住宅宿泊事業法)とは
  • 旅館業法とは
  • 業界最大手のAirbnbは違法なのか?

4.民泊によって起きるトラブル

  • 2017年の摘発例
  • 民泊ホスト側にとっての潜在リスク
  • 実際に起こったトラブル
  • 旅館業界など既存プレイヤーとの対立
  • 住宅価格の上昇

5.まとめ

1.「民泊」とは

言葉の定義

そもそも、「民泊」という言葉の定義はどんなものでしょうか。

ニュース記事によると「民泊」とは、「外国人観光客を相手に個人が住宅の空室やマンションの部屋などに有料で泊めるサービスのこと」のようです。

従来は文字どおり「民家に泊まること」を指していました。旅行者が訪れた土地の人の好意により、無償で宿を提供してもらうケースがあったからです。しかしここ数年で、その意味合いは変化してきました。海外から始まったAirbnbなどのシェアビジネスの台頭により、民家に宿泊する以外の形式の民泊というものが生まれたからです。

現在では、「民泊」というと、消費者同士がインターネットを介して”個人宅や投資用に所有している部屋“を貸し借りするサービスを指す場合が一般的で、有償となります。かつてのボランティア的な民泊とは異なる、新しいビジネスモデルが出来上がりました。

ですが、「余ったスペースをシェアしよう」というシェアリングエコノミーの動きであることには変わりません。

民泊新法によって定められた「住宅宿泊事業」とは

住宅宿泊事業とは、2017年6月に成立、2018年1月に施行が予定されている民泊に関する法律「住宅宿泊事業法」によって、その定義が定められた事業の名称であり、つまり民泊のことを指します。住宅宿泊事業法は、一般的に民泊新法とも呼ばれます。

この法律によると住宅宿泊事業を「台所、浴室、トイレ、洗面設備、寝具のある、人が生活できる家屋に、報酬を得て、継続的に宿泊させる事業」と定めています。加えて宿泊日数が年間180日以内ということも条件です。この住宅宿泊事業の定義が、日本における民泊の定義のひとつの基準となるでしょう。

「旅館業」「民宿」との違い

一般的に、ホテルや旅館といった宿泊施設は「旅館業」に該当します。旅館業は「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、国が定めた「旅館業法」に従って業務を行っています。

旅館業の定義にある「営業」というのは、繰り返し行われることを指しているので、例えば1回だけ誰か知りあいに頼まれて自宅に泊めた、という場合は旅館業には該当しません。

また、無償で人を宿泊させるような場合も同様です。

民宿とは、本来は民家や使用していない小屋の一室を利用して人を宿泊させる施設を指し、旅館よりも小規模な家族経営が一般的でしたが、現在では旅館業法の簡易宿所営業の許可を取って営業している施設が多いようです。

どちらも宿泊料を受けて繰り返し営業を行う点が、民泊とは大きく異なります。

国内日本人向けと海外観光客向けの各イメージ

民泊でも、日本人向けのものと外国人旅行者向けのものとでは、捉えられ方が異なります。

日本人向けの民泊の場合は、田舎で農業や漁業、ものづくりなどを体験しながら、地元の人たちと交流を楽しむケースが主流のよう。スローライフを体験し、その土地ならではの食や生活習慣に触れる国内留学のようなものでしょう。

農林漁業体験型民泊サイト「とまりーな」が JAL、農協観光と協業して、「週末ふるさとTrip」をリリースしました。週末ふるさとTripでは、民泊して里山や農村漁村の暮らしをリアルに楽しむ体験を紹介しており、とまりーなでの民泊と絡めてこのプログラムのプロモーションを展開しています

岩手県釜石市は2019年のラグビーワールドカップの開催地の1つになっており、数万人の来訪を見込んで、宿泊地確保のためにAirbnbとの提携を発表しました。この提携でAirbnbは、ロンドンやリオオリンピックでのナレッジを生かし、旅行者確保のためのマーケティングやプロモーション、インターネット対応の面でのホストの育成をサポートします。2017年には釜石市が震災復興関連事業の一環で開催している体験プログラム「Meetup Kamaishi」にAirbnbと協業で民泊を取り入れる予定です。

一方、海外からの観光客向けの民泊は、ホテルよりも格安のコストで宿泊でき、しかも一般家庭の靴を脱いで上がる玄関、畳の和室などに日本らしさを味わうことができるというメリットがあるようです。

Airibnbの発表によるとAirbnbを利用した海外からの来訪観光客数は2016年には300万人に達し、前年の130万人に比べ230%になっています。2016年にはAirbnbが旅先でその地ならではの体験ができるプログラムを探す新しいコンテンツとして「旅行(Trips)」を追加しました。

このことからも、ただ安く泊まれるから民泊を選ぶだけでなく、Airbnbのコンセプトのひとつでもある「暮らすように旅する」を望む海外からの旅行者の間では、その地域ならではの特別な体験・冒険をしたいという需要が高くなっているようです。

民泊を選ぶ旅行者の興味は国内・国外ともに旅先、その地域ならではの特別な体験・冒険を楽しむことに向かっているとも言えます。

 

2.なぜ民泊ビジネスがここまで盛り上がっているのか

民泊仲介サービス「Airbnb」によって、プレイヤーが参入しやすい環境が整った

2008年サンフランシスコで創業したAirbnbはホームシェアリングのプラットフォーマーで、日本では民泊マッチングサイトとして知られています。格安の部屋から豪華な別荘、城などの変わりネタまで幅広い物件に泊まれるとして人気を集め、世界中で利用されるようになりました。

Airbnbの登場によって、ゲストはホテルや旅館など既存の宿泊施設より安い部屋を選ぶこともできるようになりました。加えて種類の選択肢が増え、写真を含めた部屋情報が豊富なので選びやすくなりました。

一方のホストも、Airbnbに登録すると、インターネット上でホストとしての講座を受講でき、価格設定や鍵の受け渡しなど基本的なことを学べます。オプションではゲストのためのハウスルールやマニュアルの作成を依頼したり、掲載する写真素材をプロのカメラマンに撮影したりしてもらうことができます。

インバウンド客(外国人観光人)増加による宿泊ニーズの高まり

近年、日本への観光客(インバウンド)がどんどん増加しています。日本政府観光局によると、2017年のインバウンド客は約2,800万人と発表されています。東京オリンピックが開催される2020年には、インバウンド客がピークになるのでは、と予想されています。

それに対して、宿泊施設が不足しているという深刻な問題があります。

観光客の増加に対応して大型ホテルなどを建設するには、多額の費用がかかってしまう上、建設期間も長期にわたり、簡単に建築するという訳にはいかないのです。

そういった問題を解決するために、ソリューションとしての民泊の可能性が期待されています。

一般の住宅を民泊としてシェアリングするのであれば、すぐにでも利用が可能で、ホテルより安価で快適な場合があるからです。

関連記事:

東京五輪で民泊はどう変わる?現状と課題、法整備について解説

大企業の参入も顕著に

民泊の特徴の1つに、個人が宿泊場所の提供をするという点が挙げられます。今や民泊の世界最大企業であるAirbnbも、2人のデザイナーがシェアしていた部屋にマットレスを備え、ホテルに泊まれずに困っていた旅人を助けたことから始まっています。

しかし日本では、民泊が注目されてニーズが高まるにつれて、大企業が民泊ビジネスに参入するようになりました。すでにリクルート住まいカンパニー、エイブル、LIFULL STAY(不動産情報サイト運営会社のLIFULLと楽天が共同で設立)といった不動産賃貸業界の大企業が民泊に参入しています。

さらに、空きスペースのレンタルサービスを提供するスペースマーケットも民泊サービスを開始すると発表しています。さまざまな既存企業による民泊ビジネスへの参入は、これからも増加しそうです。

リクルートを始めとする大企業、またスペースマーケットの民泊ビジネスの詳細については、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:

リクルートも民泊に参入へ。国内の大手賃貸業者の民泊参入状況まとめ

遂にスペースマーケットが民泊事業に本格参入!民泊解禁・自由化で急成長するマーケットー参入企業一覧まとめ—

空き家(および空きスペース)増加問題への対策

一般住宅の空いているスペースを民泊として活用することが、空き家問題の解決にも繋がると期待されています。

民泊であれば、観光地から外れた地域で旅館業として採算を取るのが難しいようなエリアであっても、コストが小さく済むのでビジネスにつながる可能性があります。また、SNS等の普及の影響からかインバウンド客のニーズも多様化しており、日本人からすると意外に感じる場所にまで行きたがる傾向が見られます。

空き家の民泊としての活用が活発になれば、提供する側・される側のどちらにもメリットがあり、Win-Winな関係が成り立つでしょう。

 

3.民泊に関わる法律について

これまで新しいビジネスである民泊事業に法律が追いつかず、法的にグレーな状態で運営する事業者が多くいました。旅館業法を守らず、無許可で経営している事業者が増加したために、トラブルや既存業界との対立が発生しており、早急に法整備する必要性が叫ばれていました。

近隣住民やマンション組合との間で問題になった騒音やゴミの問題、マナー違反だけでなく、ホスト側が強盗に合うなど、提供者、利用者、近隣住民など、多くの人たちに関わるトラブルが発生していました。

2014年には、京都の民泊経営者が法律の基準を満たしていないという理由で、摘発された事例もありました。

そこで成立したのが、先にもご紹介した「住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)」です。日本国内での民泊に関する法律である住宅宿泊事業法、さらに旅館業法について解説します。

民泊新法(住宅宿泊事業法)とは

日本国内での民泊営業に関するルールを定めるための法律です。住宅宿泊事業法、通称「民泊新法」は2017年6月に成立し、2018年6月から施行される予定です。民泊に関わる法律としてももっとも重要なものの1つなので、必ず概要を理解しておきましょう。

住宅宿泊事業者は、住宅宿泊業者としての届出が必要であり、年間の宿泊日数が180日を超えないことを、同事業を運営する条件として定めています。180日を超える場合は、「旅館業法」に定められる法律を遵守しなければならず、旅館業の営業許可が必要になります。

住宅宿泊事業者に課せられる義務は、床面積に応じた宿泊者数の制限、清掃の徹底、非常用照明器具の設置、避難経路の表示、外国人宿泊者向けの外国語での表記、宿泊者名簿の管理、定期的に宿泊者情報の提出、民泊事業を行っているという標識の掲示、近隣住民への配慮もが明記されています。

住宅宿泊事業者が法令違反した場合、一年以内の期間で業務の全部、または一部を停止させる場合があり、登録取り消し、法令違反の罰則を受けることもあるようです。

住宅宿泊事業法では、住宅宿泊事業を営む人のほかに、住宅宿泊管理業者、住宅宿泊仲介業者に対するルールも定められています。より詳細な解説は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:

遂に民泊新法が成立!その概要と施行時期、気になる今後の市場動向

民泊新法施行に向けて

2018年6月からの民泊新法施行に先立ち、3月から観光庁への民泊宿泊事業者の登録・届け出の受付がスタートしました。しかし、近年の民泊業界の盛り上がりに反して、初日の届け出は8件、観光客の多い京都市では0件だったと報告されています。この法令に関する質問が届いているなど、人々の民泊への関心は高いようですが、届け出数にはまだそこま反映されていないようです。

さらに民泊新法に上乗せする形で、特定の地域での民泊禁止や営業時間の制限などを盛り込む条例を制定する意向のある自治体も複数存在します。

日経新聞が民泊の貸し手に対して行ったアンケートによると、上乗せ条例が原因で、すでに民泊の場所を提供しているが民泊をやめると答える貸し手も出現しています。

自治体による条例はどれも、民泊による住民とのトラブルを防ぎ、民泊利用者・自治体住民双方が安心して生活ができることを目的としたものです。しかし条例が制定されることにより、民泊市場の成長にブレーキがかかることが懸念されています。

 旅館業法とは

旅館業法とは、1948年に施行された旅館業に関する法律で、その中で旅館業を「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義づけています。そして、宿泊料は、その名目に関わらず、実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるものを含みます。

民泊新法が定められるまでは民泊にも旅館業法が適用されるとの見方が有力であり、民泊新法の対象範囲外になる場合(営業日数を超過するなど)は旅館業法が適用されます。

旅館業の種別には①ホテル営業、②旅館営業、③簡易宿所営業、④下宿営業があり、施設の構造など(下宿営業の場合は、「1か月以上の期間を単位として宿泊させる営業」であり、期間が分類の基準)で分類されています。

具体的な法律の内容としては、有償で宿泊させる場合はフロントの設置・寝室面積など必要な施設について一定の基準を満たさなければならない、食事を提供する場合は食品衛生上の許可が必要である、などといったもの。

旅館業を営むには、旅館業法の基準を満たした上で、都道府県知事から営業許可を取ることが定められています。

旅館業法の法律違反で摘発された場合は、6か月以下の懲役刑または3万円以下の罰金刑となります。

関連記事:

東京五輪で民泊はどう変わる?現状と課題、法整備について解説

業界最大手のAirbnbは違法なのか?

ここで気になるのは、無許可で営業している施設を掲載しているAirbnbは法律違法なのか否か、という点です。

Airbnbでは、民泊の物件をシェアするホストに向けて「それぞれの国の法律遵守」を呼び掛けています。つまり、リスクを回避すると共に、登録ユーザーの自主性に任せているとも受け取れます。Airbnbはそれ自体が民泊を行っている訳ではなく、あくまで部屋をシェアするホストとゲストのマッチングサービスなので、旅館業法違反には問われません。そういった点では、明確に「違法」とはいいにくい状況でした。

新たに成立した民泊新法では、Airbnbのような仲介業者に対しても観光庁への登録や、宿泊者に対する契約内容の説明などの義務を課しており、これらを遵守していれば、明確に「合法」と言えます。新法の成立によって、合法的に事業を運営しやすくなりました。

しかしすでに述べた通り、複数の自治体が条例の制定に向けて動いており、今後は自治体による規制にどう対応するかが問題となります。

観光庁は自治体に対して、自治体による民泊の規制を最小限にするよう求めていますが、例えば長野県軽井沢町では別荘文化を維持するために、すでに民泊施設を全面的に認めない方針を打ち出しています。このように、自治体と民泊の攻防はすでに始まっており、双方がどのように折り合いをつけるのか、注目されます。

 

4.民泊によって起きるトラブル

ようやく民泊新法が成立しましたが、これまで法整備が遅れていたこともあり、すでに多くのトラブルが発生しています。まったく新しいビジネスであるがゆえ、どのようなトラブルが発生するかを予測するのは難しく、事前の法整備が難しい面があります。

ゲストが、施設内設備を壊したり、持ち帰ったりするケースや、ホスト・ゲスト間での暴行・セクハラ事件、人種差別による宿泊拒否など、予想外なトラブルが発生しています。

参考:Airbnb(民泊)利用で起こったトラブル事例と解決・回避方法

以下では、実際に起きたトラブルを紹介します。

2017年の摘発例

大阪のマンションの一室を所有していた男性がインターネットで民泊に貸し出していたところ、マンションの管理組合の理事長が損害賠償を求め起訴、大阪地裁は男性に50万円の支払いを命じました。

旅館業法の許可がないため脱法である可能性、ごみや深夜の騒音が近隣住民への利害に反するとの指摘によるもので、新法制定を控えていますが今後の判例になるでしょう。

民泊ホスト側にとっての潜在リスク

インターネットを介してグローバルに行われる民泊は、様々なリスクが考えられます。世界中からやって来るインバウンド客を迎えるのですから、日本人の常識にはないトラブルが起こる可能性も否定できません。

Airbnbのような民泊を提供するサービスが仲介していれば、支払いに関するトラブルは少ないと思いますが、例えば物品を壊されたり、部屋を汚されたりということは起こり得ます(Airbnbであれば、物件損壊があったときのホスト保証システムがあります)。

一番懸念されるのは、利用客が部屋で何をするのかわからないということです。マナーが悪くて近隣住民からクレームを受けたり、通報されてしまったりということが起きれば、ホスト側の責任が問われてしまいます。

実際に起こったトラブル

  1. 泊まる前のトラブル

    宿泊前で多いトラブルの1つは鍵の受け渡しです。直接対面で鍵を渡すと、心理的効果でハウスルールを破りにくく、問題が置きにくい傾向があると言われますが、遅刻があった場合近所にでも住んでいないと対応するのは簡単ではありません。海外からくるゲストの場合、フライトの遅延や、Wi-Fiの確保など連絡したくでもできない状況も十分ありえます。

  1. 泊まっているときのトラブル

    ゲストがハウスルールを守らず、騒音や禁止事項を破るといったトラブルがあります。旅の恥はかき捨てという言葉もあるくらい、旅先ではつい羽目を外してしまう人も多いもの。近隣に迷惑がかかると、民泊運営をすることにご近所の賛同を得られなくなってしまいます。滞在中のゲストの行動を監視する装置を利用するホストも増えるかもしれません。

    ごみの分別は国によって異なるので、きちんとわかりやすく表示しておかないと、悪気なく分別一切なしということもありえます。家電や家具についても、国によっては母国にはないもの、使い方が違うものもあるので、マニュアルを用意するか、対面で説明できれば大変親切です。

  2. 泊まった後のトラブル

    器物の破損や盗難が起きる可能性もあります。損害賠償が必要な場合、ゲストとの和解交渉にはAirbnb問題解決センターを利用します。電話連絡先やメッセージによるヘルプセンターもありますが、Airbnb内にはコミュニティがあり、フォーラム形式で問題を解決することもでき、今後ナレッジもどんどん蓄積されていくと考えられます。手続きの受付期間に限りがあるので、ホストは何かあったら早めに申請など対応していく必要があります。

旅館業界など既存プレイヤーとの対立

民泊がビジネスとして活発になると、既存の旅館業者からの反発が激化するという懸念もあります。

法律に沿って安全面・衛生面や施設設備に関する基準を満たすためには、相当の労力やコストがかかっています。安易に一般人がAirbnbなどで民泊を行っていることには、旅館業界にとって自分たちのビジネスを脅かすウーバライゼーションに感じられるでしょう。

また、ホテルや旅館は業界での結束が固く、個人経営の民泊を敬遠している部分もあります。

日経新聞が報じるところによると、中国が大型連休を迎える春節(旧暦正月)の東京・大阪の2017年のホテル料金は、前年比較で1~3割値下がりした模様です。一方でstrの調査データによれば、世界的にはホテルの稼働率はAirbnbの稼働率より高く、Airbnbの普及後も繁盛期のホテル宿泊料金は上昇傾向にあるとしています。

さらにAirbnbの利用は週末が中心なのに対し、ホテルは平日の利用が多くビジネス客需要が安定しており、同じ市場を共有しているわけではないとも述べています。(こちらのも参照)

住宅価格の上昇

シェアリングエコノミーの普及が進むアムステルダムロンドンでは、2016年12月Airbnbを使って部屋を貸し出せる年間の日数に上限を設けると発表しました。Airbnbをはじめ民泊の普及が進んでいる欧米の都市では、民泊に貸し出す目的で不動産を購入する人が増えて、価格が高騰し一般の地域住民が借りにくくなるという問題が指摘されていたための措置です。

SPIKEデータは世界の(アメリカを除く)Airbnb物件数ランキングを発表しました。これによるとTOP10のうち7都市はヨーロッパ、1位はパリ、2位はロンドンで、ともに登録件数5万件を超えています。世界の観光都市ランキングではランクインする1位香港、3位シンガポール、4位バンコクがまったくランクインしていません。もともとヨーロッパでは民泊文化があったこともあり、Airbnbの普及は圧倒的と言えます。

同様の問題をアメリカでは「ワン・ホスト、ワン・ホーム」というルールを制定して対処しています。これはAirbnbで貸し出すためにリスティングするのは1人1物件に限定するというもの。ニューヨークやサンフランシスコで導入され、ポートランドでも適用が決まりました。

 

5.まとめ

民泊ビジネスに関する現状とニーズの高まりを見ると、空き部屋を安価で気軽にシェアリングすることができる民泊には、部屋を提供する側・される側の双方に大きなメリットがあり、Win-Winの関係が成立しているといえます。

今後、東京オリンピックを控えて予想されるインバウンドの増加に伴い、宿泊施設不足の問題が解消できれば、大きな経済効果を生み出すことが期待できるでしょう。これから国の法規制緩和が進んでいくのか、注目したいところです。

Pocket