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世界第2位の莫大な人口を誇るインド。消費が期待できる生産年齢人口が多く、IT先進国でありながらまだ普及していない分野が多いなど、今後の需要拡大が大いに期待できる国です。近年はインド発のスタートアップ企業が急速に増加し、特にIT関連サービスの拡大が顕著で、日本国内・海外を問わず現地企業への出資や業務提携に乗り出す企業も多くあります。

そんなインドにおいて、多くの社会問題を改善しながら市場の拡大も期待できるシェアリングエコノミービジネス。なかでもカ―シェアなどのライド系シェアリングビジネスに焦点を当て、インドのシェアリングエコノミーについて解説します。

目次

  1. インドにおけるシェアリングエコノミー
    ・市場規模について
    ・雇用の創出にも
  2. 躍進するインドのシェアエコサービス
    ・カーシェア「Drivezy」「Zoomcar」「Revv」
    ・ライドシェア「OlaCabs」
    ・シャトルバスシェア「Shuttl」
  3. まとめ

1.インドにおけるシェアリングエコノミー

市場規模について

世界第2位の人口を誇り、新興国でありながらIT先進国でもあるインド。インド政府による「スタートアップ・インディア」などのベンチャー企業育成政策により、2017年にはスタートアップ企業数は5,500社、2020年には10,000社となるという予測もされるほどの勢い。なかでもECなどITに絡んだサービスは急速に拡大しています。若年人口が多く市場拡大が期待できるインド企業に出資する海外企業も後を絶ちません。

スマートフォンの普及とこうしたIoT技術発展に伴い、盛り上がりを見せるのがインド国内のシェアリングエコノミー市場。特に、整備が進まないインドの交通インフラを支える「ライド系シェアサービス」は重要な役割を果たしており、安全面などで課題はあるものの今後もさらなる普及が見込まれます。
配車アプリでは、アメリカ発でグローバル展開する「Uber」と、インドローカル企業の「Ola Cabs」が人気を二分。アクティブユーザー数は月間でUberが2,000万人超で、200~300万人のOlaよりシェアは占めているものの、近年の推移ではローカルのOlaが増加傾向となっています。
このように、インドのシェアリングビジネスはライド系を中心に拡大が期待されています。

雇用の創出にも

カースト制度によって自由な就職が困難だった貧困層も、新しい職種であるIT分野では活躍の場が広がっています。努力すれば誰もが自由と富を得られるという希望が、インドにおいてIT業界を急成長させる原動力になったとも考えられています。そのため、ITについて積極的に学びたいと考える若者は多く、政府による貧富の差をなくす取り組み「リザベーションシステム」により優秀な人材を生み出していますが、そのような高等な教育を受けられる人ばかりではありません。

シェアリングビジネスは、そういった学ぶ機会に恵まれない貧困層の人の雇用につながると期待されます。ドライバーやルームメイクなどのニーズが発生するシェアリングエコノミー市場が盛り上がれば、建設業などのハードな肉体労働だけでなく、効率のよい仕事への雇用創出の機会となるのです。

法規制や既存産業の崩壊への懸念などで足踏みしている先進国に比べ、インドでのシェアリングエコノミーは急速に浸透することが期待されます。

 

2.躍進するインドのシェアエコサービス

カーシェア「Drivezy」「Zoomcar」「Revv」

https://drivezy.com/Bengaluru/

インド国内で自動車・バイクのPtoPシェアリングサービスを展開する「Drivezy」8都市のさまざまな場所から利用でき、約4万人の月間利用者数を誇るインド国内最大のカーシェアリングプラットフォームです。

2018年11月には、オンライン決済サービス事業などを展開するAnyPay株式会社のグループ会社AnyPay Pte.Ltd. が投資会社を設立。Drivezyが運用する車両へ3年に渡り1億米ドル以上の投資を行うと発表しました。拡大する需要に対し、貸し出す車両が不足しているというギャップを解消することによって、インド国内でのカーシェアリング市場の拡大を支援します。

https://www.zoomcar.com/

2012年に設立され、インド国内数多くの都市に拠点を持つ「Zoomcar」。燃料費や保険料、税金などもすべて価格に含まれるため利用しやすく、近年急成長を遂げたオンラインレンタカー事業です。

情報キュレーションサービスアプリやニュース配信アプリを開発・運営するGunosy(グノシー)の子会社Gunosy Capital Pte. Ltd.が2018年10月にZoomcarへの投資を発表、さまざまなIT企業がインドのカ―シェア市場のさらなる成長に期待し支援しています。

https://www.revv.co.in/

2015年に設立された「Revv(レブ)」はインド国内大都市を中心にサービスを展開。スマートフォンアプリを通じ、往復・片道など都合に合わせて柔軟に利用できることから国内最大手となっています。

2018年8月には、韓国の現代自動車による出資・事業提携が発表され、インド人口の35%を占めるミレニアル世代を中心としたカ―シェアリング市場は2022年までに20億米ドルにまで拡大すると予測されています

ライドシェア「OlaCabs」

https://www.olacabs.com/

インド国内のローカルライドシェアプラットフォーム「OlaCabs」。2011年に設立されて以降、競合であるグローバル企業Uberにシェアを奪われつつあったものの、2017年9月以降アプリダウンロード数ではUberを上回る人気となっています。

1時間ごとのパック料金設定もあり複数の地を訪れる観光への利用もできるなど、観光タクシーのようなニーズも満たすOlaは、2018年2月にはオーストラリア進出8月にはイギリスへの進出を発表するなど、海外展開にも積極的に取り組んでいます。

シャトルバスシェア「Shuttl」

https://ride.shuttl.com/

2015年より事業開始された「Shuttl」はインドのスーパーハイウェイラボ社が運営する通勤用シャトルバスサービス。スマートフォンアプリでベストなルートを事前予約することによって座席を確保、希望の場所で乗り降りできるエアコン付きの快適な通勤バスで、デリー首都圏地域を中心に7都市で一日平均5万人以上の足として貢献しています

2018年7月には、投資ラウンドシリーズBでAmazon電通グループのベンチャーキャピタル子会社主導により1,100万米ドルの資金を調達、今後もより多くの利用者にサービスを提供し、インド都市部のモビリティー領域における新たな事業拡大が期待されます。

 

3.まとめ

IT先進国であるインド。カースト制度が廃止されても、進学や就職においてはまだまだ根強く残る差別によってハードな労働を強いられる人もいます。こうした知識や技術を学ぶ機会のない貧困層の人にとって、シェアリングビジネスの拡大は効率的な雇用を創出する機会となるでしょう。

また13億人超という莫大な人口にもかかわらず、交通インフラが十分に整備されていないインドにおいて、ライド系シェアリングは今後も大きな需要が見込める市場です。都市部における駐車場不足や混雑の改善にも貢献できるといえるでしょう。

これらの背景から、シェアリングビジネスはインドにおいてさまざまな課題を改善する可能性を秘めていると考えられます。柔軟で人材にも優れたインドだからこそ、シェアリングエコノミーという分野も先進国のように足踏みせず急速に浸透していくと期待できるのではないでしょうか。

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