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モノ・ヒト・カネなど、シェアリングエコノミーの対象は多様化しており、国内でも新しいサービスが次々に誕生しています。

2014年以降、シェアリングエコノミー協会など関連事業者が構成する活動団体の情報発信も活発になっており、シェアリングエコノミーの話題性が高まり、国内でも試しに使ってみようという人が増えたと考えられています。

インバウンドの分野でも、シェアリングエコノミーの利用はますます増えると見込まれており、市場全体も右肩上がりで成長しています。今回は、そんなシェアリングエコノミー市場の展開と高まる消費者側のニーズをまとめました。

目次

  1. 活況を帯びる国内のシェアリングエコノミー市場
  2. 多様化するシェアリングビジネスと高まる消費者のニーズ
  3. まとめ

活況を帯びる国内のシェアリングエコノミー市場

まずは2014年度の日本におけるシェアリングエコノミー業界の状況を見てみましょう。
アメリカ発祥のAirbnbとUberが日本に上陸し、国内の関連事業者はこれらのサービスに関する情報発信とシェアリングエコノミーの啓蒙活動に努めました。動向が注目され始めたこの年、国内シェアリングエコノミー市場規模は232 億 7,500 万円で、前年度比 34.7%の増加を記録しました。

続く2015年度には、旅館業法の特例の施行、いわゆる規制緩和が行われ、企業の民泊市場への参入が増加しました。この中にはAirbnbの掃除代行や運営代行のサービスが含まれます。2015年度国内のシェアリングエコノミー市場規模は、事業者の売上高ベースで285億円、前年度比では22.4%増加と算出されています。

現在の国内シェアリングエコノミー市場を占める割合として大きい分野は、乗り物のシェアリングエコノミーです。中でもカーシェアリングがそのほとんどを占めており、ライドシェアは法規制の問題のため、まだ普及しているとはいえません。

同じく規制という点では、2017年には民泊新法の国会提出が予定されているため、今後民泊の分野は参入企業やサービスの利用者が増加していくはずです。すでにアパマンショップやエイブル、大京、ネクストなどは参入を発表しています。

また増加傾向にあるインバウンドの分野では、外国人旅行者は日本人よりもシェアリングエコノミーに抵抗がないとされていて、民泊に限らず、ライドシェアや現地体験系プラットフォームなどのシェアリングエコノミーの利用は増えると考えられています。調査によると、2020年度にはシェアリングエコノミーの市場規模は600億円にまで成長するという試算が発表されています。

多様化するシェアリングビジネスと高まる消費者のニーズ

ヒト・モノ・カネ…多様化するビジネス形態

ヒト・モノ・カネ。多様化が進むシェアリングエコノミーの分野で、今どんなサービスが生まれているのでしょうか。

ヒトの労力をシェアする分野では、「クラウドワークス」、「ランサーズ」に代表されるクラウドソーシングサービスと、「Anytime」や「coconala」のようなPtoPマッチングプラットフォームがあります。この分野は参入企業が多く、ペットのお世話に特化した「anicare」など、サービスの細分化が始まっています。

家や車などのモノをシェアする分野は、シェアリングエコノミー業界を牽引するサービス分野です。海外ではAirbnbやUberが有名ですが、日本でもっとも市場規模が大きいのは「タイムズカープラス」が率いるカーシェアリングです。矢野経済研究所の調べでは、2014年度のカーシェアリングの市場規模は154億円とされ、国内シェアリングエコノミーの半分を占めます。

そのほかの乗り物系シェアリングエコノミーでは、PtoPで車を貸し借りする「Anyca」や中距離ライドシェアの「notteco」など、現行法に触れないカーシェア・ライドシェアサービスも生まれています。モノの中でも空間系のシェアリングエコノミーでは、空きスペースを活用する「軒先ビジネス」や「スペースマーケット」、オンラインで駐車場の貸し借りをする「akippa」などがあります。

カネのシェアリングエコノミー分野ではアイディアへの出資者を集めるクラウドファンディング「Makuake」や、投資家とお金を借りたい人を結ぶソーシャルレンディングサービス 「maneo」などがあります。カネのシェアリングエコノミーでは融資タイプと資本金として出資するタイプがあり、カネのシェアの仕方が異なります。

 

消費者が考える「あったら嬉しいこんなサービス」

プルデンシャルジブラルタファイナンシャル生命保険が2016年に行った調査によると、モノに対する所有欲の減少が全世代に現れており、一時的に利用するモノやぜいたく品はシェアで利用したいという層が増え、利用したことがある・または利用してみたいシェアリングエコノミーの1位は、フリマアプリという結果でした。

利用してみたいシェアリングエコノミーの2位は、「駐車場シェア」、3位「スキル・空き時間シェア」と続きます。年代や性別に見ると、40代男性はライドシェア、20-30代女性はファッションレンタルに関心が高いようです。

一方でシェアリングエコノミーの不安や魅力の調査では、個人間でのトラブルへの懸念が高く、中でも女性にその傾向が強く見られます。女性には個人間のトラブル回避の対策や、万一の際の保障についてアピールすることが魅力度を高めるために重要になっていきそうです。また若年層にはコストダウンできること、シニア層には環境にやさしく、モノが増えないことが魅力的な訴求ポイントになりそうです。

実際に利用してみたいサービスとしては、ぜいたく品や必要だが使用頻度の低いもの、子ども用品を貸し借りしたいという意見や、家事や育児、日曜大工の手伝いや代行サービス、街めぐりの案内やゲームのパートナーなど、要望は多岐に渡るようです。

 

まとめ

国内においては、シェアリングエコノミーのサービスを利用したことがある人・よく利用する人はまだそれほど多くないようです。しかしながら、近年のモノを所有することへの価値観の変化から、シェアリングエコノミーに注目している・利用を検討したいという層は増えています。

シェアリングエコノミーに法の整備が追い付いていないと言われますが、ユーザー側の受け入れ態勢は、着実に整ってきているのではないでしょうか。

 

株式会社 矢野経済研究所:シェアリングエコノミー(共有経済)市場に関する調査

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