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遊休資産の有効活用を図るシェアリングエコノミーが世界に拡大する中で、もっとも激しく変化している分野のひとつがモビリティサービスです。ライドシェアの米UberやLyftを筆頭に、サービスの構造変化が一層顕著になってきています。

そして今、その動きに強く反応しているのが世界の車両メーカーです。日本国内、海外の自動車・二輪メーカーがモビリティのシェアリングエコノミーに戦略的出資を行い、単独や協業でカーシェアやライドシェアのプラットフォームサービスに進出しています。大変革の兆しが見え始めた移動サービス。それを支える世界の企業動向を見てみましょう。

※編集部注:
2018年4月20日に加筆修正しました。

目次

  1. ダイムラー社がカーシェアリング事業をスタート
  2. GMがワンウェイカーシェアをスタート
  3. トヨタの動向
    UberやGetaroudとの提携
    販売店を拠点にカーシェアを展開
  4. ホンダの動向
    東南アジアにおける二輪車シェアリング事業を展開
    会員制レンタカーサービスを開始
  5. まとめ

ダイムラー社がカーシェアリング事業をスタート

個人同士で車をレンタルするP2Pサービス

ダイムラーはP2Pのカーシェアプラットフォーム「CROOVE(クルーブ)」をリリースしました。2016年12月からiPhone向けアプリのダウンロードが開始、近日Android向けも公開される予定です。

CROOVEは、個人が所有する車を、所有者が使っていないとき使いたい人に貸し出すドイツ国内のサービス。同社はこれを自動車の遊休資産活用サービス、「自家用車のAirbnb」と位置づけています。

取り扱い車種はダイムラー製である必要はなく、15年未満の良好な状態の車であればどのメーカーでも登録できます。借り主は21歳以上で、指定の国が発行する自動車免許保有者か、国際免許の保有者とされています。支払いはアプリを通してクレジットカードで決済され、利用後に借り主、借り主ともにアプリ上で相互評価され利用履歴として残る仕組みです。

万一の際の補償面は、ヨーロッパ最大級の保険事業を運営するアリアンツ保険がオペレーションしており、知名度の高い企業同士のコラボレーションはユーザーの信頼感に直結するでしょう。

日本でも同様のP2PのカーシェアはAnyca (エニカ)が展開していますが、CROOVEのサービスで特徴的なのは、貸し主や借り主が依頼すると、指定した場所まで車を運んでくれるバレットサービスと呼ばれるオプションです。15ユーロの追加金で対応してくれるので、指定時間に引渡し場所に行けないとき利用できる、ユーザーフレンドリーなサービスと言えます。

そのほかにもダイムラーは、世界的に大きな潮流となっているカーシェアリングに力を入れており、欧州を中心に北米にも展開している同社車種smartのカーシェアリングcar2goで中国に進出したり、空港に停めている旅行者の自家用車を他の人に貸し出すサービスFlightCarを買収したりしており、カーシェアリング市場でのシェアの拡大を進めています。

GMがワンウェイカーシェアをスタート

注目が集まる「乗り捨て」サービス

GM(General Motors)は、カーシェアリングの「Maven(メイブン)」でワンウェイサービスをスタートしました。ワンウェイとは片道、つまりわざわざ借りた場所に車を戻さなくてよいカーシェアリングです。

Mavenは、「ユーザーが求める、または今後求めることになる高いレベルでパーソナライズされたモビリティサービスの提供」を掲げて、2016年1月にGMが開始したカーシェアサービス。GMはMaven以外にも、Lyftに5億ドルの巨額投資を行ったり、事業停止に追い込まれたSidecarの資産を買収したりと、車社会の仕組みの再構築に積極的なスタンスを取っています。Lyftと提携し、自動運転車を使ったオンデマンド配車サービスの実現にも取り組んでいます。

カーシェアの乗り捨てサービスは、ミシガン大学のあるアナーバー周辺で開始し、のちにデトロイト・メトロポリタン空港とデトロイトのルネッサンスセンター間でも利用できるようになっています。Mavenの発表では、今後は若者に人気のあるデトロイトのロイアルオークエリアへも乗り捨てサービスの展開を予定しているようです。

北米のカーシェアリング市場では、ユーザーの自由度を高めたサービスとして乗り捨てに注目が集まっており、Zipcarやcar2goらMaven以外の事業者も乗り捨てサービスを展開しています。ワンウェイライドはカーシェアにおいて、今後必須のサービスになっていくかもしれません。

 

トヨタの動向

UberやGetaroundとの提携 

トヨタは、米ライドシェアのUberや、米P2Pカーシェアの「Getaround」に戦略的出資を図るともに、モビリティ構造の変化に伴った協業を進めています。

現時点で発表されているライドシェアのUberとの協業は、トヨタファイナンシャルサービス株式会社 ( TFS ) がUberのドライバーに車両をリースし、ドライバーはUberで得た報酬から車両のリース料を支払っていくという仕組みの構築です。

この取り組みでは、車がないドライバーやUberで認められるような品質の車を所有できないドライバーがリースでトヨタの車を利用できます。Uberドライバーは一定年数を超えた車両は使用できないため、今後自動車の販売台数が減少していくという市場予想の中で、トヨタ側は出荷台数を安定的に確保できると予想されます。

一方Getaroundとの協業は、Uber同様ドライバーへの車両リースによる囲い込みはもちろん、スマートフォンアプリから車をコントロールするためのデバイス、スマートキーボックス(SKB)のプログラム実証も目的としています。これはトヨタがあらゆるモビリティサービスのプラットフォーマーとなるために、技術・機能の構築を促進する戦略の一環です。

トヨタとしてはGetaroundとの協業で開発してきたモビリティシステムを推進し、日本国内のレンタカーシステムの無人化などにも応用するものと予想されます。

販売店を拠点にカーシェアを展開

トヨタは、2019年4月に東京都内にあるトヨタ直営の販売会社4社を合併させ、新会社を設立すると発表しました。国内市場の縮小を受けて経営資源を集中させるだけでなく、カーシェアを軸とした新サービスの本格的な開始に乗り出すとみられています。

すでにトヨタ販売店向けにカーシェア事業用アプリの開発が進められており、2017年8月には米国ハワイ州で実証実験を行っています。このアプリではスマートフォンを用いたドアの開閉システムや、車両管理や利用者の認証、決済サービスなどの機能を搭載。実験を通してさらに実用に即したアプリを展開したい考えです。

さらに「タイムズカープラス」を運営するパーク24とカーシェア事業の業務提携を発表しました。これまでもパーク24とは、トヨタの小型車両「Ha:mo(ハーモ)」を使ったカーシェアの実証実験「Times Car PLUS × Ha:mo」などに取り組んでいます。

今回の業務提携では、タイムズカープラスの対象車両にトヨタの通信型ドライブレコーダーやカーシェアリング危機を搭載し、データを取得するという試みを行います。収集したデータはビッグデータとして管理され、AIを活用して情報を分析し、オペレーション効率や安全性などについて検証するということです。

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ホンダの動向

東南アジアにおける二輪車シェアリング事業を展開

二輪業界で販売台数世界首位のホンダは、東南アジア領域でも圧倒的なシェアを誇り、インドネシアやベトナムにおけるシェアの割合は70%を超えます。

ところが、インドネシアでの2016年の販売台数は減少傾向にあった上、シェアリングエコノミーによる産業構造の変化がモビリティ業界に拡大しているため、ホンダは車両の所有からシェアに移行しつつある兆しをいち早く東南アジアでも察知し、シンガポールの「Grab(グラブ)」との協業を開始しました。

グラブはシンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンら東南アジアを主要マーケットに持つ、自動車やバイクなどモビリティのシェアリングプラットフォームで、東南アジアでのカーシェア・バイクシェアでは最大規模と言われています。

今後はホンダのテレマティクス技術を使った渋滞緩和や、環境性能の高い車種をグラブで採用する取り組みを進め、CO2排出量の削減など、モビリティにおける社会問題の解決を目指すとのこと。一方グラブは、ホンダとの協業で東南アジアの持続可能で効率的なモビリティサービスを提供していきたい考えです。

会員制レンタカーサービスを開始

ホンダは2017年11月に、会員制レンタカーサービス「EveryGo」を開始しました。すでに2013年から実証実験として実施してきたレンタカーサービス「Honda Carsスムーズレンタカー」を、名称を変えて新たなブランドとして展開するということです。

車を借りたいユーザーは、利用する日時や借りる場所に合わせてWebサイト上で予約。Honda Cars店やコインパーキングなどに設置された無人ステーションから車を借りるという仕組みになっています。ICカード運転免許証が会員証の代わりとなっているので専用の会員カードなども不要で、車に搭載された機器にICカード運転免許証をタッチすると解錠できるなど、思いついたときにすぐ利用できる利便性の高さも特徴です。

利用は8時間からとなっており、長時間のレンタカー利用を想定していながらもカーシェアのように気軽に車を使うことができ、コストも抑えることができます。

提供車種はフィットやフリードなどの上級グレードが中心で、人気の高い新型エヌボックスや、先進安全運転支援機能「Honda SENSING」を搭載した車も導入されています。

若者の車離れが業界にとって深刻な問題となる中、カーシェアの利用を通して車の魅力を知ってもらい、新たな国内需要を喚起したいということです。

 

 

まとめ

シェアリングエコノミーが広がるにつれ、所有から共有への意識・志向の変化は加速していくでしょう。同じように必要とされるサービスも変わっていきます。モビリティサービスの大きな構造の変化の兆しを前に、世界の自動車・二輪メーカーは生き残りをかけた戦略を繰り広げています。

車両メーカーからモビリティ・プラットフォーマーとして次世代を担うのはどの企業なのか、まったく目が離せない状況がしばらく続きそうです。

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