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2012年に設立した新経済連盟は、今まで経団連に加入しにくかったような若手経営者も受け入れている、比較的新しい経済団体です。若い力や最先端の技術を積極的に取り入れることでも話題となりました。

そんな新経済連盟の活動内容と、シェアリングエコノミーにまつわる提案について見てみましょう。

※編集部注:

2017年9月19日に加筆修正しました。

目次

  1. 新経済連盟(新経連)とは?
    設立の経緯と加盟企業
  1. シェアリングエコノミーに対する取り組み
    ライドシェアに対する新経済連盟の取り組みと政府の対応
    ホームシェアに対する新経済連盟の取り組みと政府の対応
  1. 新経済連盟の、シェアリングエコノミーに関する最新の取り組み
  1. まとめ

1.新経済連盟(新経連)とは?

新経済連盟(新経連)は2012年にネット通販大手「楽天」会長兼社長の三木谷浩史氏が設立した経済団体です。現在は代表理事を楽天の三木谷氏、副代表理事をネット広告大手サイバーエージェント社長の藤田晋氏が務めており、カカクコムやグリーといったネット関連企業を中心に会員数は一般会員と賛助会員合わせて491社(2017年5月)に上ります。

設立の経緯と加盟企業

新経連が設立されたのは、三木谷氏が当時加入していた経団連に失望したのがきっかけだと言われています。三木谷氏は2011年に経団連を退会。その後、すでに発足していた「eビジネス推進連合会」の名称を変更する形で新経済連盟を開始しました。

理事メンバーにはソフトウェアメーカーやクラウドソーシング運営会社などネット関連の新興企業が目立ちますが、加盟団体には富士通や電通などの大手企業も名を連ねます。幹部を務めるメンバーの所属企業としては、株式会社クラウドワークス、グリー株式会社、株式会社ドリコム、東京急行電鉄株式会社、アクセンチュア株式会社、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社、株式会社クレディセゾン、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ、株式会社マネーフォワードなどがあります。

新経済連盟の活動内容

団体資料によれば、政策提言活動や政府検討会等への参画、パブリックコメントへの意見提出のほか、会員向けセミナーや、海外の起業家などを招いたサミットも開催しています。

経団連との関係

設立経緯から経団連に対抗していると見られがちですが、対立姿勢を明確に打ち出していることはありません。富士通や三菱東京UFJ銀行(賛助会員)のように経団連と新経済連盟の双方に加盟している企業も存在します。

加盟企業数は減少傾向?

新経済連盟の前身であるeビジネス推進連合会が2010年に発足された当初は、1,427社の賛助会員と238社の一般会員の計1,665社で構成されていました。しかし、新経済連盟に名称変更したのちにヤフーが退会してからは、会員数は779社に減少。2016年6月には、さらに521社まで減少、2017年5月では、一般会員と賛助会員合わせて491社になり、当初と比べて、およそ1/3にまで会員数が落ち込みました。

 

2.シェアリングエコノミーに関する取り組み

新経済連盟では、シェアリングエコノミーのなかでもおもにホームシェアとライドシェアの推進に取り組んでいます。

日本におけるシェアリングエコノミーの普及には安全性の確保や一定のルール整備が必要であることを主張し、そのために政府ならびにプラットフォームが取るべき対策を提案。また、海外の動向を踏まえた具体的な提案も公開しています。

ライドシェアに対する新経済連盟の取り組みと政府の対応

ライドシェアに関しては新経済連盟の2015年10月の提案で、世界各国のライドシェアの現状を解説するとともに、日本国内での導入の必要性をアピールしています。国土交通省やタクシー業界が「ライドシェアは安全性が担保できない」ということを理由に反対しているということもあり、安全確保のための取り組みを明確化しました。

その具体的な内容は、プラットフォーム上でのキャッシュレス決済や運転手の身元確認、レーティングシステムの導入により事故歴のある運転手を排除し、利用者が抱く料金トラブルや運転技術の懸念を払拭するというものです。プラットフォーム側でも、1日あたりの運転時間の上限設定や事故時の所轄官庁への報告、任意保険への加入、料金体系の明確化など一定のルールを設定することを提案しました。

さらに政府に対してはライドシェアを新たな交通サービスの類型として法的な位置付けを求め、いわゆる「白タク」扱いしないよう規制緩和を求めています。

2016年11月の関係省庁に向けた提言では、改めてライドシェア推進のための取り組みを強く要望しました。

政府としても2020年に訪日客を4千万人にする目標を掲げており、交通需要への対応が課題となっている中、ようやく2017年2月に、規制改革推進会議によってライドシェア解禁の検討が始まりました

会議ではライドシェアを「ドライバーと乗客の双方にメリットがある」として解禁を求める方針ではあるものの、タクシー業界からは反対意見も出されています。

ホームシェアに対する新経済連盟の取り組みと政府の対応

新経済連盟は2015年10月の政府に対する提案で、ホームシェアによって経済効果が生まれ、空き家問題や地方創生などの課題の解消につながるとしています。

ホームシェアでは本人確認、衛生、租税、周辺地域の安全の確保などが課題となりますが、ITの活用と一定のルールにより対応するとしています。具体的には、レーティングシステムの導入で評価の低いホストやゲストを排除したり、SNSとの連携機能でホストが宿泊前にゲストの情報を把握したり、ゲストがパスポート情報をアップロードして本人確認を行ったりなどです。

それとともに、プラットフォームおよびホストには、衛生や税に関する事項の周知、感染症発生時の通報、周辺環境への配慮やトラブル発生時の対応が求められ、これらについてはガイドラインや一定のルールが必要であるとしています。

また、政府に対しては旅館業法の適用を受けないように求め、2016年6月2016年12月には当時検討中だったホームシェアの制度設計に対する考え方を改めて整理し、公表しました。

一方政府の取り組みとしては、2013年に「特区民泊」を制定、さらに2017年には民泊新法(住宅宿泊事業法)が成立。これにより、健全な民泊サービスの普及を図ろうとしています。

 

関連記事:遂に民泊新法が成立!その概要と施行時期、気になる今後の市場動向

 

3.新経済連盟の、シェアリングエコノミーに関する最新の取り組み

「民泊新法説明会」の開催

2017年7月に「民泊新法説明会」セミナーが開催されました。2017年6月に民泊新法が成立したことを受け、民泊担当部署の室長を招き、民泊の理解向上とビジネスへの適切な活用を図ることを目的として開催されたようです。セミナーでは、民泊新法の概要や、今後の見通しが紹介され、意見交換では、民泊新法の解釈や運営方針の議論がなされました。

民泊に関する要望書の提出

2017年8月には、国土交通大臣、観光庁長官宛てに「新たな民泊制度に関する要望」を提出しました。民泊新法によりホームシェアの法的環境整備がなされたことに意義を感じると伝えた上で、ホームシェアのメリットを最大限に発揮できるように、法令、ガイドラインの改善を要求しています。

例えば以下のような、営業する上でホストの負担が少ない現実的な方法を提案しています。

  • 年間提供日数180日の制限はホームシェアの足かせになることが予想されるので、将来的に見直しが必要である
  • ノーショウ(予約したが宿泊当日に現れなかった場合)はカウントしないことを要望
  • 宿泊者の母国語でホストが説明しなければいけないという義務づけは過度な負担で現実的ではないため柔軟な対応を要望

また、条例、消防法、税法、食品衛生法、廃棄物処理法の観点からも、営業活動を束縛しすぎないようにする措置を求め、より明確なガイドラインの発表を要望しています。

過度な制限を設けず、ホームシェアが阻害されないように配慮しつつ、法令を遵守しない業者は取り締まることで民泊のメリットを最大限に享受できるより良い民泊新法の改善要望となっています。

 

4.まとめ

シェアリングエコノミーのような新しい分野では、政府への働きかけが非常に重要です。日本ではまだ馴染みが薄いということもあり、新経済連盟では情報の収集や公開および周知にも努めています。

政府もホームシェアリングの法整備が始まるなど対応が進みつつありますが、シェアリングエコノミー全体については課題となる部分もまだ多いのが現実です。今後も新経済連盟による政府への提言は注視する必要がありそうです。

新経連のシェアリングエコノミー関連の取り組みや調査は、以下のURLから確認できます。随時更新されているようなので、定期的にチェックしてみてください。

シェアリングエコノミー推進PT(2015年6月~)|トピックス – 新経済連盟

ライドシェア情報発信コーナー|トピックス – 新経済連盟

調査資料コーナー|トピックス – 新経済連盟

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