Pocket

日本では高齢化社会への変容が次第に深刻な問題となり、それに伴って介護支援サービスに対する需要が増加の傾向を見せています。しかし、賃金や労働条件などの理由から、訪問介護の現場では人材不足が叫ばれています。

そんな現状を踏まえ、シェアリングエコノミー型の介護サービスが市場に登場しています。利用者には介護保険の範疇では足りない部分のサービスを補うことができ、リソースを提供するヘルパーには働きやすい場を実現できる「CrowdCare(クラウドケア)」とは、どんなシェアリングサービスなのでしょうか。

※編集部注:

2018年10月12日に加筆修正しました。

目次

  1. シェアリングエコノミー型の介護・生活支援サービス「クラウドケア」
    「クラウドケア」とは
    サービス概要について
    利用者も働く側も安心のマッチングサービス
    神奈川・埼玉・千葉のサービス提供エリアを拡大
  2. 高齢化に向けたシェアリングサービス
  3. まとめ

1.シェアリングエコノミー型の介護・生活支援サービス「クラウドケア」

「クラウドケア」とは

介護支援サービスの需要が高まる中、そのニーズに応えるサービスが十分に行き届いていない現状があります。高齢者が増加する一方、介護福祉士は慢性的に不足しており、他の職業に比べて離職率が高いということが分かっています。厚生労働省が発表している資料では、平成27年度の産業計の離職率が15.0%であるのに対し、介護職員の離職率は16.5%でした。

そんな中、新しい介護サービス「CrowdCare」が誕生しようとしています。CrowdCareは、シェアリングエコノミー型介護サービスであり、その普及が期待されています。

https://www.crowdcare.jp/

従来の介護保険サービスの場合、要支援1から要介護5までの7段階の状態区分によって、受けられるサービスの種類や時間が異なっています。ですから、介護保険制度の範囲でサービスを受けようとすると、利用者のニーズを満たすことが難しい面も。「CrowdCare」は介護保険外のサービスなので、介護保険の要介護認定を受けていない人でも利用ができ、利用者の都合に応じて受けたいと思うサービスの種類・時間帯を自由に選べます。自由度が高く、オーダーメイド感覚でサービスを組み立てることができるというわけです。

サービス概要について

「CrowdCare」では、具体的にどういったサービスが受けられるのでしょうか。

介護保険の範囲では行き届かなかったところまで支援が受けられるよう、利用者と家族のニーズに合わせて提供サービスの内容・時間の要望に応えていくのが「CrowdCare」のコンセプト。

サービス内容には①家事手伝い(掃除洗濯・買い物・ゴミ出しなど)、②介護(トイレの介助・体の清拭・部分浴・車いすや歩行の介助・食事の介助など)、③外出や通勤の付き添い、④見守り・話し相手(利用者の家族が不在時の見守り・会話の相手・趣味の相手など)、⑤服薬確認、⑥その他の生活支援(草むしりやペットの世話、衣替えの手伝い、電球等の交換など)といったことが挙げられています。

会員登録をした利用者は、サイトを通して利用申し込み(利用希望日から3日前の17時まで)をします。利用は最低2時間以上、30分単位で依頼するシステム。定期的な利用、必要な時だけのスポット利用のいずれも可能で、支払いはクレジットカードか銀行振り込み、コンビニ支払いで行う仕組みです。

利用者も働く側も安心のマッチングサービス

「CrowdCare」は、介護サービスを受けたい人と、登録ヘルパーをマッチングする存在。起こり得るトラブルに対しては、どう対処していくのでしょう。

まず、ヘルパー側はもちろんですが、利用者についても派遣先が住まいであることを確認するために身分証明書の提出を求めています。在宅訪問サービスであるため、双方が安心してサービスを授受できるよう配慮がされているようです。

また、万が一家財道具を壊したり傷つけたりしてしまった場合に備え、損害保険に加入しており、その適用内で補償されるシステムも整備。サービスを受ける場所が利用者の自宅であることを考えると、保険の適用は安心できるひとつの要素です。

そして、「CrowdCare」のサービス終了後には、Webサイトからヘルパーへの評価をする仕組みになっています。もしもサービスを受けてみてトラブルがあったり、サービスに不満があったりした時には、利用者の声を運営に伝えることができるのです。

神奈川・埼玉・千葉のサービス提供エリアを拡大

現在、「CrowdCare」のサービスエリアは首都圏が中心となっていますが、2018年9月には、そのエリアを拡大。各地域で働ける身体介護・生活援助ヘルパーの増員に伴い、東京近郊だけでなく、神奈川県・埼玉県・千葉県において、サービス提供地域を広げると発表されました。今後も、要望が多い地域から順次拡大していくとしており、更なるサービスエリアの拡大が見込まれています

「CrowdCare」では、サービス提供者は家事手伝いや生活支援など仕事内容を選ぶことができるため、内容によっては介護職の資格がなくても働くことが可能です。その為、幅広い層からの身体介護・生活援助ヘルパーの確保・増員を行っています。今後も継続的にエリア拡大・サービス強化を図るため、各エリアでの身体介護・生活援助ヘルパー人材採用に注力しています。

 

2.高齢化に向けたシェアリングサービス

日本は2010年に超高齢化社会へと突入し、今後も高齢者率は高くなると予測されています。高齢化に向けたシェアリングサービスは増加の一途を辿っており、近年では介護サービスだけでなく、医療分野においても様々なシェアリングサービスが広がりを見せています。

また、高齢者に向けたシェアリングサービスで注目されているのが、自動車のシェアリングサービスです。近年、高齢者ドライバーによる事故が多く報道されていますが、内閣府の発表では、平成28年末の運転免許保有者数は約8,221万人で、27年末に比べ約6万人増加しました。このうち、75歳以上の免許保有者数は約513万人であり、今後も増加すると推計されています。

自動車業界では、すでに一部のクルマで高速道路などでの自動運転が始まっていますが、来年以降も高いレベルでの自動運転車が登場する見込みで、2025年には、完全自動運転も見えてきたと言われています。

関連記事:

医療・介護にまつわるシェアリングエコノミー事例~超高齢化社会を救う新しい医療サービス~

 

3.まとめ

数々のシェアリングサービスのように、多くのユーザーの細かいニーズに応えつつ、リソースを提供するヘルパーに対してもより良い労働環境とすべくWin-Winの関係を目指している「CrowdCare」。

介護保険のくくりでは対応しきれなかった、個人の生活に沿ったきめ細やかなサービスを広く提供していくことで、より多くの人が日々の生活を快適に過ごせるようになるかもしれません。

Pocket