Pocket

「シェアリングエコノミー」が今、地方で注目されているのをご存知ですか?

人や物の溢れる都会と違い、人口減少や高齢化、過疎化などの社会問題を抱えている地方。今、個人の利便のためだけではなく、地方のもつ課題解決のためにシェアリングエコノミーが活用され始めています。さらに、「シェアリングエコノミー推進」が「日本再興戦略2016」に盛り込まれるなど、国からの注目も高まっています。

そこで今回は、シェアリングエコノミーを具体的に地方活性化・地方創生にどう生かしているのか?を事例とともにご紹介します。

※編集部注:

2017年5月9日に加筆修正しました。

目次

  1. 地方創生の起爆剤となるシェアリングエコノミー
  2. シェアリングエコノミーの積極的な活用を目指すシェアリングシティ
  3. シェアリングエコノミー×地方創生の取り組み事例
  4. まとめ

地方活性の起爆剤となるシェアリングエコノミー

そもそも、なぜシェアリングエコノミーが地方で注目されているのでしょうか。それには、構造的な課題があります。

少子高齢化や過疎化など多岐にわたる課題を持つ地方の自治体は、予算面、人員面ですべての課題を公共サービスで解決していくのは難しいとされています。

そこで現状の公共サービスの代わりに、地域の住民の生活を便利で豊かなものにしていく方法として注目されているのが、すでに地域の中にある遊休資産の効率的な活用、つまり「シェアリングエコノミー」です。

シェアを活用したサービスが地域のインフラになれば、国や自治体の支援がなくても、地域社会の中で住民の抱える生活の課題を解決でき、費用や予算の問題を回避できます。

また、地域の人々のインフラになるようなサービスはある程度の事業規模が見込めるにもかかわらず、生活習慣に根ざした地域の中で完結することも多いため、そうではないネット関連のサービスと比較して日常生活に馴染みやすいとされています。一般消費者の感覚でも拒絶されにくく、テクノロジーの活用が進みにくいイメージのある地方でも受け入れられる可能性が高いことも、シェアリングエコノミーが注目される理由です。

地方でシェアリングエコノミーサービスが期待される分野は、防災や移動手段、子育て、観光、雇用、空き家問題、起業など多岐にわたります。

さまざまな課題を抱える日本において、効率的に遊休資産を活用できるシェアリングエコノミーは、人手や予算がなくても、生活を豊かにするヒントになります。

このように地方の利便性を向上させることは魅力のアップにもつながり、地方を創生させる重要な要素となっています。

 

シェアリングエコノミーの積極的な活用を目指すシェアリングシティ

シェアリングシティとは

シェアリングシティとは、地域が抱える問題をシェアリングエコノミーの活用によって解決をしていく自治体のことを指します。地域が抱える問題は、少子高齢化や空き家の増加、子どもを育てる環境の不足など様々です。自治体は、シェアリングエコノミー協会が定めたシェアリングエコノミーサービスの中から、2つ以上のサービスと提携し、活動に取り組むと「シェアリングシティ宣言」できます。

シェアリングシティ宣言をしている自治体を簡単にご紹介します。

シェアリングシティ宣言をしている自治体

・長崎県島原市

島原市は「観光を手入れする」というキーワードをもとに、新サービスを生み出しています。島原城の天守閣の活用や、市民がつくる体験型ツアーの提供など、新しいサービスで観光のあり方を模索しています。

 ・佐賀県多久市

多久市は主に「インターネット」を駆使した活動が中心です。働きたくても働けない人のために「クラウドワークス」と提携し、在宅ワークの提供に力を入れています。駅前に「ワーキングサポートセンター」としての専用スペースを設けました。

 ・静岡県浜松市

12の市町村の合併により様々な問題を抱える浜松市ですが、シェアリングエコノミーを積極的に活用し、問題解決に取り組んでいます。中山間地域の活性化に対しては体験型旅行の発信、余っている公共施設に対しては「スペースマーケット」と提携し、スペースニーズのマッチングを進めています。

・千葉県千葉市

千葉市はICT(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)の活用でマッチングに取り組んでいます。公共インフラの不具合に対しては、市民のスマートフォンを利用して対応が可能にする取り組みを行い、市民の「目」と「チカラ」を市のマネジメントに活用しています。

 ・秋田県湯沢市

湯沢市は株式会社AsMamaと提携することで「子育てシェアリング」を実施しています。ママ友同士の交流会を開催する、子育てシェアに関する講演会を開催するなどをして、子育ての悩みを抱える女性たちの手助けに力を入れています。

 ・海外都市

このように日本の様々な自治体がシェアリングシティ宣言をしていますが、韓国のソウルやオランダのアムステルダム、サンフランシスコ、ヘルシンキなど、海外でも宣言を始める都市が増えてきています。ヘルシンキは交通の状況を可視化し、利用者のニーズとのマッチングを行なっています。

 

シェアリングエコノミー×地方創生の取り組み事例

image01

シェアリングシティ宣言をした都市を中心に、シェアリングエコノミーを地域で活用する取り組みが増加しています。以下で具体的な取り組み事例を、シェアするもののジャンル別にご紹介します。

空き家や観光資源を利用した「場所・スペース」の共有

スペースシェアとは、株式会社「スペースマーケット」などが提供するサービスです。「MICE」に活用できるスペースを貸し借りすることができるサービスですが、「空き家」や「空き駐車場」などが提供できるスペースです。空きスペースの利用により、地域の活性化、利益を生み出すことが期待されています。

空き家は、少子高齢化、過疎化が進む地方でも社会問題の1つ。その空き家の新しい活用方法が注目されています。

・秋田県:シェアヴィレッジ

秋田県で始まった「シェアヴィレッジ」という企画は、消滅の危機にある古民家を村に見立て、全国から年貢と呼ばれる年会費をおさめる村人つのり、古民家を再生していくプロジェクト。田舎という存在から遠ざかった都市の人々にその魅力がささり、すでに900人以上が村人として登録をしているそうです。また秋田以外にも香川などの村づくりを進めています。
こうした地方の特色を生かした空き家の活用は、「新しい体験」を求める消費者の心をつかみ、その地方に行く理由の1つになります。ひとつの空き家を多くの人でシェアしながら守っていく、新しい取り組みです。

・千葉市、浜松市:公共施設のレンタル利用

千葉市と浜松市は、公共施設をレンタル施設として利用しスペースシェアを行なっています。例えば千葉市ですと、モノレールの車両をバーティー会場として貸し出したり、幕張メッセも施設として貸し出しを行なっています。浜松市は廃校やキャンプ、駅などを貸しスペースとして提供しています。

観光を振興する「乗り物・移動」の共有

これまでは個人で所有するものだと思われていた自動車などの「乗り物」の分野でも、シェアの動きが進んでいます。登録をした会員同士で自動車を共同使用するカーシェアリングは、2014年時点で登録者数は45万人を超え、2010年からの5年間で30倍ちかく伸びるなど都市部を中心に浸透をしています。

地方の場合は、利用者が少ないために公共交通機関の整備が不十分なことが課題になっていることが多く、この問題を解決するためにシェアリングエコノミーの活用が期待されています。

・京都府京丹後市:ささえ合い交通

京都府京丹後市丹後町では、個人が提供する「自家用タクシー」が移動の救世主になっています。「ささえ合い交通」と名付けられたその制度は、住民ドライバーが自家用車で、利用者を市内の目的地に運ぶという取り組み内容です。利用者はドライバーをスマートフォンで呼び出すことができます。2008年にタクシー事業者が撤退してしまった上、高齢化が進む丹後町では、支え合い交通が重要なインフラの一つになりつつあります。

また同じ京丹後市の観光地「琴引浜」は別の問題を抱えています。鳴き砂が有名な「琴引浜」は、バスは1時間に1本程度でバス停も遠く、観光客はアクセスしにくいのが現状です。この移動の問題を車のシェアで解消できないかと、京丹後市は考えています。

有名な観光地という魅力的な場所はあるのに、交通手段が少ない地方にとって、乗り物のシェアは大きな解決策の1つです。

雇用を創出する「人・スキル・労働力」の共有

地方でよく言われる「働きたくても、仕事がない」という言葉。仕事さえあれば、もっと地方に住みたいという方も都市部にはたくさんいます。この問題の解決に貢献しているのが、人材のスキルをシェアするサービスです。

このジャンルに属する代表的な仕組みがクラウドソーシングです。クラウドソーシングは、特定のスキルを持っていても活かす場所のない人材と、スキルを使いたい企業をインターネットを通して直接マッチングするサービスです。

実際、日本最大級のクラウドソーシングサービスである「クラウドワークス」では、仕事の約5割が東京から発注され、約9割が東京以外で受注されているそう。つまり、東京で生まれた仕事が地方の労働者によってさばかれているのです。

こういった仕事が増えれば、働く場所や時間にとらわれない働き方ができる人も増えます。その結果、都市部以外に住むという選択肢を選ぶ人も出てくることでしょう。

・佐賀県多久市:多久市ローカルシェアリングセンター

多久市のローカルシェアリングセンターでは、自宅でインターネットを用いることで仕事ができる「クラウドソーシング」のサポートを行なっています。子育てのため外に働きに出ることができない主婦のために仕事を斡旋したり、定期的に研究生を募集し、クラウドソーシングのレッスンを開催しています。働きにでることができない方々に対してのサポートを積極的に行なっている自治体です。

・秋田県湯沢市:子育てシェアリング事業

湯沢市は子育てシェアリング事業の一環として、株式会社AsMama(アズママ)と提携して様々な活動を行なっています。「子育てに優しい街」というイメージを目指すため、ママ友同士の交流会の開催、子育て相談会の実施、サポーターによる子ども預かりなどのサービスなどがあります。

・長崎県島原市:持続可能性の高い観光資源作り

島原市は「TABICA」と提携し、持続可能性の高い観光資源作りを目指しています。「江戸時代にタイムスリップできる旅」や「流しそうめんが体験できるツアー」など、地域の暮らしに密着した体験型のツアーなどを提供することで、地域活性化に繋げることが目的です。

 

まとめ

地方がもつ幅広い課題をクリティカルに解決できるシェアリングエコノミー。その活用には法規制などまだまだ課題も多く、尻込みをしてしまう自治体も多そうです。また、地方の抱える課題はそれぞれ異なり、その解決方法もひとまとめにはできません。

しかし、今後の少子高齢化、過疎化など地方が抱える課題の解決のためには、シェアリングエコノミーへの対応は必須。地方は、自分たちの持っている課題を明らかにし、遊休資産で解決できないか?どのようなシェアリングサービスが合うのか?の見極めが重要になりそうです。

Pocket