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米シリコンバレー発祥のシェアリングエコノミーは2013年で約150億ドル、2025年には約3,350億ドルの市場規模が見込まれる新しい経済の仕組みで、今や世界中に拡大しています。

その流れを受けて、世界ではシェアリングシティを宣言する都市が増えています。シェアリングシティとは、都市政策としてシェアリングエコノミーを社会に取り入れ、生活を豊かにしていこうという構想です。

今後ますます生活に浸透していくだろうシェアリングエコノミーに行政はどのようにかかわっていくべきか、世界のシェアリングシティの動向と日本での可能性を探ります。

 

世界の「シェアリングシティ」最先端都市の実態とは? 日本での可能性に迫る! – Share! Share! Share! にも詳細がまとめられています。

目次

  1. 広がり続ける世界のシェアリングエコノミー
  2. 最先端を行く「シェアリングシティ」の実態
  3. 「シェアリングシティ」にみる日本の可能性
  4. まとめ

広がり続ける世界のシェアリングエコノミー

今世界に拡大しているシェアリングエコノミーの旗手は、サンフランシスコで2008年に始まったAirbnbです。空き部屋や空き物件を、宿泊先を探している人に貸し出しできるWeb上のプラットフォームで、すでに世界191ヶ国以上登録物件は200万件に広がっています。

Airbnbに次いでシェアリングエコノミーを牽引しているサービスは、ライドシェアで知られるUberです。Uberは、スマートフォンのアプリを利用して、車で移動したい人とドライバーをつなぐプラットフォーム。タクシードライバーはもちろん、一般の運転免許でもドライバーとして登録できます。現在世界68カ国、400都市で利用されています。

AirbnbやUberに代表されるシェアリングエコノミーは、ITの進歩によって遊休資産を活用できるようになったことなどを背景に世界に拡大しています。しかしながら既存サービス側の市場参入への反発や、法整備が追いついていないなど、さらなる普及にはまだ問題も多くあります。

最先端を行く「シェアリングシティ」の実態

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トップダウン型政策「シェアリングシティ・ソウル」

韓国の首都ソウルは人口1,000万人を超える大都市で、その人口密度は東京以上。全人口の20%がソウルに集中していて、過密度は年々深刻化しています。

リーマンショック以降税収が減る中、交通、環境などの都市問題に何らかの対策を講じる必要に迫られていたソウルは、2012年に「シェアリングシティ・ソウル推進計画」を発足し、「ソウル特別市共有促進条例」を制定しました。

これはシェアリングエコノミーを促進する基盤を整え、民間の企業や団体の活動を支援するための条例です。つまりシェアリングシティ・ソウルは、行政主導型で民間がシェアリングエコノミーを開拓・実施し、行政はその活動を促進する基盤を整える・支援するという都市政策なのです。

ソウルはシェアリングエコノミーを新たなインフラとして構築する意義として、遊休資産の活用、新たな雇用と付加価値の創出、コミュニティの再生、過剰消費による環境破壊の防止を挙げています。

具体的にシェアリングエコノミーで同市の支援を受けている事業者として挙げられるのは、カーシェアリングの「ソーカー(socar)」や「グリーンカー(green car)」です。カーシェアリングは韓国でも最も普及しています。また民泊事業では「ビーアンドビーヒーロー(bnbhero)」、「コザザ(Kozaza)」、子ども用品のシェアプラットフォーム「キップル(kiple)」や食事のシェアプラットフォーム「チッパブ(Zipbob)」など、サービスのジャンルはさまざまです。

またソウル恩平区の「恩平物品共有センター」では、会員が地域の仮想通貨を介してモノと労力をシェアできる取り組みが行われているほか、クリエイティブ・コモンズ・コリア(CC Korea)はシェアリングエコノミー関連のニュースやサービスの情報ポータルサイトとして、「ソウルシェアハブ(Share hub)」を運営しています。

アムステルダムの「シェアリングシティ・プロジェクト」

2008年から、IT技術を取り入れて生活インフラを効率化する「スマート化」に取り組んできたアムステルダム。民間団体「ShareNL」と「Amsterdam Economic Board(アムステルダム経済委員会)」が行政に働きかけ、2015年には「アムステルダム・シェアリングシティ」宣言が行われました。

具体的なサービスを見てみましょう。ShareNLとアムステルダム・シェアリングシティ・プロジェクトはP2Pでモノをシェアする「Peerby」運営しています。そのほかにコーワーキングスペースのプラットフォーム「Seats2meet」、P2Pの自転車配達サービス「Tring Tring」など、オランダ発企業のシェアリングエコノミーも定着しています。

ShareNLはアムステルダムだけでなく、ハーグやロッテルダムなどオランダ国内都市やスキポール空港などとの連携を進め、シェアリングエコノミーの社会浸透と拡大に努めています。そのほかEUの間でも、ミラノを初め欧州の主要都市のシェアリングエコノミーを介した交流が始まっています。
その一方アムステルダムではAirbnbと独自の協定を結び、宿泊税を徴収して既存のサービスとの均衡を図ったり、白タクサービスであるUberPopが禁止されたりしています。

「シェアリングシティ」にみる日本の可能性

シェアリングエコノミー先進国にはまだ及ばないと言われる日本のシェアリングエコノミー市場ですが、市場規模は順調に拡大しており、2015年は事業者売り上げベースで285億円、2020年には600億円に達すると予想されています。

東京都の大田区で民泊を可能にする条例が施行されたり、規制緩和が行われる特区が制定されたりなど、日本でもシェアリングエコノミー導入が徐々に進んでおり、シェアリングシティが誕生する可能性はあります。しかし、福岡県で行われたUberXの実施テストに行政指導があったことからも、一部のサービスは法規制のため現状のままでは導入が困難です。

問題は法規制だけではありません。日本でまだサービスが導入されていないにもかかわらず、シェアリングエコノミーと競合する既存業界から大きな反発があるなど、先行している海外事例と比較して懸念が大きいのも事実です。

利用者ついても、シェアリングエコノミーに興味がある層は存在するものの、個人間のやりとりが大きな部分を占めるシェアリングエコノミーサービスでトラブルがあったときに心配という意見や、インターネット上の口コミ評価が信頼を担保するという構造自体に抵抗があるという人は少なくなくありません。企業が提供する従来型のサービスと同等の信頼性や安全性を獲得できるように、サービス提供側がさらに努力しなければならないでしょう。

まとめ

シェアリングエコノミーを広めるには、各国の風土や環境にあった形に工夫していくことが必要です。IT技術を取り入れた新しい取り組みが普及するには、試行錯誤が求められるでしょう。しかし互いに助け合う、余剰を分かち合うという行為は、人間が持っている自然な欲求でもあります。

もしも将来、シェアリングエコノミーが社会全体にとって健全な形で利用できるようになり、多数の市民に受け入れられるようになれば、企業が従業員を通してサービスを提供するという既存の仕組みが変化するのかもしれません。

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