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大手企業のシェアリングエコノミーへの参入が盛り上がっています。その背景には、企業と顧客双方にメリットをもたらすということが考えられます。大手企業が参入したシェアリングエコノミーの具体的事例や、スキルシェアリングについてご紹介します。

目次

  1. IKEAによるタスクラビット買収について
    • タスクラビットとは
    • 買収の経緯
    • IKEAがスキルシェアに参入する理由
  2. 企業にも広がるシェリングエコノミーへの参入
    • シェアリングエコノミーに参入する企業
    • 企業の新規参入時に必要な体制とは
  3. 拡大するスキルシェアサービス
    • スキルシェアとは
    • 具体的なサービスについて
  4. まとめ

1.IKEAによるタスクラビット買収について

タスクラビットとは

スウェーデン発で巨大な店舗と展示場を持つ大手家具メーカーのIKEAは、2017年9月に家事代行サービス「TaskRabbit(タスクラビット)」を子会社化することを発表しました。

TaskRabbit(タスクラビット)」とは、2008年にアメリカのサンフランシスコから登場した家事代行サービスで、依頼者とタスカーと呼ばれる空き時間やスキルを使って収入を得たい個人をつなぐCtoCマッチングプラットフォームです。家事、引っ越し、買い物、レストランの順番待ち、秘書業務、ベビーシッター、ペットシッターなどの依頼に利用されています。これは個人のリソースを生かしたシェアリングエコノミーのプラットフォームの先駆けともいえるサービスです。

買収の経緯

タスクラビットと同時期に事業を開始したAirbnbやUberは、急成長し各国で展開していましたが、AirbnbやUberと比べると、タスクラビットは影を潜め、経営不振という噂もささやかれていました。しかし、IKEAに買収されることが発表され、IKEAとタスクラビットの相乗効果が期待されています。

IKEAではすでに2016年11月にタスクラビットによる家具の組み立てサポートサービスを開始しており、IKEAの家具の運搬や組み立てをしてほしいという個人と、タスカーをマッチングしていました。タスクラビットの業務の中で大きな割合を占めているのが、家具の配送と組み立てです。IKEAで家具を購入した顧客が、家まで運ぶのが大変だったり、組み立てることが難しいという場合にタスクラビットを使って運搬や組み立てをタスカーに依頼します。今回の買収によってタスクラビットの知名度が上がり、IKEAにとってもより多くの顧客がサービスを利用するきっかけとなるという好循環が生まれるでしょう。

IKEAがスキルシェアに参入する理由

IKEAがタスクラビットを買収したことで、IKEAの商品を使う消費者だけでなく、IKEAを利用して収入を得るタスカーも増え、タスクラビットがシェアリングエコノミー市場で一層活躍することが期待されます。

IKEAは組み立て前の商品を販売、顧客自身が運搬することで、倉庫費用や運搬費用、人件費を削減し、リーズナブルな家具を販売することに成功してきました。しかし一方で、IKEAの商品は好きだけれど、運んだり組み立てたりするのが面倒というデメリットもあります。そうした課題がタスクラビットを使って解決できるようになったのです。さらに、家が遠くて買えなかった、体力や技術がなくて諦めていた人たちを再度IKEAに集客することも可能になりました。タスカーは収入を増やすことができるとともに、IKEAも商品をより幅広い層に販売することが可能となり、顧客も商品の運搬や組み立ての心配をすることなく購入できるなど、それぞれの立場にメリットをもたらします。

 

2.企業にも広がるシェリングエコノミーへの参入 

日本の企業もそれぞれの強みを生かして、シェアリングエコノミーに参画しています。誰もが知るような大手企業も参入しており、シェアリングエコノミーへの期待と注目度の高さがうかがえます。それでは具体的事例を見てみましょう。

シェアリングエコノミーに参入する企業

食品や献立キットの販売・配送を行うオイシックスは、栄養士と主婦のマッチング、料理代行サービスを提供する株式会社ふらりーとを完全子会社化しました。オイシックスの販売網とふらりーとのプラットフォームを活用し、主婦などの空き時間を活用した家庭料理のシェアリングサービスを提供する予定です。

個人間で車を貸し借りできるプラットフォームの「Anyca(エニカ)」は、DeNAにより開発されたサービスです。車の所有者が料金を決めることができ、保険会社との提携をして保険にも加入しています。車の所有者である貸し手は、車を使っていない昼間や深夜の時間帯、長期不在で車を使わない場合に自家用車を貸し出して収入を得ることができます。

ソフトバンクは自転車シェアリングシステム「HELLO CYCLING」を提供しています。各地域の自転車シェアリングサービスの事業社と提携し、「HELLO CYCLING」を通してスマートフォンやパソコンから簡単に自転車をレンタルすることができます。

楽天は楽天エナジーで電力のシェアリングエコノミーに取り組んでいます。ベースの電力は地域の電力会社が受け持ち、ピークになる日中の変動部分は新規参入した新電力会社が受け持つことで、電力の供給をシェアして、市場の活発化を狙っています。電力資源の最大有効活用することで、環境にも配慮したサービスとなっています。

このほかにもさまざまな企業がシェアリングエコノミーに参入しています。詳細は以下の記事も参照してください。

関連記事:環境に優しく観光促進。自転車(サイクル)シェアリングの市場動向まとめ

関連記事:シェアリングエコノミーに新たな風 リクルートが新サービスで駐車場シェアへ参入

企業の新規参入時に必要な体制とは

シェアリングエコノミーは、業務のプロフェッショルではない個人間でのやり取りも多くなり、様々なトラブルが予想されます。オンライン上での金銭授受や、個人宅や個人の所有物を使用することによる個人情報の漏洩、プライバシーの管理、適正なクオリティと価格のバランスのとり方など、資格がなかったりや専業者ではない個人が参画するためサービスのプラットフォーマーにはさまざまな配慮が求められます。実際に企業が参入する上で必要な体制について、プラットフォーマーがユーザーの安全を確保するために必要なガイドラインも策定されています。

これについて詳しくは、以下の記事もご覧ください。

関連記事:大手企業のシェアリングエコノミー事業運営に必要な体制は? 関連サポートサービスまとめ

 

3.拡大するスキルシェアサービス

自動車や自転車などモノのシェアだけでなく、個人のスキルを提供するスキルシェアサービスも盛り上がりを見せています。主婦や会社員が自分のスキルを活かして隙間時間で気軽に収入を得られるため、さまざまな人がスキルを提供するようになっています。

スキルシェアとは

スキルシェアとは、個人の持つ時間やスキルを提供し、他の個人や企業から対価を得ることができるサービスです。これまではクラウドソーシングを通したライターなどの職種が多くみられましたが、家事が得意な主婦が空き時間を使って家事代行をしたり、週末や夜間に時間がある会社員や学生が引っ越し手伝いや家具の組み立てをしたり、エンジニアやデザイナーが空き時間で業務を請け負うなど、あらゆるスキルが提供されるようになってきています。これを利用する企業も増えており、オンライン秘書やデザインなどの業務をアウトソースすることで社員の雑務を減らし、労働時間の削減を目指しています。

具体的なサービスについて

https://casy.co.jp/

家事代行サービス「CaSy(カジー)

家事が得意な主婦や、空き時間を有効活用したい家事のスキルがある人に家事を発注できるプラットフォームです。一人暮らしや共働き、高齢者などの世帯が、日常の家事代行を定期的に依頼することができます。

https://nutte.jp/

縫製技術のスキルシェア「nutte

着られなくなった衣類や捨てられない着物をリメイクしたい、こんなデザインの服が欲しい、という要望を持つユーザーと、衣類を修正、製作する職人とをマッチングするプラットフォームです。縫う技術を持つ職人に個人のユーザーが仕事を発注できます。

https://mychef.jp/

シェフを貸し切れる「マイシェフ

調理技術を持つシェフが、自宅や会場に出張し調理するサービスです。パーティーやママ会、懇親会などに利用され、ケータリングよりもバラエティが豊富で、できたての料理を食べられることがメリットです。調理技術がある個人や隙間時間を活用したい料理人が登録し、プロの食事を家庭で楽しむことができます。

このほかにもスキルシェアサービスはさまざまなものがあります。詳しくは以下の記事も参照してください。

関連記事:労働力をシェアする時代へ クラウドソーシングが注目される理由と2大プラットフォームの特徴

関連記事:流行の洋服やコーディネートもシェアする時代へ。ファッションにおけるシェアリングエコノミーの最新事情

 

4.まとめ

IKEAのタスクラビット買収に見られるように、大手企業が参入することで認知が広がり市場が活発化しているシェアリングサービスは、企業やユーザーが増えれば増えるほど、シェアされるスキル、時間、資産も増えます。提供者や利用者が増えることで、さらに経済循環が活発化するため、今後も大きく市場が拡大されることでしょう。

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