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中南米のシェアリングエコノミーが盛り上がりを見せています。民泊や自転車シェア、ライドシェアなどが近年急速に普及し、旅行者はもちろん地元の住民たちも便利に活用しているようです。その影響は経済やライフスタイル、環境問題にまで及び、自治体や政府も注目しています。その背景にはどのような事情があるのでしょうか。ここでは中南米のシェアリングエコノミーについて、メキシコシティなどにおける具体的な事例とともに解説していきます。

目次

  1. 中南米における拡大の理由
  2. メキシコシティにおけるシェアリングエコノミー
  3. その他の地域におけるシェアリングエコノミー
    • キューバ
    • ブラジル
  4. まとめ

1.中南米における拡大の理由

世界的に市場が拡大しているシェアリングエコノミーですが、中南米でもその例に漏れず、大きな広がりを見せています。中南米では近年、スマートフォンが急速に普及しており、それがシェアリングエコノミーの活性化を後押ししています。GSMA(携帯通信事業者団体)によると、中南米・カリブ地域での携帯電話普及率は約 65%(4 億 1400万人)と高いものになっており、2020 年には78%まで増加する見込みです。このように普及率が上昇した背景には端末の低価格化や通信エリアの拡大などがあり、モバイルサービスの成長は中南米の経済に重要な影響を及ぼしています。

また、フィンテックの利用も拡大しています。ベネズエラのようにハイパーインフレに見舞われている国では、インフレ対策としてビットコインなどの仮想通貨へ資産を移す国民が増加。また、メキシコでは米国に住む家族からの送金に手数料や税金が課されるため、送金手段として仮想通貨がますます利用されると見られています。このことから、近年メキシコやブラジルでフィンテック関連のスタートアップ企業が増加しています。シェアリングエコノミーでは今後、ビットコインを決済に導入することも考えられ、さらに成長していく下地があると言ってよいでしょう。

2.メキシコシティにおけるシェアリングエコノミー

2016年に約100万人が民泊を利用したといわれるメキシコシティでは、民泊が自治体の税収確保の手段としても着目され、Airbnbを介して宿泊をした場合に宿泊費の3%相当分を徴税することを発表しました。

Airbnbが発表した「2016年に訪れるべき16の地域」では10位にメキシコシティの伝統的な街ローマ・スールがランクインしたため、今後も民泊利用が増えていくと見られています。

また、メキシコシティでは高い肥満率が深刻となっています。そこで、国民のダイエット促進を目的にシェアサイクルサービス「ECOBICI(エコビシ)」が政府主導で導入されました。市内55の地域に480のサイクルスタンドがあり、6800台の自転車が用意されています。年間416ペソで1回につき45分以内であれば追加料金なしで乗り放題という手頃さと、非接触型の利用カードが使いやすく、旅行者はもちろん市民の足として好評です。自動車の渋滞による大気汚染の改善にも期待されています。

地方自治体でのシェアリングエコノミーの普及や、その他の海外事例については以下の記事も参考にしてください。

参考記事:

地方自治体にも広がる、シェアリングエコノミー活用の動きと導入事例環境に優しく観光促進。自転車(サイクル)シェアリングの市場動向まとめ

 

3.その他の地域におけるシェアリングエコノミー

キューバ

キューバでは、2015年のアメリカとの国交回復に伴い、観光旅行先として人気が出ています。旅行者数は2017年11月時点で前年同期比20%増の425万人となっていて、今後も順調に増加する見通しです。急激に増えた観光客に対応するため、政府としても宿泊施設の拡充を進めており、グローバルなホテルチェーンも注目しています。そんな中、Airbnbはいち早くキューバでのサービスを開始し、宿泊需要を民泊という形で取り込みました。もともとキューバでは民家へのホームステイ文化があったことと、米国の若者を中心とした民泊ブームもあり、Airbnbもスムーズに受け入れられたようです。インターネット接続環境が十分に整っていないなどの課題もありますが、宿泊時に受け取るチップはキューバ国民の重要な現金収入にもなっており、これからも民泊を中心としたシェアリングエコノミーが盛り上がっていきそうです。

ブラジル

2016年にリオ五輪が開催されたブラジルでは、観戦で訪れた旅行者のための宿泊施設不足が懸念されていました。そこで民泊が注目され、Airbnbを五輪の公式宿泊サービスのサプライヤーとして選定。多くの宿泊物件が用意されました。その結果、五輪開催期間中は約8万5000人がAirbnbを活用して同市内に宿泊し、その経済効果は約1億ドルに上ると試算されました。ブラジルでは国内旅行を楽しむ人が多く、五輪終了後も観光旅行で民泊が引き続き利用されています。

また、ブラジルは日本人の駐在員も多数滞在しています。これらの日本人がタクシーで高額な料金を請求されるといったトラブルの防止や安全面を考慮して、日系企業がUberCabifyなどのライドシェアリング業者と法人契約をして利用する場合も多いようです。

 

3.まとめ

中南米全体に拡大しているインターネットやスマートフォン、電子決済システムは、シェアリングエコノミーを盛り上げる起爆剤となっています。経済やライフスタイルにも影響を与えており、その勢いはとどまるところを知りません。AirbnbやUberなどの大手がトップシェアを占めていますが、メキシコシティのように政府主導のシェアリング事業も好調です。フィンテックの発展をきっかけに新たなビジネスが生まれる可能性もあり、これからの動きに注目です。

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