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アメリカやヨーロッパへ旅行してみるとわかるのですが、もはやシェアリングエコノミーは日常の一部となりつつあります。

では、日本はどうでしょう?

2020年の東京オリンピックまでに多くの海外旅行者を受け入れる体制が必要となるため、シェアリングエコノミーを使ったサービスの展開が急務となっています。

今回は、日本国内における旅行者向けのサービスの可能性を探ってみました。

目次

  1. 究極の理想は手ぶら?シェアリングエコノミーを使って旅をしよう
  2. 訪日客向け観光ガイドマッチングサービス「TOMODACHI GUIDE」
  3. 手荷物一時預かり「Tebura」
  4. まとめ

1.究極の理想は手ぶら? シェアリングエコノミーを使って旅をしよう

さまざまなビジネスの分野で新しい価値観を生み出し、次第に浸透しつつあるシェアリングエコノミー。旅行業界にも、シェアリングサービスの波は広がってきています。

身軽な旅を実現しつつ、旅先でのヒトとのふれあいも呼び込んでくれる、新しい旅のスタイルがシェアリングエコノミーによってもたらされています。旅の荷物は少ないほうが何かと自由で快適。究極の理想は「手ぶら」の旅かも知れません。

車での旅行は便利ですが、かえって自由を束縛することもあります。車がなければ、移動中に歩きたくなったら歩き、車で移動したいときはシェアリングアプリで乗せてくれる車とドライバーを探すことも可能です。もし、それがワインのテイスティングの旅でも助手席なら車での移動も全く問題ありません。ドライバーが地元の人なら、とっておきのローカル情報も教えてくれるでしょう。

ペットがいるならシェアリングアプリでペットシッターを探しましょう。旅先での宿泊もシェアリングアプリで探します。ホテルではなく自宅の一室を借りれば、オーナーやその家族とのコミュニケーションが生まれます。旅行の醍醐味のひとつに現地の方々とのふれあいがあります。モノは無くしたり壊れたりしますが、ヒトとの「思い出」は永遠に残ります。

旅先で案内してもらったら、逆に今度は地元に来る観光客をもてなしてみましょう。貸し手は将来の借り手であり、借り手は将来の貸し手になる。サービスの提供者と享受者がフラットになる経済活動。

シェアリングという価値観は、手ぶらで行って手ぶらで帰りつつ、ヒトの輪だけが広がっていくという新しい旅のスタイルを提供する可能性を持っています。では、日本で展開中の旅行に役立つシェアリングサービスを具体的に見てみましょう。

2.訪日客向け観光ガイドマッチングサービス「TOMODACHI GUIDE」

訪日客向け観光ガイドマッチングサービス「TOMODACHI GUIDE」は、ガイドを探している外国人観光客と、ガイドをしたい日本人をマッチングするサービスです。神奈川県鎌倉市に本社を置く株式会社Huber.が提供しています。

キーコンセプトは「友だちをつくることから旅をはじめる」というもの。国際交流としての個人的なマッチングと同時に、自治体、大学、シェアリングエコノミー企業、コンテンツホルダーなどとの連携も深めつつ、地方創生や観光立国への貢献まで、そのビジネスの射程に入っています。単なる営利活動を超えて、社会貢献活動の側面もありそうです。

このサービスの最大の特徴は、金銭の授受ではなく「友人としての信頼関係」が基本になるという点です。一般的な旅行の際に見られる、プロフェッショナルな旅行業者とその顧客という関係では、全てのサービスが換金されることで成立します。そこではドライな関係でモノゴトが進みます。

それに対してTOMODACHI GUIDEでは、商業主義とは異なるレベルでの体験を共有することが基本です。ここではサービスの提供者と享受者の境界があいまいです。サービス提供者にとっては、外国からの観光客と一緒に楽しい思い出を作ることが主眼であり、ガイド料金はその分低く抑えられています。さまざまなガイドプランが掲載されているWebサイトを見ると、かなりの数のプランが無料で提供されていて、収入は主目的ではないことがわかります。

サービスの享受者にとっては、収益性の観点からプロのガイドが扱わないようなニッチな場所を案内してもらえるツアーもあり、選択肢が広がります。何より、ガイド自身がお金のためではなく、楽しんで案内するシステムなので、より個人的で濃密な思い出になる可能性があります。

現在は、渋谷、原宿、秋葉原などの東京都、江ノ島、箱根、鎌倉などの神奈川県、及び京都など地域限定サービスとなっていますが、順次拡大されるようです。

3.手荷物一時預かりサービス「Tebura」

旅行に関するシェアリングサービスでは、外国人旅行者に対して「手ぶら」での旅をサポートしつつ震災支援をする活動が注目されています。

東京都千代田区に本社を持つ株式会社セームページとバングラデシュの法人SamePage Ltd.が提供する「Tebura」です。

このシステムは、日本語を話せない外国人旅行者に対して、手荷物一時預かり所を提供します。預かる場所は、空き店舗や営業時間前の飲食店など、一時的に遊休資産化している場所を有効活用します。Webアプリを使用して事前予約が完結するため、旅行者と預け場所のオーナーとの言語によるコミュニケーションの必要がない点に特徴があります。

預け場所オーナーには、1割の手数料を引かれた後、収益の7割が支払われ、残りの2割は地震被災地への寄付に回されます。荷物を預ける旅行者は手ぶらで観光が楽しめ、預け場所のオーナーには資産活用の機会が提供され、その経済活動に震災支援という社会貢献活動がセットになったソーシャル・ビジネス・モデルによるシェアリングサービスです。

具体的な支援としては、2016年4月に熊本県を中心に発生した熊本地震の被災者向けの活動があります。無料宿泊場所やシャワー貸出場所について専用Webサイトを開設し、情報を提供しています。

4.まとめ

アメリカではライドシェアやクラウドファンディングといったシェアリングが一般化しており、市場規模の急拡大が見込まれています。

日本においても拡大が期待されていますが、法的な規制の問題もあり、黎明期の段階に留まっています。シェアリングエコノミーが一般化すれば、消費者同士が直接連携してゆくエンドユーザーレベルでの取引が拡大し、従来のように企業を介した商品やサービスを消費者が享受するという経済構造が大変革していく可能性があります。

今回は、海外からの旅行者向けのサービスの紹介がメインとなりましたが、国内旅行者向けのシェアリングサービスも次々に生まれてきています。

あと数年もしたら、シェアリングエコノミーサービスを活用してより快適に、リーズナブルに、思い出に残る旅行できる時代が来るかもしれませんね。

 

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