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シェアリングエコノミー協会が6月、シェアリングエコノミーの認証制度を始めました。なぜ、このタイミングで認証制度を始めたのか。発足の背景から実際の申請方法まで、まとめました。

目次

  1. 「シェアリングエコノミー認証制度」とは
  2. 具体的な認定基準
  3. 申請方法
  4. 認証されるメリット
  5. まとめ

1. 「シェアリングエコノミー認証制度」とは

「シェアリングエコノミー認証制度」とは何か、その目的とは

シェアリングエコノミー認証制度とは、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室がまとめたシェア リングエコノミー検討会議中間報告書を元に作られた、シェアリングエコノミー業界の基準となるルールとそれに適応するサービスであることを証明する仕組みです。2017年6月にシェアリングエコノミー協会が制定しました。

シェアリングエコノミー事業者がこの制度を導入し、認証マークを獲得することによって、プラットフォームの安全性や信頼性の裏付けとなることが期待されています。

従来のサービスとは異なる形態をとるシェアリングエコノミーの仕組みに抵抗を感じている層が、シェアリングエコノミーを利用するきっかけになれば、認証制度の発足は市場の活性化や拡大にも繋がっていくでしょう。

 

シェアリングエコノミー認証制度 発足の背景

従来、世にあるサービスの多くは企業が一般消費者に提供するため、一定の品質や安全性は企業によって担保されていると考えられていました。

しかしながら、シェアリングエコノミーにおけるCtoCサービスでは、事業者はインターネット上のマッチングプラットフォームを提供するのみで、個別のサービスを提供するのは一般の人々です。そのため、サービスを享受する側にとっては品質の担保・安全管理や補償制度の面でリスクがありました。

また、サービス提供側としても、報酬の未払いのリスクや利用者のマナーの悪さによって甚大な被害を受けた場合に個人で対応せざるを得ないなど、これまでの企業対個人の取引ではあまり見られなかったような問題が発生します。

政府がガイドラインを制定

地方自治体では、少子高齢化による遊休資産の増加やそれらを含む既存資源の活用対策として、シェアリングエコノミーを取り入れ、地域経済を活性化しようという動きが活発化しています。政府も積極的にそれらをサポートする体制を整えています。

具体的な政府の動きとしては、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室において2016年7月からシェアリングエコノミー検討会議が始まっています。シェアリングエコノミーと既存法の不適合から生じるグレーゾーン解消のために特例制度を整備したり、自主的ルールの設置を促進してCtoCサービスの安全性確保に努めるよう業界や事業者に働きかけたりしています。

自主的ルールのガイドラインとして、政府はシェアリングエコノミー検討会議 中間報告書に具体的な項目を示しました。一般的な事項を示した31項目に加え、特に安全性の強化が必要なサービスは追加で8項目、合計39項目が明示されています。

これらの政府報告を受けて、シェアリングエコノミー協会はシェアリングエコノミー認証制度を創設しました。

 

2. 具体的な認定基準 

シェアリングエコノミー検討会議 中間報告書に基づいて、シェアリングエコノミー協会は「シェアリングエコノミー認証制度に認定されるための主要項目」を認証制度基準として公開しています。

認証制度基準には「区分/項目/何を根拠資料に判断するか」が書かれています。承認を得るにはどのように項目を満たし、どのような資料を提出すればいいのかが明確に記されているため、事業者も認証に向けた準備はしやすいでしょう。実際の6つの区分ごとに項目を見ていきましょう。

(ア) 登録事項

連絡手段の確保のための連絡先登録(メールアドレス、電話番号、 SNSアカウント、住所・氏名など)や公的身分証などによる本人確認、サービスを提供するために許可が必要な場合にはその証明書類(例えば空き部屋を貸し出すにあたりに、自治体の承認を得たという証書など)の提出など、利用登録の段階に関する基準です。

(イ) 利用規約等

プラットフォームのユーザーが事前に理解し、守らなくてはいけない利用規約の制定と、ユーザーがそれらを必ず確認するように表示すること、違反があった場合は利用停止、会員 資格の取消しなどの処分があることを明記する義務など、細かく定められています。

(ウ) サービスの誤解を減じる事前措置

提供者と利用者が事前に連絡を取り合える機能の設置、未成年者が利用する場合の保護者のチェック機能、Q&Aなどユーザーがサービスを理解しやすいような工夫を施すこと、虚偽や違法な情報が削除されるようなチェックシステムをサイトに導入することなどが明記されています。

(エ) サービスの事後評

サービスを提供者と利用者が評価し合い、それをほかの利用者が見られるようにする機能を必須で設けることや、評価システムを悪用する者を排除する機能を導入すること、子どもが利用するサービスの場合は保護者に完了通知が届くようにすることなど、ユーザーをマッチングして終わり、となることがないように、事後対応とフィードバックによる品質改善までプラットフォーム上で行われる仕組みを設置しているか確認する区分です。

(オ) 相談窓口及びトラブル防止

ユーザーまたは第3者が問い合わせできる窓口の設置、トラブル発生時に本人同士で解決できない場合は事業者が介入して解決するようにすること、許可証や証明書の確認を促すこと、子どものサービス利用について保護者と提供者が緊急時に連絡が取れるように促すことなど、トラブル対策の基本が定められています。

(カ) 情報セキュリティ

ユーザー情報など重要情報の取り扱いに関する体制の整え方、情報漏えいや盗難に対する備え、アクセス権の管理などが定められ、この区分は複数の書類とヒアリングでのチェックが設けられています。

 

3. 申請方法

シェアリングエコノミー認証制度に申請したい場合、シェアリングエコノミー協会事務局(「info@sharing-economy.jp」宛)にメールでお問い合わせする必要があります。

件名を「シェアリングエコノミー認証制度への申請」とし、指定された事業社名などの情報を本文に記載して送信すると、協会より申請方法の具体的な手続き方法について連絡があります。

詳しくはこちら:https://sharing-economy.jp/activity/trust_apply/

 

今後、認証マーク取得のための支援が充実していくか

シェアリングエコノミー協会は認証制度の一般受付を開始するとともに、認証制度に申請したプラットフォーム運営事業者が認証を取得できるように、サポートする事業者も募集しています。

こういったサポートが充実していくことで、認証マークを獲得する事業者も増えると予想されます。

 

 

4. 認証されるメリット

シェアリングエコノミー認証制度をパスすると「認証ロゴマーク」が付与され、自治体との連携がよりスムーズに行えなえるようになるといわれています。

また今回の承認制度発足に合わせて、損保ジャパン日本興亜は、すでに販売しているシェアリングエコノミー事業者向け保険「オールインワンパッケージ(利用者補償型)」のシェアリングエコノミー認証取得事業者向け商品で、最大60%割引になる商品「オールインワンパッケージ(認証制度対応型)」を発売します。

すでに保険に加入している事業者だけでなく、加入を検討する事業者にとっても、自社サービスの安全性に裏づけが得られ、なおかつ長く払い続ける保険が割引になるというメリットは小さくないはずです。

 

5. まとめ

シェアリングエコノミーへの需要の高まりを受け、日本でも政府・自治体・業界団体の動きが活発化しています。シェアリングエコノミー関連のサービスは着実に人々の生活に浸透してきているようです。

法の整備、安全性の確保など、指摘されることが多い問題を今後どのように解決し、便利で信頼できるサービスとなり発展していけるのか、ますます目が離せない状況が続きます。

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