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諸外国に比べ法規制が厳しく「シェアリングエコノミー後進国」といわれる日本ですが、2018年6月の民泊解禁によってその市場が急激に成長しようとしています。空いているモノや場所や時間を「提供できる人」が「必要とする人」と「共有」するというスタイルは、遊休資産を有効活用でき安価なコストで収益を得られる画期的な方法です。特に中間層などの労働世代にとって最適のサービスであり、また働き方であるといえるかもしれません。働き方改革が推進されるなか、日本でも副業を認める法律などが整えば、シェアリングエコノミーはそれを支える柱となるといっても過言でないでしょう。

シェアリングエコノミーの普及によって日本人の働き方はどう変わるのか、またそれを実現するために解決すべき課題などについて考察します。

目次

  1. シェアリングエコノミーで生まれる仕事について
  2.  正規、非正規雇用はどう変化するか
  3.  シェアリングエコノミー先進国の働き方
    ・アメリカの場合
    ・中国の場合
    ・日本の場合
  4.  まとめ

1.シェアリングエコノミーで生まれる仕事について

2018年6月に民泊解禁し、ようやく遅れを取り戻しつつある日本のシェアリングエコノミー市場ですが、これに伴い日本人の働き方も変わりつつあります。

民泊の個人オーナーのように遊休資産を保有する人だけでなく、個人の時間や知識・労働力などを提供するタイプのシェアリングエコノミーが増えることによって、新しい働き方がどんどん増えてきているのです。例えば、世界的なシェアリングエコノミービジネスとしてUberなど自家用車による配車サービスがありますが、日本では法規制によりライドシェアの普及が阻まれている状態です。

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https://www.uber.com/ja-JP/drive/

そこでUberでは、飲食系宅配サービスとしての事業UberEATSを展開しました。これなら旅客自動車運送事業への許可申請などが不要となるため、年齢や運転免許取得状況などの条件を満たせば、空いた時間を活かして収入を得ることが可能です。育児や介護などで働く時間が限られている人や、高齢により長時間労働が厳しい人などでも、空き時間を利用した働き方のひとつとして選択できるようになります。

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https://www.ubereats.com/

また単発の家事代行サービスやクラウドソージングといった働き方も急速に拡大しています。家事と育児の両方を1人でこなすワンオペ育児に悩む人なども、アプリで簡単に依頼できる家事代行サービスなら試してみようと思うかもしれません。依頼者はしてほしい仕事だけをリーズナブルに発注でき、受注者は空いた時間を活用して収入を得ることができ効率的です。

こうした働き方は本業とは別に副業として行う人が多いですが、日本ではほとんどの企業で副業が禁止されているため、副業解禁などの法律が施行されればさらなる拡大が期待できます。さらに非正規雇用者やフリーランスでも健康保険や年金などの社会制度が保障されれば、それを本業とし生計を立てる人も大幅に増えるでしょう。スキルシェアについては関連記事をご参照ください。

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2.正規、非正規雇用はどう変化するか

働き方改革では雇用形態による賃金格差も課題となっていますが、日本では同一労働同一賃金はもとより、非正規雇用者であっても安定した生活を送れる社会保険や年金などの土壌が整っていません。そのため正規雇用にしがみつくしかない人が多数を占めています。

しかし現代においては、正規雇用だからといって必ずしも安定を得られるわけではありません。実際に不安定でありながらも正規雇用という働き方に縛られず、フリーランスで自分の時間を確保しながら働きたいと考える人は増えており、すでに正規・非正規など関係なく働き始める時代が来ているといえます。

ランサーズ株式会社が実施した「フリーランス実態調査2018年版」によると、日本のフリーランスで働く人口の成長率は過去4年でプラス22.6%、経済規模も20兆円を超える結果となっています。収入の安定や水準などに不安を抱える人が多い反面、自分の能力が活かせることへの充実感、時間や働き方に縛られない自由さなどへの満足度は高めです。

また、すき間時間を利用した副業系のワーカーが4割以上を占めることから、本業を確保したうえで自分のスキルをシェアして収入を得ようと考える人が多いことが分かります。複数の仕事を兼任するパラレルワーカー人口も2017年より5%増となっており、WeWorkなどのような、フリーランスが集えたり企業との接点になったりする場所が注目されていることからも、多様な働き方の可能性は広がりつつあるでしょう。

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https://www.wework.com/ja-JP/

政府が副業を推進しても、副業による過労や労災などの責任所在が不明確になることによって「企業や従業員がデメリットを被る」と懸念されるため、企業側も副業解禁に消極的であることなど問題は山積みです。しかし法規制が変わっていけば、ますます働き方の多様性が増すことは明らかであり、シェアリングエコノミービジネスはその受け皿の最たるものとなるのではないでしょうか。

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3.シェアリングエコノミー先進国の働き方

アメリカの場合

シェアリングエコノミー発祥地であるアメリカでは、2012年から2015年にシェアリングエコノミーで収入を得る労働者が1,030万人に達し、その割合は労働人口の6.5%に当たるといわれています。本業だけで生計を立てるのが難しい労働者が副業とすることが多く、日本では難しいライドシェアも盛んです。しかし、ガソリン代や整備費用などはサービス提供者本人の負担となるため、実際の収益としてはわずかということが多いようです。

サービス提供者と利用者のマッチングプラットフォームである企業が、必要経費負担や健康保険提供などなんらかの形でサービス提供者の保護をするべきという議論も行われており、実際にフリーランサーズ・ユニオンなど、フリーランスの労働者に社会保障や職業訓練の機会などを提供する権利擁護組織も存在しています。

一方で、個人間取引というシェアリングエコノミーの前提を崩さず自由に働くことを重視し、これらの待遇を希望しない人も存在します。いずれにしても、シェアリングエコノミーという画期的な新しい働き方を支えていくためには、これまでの枠組みにとらわれない柔軟性のある規制や保障を整えることが必要だと思われます。

中国の場合

中国でも、シェアリングエコノミービジネスは著しい発展を遂げています。中国国家情報センター発表の「2017年中国シェアリングエコノミー発展報告」によると、シェアリングエコノミービジネスを利活用する人は6億人規模となり、サービス提供者として収入を得る人は6,000万人に達しています

特に盛んなジャンルは配車サービスなどのライドシェアで、中国政府も規定に基づいた配車サービスの合法化を迅速に行いました。自転車シェアにおいても大量に自転車が紛失するなどのトラブルが起きたため、マナーの悪い利用者の情報共有を業者へ指導するなど、政府が積極的に市場の成長を後押ししています。

ただし、中国ではプラットフォームとなる企業が主体となった「BtoC」の形が多く、自転車シェアなどはそれに当たります。配車サービスや調理・宅配サービスなどにおいてはサービス提供者が存在しますが、突然の提携解除や、交通事故による賠償責任を企業側は負わないといったトラブルも多くあり、投資や保証金によるビジネス目的で企業のみが収益を得る仕組みだという批判も多いようです。

しかしスマートフォンアプリによる予約や決済に抵抗がなくQRコードでの簡単な決済基盤が整っていること、高齢者も節約意識が高いという国民性から考えても、中国でのシェアリングエコノミー市場は今後も大きく成長していくと予想されます。

日本の場合

日本でのシェアリングエコノミービジネスは、民泊解禁や、働き方改革でも課題となっている「テレワーク・副業・兼業など柔軟な働き方がしやすい環境整備」の推進によって今後ますますの成長が期待できるでしょう。

ランサーズ株式会社による「フリーランス実態調査2018年版」では、広義のフリーランス人口が国内労働人口の17%となっており、その経済規模は推計20兆円超という結果が出ています。空いた時間を利用してスキルをシェアする働き方や、家や土地など遊休資産を活用して収益を得る方法など、若年層から高齢者層、どの年代も何かしらのシェアリングエコノミービジネスに参加できる可能性があります。

日本人労働者は、時間や勤務地に縛られ、自分や家族との時間が確保できない人も多いです。それなのに労働生産性は主要先進国7ヵ国中でも1970年以降最下位が続いており、医療や年金などの社会保障も低水準です。終身雇用も危ぶまれ、企業に勤めていても安定を得られない昨今、働き方改革により柔軟に労働できる環境が整備されれば、副業としてシェアリングエコノミーで収入を得ようとする人も増えると予想されます。

そのためには、企業ではなく国が主体となって健康保険や年金などのセーフティネットの基盤を整え、フリーランスや非正規雇用者でも安心して働ける環境を整備することが大きな課題だといえるでしょう。

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4.まとめ

2018年以降、日本でもさらなる成長が期待されるシェアリングエコノミービジネスですが、提供する側となる機会はあらゆる人にあるといえます。遊休資産の活用はもちろん、個人の知識・技術・時間などをシェアすることなども効率的な働き手としてのニーズが生まれています。働き方改革により労働環境が整備され、雇用形態にとらわれない社会保障が国を中心に構築されれば、もっと個人の能力を活かした多様な働き方の選択肢が増えるでしょう。

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