Pocket

今や世界中に展開し600を超える都市において利用されている配車プラットフォーム「Uber」。アジアにおいてもその勢いはとどまるところを知りません。今回は台湾、中国、香港における展開の道すじを比較するとともに、日本での状況も交えてご紹介します。

目次

  1. 各地で展開するUberのサービス
  2. Uberの日本における広がり
  3. まとめ

1.各地で展開するUberのサービス

Uberは車両の配車から乗車、決済までをスマートフォンで行うことができるライドシェアリングサービスで、より低価格かつ効率的に移動したいユーザーと、空き時間を活用して副収入を得たいドライバーをマッチングするプラットフォームとして、サービス開始以来世界的な広がりを見せています。日本では現在、道路運送法との関係で配車できるのはタクシーのみですが、台湾、香港、中国での展開はどのようになっているのでしょうか。

関連記事:代表的なライドシェアリングサービス「Uber」を徹底解説。使い方やビジネスモデル、業界への影響まで

台湾におけるUber

台湾におけるUberは、「台湾宇博デジタルサービス(数位服務)公司」という現地法人を設立し2013年7月から営業していました。しかし一般の人の自家用車による配車サービスに対するタクシー業界からの反発は根強く、2016年末にはタクシー配車サービス「Uber TAXI」の開始を発表するなど、タクシー業界に歩み寄る姿勢を見せていました。ところが2017年2月に台湾交通部が同社の旅客輸送業を違法と判断し、Uberはそれを受け台湾でのサービスを一時休止すると発表しました。

https://www.taxigo.com.tw/

その後2017年7月12日には別の現地法人によるタクシー配車サービス「TaxiGo」がサービスを開始。当初から既存のタクシー会社18社と提携し、運転手から仲介手数料をとらない方針を打ち出したため、台北市のタクシー運転手の労働組合からも好意的に受け入れられました。タクシー運転手の側からは、月々の登録料等が不要でスマホさえあれば参入できる点、利用者側からは専用アプリをダウンロードすることなくFacebookやLINEを通じて気軽に利用できる点から大いに支持を集め、サービス開始直後の7月時点で1日の配車件数は1,000件を超えています。

一方Uberも、2017年10月よりあらためてタクシー配車サービス「Uber TAXI」の開始を発表しました。タクシー会社2社と提携し台北での展開を予定していますが、「Taxi Go」の後追いのようなかたちとなってしまう感は否めません。

香港におけるUber

香港Uberもまた、既存業界や法律との軋轢にさらされています。2015年の8月に初の摘発が行われ、2017年5月にも香港警察によって21歳から59歳までの21人のドライバーが逮捕されました。同年3月に行われた裁判では、搭乗者傷害保険に加入しないで報酬を受けて客の送迎を行うことが「白タク」行為と見なされ、道路交通条例違反に当たるとの判決で、5人の被告には12カ月の運転免許停止と1万ドルの罰金が命じられました。Uberに反発していたタクシー業界からはこの判決に支持の声も上がっているようです。

2016年3月に大幅な価格改正を行い、既存のタクシーよりも安価となった香港Uberは、同年9月には普通のタクシーを配車する「UberTAXI」とバンを配車する「UberVAN」のサービスを撤退させ、より一般車両による「UberX」と高級路線「UberBLACK」に力を入れています。香港警察の「白タク行為」として違法であるという見解に対し、Uber香港側はあくまでも「相乗り」としていますが、司法判断を契機に今後も摘発が頻繁に行われるのか、動向を見ていく必要がありそうです。

関連記事:【まとめ】ライドシェアリング事業は違法の「白タク行為」にあたるのか?

中国におけるUber

http://www.didichuxing.com/en/aboutus/overview

一方中国では、2016年11月から新法施行により一般車両などを使った配車サービスが合法化されました。

中国には競合するサービス「滴滴出行」が圧倒的なシェアを占めていたため、Uberは業界2位の位置づけでした。「滴滴出行」が中国全土に展開し、車さえあれば登録できるという気軽さでドライバー数と利用者数を伸ばしてきたのに対し、高級路線を狙ったUberはドライバーに課す条件が厳しく、主要都市でしか展開できていないため苦戦していました。そしてついに2016年8月、「滴滴出行」がUberの中国事業買収を発表。これはUberにとって中国事業からの事実上の撤退を意味します。

訪れたことのある人なら納得がいくと思いますが、人口が集中する都市部ではタクシーが非常につかまりにくく、またアメリカ同様国土が広大で、地方では公共交通の普及がまだまだ十分ではないことなどから、個人も参入できるスマホを使った配車サービスというビジネスモデルは大いに歓迎され、さまざまな問題解決にもつながっています。Uberは事実上撤退したものの、ライドシェア自体は今後ますます浸透していく可能性を持っているといえるでしょう。

関連記事:爆発的に成長する中国のシェアリングエコノミー市場!その背景と日本との違い

 

2.Uberの日本における広がり

ビジネスモデルについて

日本で営業許可のない一般車両で報酬を得る配送サービスを行うことは、「白タク行為」として違法とされるため、Uberの最も象徴的なサービス「UberX」は現時点では提供されていません。現在日本で利用できるのは、タクシーやリムジンなど二種免許(商業活動用の自動車免許)を保有する職業ドライバーが運転する車を配車するサービスのみです。

関連記事:代表的なライドシェアリングサービス「Uber」を徹底解説。使い方やビジネスモデル、業界への影響まで

各国との違い

一般車両による配車サービスが摘発を受けながらも、サービス自体は展開を続けている台湾や香港に対し、日本では実証実験レベルに留まっています。

タクシー業界からの非常に強い反発や、安さより安全性をとる国民性、そもそもタクシーの配車やドライバーのマナーに他国よりも困っていない状況など理由はさまざま考えられます。しかし、人口減少により過疎地では鉄道や路線バスの廃線も相次ぎ、また東京都心ではオリンピックに向けて観光客の急速な増加が見込まれる中、新たな交通手段の担い手が望まれています。

 

3.まとめ

都市によって柔軟に内容を変えながら、世界中に展開し続けるUber。既存業界との関係や法的な問題、安全性などをクリアできれば、交通や雇用などさまざまな問題の解決にもつながりそうです。生活者、旅行者いずれにも影響を及ぼすこのサービスが、各国でどのように展開していくのか今後も目が離せません。

 

関連記事

プラットフォームビジネスモデル入門&実践【第1回】〜プロダクトのデザインから関係性のデザインへ〜
Pocket