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シェアリングエコノミーが注目され、様々なシェアサービスが展開されるようになってきましたが、その一つに「カーシェア」があります。まだ日本では少し馴染みが薄いですが、カーシェアはどんどん広がりを見せており、特にその代表格と言える相乗りサービス(ライドシェアサービス)の「Uber」は世界中で急速に浸透しています。

しかし、その成長を妨げているひとつに「法律」の存在があります。日本でも問題となっている、この「カーシェア」と「法律」の関係性についで、現状に迫ります

目次

1.世界中で止まらないシェアによる「脅威」

2.フランスのカーシェアに対する法規制の現状

3.日本のカーシェアに対する法規制の現状

4.まとめ

1.世界中で止まらないシェアによる「脅威」

「ウーバライゼーション」による深刻な影響

City car lights defocused road street at night in rain photo.

そもそも「ウーバライゼーション」とはなにか。ウーバライゼーション(Uberization)という新しい造語は、Uberの登場によりタクシー業界が大きな打撃を受けたように、ビジネスモデルの異なるデジタル企業の参入によって既存の業界が脅かされる状況を指します。別名「Uber症候群」とも呼ばれています。

ライドシェアで有名な「Uber」が元の言葉になっていますが、決してカーシェアリングあるいはライドシェアリングとタクシー業界のみを指す言葉ではありません。

シェアリングエコノミーには様々な領域で広がっています。カーシェア・ライドシェア以外にも、屋内外を問わずスペースのシェアやちょっとしたモノの貸し借り、更には「人手・労力」も対象となり、今では海外だけでなく日本発のシェアリングエコノミーをビジネスモデルとした企業も生まれています。こうした新しい事業が既存業界にとって脅威になるという事例は、今後も多く発生するでしょう。

 

2.フランスのカーシェアに対する法規制の現状

破壊されていくタクシー産業

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日本でもカーシェア・ライドシェアへのタクシー業界の反対は根強く、現行の道路運送法に違反するのでは?という声が上がっていますが、似たような状況はフランスでも起きています。

フランスでは日本未上陸の「Uber POP」というサービス(アメリカでいう「Uber X」に相当し、Uberが提供する中で最も設定価格が安い、一般人が自家用車をハイヤーとして相乗りを提供するサービス)がすでに展開されています。誰でもドライバーになれるこのサービスはタクシー業界から強い反発を受け、大規模な事件にまで発展する事態になっています。

その一つが2016年1月、フランスのタクシー運転手がUber POPのサービス中止を求め暴動とも言える大規模な抗議行動を起こした事件。このデモではおよそ2800人のタクシードライバーが参加し、自動車を横転させ焼くといった過激な行為に発展しています。また、その後も1000人規模のデモを起こし、路上でタイヤを燃やすなどして逮捕者が発生するほど激しく抗議しました。現地のタクシードライバーを代表するRachid Boudjema氏は、Uberのドライバーが「税金を払い、ルールを順守しているドライバーたちの生活を壊している」と語っています。

例えば、フランスではタクシー運転手になるためには営業許可証が必要になりますが、許可証の交付にはかなりの待機期間があります。その短縮のため、引退するドライバーから営業許可証を買い取るという手段がありますが、その際必要となる金額は18万ユーロ(日本円で2000万円以上)にものぼります。しかし、Uberドライバーを始めとする正式なタクシー運転手以外のドライバーは、短い期間の講習のみで運転手となることが可能。このような背景から、フランスのタクシードライバーたちはUberに強く反対しているのです。

 

シェアの動きにどう対峙していくか?

この事態をうけ、フランス首相のマニュエル氏は政府としてタクシードライバーにとってもUberドライバーにとっても公平になるよう、新たな法律を作ろうとしています。フランスではすでに、タクシードライバーとUberドライバーの対立が国家レベルの問題として取り上げられているのです。

こうした「シェアリングエコノミー」の動きに対し、これを脅威として捉えるケースが多いですが、まず自社で活用できないかという視点で見ることも一つの推奨される手段と言えます。

あるいは、自らシェアリングエコノミーの事業者となり、新たな収益源を創出することや、自社事業の周辺領域に良い影響を及ぼす場合もあるかもしれません。

 

3.日本のカーシェアに対する法規制の現状

そのサービスは有償?無償?

コイン  メダル

フランスでは暴動レベルの抗議運動へと発展したUberの脅威ですが、海外と比べると日本ではさほどタクシー業界に影響を与えていないのかもしれません。というのも、一般の人が自家用車を使い送迎を行うUberのライドシェアサービス「UberX」は、いわゆる「白タク」に該当するとしてまだ日本には未上陸の状態です。

現在の日本の法律(道路運送法)では、許可のない一般の人が自家用車を使い、有償で人を送迎することは禁止されています。こうした行為を行うためには許可が必要となり、タクシーは当然こうした許可を得て運行していますが、許可なく行ってしまうと「白タク行為」とみなされてしまいます。

ここでポイントとなるのが「有償」か「無償」かという点です。例えば乗り手が運転手に「好意からお礼として」報酬を支払う場合や、目的地まで運転するために必要なガソリン代や道路通行料、駐車場代を支払う場合は「有償」とは見なされません。

かつて日本でも、福岡でUberが「UberX」と類似したサービスの運用試験を行っていました。しかし、国土交通省から「乗客から運転手への支払いはなくとも、Uber側から運転手へ報酬の支払いがある」「ドライバーにとって、運行に必要な実費を超える収入になる場合がある」という2点から「白タク」にあたると指導が入り、サービスは中止されました。

また、ライドシェアのように運転手がおらず、自家用車のみを貸し出し利用者が実際に運転するカーシェアでも、「自家用自動車有償貸渡事業」という法律があり、「有償」か「無償」かが大きなポイントとなってきます。有償の場合は許可が必要となり、無償の場合は不必要ということがどちらにも言えます。

 

法律に引っかからないシェアサービス

現状、法律を違反せずカーシェアやライドシェアを行うためには、「運転した」「車を貸した」ということに対する対価ではなく、その車を運転するために必要な実費のみを請求するという方法が適当となります。現在すでに日本国内でカーシェア・ライドシェアを展開しているサービス(「notteco」など)は、許可不要とされる範囲でサービスを運営しています。

このように、シェアリングエコノミーの醍醐味である「自らのリソースを有効活用」することは、カーシェアやライドシェアの領域においては日本では難しいこととなっています。しかし、年々増加する外国人観光客や交通弱者にとっての「足」としての期待も寄せられており、政府もシェアサービスの拡大には意欲的です。規制緩和を通じて、今後本来のカーシェア・ライドシェアを普及できるよう整備を進めています。

 

4.まとめ

便利さや収益性の高さが認知されつつも、既存業界や法律との折り合いなどから問題点もいくつか浮上しているカーシェア・ライドシェアですが、世界中で規制緩和や法律の整備によって、今後の普及を望む声が上がっています。

しかしフランスでの例を見てみると、必ずしも歓迎されるものとは言い難いのが現状です。

所有から共有へ」という動きによる効率化には期待が高まりますが、「ウーバライゼーション」という概念も考慮すべきだといえるでしょう。

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