シェアリングエコノミーラボ (Sharing Economy Lab)

シェアリングエコノミーの国内導入事例集を政府が発表。 概要と注目事例3選

シェアリングエコノミーというと、民泊やサイクルシェアなどがすぐに思いつくのではないでしょうか。実はそれ以外にも、すでにさまざまな形でシェアリングエコノミーは活用されています。そして単なるビジネスとしてではなく、社会の抱える課題を解決するものとしても期待が寄せられています。

この記事では、地方においてシェアリングエコノミーを活用した国内事例集「シェア・ニッポン100 ~未来へつなぐ地域の活力~」から、特に注目の導入事例をご紹介します。

目次

  1. シェア・ニッポン100 ~未来へつなぐ地域の活力~とは
    概要について

    地域別の普及率や特徴
  2.  具体的な取り組み事例
    北海道天塩
    長崎県島原市
    佐賀県多久市
  3. まとめ

1.シェア・ニッポン100 ~未来へつなぐ地域の活力~とは

概要について

2018年3月20日、内閣官房IT総合戦略室に設置されているシェアリングエコノミー促進室は「シェア・ニッポン100 ~未来へつなぐ地域の活力~」を公開しました。

これは日本全国の自治体や民間事業者がシェアリングエコノミーを活用している事例を集めて紹介しているもので、シェアリングエコノミーに関する新しい取り組みや、事業アイディアの誘発を図ることを目的として作成されました。

政府は人やモノなどをシェアして効率良く活用するシェアリングエコノミーに着目し、積極的な促進に取り組んでいます。これから少子高齢化社会を迎える日本では、人材のリソースや社会インフラがますます不足していくと予想され、シェアリングエコノミーを活用して地域における社会課題の解決や経済の活性化につなげたいという考えです。

https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/share_nippon_100_H29.pdf

今回発表された事例集は、内閣官房シェアリングエコノミー促進室への情報提供及び関係省庁、シェアリングエコノミー協会等に対するヒアリングによる情報をもとにして作成されました。シェアリングエコノミーを活用した取り組みが課題解決に効果があったと認められた事例や、取り組み内容に独創性や新規性が見られる事例が選ばれています。

日本全国の自治体や民間業者から37の事例が紹介されており、2020年までに少なくとも100事例まで充実化を図りたいとしています。

「シェア・ニッポン100 ~未来へつなぐ地域の活力~」は政府CIOポータルで公表し、事例集の内容を広く発信しています。周知を通じて得た反応は改訂の際に反映していくということです。

地域別の普及率や特徴

https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/share_nippon_100_H29.pdf

取り上げられている事例を見ると、地域別では九州沖縄が27%と最も多く、次いで関東甲信越が22%、東北が13%となっています。取り組みのきっかけとしては「観光振興」が29%、続いて「就業機会の創出」が26%となっており、以下「地域の足の確保」、「子育て支援」、「需給緩和」と続きます。「地域コミュニティの再生」や「地域福祉の向上」、「災害対策」、「起業のための教育の場の確保」などといった、ユニークなきっかけも挙げられています。

多くの取り組みはまだ実証、試行段階ではあるものの、一部では町民に利用されるサービスとなったり、市外企業と連携して展開したりといった事例もあります。

その一方で、周知広報活動について課題を感じており、住民の理解や認知の向上も求められています。シェアリングエコノミーは日本ではまだなじみの薄い部分もあるので、今後も政府や企業が積極的に推進を行い、全国規模で認知度を底上げする必要があるといえるでしょう。

 

2.具体的な取り組み事例

それでは、事例集の中でも特に効果的な結果が得られた事例を具体的に見てみましょう。

 北海道天塩町

http://lp.notteco.jp/teshio/

天塩町は総合病院などの生活インフラが稚内市に所在していますが、稚内市は約70kmも離れており、車なら1時間で行けるところが、公共交通機関を使った場合は3時間もかかってしまいます。そのため、運転ができない交通弱者の移動手段の確保が深刻な課題となっていました。

そこで、相乗りマッチング事業を運営する株式会社nottecoと提携して実証実験を行いました。これは稚内市に移動予定のドライバーと稚内市に行きたい人をマッチングし、相乗りをするというサービスです。同乗者はガソリン代や高速代などの移動費用を負担するので、ドライバーはガソリン代の節約にもなります。

受付は専用サイトのほか、スマートフォンを所有しない人のために電話での窓口も開設。興味や関心を持ってもらうきっかけ作りのために、相乗りツアーも実施しました。

これにより稚内市への移動コストが削減され、町内高齢者の約12%が利用するまでになっています。

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長崎県島原市

https://spacemarket.com/space_types/event_space/areas/nagasaki/location/%E5%B3%B6%E5%8E%9F%E5%B8%82

島原市では、島原城や日本名水百選に選ばれた湧水、温泉などの豊富な観光資源がありながら十分に活かせておらず、観光施設のプロモーションや収益力強化が課題として挙げられていました。

そこで、スペースシェア事業を運営する株式会社スペースマーケットと提携し、観光施設でのイベントなどを展開。従来型の観光利用だけでなく、コスプレイベントやグランピングのようなユニークなキャンペーンを実施することで、話題作りによる認知の拡大に寄与しています。

また、体験マッチングサイトの「TABICA」と提携して、地元住民が主体的に参加して観光コンテンツや体験型旅行メニューを提供しました。

さらに駐車場シェアの「軒先パーキング」とも提携。花火大会の実施時に駐車スペースを拡大して、空きスペースの有効活用と来場者の利便性向上を実現しています。

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佐賀県多久市

https://socialvalue.biz/

かつて炭鉱の町として栄えていた多久市は、現在は少子高齢化率が高く、人口流出が加速しているという課題がありました。

働く世代の住民が流出してしまう大きな原因の一つが、働く場所の不足です。この課題に対する取り組みとして、在宅でもできる仕事を提供し、新たな就業機会の創出を図りました。

まずは介護や育児を理由にフルタイムで働くことが困難な住民を対象に、ITスキルの習得や向上をするための講習会を開催。ワーカーの育成やサポートをする場として開設された「ローカルシェアリングセンター」は、託児やコワーキングスペースも完備しています。

クラウドソーシングを運営する株式会社クラウドワークスがチームの中心となるディレクターの育成を実施し、多数のワーカーが継続して仕事を受注できるような仕組み作りを行いました。

多久市から始まったこの取り組みは基山町でも同様に実施され、その地域だけにとどまらない広域展開となっています。

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3.まとめ

少子高齢化による影響は、特に地方において深刻なものとなっています。また地方創生や雇用創出は、今や喫緊の課題です。

そんな中でシェアリングエコノミーを活用した新たな取り組みは少しずつ成果が現れており、地方の課題を解決する手段として注目されています。

この事例集には取り組みの内容が詳しく掲載され、課題を抱える自治体やシェアビジネスを考えている企業にとってもモデルケースとなることでしょう。ぜひ参考にしてみてください。