シェアリングエコノミーラボ (Sharing Economy Lab)

少子高齢化を支えるシェアリングエコノミーの経済合理性とは

シェアリングエコノミーの普及により、既存の設備や個人の遊休資産が共有されるようになりました。そうしたなか、高齢化の進行や生涯未婚率の上昇といった社会問題が、単身者あるいは高齢者夫婦のみの世帯数を増加させることで、結果として、車や家具といった耐久消費財を所有するのではなく、必要な時に最低限必要なモノを借りたり、もらったりする志向が強まるのではないでしょうか。

本記事では、近年の推計データの分析をもとに、今後活発化が予想されるシェアリングエコノミー関連ビジネスを紹介します。

目次

1. 日本の社会問題 高齢化社会への進行と生涯未婚率の上昇

2. 可能性ひろがる、耐久消費財のシェア

3. まとめ

1. 日本の社会問題 高齢化社会への進行と生涯未婚率の上昇

人口が減少し、将来、国民の約2.5人に1人が65歳以上の高齢者となる可能性も

2015年以降、推計で徐々に人口が減少していくことが分かる
内閣府 年齢区分別将来人口推計

日本の総人口は年々減少をたどっています。このペースで行くと、現状約1億3000万人されている総人口は、2048年には1億人を割り込んで9913万人、2060年には8,674万人になることが予測されています。

赤線が高齢化率(65歳以上人口割合)を示しており、上昇傾向がうかがえる
内閣府 高齢化の推移と将来推計

さらに悪いことには、減っていく人口のなかで、高齢化が進んでいくであろうことも言われています。高齢者(65歳以上)の人口は、昭和22~24年に生まれた「団塊の世代」が65歳以上となる2015年には3,395万人となり、さらにその世代の人たちが75歳以上となる2025年には3,657万人に達することが見込まれています。

内閣府が発表しているデータを見て、高齢者の割合を考えてみると、2060年には国民の約2.5人に1人が65歳以上(39.9%)、4人に1人が75歳以上(26.9%)の高齢者になると。人口の減少に伴い、どれほど高齢化の波が迫っているのかが分かると思います。
これにより、日本の経済成長を支えてきた「団塊の世代」が高齢化を迎え、車や家電、住宅に代表される個人の消費や所有が「豊かさ」の象徴だった時代は終わり、経済のあり方も変容していくと考えられます。

未婚化、晩婚化も進む
2035年には男性の生涯未婚率が29.0%に上昇するという推算も

男性、女性ともに未婚率が上昇。将来、約30%の男性が独身のままでいる可能性も
平成27年度 厚生労働白書

一方、時代の流れは非婚化の傾向にあります。結婚する人でも、初婚年齢が上昇し晩婚化が進んでいるのに加え、そもそも結婚しない人の割合も増えています。生涯未婚率(50歳時点での未婚率)は、2010年時点で男性は2割、女性は1割になっています。今後も、未婚化や晩婚化が進む可能性は十分にあります。

上図にある平成27年度 厚生労働白書では、2035年までに男性の生涯未婚率は、29.0%まで上昇する見込みであると発表されています。

このように、近い将来、社会が高齢化・非婚化していくことを考えると、従来のように個人で消費財を保有して金銭的・物理的な負担を抱えるよりも、必要な時に必要なものをシェアして使うサービスへの需要が、高まっていくと予想できます。

2. 可能性ひろがる、耐久消費財のシェア

総務省発表のデータによると、2016年3月時点で、車の平均価格は軽自動車で1,310,613円、普通自動車で3,249,903円となっています。この数字は一般家庭にとって、あまり手の出しやすいものとはいえません。とくに駐車場代やガソリン代、自動車税、車検費用というような車の所持することによって掛かる諸経費を考えると、ますます厳しくなります。
こうした経済的な背景を考えると、「使いたい時だけ利用する」カーシェアや「人と乗り合う」ライドシェアを選択することは、大きなコスト削減につながります。この項では、車や家具など、耐久消費財に関わるサービス事例を挙げていきます。

タイムズ カープラス:カーシェア

カーシェアビジネスの一例に、タイムズカープラスがあります。もともと、マツダレンタカーが2005年2月からスタートさせたカーシェアサービスでしたが、2009年、時間貸駐車場の「Times(タイムズ)」を運営するパーク24が、カーシェアリング事業への参入を目的として、マツダレンタカーを子会社とし引き継ぎました。

登録会員数50万人以上で、ステーション数が業界トップであること、コンパクトカーから輸入車まで30種類以上の豊富な車種が利用できること、入会金不要で予約後3分後には利用可能という手軽さなどの理由から人気を呼んでいます。利用料金は、ショートのベーシック(デミオ・プリウスなどの車種)なら206円/15分、6時間パックでは4,020円/回と、リーズナブルな設定。
カーシェアに使用される車両は、運転機会の少ない高齢者や女性にも使いやすいコンパクトカー(デミオ)と電気自動車(i-MiEV)。消費者ニーズや時代の動向をよくとらえています。市営住宅の入居者には入会金を無料にすることで、カーシェアを気軽に利用できるような試みを行っています。

Uber Japan:ライドシェア

2009年、アメリカで始まったUberは、タクシー配車のほかに、ドライバー登録している一般の人のクルマに同乗させてもらう「ライドシェアリング」サービスを行っています。その日本版が、Uber Japan

スマホアプリやPCから簡単にクルマを予約でき、その便利さと安さから、瞬く間にシェアを拡大しました。まだ利用できるエリアは限られていますが、2013年以降、日本でもサービスを開始しています。
2016年3月、政府は過疎地域での自家用車活用の規制改革案を提示しました。観光客を対象に、地域住民の自家用車による有償旅客運送制度を拡充して、ライドシェアを制度化するものです。今後は、ライドシェアが利用できる地域は、どんどん広がっていくでしょう。

ジモティー:地域密着型のモノのシェア

ジモティーは、無料で掲載できる広告掲示板サービスです。トップページには、「0円であげます」という人気コーナーに、多くの写真が並んでいます。「ジモティー」という名前のとおり、基本的にはユーザーが地元でやり取りするためのもので、取引に送料は発生しません。
引っ越しなどで家具や家電が不要になった場合、処分するためにはかえって費用がかかる時代。それであれば、欲しい人に無料で譲った方が合理的です。逆に、家具などが必要になった場合、高額なものを新たに買うよりも、極力お金をかけずに済ませたいという人が多いはず。非婚化時代に単身者が増えることを考えると、暮らしのあり方もお金・手間を省いたサービスは、今後ますます重宝されるでしょう。

3. まとめ

日本の総人口や高齢者の割合、未婚率の上昇や車の平均価格などを使い、本記事ではシェアリングエコノミーの需要を考えました。
まず、日本社会が高齢化や未婚化へ向かっていることがよりイメージできたかと思います。そうして人々の生活スタイルや家族構成が変化していく中で、かつて当たり前であった大量消費の時代は終わりを告げ、車や家具、家電といった耐久消費財を複数の人々のあいだで共有していく時代はそう遠くはないのです。今後、上記のような既存サービスが成長することや、人々がその利便性を今以上に見出す可能性は十分にあるでしょう。