シェアリングエコノミーラボ (Sharing Economy Lab)

Airbnb補償を上回る民泊専用保険が登場 民泊新法で国内のルールはどう変わっていくのか!?

民泊のAirbnbやライドシェアのUberがシーンを牽引するシェアリングエコノミーは世界に拡大しています。日本でも民泊の規制緩和に伴って、インバウンドを中心にAirbnbの利用は増え、今後も拡大していくと考えられています。

この民泊市場の拡大に備えて、三井住友海上火災保険がメトロエンジン株式会社 (旧ジェイピーモバイル株式会社)と提携して、民泊専用の保険を発売しました。また2017年には民泊新法と呼ばれる住宅宿泊事業法案(仮称)が国会に提出されており、民泊への大幅な規制緩和が見込まれます。

今回はその日本初民泊専用保険と、民泊新法のあらましについて迫ります。

目次

  1. 三井住友海上から登場した新しい民泊専用保険とは?
  2. 民泊新法で民泊のルールはどう変わるのか!?
  3. まとめ

三井住友海上から登場した新しい民泊専用保険とは?

Airbnbでは、「ホスト保証」と「ホスト補償保険」という、ケガや物損が発生した際Airbnbが行うホストへの補償が用意されています。しかしイギリスで4人のゲストがバルコニー崩落によって負傷を負った事件では、Airbnbは法的責任を否認しているようです。そのためイギリスではAirbnbはゲストやホスト、その周囲の環境について十分な責任を負っているのかいう疑念が噴出しています。

 

2016年11月に三井住友海上火災保険はメトロエンジン株式会社 (旧ジェイピーモバイル株式会社)と提携して、「民泊運営安心サポートパック(民泊専用保険付き)」の販売を開始しました。この商品は民泊についてのセミナーやビジネスサポートとともに、民泊専用保険がセットになったホスト向けサービスです。

 

この民泊専用保険では、以下の4つが対象になります。

①ホストが所有する設備

②オーナーに対する損害賠償責任

③ゲスト・第三者に対しての損害賠償責任

④近隣への損害補償

 

①ホストが所有する設備では、破損や盗難、火災、爆発、雪災、風災、水災などが対象となります。災害の種類によっては免責や補償対象の最低損害金額がありますが、100万円までカバーされます。

②オーナーに対する損害賠償責任では、ホストが賃貸物件で民泊を行っていた場合にも有効な補償で、損害賠償の支払い限度額は3,000万円まで、修理費用補償の支払い限度額は300万円となっています。

③ゲスト・第三者に対しての損害賠償責任では、ゲストや第三者が施設内の事故によって負傷したり、盗難や破損の被害を受けたときに、ホストが負う損害賠償責任を最大5,000万円まで負担します。

④近隣への損害補償は、民泊として利用している施設が火災や爆発などで近隣に被害を及ぼした場合、最大1億円まで類焼損害保険金が支払われます。

この保険は被害者救済の観点から未許可・未申請の物件でも保険金が支払われるという強力な訴求点があります。民間の保険会社からこのような専用保険が発売されたことは、ホストには大きなメリットとなっていくのではないでしょうか。

民泊新法でルールはどう変わるのか!?

国家戦略特区では段階的に民泊の規制緩和が進められてきましたが、現状では民泊には旅館業法の適用が妥当とされているため、許可のない民泊は原則として違法です。しかし2015年発足の厚生労働省を中心とする「『民泊サービス』の あり方に関する検討会」は「民泊新法(住宅宿泊事業法)」を2017年通常国会への提出し、民泊を規定する新しい法律を制定する予定です。

民泊新法のあらましとしては、家主が同施設に住んでいる「家主居住型(ホームステイ)」と家主が同施設に住んでいない「家主不在型」というように、民泊の形態を分けて規約を設けると推測されています。

 

両者共通の内容の主なものは以下です。

  • これまでは旅館業法の許可制であったのに対し、必要項目に沿って環境や書類を整えた上で、届出をするだけで民泊の営業が認められる(届出制)こと
  • 年間に民泊として提供する日数に180日以下などの上限が設けられること
  • 特区に設けられていた2泊3日以上などの最低宿泊日数の制限がなくなること
  • 用途地域が住宅専用であっても民泊が可能になること

そのほかに、「家主不在型」民泊の運営を委託される民泊施設管理者は行政への登録が義務化され、違反があった場合には業務停止や登録取り消しなどの処分が施行されるようです。

 

2020年までに訪日外国人旅行者を2,000万人目標と掲げていた政府でしたが、2016年にはこの目標を達成しました。新たに「2020年の東京オリンピックまで4,000万人を目標」とするにあたり、インバウンド受入環境整備緊急対策事業としても民泊新法の制定は急務です。

一方で民泊新法の制定を目前にして、マンションを所有し民泊運営を検討したある弁護士があらゆる民泊に旅館業法を適用するのは正しいのかの是非を問う訴訟を起こしました。政府や行政の意向だけでなく、司法がどのような判決を下すのかに注目が集まっています。

まとめ

2017年には民泊新法が制定され、合法的に民泊運営が可能になる予定です。政府目標を超えて増加している訪日外国人旅行者対策としても民泊新法の制定は急務ですが、民泊先進国で民泊が抱えるサービスの構造的な問題が解決されたわけではないこともあり、民泊を提供する側、利用する側どちらにも不都合のないサービス構造と法の整備が引き続き求められるでしょう。