シェアリングエコノミーラボ (Sharing Economy Lab)

シェアリングエコノミーを学ぶ シニア層に普及するデジタルプラットフォーム

Group Of Senior Retirement Exercising Togetherness Concept

個人で保有している遊休資産を活用して、個人間でモノの貸し借り・共有を行うシェアリングエコノミーサービスは世界で普及してきており、地域課題の解決や活性化を推進する役割としても期待されています。

今回は地域課題の一つとして挙げられるシニア層のサポート・就業機会の創出などにおいて提供されているシェアリングエコノミーサービスについて紹介していきます。

提供されるサービス・活動の内容やどういった団体によって普及が進んでいるのかを知っていただければと思います。

目次

  1. Airbnbとミラノ市がシニア向けのシェアリングエコノミー講座を開講
  2. シニア層に普及するシェアリングエコノミー
  3. まとめ

Airbnbとミラノ市がシニア向けのシェアリングエコノミー講座を開講

シェアリングエコノミー普及の背景として、インターネット環境が整備されたこと、スマートフォンやタブレット端末の普及などテクノロジーの発展が挙げられます。ユーザー側はそういった端末から気軽にサービスが利用できるようになりましたが、シニア層が不便なくインターネットや端末を利用できるかというと、そうではない実態があります。

シェアリングエコノミーを利用する前提として、インターネットの知識やスキルを一定持ち合わせることが必要です。

過去にイタリアの消費者組合が発行しているAltroconsumoという雑誌で、国全体の45~70歳のイタリア人1,000人を対象にした調査で、約半数の47%がそもそもシェアリングエコノミーについて聞いたことがないという結果が出ました。

そういった問題も含めて、民泊サイト世界最大手であるAirbnbはイタリアのミラノ市と連携し、デジタルリテラシーを促進する活動として、“Sharing Economy School”を立ち上げました。ここでAirbnb、ミラノ市・Collaboriamoと協力して、ミラノ市に住むシェアリングエコノミーやデジタルプラットフォームを学び活用したい50 歳以上の人を対象にしたコースを設定しました。

このコースはオンライン上で基礎的なインターネット知識・スキルを身につけ、シェアリングプラットフォームをどう活用していくかを学んでもらう機会となりました。

この事例のように、シニア層に対してシェアリングエコノミーを普及させる活動がどんどん増えていくことで、インターネットの新たな可能性を広げていくことにもなるでしょう。

シニア層に普及するシェアリングエコノミー

ここではシニア層を中心とした「交通弱者」に対し、地方で展開されている有償運行事業を紹介します。

2010年6月、米ウーバー・テクノロジーズ(UberTechnologies)が、自家用車をスマートフォンで配車できるライドシェアサービス(現uberX)を始めました。具体的には、移動したい人と、クルマの所有者をスマートフォンのアプリを通して仲介するサービスです。

ライドシェアサービス「uberX」は2012年から順次海外展開を始め、70カ国以上で利用されています。日本でも2014年6月、ウーバージャパン(UberJapan)が「UberBlack(uberXのハイヤー限定バージョン)」を開始しました。

さらに2016年5月からは京都府京丹後市にある地元NPO法人が地元に対し、UberのITシステムを活用した「ささえ合い交通」という取り組みを開始しました。

京都府京丹後市も含め、過疎化が進んでいる地域では商業施設などの展開も非常に難しく、それに伴ってバスやタクシーなどの公共交通機関も撤退を余儀なくされます。こうして、必然的にシニア層は移動手段を失います。

京都府京丹後市ではタクシー業者はすでに撤退しており、「高齢者の移動」という社会課題が明白でした。そんな中、タクシーに比べて安価に利用できるライドシェアに対する住民の期待は非常に大きいものとなっています。

サービスを開始してから半年にあたる2016年11月末時点で、「ささえ合い交通」の総実車走行距離は3,416キロにのぼり、効果も出始めています。導入・運用に際していろいろな課題はありますが、シニア層が安心して生活できるよう、地域の実情に合わせてサービスを進化させていくことが求められています。

まとめ

シニア層に対するシェアリングエコノミーの普及について述べてきましたが、サービスを導入すること以前に大切なことがあります。

それは過疎化してしまった地域含め、その土地に住む高齢者たちが手を取り合って自分たちでできることをやるための環境作りです。地域住民が日々コミュニケーションをとることができる関係づくりや助け合いのための意識を醸成することで、はじめてシェアリングエコノミーを有効に活用することができるのです。