シェアリングエコノミーラボ (Sharing Economy Lab)

地方自治体にも広がる、シェアリングエコノミー活用の動きと導入事例

Group of people holding handssupport team unity

シェアリングエコノミーは、モノやサービスなどを交換・共有することで成り立つ新しい社会的な仕組みです。すでにあるリソースの稼働率を上げることが経済全体の底上げにつながり、少子高齢化や、空き家問題、雇用問題など、多岐に渡る地方の課題を解決に導く可能性も秘めています。

目次

  1. 地方自治体で普及するシェアリングエコノミー
    • シェアリングエコノミーとは
    • 日本国内の自治体全体としての動き
    • シェアリングシティとは
  2. 地域社会の問題解決に向けた自治体の取り組み
    • 千葉市
    • 佐賀県多久市
    • 長崎県島原市
    • 秋田県湯沢市
  3. まとめ

1.地方自治体で普及するシェアリングエコノミー

自動車を共同で利用するカーシェアリングや、マンションや住宅を有料で貸し出す民泊など、新しいサービスが次々と生まれています。このようなシェアリングエコノミーは、都市部だけでなく地方にも普及を見せており、少子高齢化や財政難などといったさまざまな課題を抱える自治体も「共助」によって課題解決を目指そうという動きがあります。

シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーとは、乗り物・場所・技術・サービスなどの資産を多くの人々と共有・交換して有効活用する社会的な仕組みをいいます。インターネット上のプラットフォームを介して行なわれていることが特徴です。シェアリングエコノミーを活用することで、利用者は所有するコストがかからず、従来よりも低料金で利用ができ、また貸し出す側も使われていない資産を活用して収入を得られるというメリットがあります。

このように個人が保有する遊休資産の貸出を取り持つサービスは、環境にかかる負担も少なく、低コストで必要としている人に提供可能なインフラ需要となります。個人間だけでなく地方自治体で行うことで、経済的な側面だけでなく、人と人との繋がりを促進しコミュニティの再生への可能性が期待されています。

関連記事:

“シェアリングエコノミー”とは? 基本ビジネスモデルとサービス内容

日本国内の自治体全体としての動き

少子高齢化や人口減少の進展などで税収が減ることにより、自治体の財政状況が厳しくなっていくと言われています。自治体だけの力でインフラの維持をし続けるのは困難でしょう。そこでシェアリングエコノミーの概念を地域に導入して、空間やモノ・能力・移動手段などを住民や企業と協力し合い、課題解決を目指そうという自治体が増加しています。

地方でのシェアリングエコノミーの導入が期待される分野は、観光、交通手段、子育て、雇用、不動産などさまざまです。こうした課題を抱える国内において、シェアリングエコノミーは効率的に遊休資産を活用して解決に導くことができるでしょう。

シェアサービス事業を推進する団体の「シェアリングエコノミー協会」では、地域の課題解決に取り組む地域を「シェアリングシティ」として認定する制度をつくり、続々と自治体が参加しています。国としても、自治体のシェアリングエコノミーを推進する上で必要な法整備や予算組み、地域IoT実装推進のロードマップ作成など、新たな経済活動として国を挙げたムーブメントになっています。自治体だけで行なってきた「公助」から、企業や住民が共に助け合う「共助」へのパラダイムチェンジが実現し始めています。

関連記事:

「所有」から「共有」へ、地方課題の解決や地方創生を担うシェアリングエコノミーのカタチ

シェアリングシティとは

シェアリングシティとは、少子高齢化や介護、子育て、空き家、雇用などといった地域が抱えるさまざまな課題を、シェアリングエコノミーの活用で解決しようと取り組むコミュニティのことを言います。シェアリングシティは自治体とシェアリングエコノミーの事業者が連携して遊休資産を活用することで、継続可能な社会を実現させるという考え方です。技術や資産を分け合うことで地域内での課題を解決し、地域全体での共助の動きを推進します。日本国内や海外での詳しい事例は以下の記事も参考にしてください。

関連記事:

シェアリングシティとは? 日本・海外のシェアリングエコノミー先行都市まとめ

 

2.各自治体での導入例

このようなシェアリングエコノミーは、すでにいくつかの自治体で実際に導入されています。有休スペースのシェアや、雇用を創出するクラウドソーシング、地域体験シェアリングを活用した観光振興、育児スキルや人材のシェアによる子育て支援などといった分野での取り組みが見られます。

それでは、自治体でのシェアリングエコノミーの導入例を詳しく見てみましょう。

千葉市

千葉市は国際会議や展示会のMICE誘致の促進に向け、空きスペースの所有者と利用者のマッチングを行なう株式会社スペースマーケットと連携して、飲食や宿泊にともなう経済波及効果の検証を行なっています。

また、株式会社ガイアックスが運営する体験型観光情報サイト「TABICA」と千葉市が発行する無料観光情報誌「千葉あそび」との連携により、「TABICA」が千葉市を観光した利用者の口コミなどをベースとした情報を市に提供。これを市が新たな観光の企画や情報発信に活用するといった活動に取り組んでいます。

参照:

https://www.city.chiba.jp/sogoseisaku/sogoseisaku/tokku/sharingcitysengen20161124.html

佐賀県多久市

多久市は、人口が2万人を切り、働く場所がないという雇用の問題を抱えていました。そこで、市は企業と個人が直接つながって仕事の受発注を行うことができるクラウドワーキングを手がける「クラウドワークス」とともに、在宅ワークを仲介する「ローカルシェアリングセンター」を開設。若者や子育て世代だけでなく、高齢者に対してもクラウドソーシングを通じて仕事の提供とサポート体制の充実に取り組んでいます。

このようなかたちで「クラウドワーカー」の育成を行い、子育て中の主婦から70代までと幅広い年齢の人が時間や場所にとらわれずに働くことができる環境を作っています。

参照:

https://www.city.taku.lg.jp/main/9042.html

長崎県島原市

島原市は島原城を運営していた「島原城振興協会」や観光協会など4団体を統合して株式会社「島原観光ビューロー」を設立しました。「島原観光ビューロー」は「TABICA」とコーディネーター契約を結び、「甲冑を着て島原の街歩き」「湧水の里で流しそうめん」などといった体験型のコンテンツを地元の住民が提供しています。

また株式会社スペースマーケットと提携し、コスプレ撮影イベント「島原コスプレの乱」が開催されました。こうした島原城をイベントスペースとして貸し出すなど、地域資源の活用に取り組んでいます。

参照:

https://www.travelvoice.jp/20170407-86203

秋田県湯沢市

人口減少と少子高齢化の進展の問題を抱えている湯沢市では、就労している母親の残業対応や日々のリフレッシュに「ファミリー・サポート・センター事業」の促進を積極的に行なってきました。

その中で地域の保育資源を最大限に活用し、さらなる子育ての共助の仕組みを構築していく考えのもと、市は子どもの送迎や託児などを顔見知り同士で頼りあう「子育てシェアリング」を実施。子育ての人材をサイトで仲介する「アズママ」のサイト内にある「子育てシェア」というプラットフォームを活用して行なっています。

また、ママ友同士の交流会や子育てシェアに関する講演会を開催するなどをして、子育ての悩みを抱える女性たちの手助けに力を入れ、子育て世代の住みやすい街づくりを目指しています。

参照:

https://japan.cnet.com/article/35092694/

http://www.city-yuzawa.jp/childrearing02/1491.html

 

3.まとめ

シェアリングエコノミーの考え方を積極的に街や行政の取り組みで活用していくことが、これまでに抱えていた地域の課題を解決する糸口につながっています。より良いサービスの改善だけでなく、今あるものを効率よく活用することで環境問題の改善や雇用創出にも繋がることが期待できます。