シェアリングエコノミーラボ (Sharing Economy Lab)

シェアリングエコノミーへの課税を政府が検討。今後の動向と海外の事例まとめ

Woman using calculator and thinking about cost at home office.

シェアリングエコノミーで得られる収入への課税に関して、政府が制度の検討に入りました。現状では問題が山積しており、どのように課税を行うのか検討の動きが注目されています。ここでは、課税をめぐっての問題点や今後の動向、海外の動きについて見てみましょう。

目次

  1. 日本におけるシェアリングエコノミー課税の動き
    • 政府主導で課税を検討
    • 具体的な課税対象
    • 今後の動向
  2. 国外におけるシェアリングエコノミー課税の動き
  3. まとめ

1.日本におけるシェアリングエコノミー課税の動き

シェアリングエコノミーは、個人のスキルや遊休資産を活用して収入が得られるということで新しい働き方や副業としても注目を集めています。しかし、シェアリングエコノミーで得た所得に対しての課税漏れが発生するなど、税制のルールがまだ対応しきれていません。そのため、政府として課税政策を検討する動きが出てきています。

政府主導で課税を検討

モノやサービスを有料で提供したり貸し借りしたりするシェアリングエコノミーは、個人のスキルや遊休資産を活用して収入が得られることがメリットの一つです。新しい事業者や個人の参入が増加し市場規模が拡大している反面、税制面での法整備やルール作りはまだ追いついているとはいえない状況にあります。そこで、政府としても課税対策に動き始めました。ようやく制度の検討に入った段階ですが、今後の税制改正の焦点となる可能性もあり、これからの動きが注目されます。

そもそもシェアリングエコノミーとはどういったものか、具体的な仕組みやビジネスモデルについては、関連記事で詳しく解説しています。

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具体的な課税対象

家庭の不用品や手作り品などを売買できる「メルカリ」は国内で利用者が増加しており、同様のサービスを提供するアプリも複数リリースされています。このような個人間の売買では、年間売り上げが1000万円を超えると消費税の納税義務が発生します。しかし、複数のアプリを使用している場合は合計所得の把握が難しく、課税漏れの可能性が指摘されています。

また、空き部屋を貸し出す民泊の「Airbnb」では、宿泊者がホストへ支払う宿泊代金についてはホスト自身に納税義務があります。しかし、Airbnbのように事業拠点を海外にしている事業者の場合は法人税を課税することが難しいとされており、この点についても問題視されています。

日本での解禁も検討されているライドシェアリングの「Uber」では、事業の主体がプラットフォーム側なのか、ドライバーとして所得を得る個人側なのかが明確になっておらず、議論になっています。ドライバーが、Uberをはじめとする仲介業者の被雇用者として扱われた場合と、個人事業主として扱われた場合では所得税や法人税の課税方法も変わってくるため、どのように扱うかも判断が分かれるところです。

さらに、これらの民泊やライドシェアリングをする場合も複数のプラットフォームに登録することが一般的であるため、所得の合計を正確に把握することが困難となっています。

今後の動向

本来は、個人が副業として稼いだお金は原則として年間20万円を超えると所得税がかかり、確定申告が必要になります。しかし、シェアリングエコノミーのような新しいビジネスモデルを税制が想定しておらず、ルールが分かりづらいというのも事実です。そのため、確定申告をしていないケースも多いとみられています。

また複数のプラットフォームに登録した場合に、税務当局が所得を把握することが困難であるという問題もあります。そのような点を踏まえ、仲介業者へ取引情報の提供を義務づけて利用者の所得情報を把握するというような対策が検討されています。

政府としては海外の事例も参考に課税を急ぎたい方針ではあるものの、日本におけるシェアリングエコノミーの認知度はまだ低いのが現状です。そのため、どれだけ積極的に議論が行われるのか、また対策が検討されたとしても問題への社会的な認知度が高まらなければ、税制改革に乗り出すのも容易ではないでしょう。

 

2.国外におけるシェアリングエコノミー課税の動き

シェアリングエコノミーの課税については、海外でも脱税や課税漏れなどのトラブルが起きており、さまざまな事例があります。ここでは、主に民泊への課税について、海外における対策の動きをご紹介します。

フランスでの動き

フランスでは課税漏れ問題への対策として、2020年から仲介業者に対し税務当局への取引情報などの提出を義務化する制度を設ける方針を掲げています。すでにパリ市では仲介業者に滞在税の納付を求める規制を設けており、Airbnbが仲介する民泊についてはAirbnbが納付の代行を行っています。

アメリカでの動き

アメリカのハワイ州では、民泊事業者から直接税金を徴収できる法律が制定されました。ハワイ州では180日以内の宿泊について13.972%の税金が課税されますが、これまでは民泊を提供するホストが税金の申告をしないケースも多くあり、ホテル業界からの不満の声が上がっていました。同じくアメリカのポートランドでは、ホストに代わり宿泊料・宿泊税を受理した民泊の仲介業者に対して宿泊税を納付することや、市当局の要請により貸主及び物件に関する情報を開示することを求めています。

このように海外では民泊の課税について、民泊を仲介する事業者に納税を求めるというのが大きな流れとなっており、日本の政府もこれらのケースを参考に対策が議論されると思われます。

また民泊仲介大手のAirbnbは、アムステルダム、ポートランド、サンフランシスコなどの一部の地域において、Airbnbがホストの代理で宿泊税を自動的に回収し、税務署に納付するなど、積極的に納税に協力するという姿勢を見せています。Airbnbは今後も、各国の政府と連携しながら税金の回収と納税を支援するという方針を示しています。

 

3.まとめ

シェアリングエコノミーによって新しい働き方が実現する一方で、税制については不透明な部分も多く存在します。シェアリングエコノミーの健全な成長と、既存の事業者とのイコールフッティングを確立するためにも、今後の活発な議論が望まれます。