その急速な成長から、昨今話題となっているシェアリングサービス。一般の人が家を宿として貸す民泊や、車を人と共有するカーシェアは、もう多くの人が耳にしていると思います。
断捨離やミニマリズムが社会現象となり、モノを合理的に有効活用する手段を世の中が求めています。ネットやスマホの普及、配達システムの向上も、モノの売買・貸し借りが手軽にできるビジネスの後押しになっています。
本記事では、そんなモノのシェアリングエコノミーについてまとめてみました。
目次
1. モノのシェアとは
2. 海外事例からみる市場の規模や、これからの可能性は
3. モノのシェアリングサービスにおける注意点
4. まとめ
1.モノのシェアとは
具体的にモノのシェアとは、どのようなサービスがあるのでしょうか。この項では、色々な種類のモノを扱う国内のシェアリングサービス4つを紹介していきます。
airCloset:えらぶ手間も、買いにいく手間もかけない! 新しい衣服配達サービス
airCloset(エアークローゼット)は、2015年2月3日にサービスを開始した月額制(税別6,800円)で何着でも服が手元に届く、女性向けのオンラインファッションレンタルサービスです。「服を選ぶ時間がない」という忙しい女性の悩みを解消し、服との出会いを最大限に楽しんで欲しいというコンセプトです。
具体的な利用方法は、ユーザーが好みのスタイルやお気に入りアイテムを設定し、それを見てスタイリストがマッチする服を3着選んで届けてくれます。驚くことに返却期限はなく、好きなだけその服を着用してから返却します。その際にはクリーニング不要、送料も無料です。一度に送られてくる服は3着までと決まっていますが、利用回数や期間に制限はありません。アイテムの買い取りも可能。
airClosetの場合、ユーザーが「着てみたい」と思う気持ちを誘うサービスを発信しています。ビームス発のブランド「CAROLINA GLASER」とコラボレーションし、流行のコーディネートを提案するなど、他社を絡めた、新しい企画を打ち出しています。
mieruCAR:販売店が間にない! 消費税も掛からず、お得に売買できるクルマ販売サイト
従来の中古車売買サイトでは当たり前だった、中古車販売店の間(BtoB)における取引手数料やマージンが発生しない、新しい販売スタイルを切り開いたのがmieruCAR(ミエルカ)です。2014年7月1日サービス開始から始まった、中古車のC to Cマッチングプラットフォームです。
ミエルカが販売を一括管理することで、手数料は一度、消費税はかからない仕組み。売り手には高く、買い手には安い取引が可能な、消費者のための販売プラットフォームとなっています。今やクルマという大きな“モノ”でさえ、ネットを通じてほとんど個人間でお得に売買できる、新しいシェアリングサービスの体系です。
ジモティー:地元密着型モノのシェア! 不用品を使いたい人に届ける掲示板サービス
ジモティーは、全国の地域に密着した無料の広告掲示板サービス。日本初の本格的なクラシファイドサイト(目的や地域によって分類された募集広告等を、一覧で掲載する広告媒体)として、2011年11月にサイトをオープンしました。
サイトトップには「無料で譲ってもらえる!0円の新着」という品物がずらり。地域別に調べられます。処分するにも費用が掛かってしまう家具や家電製品、楽器などもこうして近くに住む人たちでシェアすれば、捨てる人ともらう人、両者にとってお得です。
もちろん「無料」取引だけではなく、オプション課金も出品者には用意されており、サイトのマネタイズ戦略のひとつとなっています。そうしたなか、詐欺などのトラブルに関しては、トラブルが報告されているユーザーや振込先口座情報、最近報告されている詐欺の特徴などを情報開示しています。
2. 海外事例からみる市場の規模や、これからの可能性は
海外における、モノのシェアリング領域トップ Listia
海外からあがってくる成功事例は、今後の国内事業の参考になる部分があるでしょう。この項では、モノのシェアリング領域で世界的に有名なListiaに注目してみます。2009年に創業し、サイトの登録ユーザーは2013年の時点で200万人、2015年には800万人を突破したListiaは、2014年までに合計1,000万ドル(約10億円)以上の資金調達に成功しています。年々、盛り上がりを見せています。
では、具体的なサービス内容について説明します。まず、ユーザーは自宅の不要なモノをオークションに出して仮想通貨「Listia Credit」を得ます。そして、その仮想通貨で自分が欲しい他のオークション品を買ったり、PayPalを通じて現金にも換えたりできます。このシンプルで、合理的な仕組みがユーザーに愛されています。
取引には基本的に金銭を使わないため「無料のオークション」とも呼ばれるListiaは、Facebookアカウントかメールアドレスを使って登録します。サイトの基本的な利用方法は一般的なオークションサイトと同様で、出品する際は、商品名やカテゴリなど、必要事項を記入するのみの簡単な手順で、登録料や手数料もかかりません。
取引を活発にする運営側の工夫コミュニケーションの場を提供と、ユーザーの信頼性を明らかに
こうした取引を支えるのには、運営側の工夫がうかがえます。たとえば、コメント表示について。出品後の質問やコメントなどは入札ページの下に表示され、このコメント欄は他のユーザーにも公開されているため、ユーザー同士のコミュニケーションの場としても活躍しているようです。
また、優良出品者には、信頼度やステータスを示す「バッジ」アイコンが与えられるのも特徴的。バッジには「電話番号、クレジットカード・銀行口座確認済」などユーザーの身元証明に関するものから、落札者からポジティブな評価があったときにグレードが上がるものまであり、信頼をひと目でチェックできる目安となっています。
こうした従来のオークションサイトに、シェアリングならではの便利さと運営側の一工夫が業界全体をけん引する領域に成長できた理由ではないでしょうか。
3. モノのシェアリングサービスにおける注意点
透明性の確保
サービスに透明性があることで、モノの提供者も利用者も、安心してやり取りができます。そうした意味で、実名制は原則といえるでしょう。そのユーザーがどのような人物であるか、身元の確認が必要です。
各シェアリングエコノミー業界では、どのようにサービスの透明性を確保しているのか具体的に見てみましょう。たとえばAirbnbの場合、利用条件にプロフィールが実名であることやFacebookで共通の友人がいることなどが設けられています。
また、ライドシェアサービスのUberのように、サービスを提供する側も受ける側もお互いに評価を付けられる「評価制度」があると、トラブルへの抑止力になります。悪い評判をされている人とはやり取りをしない、といった選択が事前にできます。
一方、ユーザー間ではなく運営側が利用者の透明性を確保している場合もあります。外部提供型のパーキングサービスを取り扱うakippaでは、オーナーの負担を抑えるために駐車場に機械類を設置させず目印となるコーンだけを置いていますが、トラブルや事故は少ないといいます。運営側が利用者の決済情報を握っているため、利用者に自制の意識が働き、良好なマナーにつながっていると考えられます。
コミュニティーマネジメントの必要性
ユーザー間トラブルを未然に防ぐためには、運営側の細かいチェックや気遣いが重要なポイントとなります。ユーザーの交流をある程度マネジメントする意識を、運営側が持つべきです。
そうした活動の一環で、リアルイベントを地域ごとに開催することで知らない人同士のつながりに安心感を与えようとする企業もあります。Airbnbでは、ユーザーが不安を抱かないでサービスを利用できるように地域ごとのオフ会を開催しています。運営側がその地域を視察して、ケアしているということをユーザーに体感させ、安心させています。
日本におけるサービス普及のハードル
海外でユーザーに人気となったサービスであっても、日本で受け入れられるとは限りません。日本では何よりも安全性・信頼性が重視されるからです。そして、何かトラブルが起こった際に、それがユーザー間の問題であっても、サービスを提供した運営側の責任になる可能性があります。ですから、シェアリングサービスは、単純に輸入するだけでなく、より入念な安全管理を行う必要があるでしょう。
4. まとめ
モノを扱うシェアリングのサービスがバラエティ豊かで、多くの可能性を秘めているとお分かり頂けたでしょうか。
消費者の指向はモノ・時間・おカネなど、あらゆる“ムダをなくすこと”へと向かっています。そうしたなかで、従来のレンタル業とはひと味違う、今までありそうでなかったアイデアが消費者に受け入れられています。スマートフォンやタブレットなどテクノロジーの発展により、それまでになかった便利なサービスが生まれてきている反面、取引する「ヒト」同士がどのように快くサービスを受けられるのかという根本的な部分で、運営側のバックアップが求められています。