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2020年の東京オリンピックに向けて観光需要が高まっている日本。訪日外国人旅行者が増加する一方で、宿泊施設やガイドの不足などが懸念されています。そうした状況を打開する手段として注目されているのが、シェアリングエコノミーです。

2017年には民泊新法も成立し、ようやく日本でも民泊という言葉が浸透してきました。大手旅行代理店の参入や新サービスのリリースも活発化しており、旅行系シェアリングエコノミーサービスの盛り上がりは高まるばかり。インバウンド受け入れ環境の充実にも期待が寄せられています。

この記事では、企業参入によって注目を集めるシェアビジネスについてご紹介していきます。

目次

      1. 企業参入や新サービスのリリースで注目される旅行系シェアビジネス
        大手旅行代理店「H.I.S」がマッチングサイトをリリース
        旅行に新たな価値を提供する「RootTrip」が日本語版をリリース
      2.  まとめ

1. 企業による参入や新サービスで注目される旅行系シェアビジネス

大手旅行代理店「H.I.S」がマッチングサイトをリリース

2017年6月29日、株式会社エイチ・アイ・エス(以下H.I.S)は訪日外国人旅行者と現地ガイドをつなぐCtoCマッチングサービスサイト「Travee(トラヴィ)」を開設しました。

これまで訪日外国人旅行者への有償ガイドは「通訳案内士」の有資格者にのみ認められていました。しかし、政府が2017年3月に発表した「通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律」によって、施行後は通訳案内士の資格がない人でも有償ガイドが可能になります。

Traveeでは現在ガイドを募集しており、法施行日の2018年1月4日にサイトの本リリースを決定しました。10月1日からはテストリリースとして、通訳案内士の有資格者に限り、訪日外国人旅行者とのマッチングを開始する予定です。

2016年に政府が発表した「明日の日本を支える観光ビジョン」では、2020年の訪日外国人旅行者数4,000万人を目標としており、その数字は2015年の約2倍となっています。増加する旅行者に対してガイドの不足が懸念されていますが、こうした法改正や旅行系シェアリングエコノミーサービスの発展によって観光分野の人材確保・育成が促進され、インバウンド受け入れ環境が充実するのではないかと期待されています。

また、2017年3月には株式会社ジェイティービー(JTB)が約12年ぶりに大規模な組織再編計画を発表し、その主な理由を「OTAやシェアリングエコノミーの台頭による市場の変化」と説明しました。旅行業界におけるシェアリングエコノミーサービスへの参入は、今後さらに活性化していくでしょう。

 旅行に新たな価値を提供する「RootTrip」が日本語版をリリース

旅行系Webサイトやアプリの制作をおこなう株式会社loudは、旅行者とガイドをつなぐシェアリングエコノミー型マッチングアプリ「RootTrip(ルートトリップ)」をTraveeに先駆けて2017年4月にローンチ。さらに同年8月に日本語に対応しました。

同社の発表によると、公開から約4ヶ月でガイド登録者数は100名、サービスを利用した旅行者は250名を超え、アプリ利用者のうち約95%が日本人となっています。当初は英語版だけの公開でしたが、こうした実情を踏まえて日本語への対応を開始したのです。

日本語版をリリースした背景として、訪日外国人だけでなく県外の旅行者が県内の現地ガイドに案内を依頼するといったパターンも想定されているようです。旅行系シェアリングエコノミーサービスというと海外との交流に目を向けがちですが、その需要は国内においても高まっており、ニーズも多様化していることがわかります。

地元の人との交流に重点を置いたCtoCマッチングサービスとしては、その地域ならではの観光体験を目的とした「TABICA(タビカ)」のようなサービスも生まれています。TABICAでは“着地型観光”をキーワードに、地元の人がその地域の暮らしに根ざしたプランを企画・提供することで、より独自性の高い体験を可能にしています。

こうしたシェアリングエコノミーサービスの展開は、単純なガイド人材の増加だけにとどまらず、眠っている観光資源の発掘や地域の活性化につながる可能性も秘めています。

 

2. まとめ

大手企業の参入によって注目が集まっている旅行系シェアリングエコノミーサービス。その存在は、高まるインバウンド需要の受け皿としても注目を集めています。

シェアリングエコノミーサービスは旅行者にとって便利なのはもちろん、受け入れる側にとっても遊休資産の活用や地域活性化といったさらなる価値を生み出しています。従来の「サービスを利用する/提供される」という関係性を越えたシェアリングエコノミーは、今後ますます発展していくでしょう。

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