2017年6月、民泊を全国的に解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)が国会で成立しました。
つまり、誰でも合法的に、住宅を宿泊施設として有料提供できるようになるということです。
これに伴い、空きスペースを貸したい人と借りたい人をマッチングするプラットフォームスペースマーケットを提供している株式会社スペースマーケットも民泊事業へ本腰を入れ始めました。空きスペースの時間レンタルに加え、宿泊施設としても提供を開始することで、21世紀にふさわしい新ビジネスモデルの展開が期待されます。
このほか、民泊に続々と参入する企業のビジネスモデルとも比較しながら規制の壁を取り払われた、これからの民泊市場について考えてみましょう。
目次
- 新プラットフォーム「スペースマーケットSTAY」とは?
- 急成長する民泊マーケットに続々と参入~企業一覧まとめ~
- まとめ
1.新プラットフォーム「スペースマーケットSTAY」とは?
空間のシェアリングエコノミーを提供する「スペースマーケット」
空き家や空室、施設の空きスペースを、時間単位でレンタルできるスペースマーケットは、かねてから注目を集めていました。
スペースマーケットの提供価値
- 空き家などを貸したい人はホストとして登録することで、遊休不動産を有効活用でき収入を得られる
- スペースを借りたい人は、格安料金でニーズに合ったスペースを見つけることができる
- C2C(ホスト対ゲスト)のやりとりを、スペースマーケットが審査しマッチングさせることで、双方が安心して利活用できる
これらは、まさに現代にふさわしいサービスといえるでしょう。
このスペースマーケットが、民泊解禁(合法化)に伴い、遂に宿泊施設としてもスペースを貸し出せるように、サービスの範囲を拡大します。Airbnbを始めとする民泊マッチングサイトは、今後ますます増えていくと思われますが、空きスペース貸し借りのマッチングサイトが前身となるスペースマーケットSTAYについてご紹介しましょう。
新サービス「スペースマーケットSTAY」のサービス概要
スペースマーケットSTAYは、AirBnBを代表とする民泊マッチングサイトと同様、自宅の空き部屋や使っていない別荘などを宿泊施設として貸し出したい貸主と、そういった空きスペースに宿泊したい借主をマッチングするサービスです。
サービス自体は民泊新法の施行(現状では2018年6月予定)と同時に提供開始される予定であり、2017年9月より、民泊ホストの事前登録受付を開始しています。
スペースマーケットSTAYの特徴的な部分を、以下で解説します。
時間制レンタルと宿泊、2通りの運用ができる
民泊参入企業が相次ぐなか、スペースマーケットならではの特徴は、時間制レンタルサービスに新たな宿泊サービスをプラスした2通りの貸し出し方を選択できる点にあります。
民泊新法で制限される宿泊業の可能日数は年間180日ですが、スペースマーケットSTAYでは残りの日数をこれまでのように時間制レンタルとし、遊休不動産のさらなる効率活用を目指します。年間を通じて無駄なく活用できるのが、ほかの民泊マッチングサイトとの大きな差といえるでしょう。
扱われる物件は、古民家や別荘、アトリエハウスなどバラエティに富んでおり、これまでも宿泊要望の声が寄せられていました。このサービスにより、ゲストもこれまで以上に豊かなひとときを楽しめるのではないでしょうか。
ホスト・ゲストへの補償制度が万全
ゲストによる住宅・施設の破損、住宅・施設の瑕疵によってゲストが怪我をした場合など、想定されるあらゆる損害に対して1億円を上限とした補償制度があります。貸主と借主、双方にとって安心です。
ホスト向けミートアップイベントなどによるフォロー
スペースマーケット弁護士監修による民泊関連の規制・ルールの解説やミートアップイベントなど、合法的に民泊を運営するためのフォローアップが徹底されています。
また、2018年6月スペースマーケットは西武信用金庫と包括協定を結びました。
これにより、西武信用金庫は顧客が持つ空きスペースや相続物件を民泊に活用する提案やリノベーション支援ができるようになり、今までとは違った形での顧客の資産運用のサポートができるようになります。スペースマーケット側は西武信用金庫の顧客の持つ空きスペースを自社サービスに掲載したり、民泊に関するスペース活用勉強会を開催したりといった支援を行うとのことです。
スペースマーケットはこれを足がかりに全国の信用金庫や地銀との連携を深め、銀行顧客の遊休資産を活用することで、現在社会問題になりつつある空き家・空き物件問題を解決し、社会に貢献していきたいという考えがあります。
2.急成長する民泊マーケット!参入企業一覧まとめ
民泊新法成立に伴い、スペースマーケット以外にもさまざまな企業の参入が相次いでおり、民泊市場は2020年度には600億円まで成長すると予測されています。
スペースマーケット以外に、どのような企業が民泊事業へ参入しているのか、それぞれのビジネスモデルについてもご紹介しましょう。
TATERU「TATERU bnb」
アプリで始めるアパート経営TATERUでおなじみ、株式会社インベスターズクラウドは、民泊代行サービスTATERU bnbを開始しました。
認可申請・運用・リノベーションに至るまで多岐にわたり、民泊運営の完全サポートを行います。多言語対応オペレーターの配置、Webコンシェルジュによるチャット対応などゲストへのサポートも万全。
不動産とIT技術が融合したリアルエステートテックによる管理実績をもとに、完全代行で民泊ホストを応援します。
また、TATERUは2018年6月より民泊物件のクリーニングサービスbnb CLEANINGを開始しました。
民泊物件のオーナーにとって負担となる民泊スペースの掃除を代行することにより、オーナー側のコストを削減し、質の高い民泊サービスを提供し、清掃担当者という雇用を創出するという狙いがあります。
クリーニングサービスを依頼する方法は非常にシステマチックになっています。宿泊者がチェックアウトすると、清掃が必要な施設の情報が通知されます。清掃担当者はその情報を元に施設へ向かい、発行されたキーでスマートロックを解除。担当者は清掃後に写真付きで報告します。また、宿泊者が清掃に対してレビューを行うことができるので、サービスレベル向上につなげることができます。
百戦錬磨「STAY JAPAN」
民泊マッチングサポートの先駆的企業である株式会社百戦錬磨。
農業・漁業・古民家など日本の田舎ならではのユニークな体験民泊による地方創生、都市部の空室を利用した民泊による宿泊施設不足解消への貢献を訴える同社運営しているのか、民泊サイトSTAY JAPANです。
旅行はもちろん、ビジネスによる宿泊、海外在住の日本人が一時帰国した際や、仮住まいに至るまで、あらゆる用途に適した個性的な宿泊施設がたくさんそろっています。
大東建設不動産「民泊Gateway」
賃貸住宅仲介業を主な事業内容とする大東建設不動産株式会社も、賃貸住宅空室対策を兼ねた資産運用として、民泊サポートシステム「民泊Gateway」を展開します。賃貸仲介のノウハウを生かし、設備やマニュアル、清掃まで、物件オーナーの要望に沿って提案サポートが行われるため安心です。
また、物件オーナーとは別の第三者によって民泊運営を考えている場合についても、運営業者の能力審査やサポートを行います。
ハウスドゥ「空部屋Do!」
http://www.housedo.co.jp/akibeya/
売買を始め、フランチャイズ事業やリースバックまで、さまざまな不動産事業を全国展開する株式会社ハウスドゥも民泊事業に参入する考えです。
単なる空き家や空室だけでなく、子供の独立により余っている部屋や、使っていない応接室といった、居住中住宅の空部屋を、居住者の要望に沿った形でリフォームすることなども提案。あらゆる空きスペースを対象とした民泊活用を支援しています。
遊休不動産を有効活用したい人向けのサイト「空部屋Do!」では、賃貸・借上げ・下宿・民泊と、各物件の状況に適した資産運用方法の提案が受けられます。
楽天×LIFULL「Vacation STAY」
https://www.rakuten-lifull-stay.co.jp/
IT大手の楽天株式会社と、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」で有名な株式会社LIFULLが、共同で設立したのは民泊サービス専業会社「楽天LIFULL STAY」。楽天の9,000万人という顧客基盤と、LIFULLの豊富な不動産ネットワークで、国内随一の民泊プラットフォームを目指します。
さらに、民泊新法成立以降の2017年7月には、エクスペディアグループのHomeAway、台湾のAsiaYo.com、中国の途家(トゥージア)など、各国の既存民泊サイトと業務提携することが発表されました。
また、民泊で楽天スーパーポイントの付与や利用も可能なことから、国内ゲストからの需要が高まることも大いに期待されます。
また、楽天LIFULL STAYは2018年6月に、貸別荘やコンドミニアム、町屋などに滞在するためのバケーションレンタルサイトを運営するホームアウェイ、古民家再生を手がける全国古民家再生協会と協働し、新たに古民家民泊へ参入することを発表しました。現在日本に古民家が128万戸ほどある中で、そのうち半分の約64万戸が再生可能と試算している模様です。
ホームアウェイの会見によると、日本旅行でバケーションレンタルを望む外国人は74%にのぼり、古民家での宿泊滞在を希望する外国人もアメリカ、フランス、イギリスなどでは80%と、より日本の暮らしを体験出来る滞在方法に注目が集まっています。しかし、現状ではその受け皿がほとんどなく、実際に日本でバケーションレンタルをしたことのある外国人は9%にとどまっているそうです。
そこで上記楽天LIFULL STAY 、楽天LIFULL STAY 、全国古民家再生協会ら3社はこの点に商機を見いだし、外国人旅行者だけではなく日本人の家族旅行の滞在先としても魅力的な選択肢の一つとなると見ています。
それでは具体的にどのような仕組みで古民家を発掘し、民泊の受け入れ先として運営していくのかを見ていきましょう。
まず、全国古民家再生協会は古民家鑑定士が耐震性、気密性、快適性などの項目をチェックし、宿泊施設として利用できると認定した古民家に「古民家宿泊鑑定済ロゴ」ステッカーを配布し、掲示するように働きかけます。これにより、宿泊施設としての信頼性を担保できるということです。
そして、古民家の開発支援と運用を担うのは楽天LIFULL STAYです。必要となる清掃会社の手配、問い合わせ対応および多言語対応など、顧客にとって利用しやすいサービスを目指します。また、ホームアウェイは古民家の販売やマーケティングなどを行い、事業をトータルバックアップするとのことです。
世界最大規模Airbnbもさらなる拡大へ
民泊事業の代名詞ともいえる、アメリカAirbnbも、日本での民泊解禁に伴い、日本国内銀行としては初めてとなる、株式会社みずほ銀行との業務提携を発表しました。
日本全国に拠点を持つみずほ銀行が、取引先の保有する社宅やお寺、駅舎などをAirbnbへ紹介することによって、体験型民泊のさらなる拡大が期待されます。
また金融機関提携ならではの、リノベーション費用融資や損害保険についての開発が検討されているのも注目したいポイントです。
ALSOK「民泊運営サポートソリューション」
民泊マッチングの運営自体ではなく、サポートとして参画の意を示したのは、ALSOK綜合警備保障株式会社。民泊運営に欠かせない防災・防犯設備、救護設備、清掃に至るまでサポートする「民泊運営サポートソリューション」を提供しています。
提供エリアとしては、国家戦略特区指定の自治体に認定を受けた民泊施設に限られていますが、今後の動向によってはサービス提供の範囲が拡大することも考えられます。
3.まとめ
民泊や空間のシェアは、「使わないままでいる空間」を、「必要としている人」と共有することで、宿泊地不足や地方活性化などの社会課題解決に貢献し、さらに個人が副収入を得られる画期的なサービスです。民泊新法成立に伴い数々の企業が参入し、これまでのグレーなイメージから、シェアリングエコノミー市場を大きく発展させるクリーンなイメージへと変わっていくことでしょう。
2020年東京オリンピックに向け、さらに需要の拡大が予測される民泊市場。今ある資産を無駄にせず、社会へ還元していく素晴らしいビジネスへの扉は開かれたばかりです。