シェアリングエコノミーラボ (Sharing Economy Lab)

「日本再興戦略2016」とは? シェアリングエコノミー推進など第4次産業革命に向けた施策が閣議決定

シェアリングエコノミーの普及には規制緩和や新たな法整備など、政府の対応が待たれる問題が多くありました。これらのシェアリングエコノミー市場が抱える障害と政府が打ち立てる成長戦略がリンクし、シェアリングエコノミー市場も大きく動く変動期を迎えつつあるようです。

目次

  1. 日本再興戦略2016とは何か
  2. シェアリングエコノミーの観光分野における期待
  3. 民泊やカーシェアの推進
  4. 民泊における新法の策定
  5. その他の分野での今後の動き
  6. 新たなガイドライン作り
  7. まとめ

1.日本再興戦略2016とは何か

政府が推進する日本の成長戦略の第2ステージの課題として打ち立てられ、名目GDP600兆円の実現に向けた成長戦略が日本再興戦略 2016 ―第次産業革命に向けて―です。

電力・農業・医療など長年タブー化していた分野での構造改革や国際競争の障害となっていた円高・法人税・TPP妥結などを2013年からの取り組みで改善してきたものの、いまだ民間への波及は弱い・反応が鈍いと分析している政府が、官が実践する改革を本格的な民間の動きにつなげるための命題として、「新たな有望成長市場の創出」、「人口減少のデメリットを補う生産性革命」、「新たな産業構造を支える人材強化」の改革を日本再興戦略2016は担っています。

その中でGDP600兆円の実現に必要な施策と位置づけられる「官民戦略プロジェクト 10」では、新たな有望成長市場の創出、ローカルアベノミクスの深化、官民連携による消費マインド喚起策と大きく3つに分けて鍵となる施策を示しているのですが、そこでシェアリングエコノミーの促進が複数の施策で言及されています。

「官民戦略プロジェクト 10」

1. 第次産業革命の実現IoT・ビッグデータ・AI・ロボット
2. 世界最先端の健康立国へ
3. 環境エネルギー制約の克服と投資拡大
4. スポーツの成長産業化
5. 既存住宅流通・リフォーム市場の活性化
6. サービス産業の生産性向上
7. 中堅・中小企業・小規模事業者の革新
8. 攻めの農林水産業の展開と輸出力の強化
9. 観光立国の実現
10. 官民連携による消費マインド喚起策等

引用:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/2016_zentaihombun.pdf

 

2.シェアリングエコノミーの観光分野における期待

民泊やカーシェアの推進

日本再興戦略 2016 ―第次産業革命に向けて―の示すところでは、「第項の具体的施策」の「Ⅰ 新たな有望成長市場の創出、ローカルアベノミクスの深化等」内の「観光立国の実現」の「ii観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業」という項目で、2016年時点で民泊サービスへの対応として政府が計画していた規制改革と、すでに当時から実施されていた国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業について言及されています。

 

⑦ 民泊サービスへの対応

・住宅戸建住宅、共同住宅等の全部又は一部を活用して宿泊サービ スを提供するいわゆる「民泊サービス」については、急増する訪日外 国人観光客のニーズや大都市部での宿泊需給の逼迫 ひっぱく 状況への対応及 び地域活性化の観点から活用を図ることが求められている一方、感染 症まん延防止やテロ防止などの適正な管理、地域住民等とのトラブル 防止に留意したルールづくりが求められている。これを踏まえ、「規制 改革実施計画」に沿って、一定の要件を満たす民泊サービスを適切な 規制の下で推進できるよう「家主居住型」と「家主不在型」の類型別 に規制体系を構築するべく、厚生労働省と観光庁で開催している「民 泊サービスのあり方に関する検討会」において引き続き検討を進め、 本年月を目途に最終報告書を取りまとめ、同取りまとめを踏まえ、 早急に必要な法整備に取り組む。

・「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」の実施状況等について検 証を行い、具体的な課題を把握した上で、制度のより一層の利用が図 られるよう検討を行う。

 

上記民泊サービスの規制改革案は、住宅宿泊事業法通称、民泊新法として2017年3月に閣議決定され、同年6月に衆参議院本会議で可決、法案は成立しました。

これにより特区以外のエリアでは無法地帯といっても過言ではなかった民泊市場で、民泊ホスト・民泊運営仲介会社・民泊仲介サイトらに対する義務と、違反した場合の罰則が定められました。これによりサービスの利用者と提供者が安心して利用できる合法のサービスとなって円熟した市場に成長していくことが期待されます。

同じく「観光立国の実現」の「iiiすべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境」にはカーシェアの活用を促す記載もあります。

 

② 新幹線、高速道路などの高速交通網の活用による「地方創生回廊」 の完備

・高速バスネットワークの強化を図るため、サービスエリア・パーキン グエリアの乗継拠点整備、高速バスストップにおけるパークアンドラ イドを推進するとともに、立体道路制度の拡充により鉄道等との乗継 強化の取組を官民連携で推進し、交通モード間の接続モーダルコネ クトの強化を図る。また、地域バスの利用環境の向上に向けた、タ ウン・モビリティマネジメント、バス待ち環境の改善、道の駅のデマ ンドバスやカーシェアの乗継拠点化、BRT 等による輸送効率化・省人 化などの取組を官民連携で推進する。

・過疎地等における訪日外国人をはじめとする観光客等の移動がより便利で快適なものとなるよう、「国家戦略特別区域法」の枠組を活用して、 自家用自動車の活用拡大を図る。

 

ここでは人口減少によって公共の交通インフラが充足していない過疎地でも、観光客が移動に困らないように国家戦略特別区域法の規制緩和を利用して、自家用車をカーシェアリングなどに利用できるようサービスを整えるよう提言しています。

また下記の「Ⅴ 改革のモメンタム 「改革」の推進」で示される「技術等を活用した社会的課題の解決・システムソリューション輸出 次世代都市交通システム・自動走行技術の活用」の「ii 高齢者等の移動手段の確保・隊列走行の実現」では、高齢者や障害者を含む全ての人が快適に移動できるように、シェアリングエコノミーを活用できるビジネスモデルの確立を目指すとしています。

 

1.解決すべき社会的課題

・高齢者、障害者等の移動制約者を含む全ての人が安全・快適に移動す ることができる社会の実現を目指す。

・人口減少社会における労働力ドライバー不足へ対応する。

・シェアリングエコノミー社会の在り方を踏まえ、安全・安心と利便性 の双方を確保できるビジネスモデルの作り込みを目指す。

 

過疎地や労働力が不足する地域や業種では、あらゆる人が働く機会を得てその労働力が適切に社会に生かされる仕組みが必要であり、その課題にシェアリングエコノミーの特長を生かして解決したいということが分かります。

都市部では公共交通網やタクシーが十分に機能していて、既存サービスがカーシェア参入に既存サービスがカーシェア参入に反発したり、実際に参入する余地がないという見解も多い日本ですが、それ以外の地域では観光客だけでなく住民にとっても、移動の不便という障害が確実に存在しているのです。

 

3.民泊における新法の策定

戦略特区以外の地域での民泊サービスを規定する住宅宿泊事業法通称、民泊新法が2017年6月9日に成立しました。これは日本再興戦略2016以降、実際に動きがあったシェアリングエコノミーに関わる規制緩和です。

民泊新法を制定する上で、争点のひとつとして注目されていたのは民泊営業が可能な日数でしたが、この度は180日、つまり年間の半分が営業可能とされました。また住民の生活環境の悪化を防ぐために必要と認められる場合は、都道府県などによって区域を指定して営業日数をある程度制限できます。

民泊新法は、民泊に関わる3者がそれぞれ異なる管理先に届け出が必要なことも注意したい点です。

  • 住宅宿泊事業(ホスト)を営もうとする場合、都道府県知事への届出が必要
    住宅宿泊事業とは……他人を180日以内で住宅に宿泊させる事業
  • 住宅宿泊管理業(運営代行事業者)を営もうとする場合、国土交通大臣の登録が必要
    住宅宿泊管理業とは……家主不在型の住宅宿泊事業で住宅の管理を受託する事業
  • 住宅宿泊仲介業(仲介業者やサイト)を営もうとする場合、観光庁長官の登録が必要
    住宅宿泊仲介業とは……宿泊者と住宅宿泊事業者との間の宿泊契約の締結の仲介をする事業

参考:http://www.mlit.go.jp/kankocho/news06_000318.html

 

その他の分野での今後の動き

民泊とカーシェア以外で日本再考戦略2016が示している分野は「第項の具体的施策」の「Ⅰ 新たな有望成長市場の創出、ローカルアベノミクスの深化等」内の「2新たに講ずべき具体的施策」という項目で、「② 規制・制度改革、データ利活用プロジェクト等の推進」のひとつとしてシェアリングエコノミーについて触れています。

 

C to C のビジネス領域関連シェアリングエコノミーの推進

・ IT の革新的発展を基盤とした、遊休資産等の活用による新たな経済活 動であるシェアリングエコノミーの健全な発展に向け協議会を立ち上 げ、関係者の意見も踏まえつつ、本年秋を目途に必要な措置を取りまと める。その際、消費者等の安全を守りつつ、イノベーションと新ビジネ ス創出を促進する観点から、サービス等の提供者と利用者の相互評価の 仕組みや民間団体等による自主的なルール整備による対応等を踏まえ、 必要に応じて既存法令との関係整理等を検討する。

 

日本発のサービスとして今もっとも注目を集めているCtoCのプラットフォーマーと言えば、さまざまなモノの売買が可能なメルカリです。使いかけの化粧品やトイレットペーパーの芯が売れるという現実は多くの人を驚かせましたが、そういった報告からも既存のCtoCプラットフォームとは一味違う性質を持っていることが分かります。このように新しいCtoCプラットフォームが誕生し、取り扱う分野はモノだけでなく、空間・お金・スキルなど多岐に渡り、市場が活発化しています。

テレワークを使用したアウトソーシングとして人的リソースを仲介するCtoCのプラットフォーマーが行うクラウドソーシングも成長している分野です。

こうした新たなシェアリングエコノミーサービスの誕生と成長を妨げることなく、一方で利用者の安全性を確保できるような法整備に代表される基盤作りを積極的に行っていくという姿勢がここでは伺えます。

 

4.新たなガイドライン作り

上記の日本再興戦略2016の閣議決定後、具体的な政府の動きとしては、内閣官房情報通信技術IT総合戦略室において2016年7月からシェアリングエコノミー検討会議が始まっています。同室のシェアリングエコノミー検討会議中間報告書ではシェアリングエコノミー事業者は自主的ルールを策定してシェアリングエコノミーの安全性・信頼性の確保するように提言し、シェアリングエコノミー・モデルガイドラインを示しています。

これを受けてシェアリングエコノミー協会は、独自の認証制度を発足しました。これによりシェアリングエコノミー事業者がこの制度を導入し、承認を得ることができれば、シェアリングエコノミー業界が基準とするルールに適応したサービスであることをユーザーに証明できます。

現時点では発足直後の制度ですが、シェアリングエコノミー認証制度や認証マークが今後普及していけば、このマークを提示している事業者は安全なサービスを提供していると判断できる基準になります。このような取り組みは利用を検討するユーザーの信頼を獲得し、サービスの普及につながるものと期待されます。

上記をはじめ、成長市場として注目されるシェアリングエコノミー業界がさまざまな仕組みを構築し、成長する兆しを見せる中で、プラットフォームの安全性の確保のため事業者に対するサービスを提供する企業も現れています。サービス利用に際して必要な本人確認のための身分証明書を安全に管理する仕組みや、問い合わせ窓口のカスタマーサービスなどがあります。

 

5.まとめ

第4次産業革命と言われるAIとIoTの時代を日本が勝ち抜くための成長戦略として、政府が掲げる日本再興戦略2016を読み解くと、シェアリングエコノミーは有望な成長市場として位置づけられていることがわかりました。すでにシェアリングエコノミーは大企業が参入しない小さな市場ではなくなりつつあるのかもしれません。