シェアリングエコノミーがさまざまな業界に普及し、人々の暮らしを変えつつあります。ビジネスの世界では、地方の労働力をシェアリングエコノミーで活性化させようとする企業が誕生しています。
どこに住んでいてもパソコンを使って仕事ができる現在のIT環境を生かし、仕事の発注者と受注者を結びつけるサービス。これらを利用することで地方に住みながら都会の企業の仕事を請け負ったり、自宅で働いて通勤時間を省いたり、時間活用の自由な選択を実現しています。
このような潮流は、都市部への人口集中に対抗する地方活性化の起爆剤になるのでしょうか。
※編集部注
2017年4月14日に加筆修正しました。
目次
- 従来の働き方を覆すクラウドソーシング
・クラウドソーシングとは
・労働者から見たクラウドソーシングのメリット
・企業から見たクラウドソーシング活用のメリット
・広がるクラウドソーシング。米国では課題も浮き彫りに - 「クラウドソーシング」という様々な働き方
・ランサーズとクラウドワークスについて
・その他の総合型クラウドソーシングプラットフォーム - まとめ
従来の働き方を覆すクラウドソーシング
クラウドソーシングとは
クラウドソーシングとは、インターネットを介して他者に仕事を依頼できるサービスです。受注者は会社に出勤しなくてもできる業務委託の仕事を請け負います。依頼に際して発注者は依頼内容に合わせて、依頼方式を選んでサービスに登録します。
サービスのよって呼称が少し異なりますが、一般的に「タスク方式」はデータ入力などシンプルで1件あたりのボリュームが少ない仕事に適した依頼方式です。また「プロジェクト方式」はデザインやプログラミングなどスキルや経験が求められ、ボリュームがある依頼に適した方式です。そのほかネーミングやロゴ制作に適した「コンペ形式」は複数の応募から最適なものを選んで対象者に報酬を支払います。
労働者から見たクラウドソーシングのメリット
これまで多くの人々は、企業に雇用され、会社員として通勤と就労を日常の暮らしとして行ってきました。しかし都市への人口集中がもたらす影響は大きく、自宅の購入などに伴って長時間の通勤が必要になったり、通勤・労働と家事や子育ての両立が大きな負担となったりしています。こういった状況のなかでクラウドソーシングへの関心が高まっています。
クラウドソーシングとは、インターネットを介して他者に仕事を依頼できるサービスです。受注者は会社に出勤しなくてもできる業務委託の仕事を請け負います。
オフィスに出勤しなくていいので、自由度の高い働き方ができます。企業もオフィスや雇用者の通勤にかかる費用をカットできるので、メリットは大きいと言えます。これはインターネットが普及して社会構造が変化したために、実現可能になりました。
将来に対する不安から労働者の副業が活発になっていることや、仕事によって住む場所を限定されたくないという人々にとっての新しい選択肢となることも、クラウドソーシングへの注目が高まる要因となっています。
一方クラウドソーシングは全体的に単価が安く押さえられた依頼が多く、これだけで生計を立てるのはかなり厳しいのが現状です。クラウドワークスの決算資料(P10)によると、クラウドワースク上で月収20万円を超えているワーカーは2016年9月時点で111人。登録ワーカー80万人(2016年1月時点)に対する割合で見ると、ごく僅かです。
また、報酬以外の面でクライアントのことをよく知らないまま受注するので、作業が進むうちにトラブルに巻き込まれたり、コミュニケーション不足から無駄な工数を踏むことになる可能性があります。
企業から見たクラウドソーシング活用のメリット
企業も、人材育成にかかる費用や時間の削減を図る意図と、常に変化する課題すべてに、社内の人材のみで対処を行うことが困難になったことから、経験やスキルのある外部の人間に必要に応じて依頼できるのは、メリットだと考えるようになっています。
一方で業務内容を外注することによる情報漏えいの危険性や、社内環境へのアクセスからセキュリティ保持の問題があるほか、受注者が業務をしっかり行ってくれる人物かどうやって見極めるのか、などクラウドソーシングを利用するリスクがあります。
広がるクラウドソーシング。米国では課題も浮き彫りに
今後シェアリングエコノミーは拡大していくと考えられており、その中の一種であるクラウドソーシングで働く人々の未来の展望は決して暗いものではありません。しかしアメリカでは、こういった労働者には労働組合や雇用の保障がなく、社会保険や有給保障がなされないことが問題視され始めています。そのため、どのようにシェアリングエコノミーのプラットフォームで働く人々の法的地位を守るべきか、企業の社会的責任を含めて早急な問題解決が求められています。
「クラウドソーシング」という様々な働き方
ランサーズとクラウドワークスについて
日本の二大クラウドソーシングプラットフォーマー「ランサーズ」と「クラウドワークス」。比較されることの多い2社の特徴と異なる点を見ていきましょう。
ランサーズ http://www.lancers.jp/
2008年にサービスをリリースしたランサーズは、日本のクラウドソーシングのプラットフォーマーとしては歴史ある事業者です。
■ランサーズに関するデータ
・総依頼額: 1147億739万1394円(2017年3月31日時点)
・登録件者数:1,429,002件(2017年3月31日時点)
・登録者:36万人(2014年8月時点)
・登録カテゴリ:141(2017年3月31日時点)
■ランサーズの利用料
<登録料>
・受注者も発注者も無料
<発注者のシステム利用料>
ランサーズは登録無料ですが、受注者は報酬額によって決められたシステム利用料を支払うと定められています。
システム利用料は報酬が多ければ割合が低くなるよう設定されており、現在は5~20%です。
<受注者のシステム利用料>
・20万円を超える金額部分:5%の利用手数
・10万円超〜20万円以下の金額部分:10%の利用手数料
・10万円以下の金額部分:20%の利用手数料
■ランサーズの特徴
仕事の受注者は仕事を141カテゴリの中から項目を選び、自分のスキルにあった仕事を探します。発注者は、依頼したい内容を同様の8ジャンルからカテゴリ・サブカテゴリを選び、形式をコンペ形式とプロジェクト形式のどちらかを指定して依頼を登録します。ランサーズでは固定報酬式のみでしたが時間制が導入されました。
ランサーズでは、下記のようなオプションを発注者が有料オプションで依頼内容の表示方法を選ぶことができます。
・完全非公開オプション +10,800 円
ご依頼を不特定多数の方に見られたくない方向けに検索エンジンの検索結果に表示されず、ランサーズ内だけで表示されるようになります。NDA遵守を宣言するランサーのみ閲覧できます。
・急募オプション +7,560 円
多くのフリーランスに提案してほしい方向けに、お仕事一覧ページで、最も目立ち、他の依頼よりも優先して上位表示されます。ランサーズでは平均提案数は2.65倍と公表しています。
・認定ランサーへの一斉通知オプション +16,200 円
豊富な実績を持ち、発注者から高評価を得ている認定ランサー全員にメールでダイレクトに告知・宣伝します。
クラウドワークス https://crowdworks.jp/
2011年に設立されたクラウドワークスは、日本のクラウドソーシングプラットフォーマーとして後発ですが、その成長速度に注目が集まる事業者です。
■クラウドワークスに関するデータ
・総依頼額:45.7億円(2016年9月期)
・登録者数:130万人(2017年3月31日時点)
・登録カテゴリ:188(2017年3月31日時点)
■クラウドワークスの利用料
<登録料>
・受注者も発注者も無料
<発注者のシステム利用料>
・無料
<受注者のシステム利用料>
・20万円を超える金額部分:5%の利用手数
・10万円超〜20万円以下の金額部分:10%の利用手数料
・10万円以下の金額部分:20%の利用手数料
・タスク形式:無料クラウドワークスも登録無料ですが、受注者の報酬からシステム利用料を支払うと定められています。システム利用料はランサーズと同様に報酬が多ければ割合は低くなるよう設定されており、現在は5~20%。ただしクラウドワークスの「タスク」形式の依頼はシステム利用料が0円なのが特徴です。
■クラウドワークスの特徴
受注者は受注したい仕事を「プロ」「経験不問」「コンペ」「タスク」「特急ボーナス」などの特徴や仕事の種類などから探します。
発注者は、依頼したい内容を同様の10ジャンルから選び、選んだジャンルによってコンペ形式とプロジェクト形式、タスク形式から指定して、依頼を登録します。
クラウドワークスでも有料オプションで依頼の表示場所を選ぶことができます。クラウドワークスとランサーズでは差異があっても新しいサービスとして取り入れる傾向があります。
・注目オプション +6,480~12,960円
より多くのメンバーにお仕事を見てもらいたい方向けに「仕事を探す」内の全ページにおいて通常掲載とは別にオプションごとのPR枠にランダム表示します
・100人一斉告知オプション +6,480円
依頼頂いたカテゴリの仕事経験があるお薦めメンバー100人にメールで告知・宣伝をします。
・NDAオプション +21,600円
NDA締結済みでスカウトを送られたクラウドワーカーのみ、仕事の閲覧・応募ができるようになります。
その他の総合型クラウドソーシングプラットフォーム
シュフティ https://www.shufti.jp/
■シュフティに関するデータ
・ユーザー数:34万人(2017年3月31日時点)
・クライアント数:1万3,000社(2017年3月31日時点)
■シュフティの利用料
・登録料:無料
・ユーザーシステム利用料:報酬の10%の手数料が発生
シュフのクラウドワーカーをメインターゲットにしたタスクワークに強いクラウドソーシングプラットフォームです。
Yahoo!クラウドソーシング http://crowdsourcing.yahoo.co.jp/
■Yahoo!クラウドソーシングに関するデータ
・タスク実施総数:3010万件(2017年3月31日時点)
■Yahoo!クラウドソーシングシュフティの利用料
・利用料:タスクのランクごとに異なり最低料金は1080円(税込)〜
・登録料:無料
・報酬:Tポイントでの支払い
ちょっとした空き時間を生かしてお小遣いを稼ぐことをコンセプトに、軽いアンケートやデータチェックに強いクラウドソーシングプラットフォームです。現金での支払いはなく、全ての報酬はTポイントです。
CROWD http://www.realworld.jp/crowd/
■CROWDに関するデータ
・総作業実績数:6,319万件(2017年3月31日時点)
・登録会員数:83万人(2017年3月31日時点)
■CROWDの利用料
・利用料:無料
・報酬:ポイントサイトげん玉のポイントでの支払い
クラウドはポイントサイトげん玉も運営しているリアルワールドが手がけるクラウドソーシングプラットフォームです。ポイントサイトのユーザーにはメリットが大きいサービスになります。
Bizseek https://www.bizseek.jp/
■Bizseekの利用料
・利用料:無料
・ワーカーシステム利用料:10万円超の部分は報酬の5%、10万円以下の部分は報酬の10%の手数料が発生
ビズシークは2013年にサービスを開始したクラウドソーシングです。他のサービスより手数料が低く設定されており、依頼数が増えればユーザーが集まる可能性を持っています。急募・優先・非公開の有料オプションも用意されいてます。
Job-Hub https://jobhub.jp/
■Job-Hubに関するデータ
・登録会員数:8万人(2015年5月22日時点)
■Job-Hubの利用料
・利用料:無料
・ワーカーシステム利用料:無料
・クライアントシステム利用料:支払う報酬の10%の手数料が発生
2012年8月からサービスを開始したジョブハブは、ほかのクラウドソーシングと大きく異なり、システム利用料をクライアント(依頼者)が支払うシステムになっています。
ココナラ https://coconala.com/
■ココナラに関するデータ
・登録ユーザー数:20万人(2015年11月時点)
・出品数:5万品(2015年11月時点)
■ココナラの利用料
・利用料:無料
・販売者手数料:システム利用料+決済手数料(クレジットカード等の決済システム利用料)で構成され、5万円未満は30%、5~25万は25%、25万以上は20%の手数料が発生
2012年にスタートしたサービスココナラはCtoCで個人のスキルを一律500円で取引するマーケットプレイスです。
Craudia https://www.craudia.com/
■Craudiaの利用料
・利用料:無料
・依頼者手数料:無料
・ワーカー手数料:5万円未満は15%、5~10万円は10%、10~100万は5%、100万以上は3%の手数料が発生
クラウディアはワーカーが手数料を支払いますが、ほかのクラウドソーシングより10万円までの金額で料金が低くなっています。
クリ博オンラインワーク https://www.onlinework.jp/
■クリ博オンラインワークに関するデータ
・登録者数:2万1,164件(2017年3月31日時点)
・依頼件数:2,353件(2017年3月31日時点)
■クリ博オンラインワークの利用料
・利用料:無料
・依頼者手数料:無料
・ワーカー手数料:報酬25万円未満は10%、25.万円以上は5%の手数料が発生
クリ博オンラインワークはイマジカが運営するクラウドソーシングプラットフォームです。
Skillots http://www.skillots.com/
■Skillotsに関するデータ
・登録者数:15,153人(2017年3月31日時点)
■Skillotsの利用料
・手数料:無料
・依頼者手数料:報酬支払い時3万円未満は30%、3から10万円は20%、10~50万円は15万円、50万円以上は10%の手数料が発生
スキロッツは日本だけでなく世界のクリエーターが登録するクラウドソーシングサービスです。
Workshift https://workshift-sol.com/
■Workshiftに関するデータ
・登録者数:3万人(2016年4月時点)
・登録者地域:110ヵ国(2016年4月時点)
■Workshiftの利用料
・受注者手数料:5万円以下は20%、5万円を越える部分は10%の手数料が発生(累積二段階料率)
ワークシフトは海外のお仕事受注者が登録されている日本と海外の取引に特化したクラウドソーシングプラットフォームです。
まとめ
日本でもクラウドソーシングのプラットフォームの利用が活発化し、事業者は地方自治体とも協業して、全国での利用を促進しています。一方シェアリングエコノミーの先進国アメリカでは、クラウドソーシングも含めたシェアリングエコノミーで働く人々の法的地位の確立について、議論が活発化しています。
未来の働き方と言われるクラウドソーシングに対する企業の社会的責任のあり方に、今後注目が集まりそうです。