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2018年11月16日、スペースシェアリングのプラットフォームを運営するスペースマーケットと、不動産大手の東京建物が業務提携することを発表しました。

遊休物件を時間貸しするというスペースマーケットのビジネスモデルは、不動産の新たな価値や利活用を呼び覚ますとして近年大きな注目を集めています。そんな中の業務提携は、不動産業界にも大きなインパクトを与えそうです。一体どのようにして業務提携をするに至ったのか、詳しい経緯や双方の目論見、対象となる物件について解説します。

目次

  1. 東京建物とスペースマーケットの業務提携について
    ・提携の経緯
    ・スペースマーケットの狙い
    ・東京建物の狙い
  2. 具体的なスペース貸し物件について
  3. まとめ

1.東京建物とスペースマーケットの業務提携について

提携の経緯

https://spacemarket.co.jp/archives/12811

左から東京建物野村氏・スペースマーケット重松・XTech Ventures西條氏

ともに不動産の利活用を目指すという共通項はあるものの、東京建物は創業120年大手を超える大手企業。対してスペースマーケットは2014年に設立されたスタートアップ企業です。東京建物がスタートアップ企業に直接出資を行うのは初めてのことで、大きな注目を集めました。この両社が業務提携したきっかけは、2017年に新規事業関連のイベントで接点を持ったことだといいます。

スペースマーケットはスペースシェアリングのプラットフォーム運営において確固たる地位を築いていると言っても過言ではありません。システムの構築や運用ノウハウ、スタートアップ企業ならではのスピード感は東京建物が持っていないものであり、東京建物が有する不動産経営の知見や不動産そのものをスペースマーケットに提供するという形で今回の業務提携が実現しました。

これによって東京建物は不動産や商業施設などの有効活用を、スペースマーケットは魅力的なスペースシェアリングのサービス提供と事業拡大を目指す方針です。

業務提携の目的として地域社会の課題解決への貢献や、スペース提供者と利用者双方へのメリットを提供することなどを盛り込んでおり、全国的に不動産の利活用を加速していくとみられています。

スペースマーケットの狙い

スペースマーケットは、さまざまな不動産や空きスペースを時間単位で貸し借りができるスペースシェアのプラットフォームサービスです。企業の会議や研修、CMや写真撮影のためのロケ利用、個展やパーティなどの個人利用など、利用者も用途も多岐にわたっています。2014年のローンチ以来成長を続けており、時間貸しのスペースシェアリングサービスの中では掲載数において日本最大の規模を誇っています。

ここに東京建物の提供する不動産や商業施設が加わることで新たなニーズを掘り起こし、イノベーションの起爆剤とする考えです。スペースマーケットの重松氏は、東京建物の持つディベロッパーとしてのノウハウをどのように活用するのかは議論を重ねていきたいとしていますが、不動産業界のガリバーである東京建物のアセットを利用できるメリットは大きく、多大な期待を寄せています。

スペースマーケットの概要や事業モデルについて詳しくは以下の記事も参考にしてください。

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東京建物の狙い

東京建物は明治29年に創立された歴史ある不動産会社です。安田財閥創始者の安田善次郎氏によって設立され、当時行っていた割賦販売方式の不動産売買事業は現在の住宅ローンの原型となっています。現在はオフィスビルやマンション、商業施設、リゾート地などの売買や管理、コンサルティングなど幅広く不動産開発を展開する企業です。

近年、不動産事業としてシェアリングエコノミーに注目してはいたものの、対応リソースやリスク管理への懸念などがあり、なかなか取り組みは進まなかったといいます。そもそもこれまでの不動産市場では売買か賃貸かという選択肢に限られ、時間貸しという概念そのものがありませんでした。そのため事業モデルの構築すらできていない状況であり、スペースマーケットの持つプラットフォームビジネスは魅力的なものであったと考えられます。

今回の業務提携によって新しい事業へ取り組む足がかりができることになり、多角的に不動産利活用をしていくとみられています。例えばマンションの部屋をレンタルしたユーザーが後の購入者になるというスキームが予想されるなど、不動産事業としても新しい価値の提供につながる可能性が広がります。

まずは保有する不動産をスペースマーケットへ提供して、時間貸しの利用を展開する方針です。

 

2.具体的なスペース貸し物件について

具体的な取り組み事例として、以下の物件が挙げられます。

https://spacemarket.co.jp/archives/12811

東京建物が2018年10月20日にグランドオープンした「Brillia 品川南大井」のモデルルーム内の地域コミュニティ施設が、スペースマーケットを通じて貸し出しが可能になります。モデルルームはその客層から、平日の昼間は空いていることが多いスペースです。そこでスペースシェアとして解放することで、地域にも貢献できるのではと期待が寄せられています。

https://spacemarket.co.jp/archives/12811

また、東京駅前八重洲一丁目東地区市街地再開発事業の対象エリアにある「ヤエスメッグビル」内の地下音楽ホールも、スペースマーケットに掲載して利用できるようになる予定です。小さくとも音響設備のある音楽ホールは音楽ファンに重宝される人気のスペースで、有効に活用されることが見込まれます。

このほか、東京建物の賃貸不動産や商業施設をスペースシェアリングに取り入れていくとしています。貸し出すことによって新たな使用用途が見つかることも考えられ、空室の活用だけでなくシェアスペースを前提とした新しい不動産の開発などにも取り組んでいきたいとしています。

 

3.まとめ

スペースマーケットはこれまで、お寺や映画館などといったニッチなスペースを時間貸しすることで注目されてきました。しかし都内の空き家や地方の空きスペースなどを有効活用したいというニーズは多く、確かな手応えを感じたのではないでしょうか。

スペースシェアリングそのものの認知度も上がってきたところで、今回の業務提携はさらなる追い風となることは間違いありません。スペースマーケットが業界を牽引する形で、今後もさらにスペースシェアリングが盛り上がっていくことが予想されます。

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