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シェアリングエコノミーのひとつに、ライドシェアと呼ばれるものがあります。ライドシェアとは、UberやLyftに代表されるいわゆる車の相乗りサービスのこと。近年、日本でも大手IT企業やタクシー会社などが参入している分野です。
日本にもUberが進出し、その利用者の3割が外国人と言われています。2020年のオリンピック開催で訪日外国人観光客の増加が見込まれる中、日本でも普及させるべく政府が法整備を進めるなどしていますが、従来の「道路運送法に違反するのでは?という反対の声も上がっています。

今回は、期待が高まる「ライドシェア」と、その普及のカギとなる政府の「国家戦略特区改正法」について説明します。

目次

1. 国家戦略特区改正法とは?

2. タクシー業界の反発と「白タク」行為

3. 訪日外国人観光客とライドシェアの関係性

4. まとめ

1. 国家戦略特区改正法とは?

“経済社会の構造改革”の推進により、ライドシェアに関する規制も緩和か

国家戦略特区

内閣府 国家戦略特別区域法の概要より抜粋

日本企業が国内で相乗りサービスを展開する際、現行の法規制に引っ掛かるのかどうかが度々問題となっています。そうした規制が和らげられるのではないかと、注目されているのが「国家戦略特別区域法」。国際的な経済拠点の形成、また産業の国際競争力の強化を促進するため、従来の規制に対して特例措置を適用したり、先駆的な事業を進めるベンチャー企業に資金を貸し付けたりするものです。平成25年から施行され、現在に至るまで6つの地域が国家戦略特区として定められました。
2016年2月末、上記の改正法案となる国家戦略特区改正法の概要が発表され、与野党で協議されています。過疎地にライドシェアで旅客を輸送でき、地方経済を動かす原動力になる、と期待されています。

2. ライドシェアへの期待とタクシー業界の反発

ライドシェア

ライドシェアにおいては、各サービスに登録した運転手が自家用車を使って相乗りするのが基本。交通機関の乏しい過疎地では、交通弱者や訪日外国人観光客の新しい移動手段になるとして、期待が寄せられています。安倍首相は国家戦略特区諮問会議において、ライドシェア解禁の意向を示しており、政府としても重要な施策のひとつであることは間違いありません。

しかし、自家用車が有償で送迎するという点が、いわゆる白タク行為にあたるのではないかといった反対意見もあります。過去に、Uberが福岡で行ったライドシェアの検証実験に対して、「白タク行為にあたる」と判断した国土交通省が実験を中止させたケースも報告されています

国だけでなく、一部のタクシー業界もライドシェアビジネスには反対しています。全自交労連・伊藤実委員長は「利用者の安全・安心を確保するために取り組んできた努力が根本から覆されるものだ」と反対しています。タクシードライバーらの労働組合は、上記の改正法案に対し、「白タクの合法化で、世界一安全とされる日本のタクシーの安全・安心が担保できない」と訴えています。また、これまでの規制緩和によって、都市部ではタクシーの台数が大幅に増えてドライバーの労働環境が悪化しているとし、台数の適正化を求めています。
こうした声を受け、政府はドライバーは二種免許保持者、あるいは大臣認定講習の受講者に限るなどドライバーの条件を定めるなどして、対応しています。

反発の声に、“白タクとは違う”というライドシェア事業者

Uber

Uber Japan髙橋正巳氏(画像引用元:http://www.projectdesign.jp/201602/logistics/002681.php

一方、Uber Japanの髙橋氏は、白タクとライドシェアの同一視に対して、以下のようにコメントしています

「白タクは運転手の素性が不明で、料金も不透明な営業形態で、何かあっても連絡先がわからない。きちんとした保険に入っているかも不明で、大変危険なもの。一方でUberは、ドライバーのバックグラウンド・チェックや評価システムが存在し、リアルタイムで走行データを記録しています。過去に問題があるドライバーは参加できませんし、ユーザーは事前にドライバーを知り、評価が低いときは乗車をやめることもできます。リアルタイムで運行を管理しているので、万が一の事故やクレームにも対応でき、保険も完備しています。」

このように、ライドシェアはタクシー業界が指摘する“白タク”行為よりも、安全であるという意見もあります。

 

3.訪日外国人観光客とライドシェアの関係性

国内Uber利用者の3割が、「すでに海外でUberを利用したことのある人を含む訪日外国人」

訪日外国人観光客数(万人)

近年、爆買いがトレンドワードになるなど、訪日外国人観光客は増加傾向にあります。日本政府は、オリンピックの開催される2020年までに訪日外国人の数を年間2000万人、2030年までに年間3000万人とする、成長戦略で示した目標の実現に向けた行動計画をまとめています。統計によれば、すでに2015年の時点で2020年の目標に迫る数値となっており、ここにオリンピックの開催が重なれば今後も訪日外国人観光客数の増加は確実でしょう。

こうした外国人観光客の増加は、ライドシェア事業者を勢いづかせます。Uber Japanの塩濱氏によると、国内のUber利用者の3割が、「すでに海外でUberを利用したことのある人を含む訪日外国人」だとのこと。また、その国籍も63カ国に非常にさまざま。
つまり、国内ライドシェア事業は、将来、広まりつつある海外のニーズにも対応できるといえるでしょう。彼らにとって、渡航先でも利用したいと感じるほど、「相乗り」は身近であり、それは渡航先が日本であっても共通しうるのです。訪日外国人観光客が増加の一途をたどる今、こうしたライドシェアの普及に期待が集まります。

4.まとめ

来日客

大きな期待が寄せられる一方、現行の道路運送法との兼ね合いもあり、なかなか大規模な普及に至らないライドシェアではありますが、今回の「国家戦略特区改正法」が追い風になることは間違いありません。
訪日外国人観光客の増加、また彼らのニーズをみても、日本でのライドシェアの普及は必須と言えるでしょう。2020年の東京オリンピックの開催も踏まえ、ライドシェアの拡大に注目したいですね。

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