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ライドシェアビジネスは大きく分けて2つに分かれます。相乗りのようなカープール型とタクシーのような配車型です。

日本では相乗り型のサービスはいくつかありますが、配車型のサービスは道路運送法に触れるため、現在は提供できません。そのため、事業団体が配車型ライドシェアの実現を目指し「ライドシェア新法」の案を提出しました。

ライドシェアのメリットとデメリット、また新法制定後にはどんな未来がまっているのかを見てみましょう。

目次

  1. ライドシェアビジネスとは
    ・カープール型
    ・配車型サービス
  2.  ライドシェア新法について
    ・新法が必要な理由
    ・具体的な内容
  3.  新法制定後の未来
  4.  まとめ

1.ライドシェアビジネスとは

・カープール型

ライドシェアサービスには大きく2つの分類があります。1つはカープール型です。カープール型の仕組みは、一般のドライバーが出発地や目的地が同一である人を自家用車に同乗させ、ガソリン代などのかかった費用を分担するというものです。

すでに日本でサービスを開始しているライドシェアビジネスの中では、notteconori-naなどがあります。いずれのサービスも、自分の行きたい場所を入力して同乗者やドライバーを検索し、ユーザーとのコミュニケーションを経てマッチングする仕組みです。また、ヨーロッパではヒッチハイクのような感覚で利用できるカープールサービスBla Bla Carが注目を集めています。

nottecoのサービスの詳細については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:

国内最大手ライドシェアリングサービス「notteco」インタビュー

・配車型サービス

ライドシェアサービスのもう1つの形である配車型サービスは、事業主体が運営するプラットフォームにおいて一般のドライバーと乗客を仲介し、ドライバーが自家用車を用いて有償の運送サービスを提供するものです。

すでにサービスを開始している著名な配車型サービスは、アメリカのUberLyft、中国の滴滴出行(DiDi)などがあります。実は、日本初のライドシェアサービスは現在ありません。なぜなら、ドライバーは基本的に利益を目的としてサービスを提供するため、国土交通大臣の許可のない自家用自動車は有償で運送できないという道路運送法の規定に違反するからです。

しかし、政府はこの状況をよしとしているわけではありません。安倍首相も「急速に技術革新が進む中で、様々な制度、社会システムが変化に追いついていけてない」と発言していることから、ライドシェアサービスを日本でも展開できるように検討しているようです。

さらに、2018年5月には一般社団法人新経済連盟が「ライドシェア新法」の案を提出し、事業者側からもライドシェアビジネスを国として支援することを強く求めています。

配車型サービスUberのビジネスモデルの関しては、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:

代表的なライドシェアリングサービス「Uber」を徹底解説。使い方やビジネスモデル、業界への影響まで

 

2.ライドシェア新法について

ライドシェア新法が求められているのは、事業体側が自らのビジネスを広く展開したいからというだけではありません。以下の様々な理由から、日本においてライドシェアの普及が求められています。

・需要構造の変化

出典:内閣府規制改革会議 2016年1月27日資料

現在、タクシー業界ではタクシー運転手不足が大きな問題となっています。上のグラフを見てわかる通り、平成23年(2011年)から急激な減少を見せています。ただでさえ高齢化でタクシー運転手が継続的に自然減していくと考えられている中、このままではタクシー不足が問題となり、タクシーを利用したいときに利用できないという懸念があります。そこで代替手段としてライドシェアが注目を集めているのです。

・観光立国としての進展

出典:コト消費ラボ JNTO訪日外国人観光客国別内訳

現在、日本は観光立国として発展するために、訪日外国人の受け入れ体制を整えることに力を入れています。訪日外国人の国別内訳を見てみると、中国やアメリカなどライドシェアが普及している国からの観光客が多いということが分かります。こうした国からの観光客に対して、彼らが使い慣れたライドシェアという移動手段があるということは、大きな魅力であるといえるでしょう。

・経済効果

一般社団法人新経済連盟の試算によると、ライドシェアを導入した場合の経済効果は3.8億円とのことです。また、ライドシェア市場はこれからも成長が見込まれる企業であり、2015年から2020年までの5年間で市場規模が倍になると見込まれています。労働人口が減少しつつある日本で、成長市場であるライドシェアに力を入れることは十分検討に価するといえます。

・生産性向上

特に都心では、自家用車は休日に使われるだけというケースが多く、稼働率が低い状況です。その一方で、「ライドシェア新法」の提案にあるアンケートによると30%の人がライドシェアの提供者になることに興味を持っているということです。このように、潜在的にライドシェアに興味がある人が、稼働率の低い自家用車を稼働させてサービスを提供することは、生産性向上につながるといえるでしょう。

・消費者利便性

ライドシェアとタクシーの双方があることにより、お互いのデメリットを補うことができます。例えば、タクシーは高齢ドライバーの減少によって深夜帯の供給が難しくなっていますが、ライドシェアが合法となれば情報に敏感な若い年齢層のドライバーが増加するのもと予想され、深夜帯の供給も増えると考えられます。このように、ライドシェアとタクシーが両方存在するのであれば、消費者にとって選択肢が広がり、用途に合わせて選択することで利便性の向上が期待できます。

一般消費者がライドシェアを提供するさいの懸念点については、こちらも参考にしてください。

関連記事:

ライドシェアリングの基本からトラブル、法規制についてのまとめ決定版

「ライドシェア先進国となった中国」と日本の事情を徹底比較 訪日観光客に浸透する日本人が知らない越境白タクとは?

 

3.新法制定後の未来

それでは、日本でライドシェアサービスが提供されるようになった場合、どんなことが起こるのでしょうか。

1つ目は、既存のタクシー会社との共存をどのように図るのかという問題があります。タクシー会社はなんらかの変化を迫られ、新しいサービスや接遇などを提供することが求められるでしょう。

2つ目には、近い未来にはAIによってドライバーが管理される可能性があります。さらに、自動運転システムが開発されているというニュースもあります。実際、Uberがそれまで自動運転システムの分野で敵対していたGoogleと協働の姿勢を見せていることから、自動運転システムが急速に実現に近づいているといえます。

この2つの状況をみると、遅かれ早かれドライバーはいなくなるから、ライドシェアは必要ないのではないかと思われるかもしれません。しかし、人間が何もしなくてよい完全自動運転が実現するのは相当の年数を必要とすると言われているので、それを待つようでは現状のタクシー不足を解決できません。

また、自動運転社会が実現した際には、自動運転された車を配車するプラットフォームの存在が不可欠となります。このビジネスに不可欠なデータの蓄積を今からライドシェア事業で行っておかないと、日本が競争上圧倒的に不利な状況になってしまうという懸念もあります。

このように、未来を見据えるという観点からもライドシェアは必要とされているのです。

国内外の既存自動車メーカーのライドシェアとの定型状況については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:

乗り物シェアリング最新状況まとめ!国内外の自動車メーカーが次々と参入を表明

 

4.まとめ

日本のライドシェア事情に関しては、カープール型のサービスが幾つかあるものの、配車型のサービスの実現には至っていません。配車型ライドシェアが実現すれば、様々な面で大きなメリットをもたらすと考えられます。

しかし、現行の規制をどう緩和していくか、また想定されるトラブルにどう対応するかなど課題は山積されています。これらを迅速にクリアし、消費者に最大限メリットをもたらす形で配車型ライドシェアが実現することが求められます。

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