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シェアリングエコノミーを語る上で、「IoT」という新しい概念は欠かせないものとなっています。一見すると関係なさそうなシェアリングエコノミーとIoTですが、実はこの組み合わせでさまざまなシェアリングが活発になるとみられています。それによって、ビジネスだけでなく私達の生活にも変化をもたらすと考えられます。そもそもIoTとはどういったものなのでしょうか。ここではIoTの基本やシェアリングエコノミーとの関連性、今後の展望についても解説します。

目次

        1. シェアリングエコノミーとIoTの関係について
          ・そもそもIoTとは
          ・これまでの経緯と今起きている変革とは
        2. 今後のIoTとシェアリングエコノミーの未来
          ・IoTを活用した自転車シェアリング事業
          ・シェアリングエコノミー型九州周遊観光サービス事業
          ・賃貸住宅用のIoT提供サービス
          ・IoTで真のスマートライフが可能に
          ・医療の現場で浸透するIoTの技術
          ・イスラエルのスタートアップとの協業
        3. 具体的に動き出している企業の事例
        4.  まとめ

1.シェアリングエコノミーとIoTの関係について

そもそもIoTとは

IoTとは「Internet of Things」の略で、直訳すると「モノのインターネット」という意味になります。

ここで言う「モノ」というのは、文字通り私達の身の回りにあるあらゆるモノのことを指します。従来インターネットに接続されるものといえばパソコンやサーバー、通信端末など、IT関連の機器が主たるものでした。しかし、テレビやHDレコーダーなどのデジタル情報家電や、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電、さらには照明のコントロールやドアの開閉にいたるまで、インターネットを経由してさまざまな活用をすることが可能になっています。

このように、これまで通信機能を持たなかったモノをインターネットに接続させることをIoTと呼んでいます。

これまでの経緯と今起きている変革とは

このようなIoTは、コスト削減や利便性を高め、まったく新しいモノ作りの起点になるという点で「デジタル産業革命」とも例えられます。そして、IoTによってシェアリングエコノミーの動きも促進するとみられています。IoTを利用すれば人やモノの位置情報、稼働状況などがリアルタイムに取得できるため、車や自転車を共有するシェアリングエコノミーとの親和性が高いからです。

また、単にモノをシェアリングするだけではなく、大企業でも生産や営業などの分野においてIoTとシェアリングエコノミーを活用する動きも出始めています。例えば複数の工場における製造情報をIoTによって共有し、その情報に応じて人的リソースや設備、材料、ノウハウを互いに融通する、という活用のしかたも議論されています。また、クラウド上にさまざまな情報を集約させておけば、複数の企業が情報を共有して販売網や人員などをシェアすることができるのではないか、という考え方も広がってきています。

このように、IoTとシェアリングエコノミーの組み合わせによって、これまでのようにモノを生産し消費し続ける資本主義市場経済から、資源を共有し再利用するスタイルへと経済が転換していくことが考えられます。デジタル技術の発展によって製品のスマート化が進み、IoTはますます発展していくとみられます。それによって新しいビジネスモデルが次々と生まれていくと思われ、今後の社会的なソリューションとなるのではないでしょうか。

 

2.今後のIoTとシェアリングエコノミーの未来

それでは、今後のIoTはどのような進歩を遂げるのでしょうか。

IoTがこれからますます重要視され、そのテクノロジーが発達すると、あらゆる業界において作業の効率化や生産性の向上が進んでいく可能性があります。

また、カメラによる画像のセンサーや、温度や振動などの動きを捉えるセンサーの技術も日々発達しており、例えば人の体温や動きといったものをより精細に感知するようになります。それにより、医療や介護の専門分野から日常生活においてまで、今まで人間が介入しないとできなかったような、現場のプロフェッショナルが担っていた部分を代行するようになるかもしれません。加えてAIの技術の進化によってセンサーの分析も自動で行われたり、音声も高度に認識できるようになったりすれば、IoTはより身近なものになり、さらに活発に活用されていくと考えられます。

シェアリングエコノミーにおいても民泊やカーシェアリングだけでなく、家事や育児など個人のスキルや、飲食、衣服のシェアリングなどさまざまなジャンルでシェアリングが展開されてきています。こうした動きをIoTがさらに加速させ、あらゆる業種にIoTとシェアリングの波が押し寄せていくと思われます。

この流れは中小企業に限らず、大企業も巻き込んでいき、将来的にはIoTを活用したシェアリングシステムの大きな流れが展開していくことでしょう。大手企業のシェアリングエコノミーへの参入については以下の記事も参考にしてください。

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3.具体的に動き出している企業の事例

 すでにIoTやクラウドを活用したシェアリングサービスは、少しずつ始まっています。以下、実際の事例についてご紹介します。

IoTを活用した自転車シェアリング事業 

ソフトバンク株式会社では、自転車シェアリングシステム「HELLO CYCLING」を提供しています。これは、自転車にGPSと通信機能を搭載した「スマートロック」と専用の操作パネルを取り付けることで、自転車の利用状況などを管理サイト上で確認することができるというものです。自転車を借りたいユーザーは、あらかじめ登録しておいたICカードを自転車の操作パネルにタッチするだけで利用することができます。また、事業者側もスマートロックと操作パネルを自転車に取り付けるだけで導入できるため、初期費用や運用コストを抑えることができます。

シェアリングエコノミー型九州周遊観光サービス事業 

総務省の「IoTサービス創出支援事業」において開始された、観光サービスモデル事業です。道の駅や観光地の駐車場に無人運用が可能な駐車管理システムを導入し、車中泊ができるスペースをシェアリングします。このスペースには地域の観光やアクティビティなどの情報を連携させ、地域体験の予約などができるようにしています。地域体験には地元住民のスキルをシェアすることもでき、観光事業や地域経済の活性化につなげる取り組みです。

賃貸住宅用のIoT提供サービス 

IoT機器の開発・製造・販売を手がけるロボットホームでは、賃貸住宅の部屋に置くだけでIoTを活用できる「賃貸住宅キット」を販売しています。これは、スマートフォンやテンキーなどで開錠できるスマートロックや、窓の揺れ・開閉を感知してアプリに通知するウインドウセキュリティ、エアコンや室内電気を外出先からでも操作できるセントラルコントロールなどから構成されていて、入居者の生活の安全性と利便性を高めることができます。

IoT で真のスマートライフが可能に

株式会社Live Smartは、IoTを活用して真のスマートライフを実現するサービス「LiveSmart」の予約販売を開始しました。LiveSmartでは、朝「おはよう」と言うだけでテレビやエアコンのスイッチがオンになるといった家の全自動化に加え、外出先からの子ども・ペットなどの見守り、留守中の荷物受け取り対応など、さまざまなサービスが利用できます。

また、世界で初めてWi-Fi・BLE・Zwave・ZigBee・赤外線といった主要な全ての通信方式に対応し、一般に普及しているどのような種類のデバイスでも利用が可能です。これにより、スマートホーム普及の障壁となっていた複数のIoT機器を連携させにくいという課題を解決しています。

医療の現場で浸透するIoTの技術 

医療の現場でもIoTやAI技術の活用が広がっています。

日立製作所ではCT(コンピューター断層撮影装置)の画像を集め、AIの分析によって診断を支援する取り組みを始めました。2018年春にも臨床試験を開始し、同年中に薬事申請する予定としています。

富士フイルムは医療機器の使用状況をAIが常に分析し、故障前に修理を行う遠隔保守サービスを2019年から始めると発表しました。故障を事前に予知することで稼働停止を未然に防ぎ、業務効率化を目指します。

光学機器メーカーのトプコンは2017年にIoT事業専門会社をアメリカに設立し、眼科医療機器とIoTの連携に乗り出しました。医療機器をクラウドにつなぐことで大量のデータを収集・分析し、遠隔診断などの課金型サービスとして18年度中に展開する予定です。

高齢化が進む現代社会において、今後も成長が期待される医療機器市場。IoTやAIの存在がさらなる進化をもたらすと予想されており、厚生労働省も画像診断支援をはじめとした6分野をAI開発の重点領域に位置付けています。

イスラエルのスタートアップとの協業 

今や「中東のシリコンバレー」と呼ばれるほど多くのスタートアップ企業が誕生しているイスラエル。中でも IoTスタートアップが注目を集めており、日本企業との連携が進んでいます。

2016年にはソニーがLTE向けモデムチップの開発を行うイスラエルのAltair Semiconductor(以下「アルティア」)を買収したことも話題となりました。ソニーが持つGNSS(Global Navigation Satellite System)やイメージセンサー技術と、アルティアの高性能かつ低消費電力・低コストなモデムチップ技術を組み合わせることにより、通信機能を持った新たなセンシングデバイスの開発に取り組む構想を明かしています。

さらに、ソフトバンクもイスラエルのVayyar Imaging Ltd.(以下「バイアー」)Inuitive Ltd.(以下「イニュイティブ」)との協業を2017年12月に発表しました。バイアーは電波を利用した3Dイメージングセンサー製品を扱う半導体メーカーとして高い技術を誇り、イニュイティブも奥行きを検知する3D深度センサーなどAIを活用した半導体製品の設計・開発を得意としています。これらの技術をソフトバンクのIoTプラットフォームやAI、ビッグデータと組み合わせることで、これまでにない最先端のIoTソリューションを実現したいと同社は考えているようです。

 

4.まとめ

 IoTという新しいプラットフォームによって、今までになかった業態やサービスが出現してきました。今後もあらゆる業界の枠を超え、ビジネスやライフスタイルにイノベーションを起こすと思われます。日本は共有型社会への移行がますます進んで行くと考えられ、従来のビジネスから考え方を変化させる必要があるかもしれません。これからもIoTとシェアリングサービスの動きには注目したいところです。

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