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余っているけれど有効活用できていない様々な資源を共有するシェアリングエコノミー。生活を豊かにし、少子高齢化や人口流出などの社会問題をも解決する糸口として期待されています。矢野経済研究所によると、2017年度の国内シェアリングエコノミーサービス市場は前年比132.8%の好成長となりました。法整備やシェアエコ特有の課題に対する解決策の必要性が叫ばれることもありましたが、2018年の事例を振り返り、動向の分析や今後の動きについて解説します。

目次

  1. 2018年のシェアリングエコノミーを振り返って
  2. サービス別の動き
    ・スペースシェア
    ・ライドシェア
    ・スキルシェア
    ・モノのシェア
  3. 今後のシェアリングエコノミーの動向
  4. まとめ

1.2018年のシェアリングエコノミーを振り返って

しかしながら、法整備が始まったことで大企業が次々とシェアビジネス事業への参入に名乗りをあげた年でもあります。大手自動車メーカーのトヨタ自動車株式会社によるカーシェアリング事業の開始や、同社と大手IT企業のソフトバンクグループ株式会社との共同事業など、今後も大手の参入が気になります。

更に、政府や自治体では、地域における課題の解決や経済の活性化につなげるためにシェアエコに着目し、積極的な推進が図られました。

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2.サービス別の動き

スペースシェア

2018年6月、住宅宿泊事業法(民泊新法)施行により、全国で民泊が解禁されたために大手企業の参入が進んだ年でした。大手旅行会社のJTBは、民泊に関するサービスを提供する株式会社百戦錬磨とタッグを組み、訪日客向け旅行商品販売サイトを介して民泊物件を予約できるよう進めています。また、IT大手の楽天株式会社と不動産情報サービス事業を手がける株式会社LIFULLが共同で設立したのは、民泊サービス専業会社「楽天LIFULL STAY」。楽天の9,000万人という顧客基盤と、LIFULLの豊富な不動産ネットワークで、国内随一の民泊プラットフォームを目指しています。

大手民泊仲介プラットフォームを運営するAirbnbは、新たなビジネス戦略としてAirbnb Partnersを発表しました。発表時点では36社の日本企業が提携。みずほフィナンシャルグループ、損害保険ジャパン日本興亜、エボラブルアジア、ビックカメラ、ニトリ、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)など、それまでシェアビジネスとは関連のなかったような企業も参画しています。宿泊する場を提供するにとどまらず、Airbnbだけではカバーできない領域のサービスを充実させ、新たなビジネスを生み出すことを目的としており、周辺事業も盛り上がりを見せた年でした。

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ライドシェア

交通渋滞や環境問題といった社会問題を解決し、地域活性化や観光振興の後押しも期待されるライドシェア。日本国内の大手企業の参入はもちろんのこと、シェアリングエコノミー先進国である中国からも日本へ進出する企業が見られました。

健康志向の高まりもあり、ますますの需要が見込まれるサイクルシェア。2017年6月に日本へ上陸した中国発のサイクルシェアサービス「モバイク(mobike)」は、LINEと業務提携を行いました。LINEアプリ内からmobikeを利用できるよう準備を進めています。

また、これまで通信機能を持たなかったモノをインターネットに接続させるIoT(Internet of Things)によって、アプリ1つで自転車のレンタルから返却までが可能になったり、リアルタイムで空き状況を把握して事前予約なく駐車場が利用可能な駐車場シェアリングサービスが登場したりと、利便性が増しています。

なお自家用車を使って人を運送する有料のライドシェアサービスは違法であることや、白タクなどの問題はまだ解決されておらず、今後、法改正となるのか注目です。

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スキルシェア

時代の変化に伴い、柔軟性が求められていることをより感じるのはスキルシェアです。

話題に上ることが働き方改革を後押しするためのシェアビジネスも活況を見せています。

ニューヨーク発のスタートアップ企業「WeWork」が提供するのは、借り手が付きづらかったオフィスビルの広いワンフロアを借り受けて、オフィスを又貸しするコワーキングスペースです。単に空間と設備を共有する場を提供するだけではなく、ユーザー同士のつながりを促す仕掛けが豊富であることや働き方の変化から、今後も需要が見込まれます。

また、即戦力のアルバイトを自動でマッチングする「Taimee(タイミー)」や、占いやイラスト作成など個人の得意を売り買いできる「ココナラ」など、個々人の能力をマネタイズできるプラットフォームが整いつつあり、以前よりあった家事代行などと合わせてより身近になっています。

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モノのシェア

これまでは個人で所有することの多かったファッションアイテムや中古車などの新たな分野においても、シェアリングエコノミー市場の拡大と共にシェアする意識の広がりが進んでいます。

欲しいけれど手が届かない、シーンに合わせてバッグを持ちたいなどのニーズを満たす、ブランドバッグのシェアリングサービス。はたまた、契約する通信キャリアの垣根を越えて、他のモバイルユーザーと余ったモバイルデータ通信のシェア(売買)を可能にしたり、中古車におけるCtoCの売買機会の場を提供したりするシェアリングエコノミーサービスも登場しました。

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3.今後のシェアリングエコノミーの動向

諸外国に比べ法規制が厳しく、シェアリングエコノミー後進国といわれる日本ですが、2018年6月の民泊解禁や、2020年のオリンピックによる追い風を受け、その市場が急激に成長しようとしています。

インバウンド需要に応え、利用者と事業者双方の不安解消をかなえるべく施行された民泊新法により、スペースシェアの勢いは特に加速する見込みです。

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4まとめ

近年の予想通り、拡大の一途を辿るシェアリングエコノミー市場。2018年は他業種を含めた大手企業の参入や、関連サービスにかかる新規事業の展開、更にはそれらを後押しする法改正が進んだ1年でした。

2020年のオリンピック開催が目前となる2019年。価値観の変化や行政の後押しもあり、今後より一層シェアリングエコノミーが広がるのも時間の問題だと考えられ、消費や働き方にも変化をもたらすでしょう。

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