ワークスペースを提供するfabbitとクラウドソーシングを提供するワークシフト・ソリューションズが業務提携をすると発表しました。これによって、双方のユーザーがお互いのサービスを利用できるようになります。この業務提携で、fabbitが提供するハード面にワークシフト・ソリューションズが提供するソフト面が加わり、利用者の効率的な働き方をより強力に支援することができます。働き方改革を推進する潮流の中、この業務提携によりフリーランサーやスタートアップの柔軟な働き方をより実現しやすくしたいというねらいがあります。
目次
- fabbit とワークシフト・ソリューションズの業務提携の内容とは
・業務提携におけるサービス概要
・業務提携における各社の狙いとは
- 提携企業について
・fabbit 株式会社
・ワークシフト・ソリューションズ株式会社 - ワークシェアに関する最近の動向
- まとめ
1.fabbit とワークシフト・ソリューションズの業務提携の内容とは
業務提携におけるサービス概要
2018年9月、fabbit株式会社とワークシフト・ソリューションズ株式会社が業務提携をすることを発表しました。この業務提携により、fabbitの利用者はワークシフト・ソリューションズのクラウドサービスを一部無料で利用できるようになります。つまりfabbitユーザーはワークシフト・ソリューションズが持つ世界205ヵ国8万人以上のフリーランサーを活用できるようになり、一方でワークシフトを利用する海外ユーザーはfabbitユーザーからの依頼を見込めます。
ワークシフト・ソリューションズが提供する「スキルのシェア」とfabbit社が提供する「ワーキングスペースのシェア」は、働き方改革においても注目を集めるシェアリングエコノミーのあり方です。その両社が提携によって相互利用を推し進め、シェアリングエコノミーをさらに促進していくことになるでしょう。
業務提携における各社の狙いとは
それでは、この2社が業務提携することによってどんなことが可能になるのでしょうか。
まず、この2社を利用する企業や個人の視点で考えてみましょう。fabbitの提供するシェアオフィスやコワーキングスペースを利用するスタートアップ企業やフリーランサーは、ワークシフトを通じて海外フリーランサーに業務を依頼できるので、グローバルな業務に手を広げるチャンスを得ることができます。
また、ワークシフトに登録している海外フリーランサーは日本企業の業務を担当することができるので、彼らの活躍の場が広がるというメリットがあります。
市場としてはこの業務提携により、fabbitが提供する「ワークスペースのシェア」というハード面に対して、ワークシフト・ソリューションズが提供する「スキルのシェア」というソフト面を拡張することができました。つまり、双方の利用者にとってのメリットが強化され、より便利に効率的に働くことが可能になるのではないでしょうか。
2.提携企業について
fabbit 株式会社
fabbit株式会社は、スタートアップ企業の支援とコワーキングスペースの運営を行っています。具体的には、スタートアップ企業支援として、起業家やスタートアップ企業社員向けのイベントやセミナー、支援協議会会員との会合の運営などを行っています。また、創業間もないスタートアップ企業のために、コワーキングスペースやシェアオフィスの運営を行っています。このように、イベントやセミナーといったソフト面、ワークスペースの提供といったハード面の両面でスタートアップを支援している点が特徴といえます。
最近では、今回のように他企業との協働を活発に行っています。最近では貸会議室の運営を行うTPKとともにコワーキングスペースを提供しています。また、提供するシェアオフィスにスタートアップが開発したモバイルバッテリーのシェアサービスやワークスペースの空席確認ができるシステムを導入するなど、他の企業の技術を導入しながら利用者の利便性を高める取り組みを行っています。
ワークシフト・ソリューションズ株式会社
ワークシフト・ソリューションズ株式会社は、グローバルなクラウドソーシング事業を運営する会社です。クラウドソーシングを提供する会社は国内にいくつかありますが、この会社は日本で唯一、海外関連業務に特化したサービスを提供しているのが特徴です。
日本にいながら日本への留学経験や日本語の学習経験がある海外のフリーランサーに仕事を頼むことができます。またサービスの基本通貨は円なので、為替リスクの心配がなく、海外送金の煩雑な手続きをする必要もないので、安心して業務を依頼することができます。
実際にこの会社のシステムを導入している日本企業の例を挙げると、例えば九州電力は海外人材の採用の前にクラウドソーシング経由で仕事をしてもらい、人材のスキルを評価する実証実験を行っています。また、JTBは訪日外国人向けのマーケティングサービスの運用のために、クラウドワーカーのスキルを活用しています。
3.ワークシェアに関する最近の動向
「ワークシェア」という言葉が日本のメディアに登場し、一般的に広まり始めたのは2009年といわれています。しかし当時は、経済学者から見てもワークシェアが現実的に機能するのは極めてまれであるという見解が一般的でした。それから約10年経ち、ワークシェアを取り巻く環境は少しずつ変わってきたのではないでしょうか。
経済産業省は2018年3月にモデル就業規則を変更し、「労働者は、時勤務時間外に置いて、他の会社の業務に従事することができる」と定めました。このことから、国はワークシェアを含む柔軟な働き方を支援する姿勢を見せていると考えられます。
また、企業側でもテレワーク制度やリモートワークを推奨する企業が増えていますが、制度を推奨すると同時にコワーキングスペースと契約し、物理面でも多様な働き方を支援しているという事例もあります。
さらに、コワーキングスペースを提供するアメリカ企業WeWorkが2018年に日本に上陸しました。この会社は、ワーキングスペースの提供だけでなく、利用者専用のSNSアプリを利用できたり、担当者が他の利用者を紹介できたりするなど、利用者同士の横のつながりをサービスの一つとしています。WeWorkにはソフトバンクグループが追加投資をすることを発表したこともあり、今後の成長が注目される企業といえます。
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4.まとめ
ある調査によると、テレワークを経験したことのある人は4%とまだまだ少ないのが実情です。働き方改革はまだまだ浸透しているとはいえませんが、そのままにしていても効率的で気持ちのよい働き方はできません。国が音頭をとることも重要ですが、このように、企業による一見小さな取り組みもひいては大きな変化につながります。今後、この業務提携がどのようなよい効果を生むのか注目されます。