近年、日本でも耳にする機会の増えてきた「シェアリングエコノミー」。UberやLyftといったライドシェアに注目がいきがちですが、実はシェアリングエコノミーの一部と認識されていないものは、まだたくさんあります。カテゴライズの仕方はさまざまですが、株式会社ガイアックスでは、大まかに以下の4つの領域に分けています。本記事では、各領域のもっとも主流なサービスを選び、それぞれのビジネスモデルを紹介していきます。
目次
・ 各ビジネスモデルの紹介
- モノのシェア:メルカリ、Fril
- 場所(スペース)のシェア:Airbnb、スペースマーケット
- リソースのシェア:AnyTimes、クラウドワークス、Lancers
- 移動のシェア:Uber、notteco
・ まとめ
各ビジネスモデルの紹介
1. モノのシェア
フリマアプリの草分けとなった、メルカリ
モノのシェアの領域で、国内で有名になったのがメルカリです。2013年にサービスを開始してから3年で、今や国内外で総ダウンロード数3200万件(2016年3月現在)にまで成長しました。
具体的なサービス内容はスマートフォンアプリを通じて、ユーザーがいらなくなったモノやハンドメイドの品を、自ら値段設定をして出品し、それを欲しいと思ったユーザーが購入していくもの。購入方法はクレジットカード決済の他、コンビニやATMでの振込など事前決済が原則となります。
お金の管理は運営側! トラブルを減らすシステム
また運営側の関わり方も特徴的。値段の交渉や品物の状態確認など、細かいやり取りはユーザー間で行われますが、金銭のやり取りなど、トラブルになり兼ねない部分は運営側が行います。つまり、購入者の支払ったお金は、直接出品者に届かず、一度運営側を経由するのです。品物が購入者に届き、互いに評価し終わった時点でようやく、支払管理をしていた運営側が出品者に振込みます。現在日本に数多くあるC2Cのサービス、いわゆる「フリマアプリ」のほとんどが、このシステムを採用しています。
多様化するフリマアプリ市場 既存事業が新しいサービスの基盤となる場合も
こうしたモノ系フリマアプリの先駆けとなったのが、アパレルを中心としたFril。当初は女性を主なターゲットにしていましたが、男性やキッズ向け商品の取り扱いを開始し、今や幅広い層が利用しています。
Frilのように、取り扱いジャンルやカテゴリを絞らず幅広い物品のやり取りを行うところもあれば、GMOペパボ株式会社によるハンドメイド作品の売買に特化したminneや、株式会社jig.jpによるアニメグッズに特化したオタマートなど、今日では多彩なサービスが展開されています。
それまで特定の通販サービスを展開していた企業が、上記のようなフリマ型の流通サービスに乗りだすケースもあります。たとえば、アパレル通販のZOZOTOWNはZOZOフリマを、通販価格比較サイトの価格.comはフリマノを展開しました。これからもっと消費者のニーズが多様化すれば、既存サービスが新規サービスを生み出していくケースが増えていくでしょう。
2. スペースのシェア
“民泊”といえばAirbnb シェアリングエコノミーの火付け役
シェアリングエコノミーといえば、民泊などの空間(スペース)のシェアも欠かせません。そうした空間のシェアの火付け役となったのがアメリカ発Airbnb。宿泊場所のシェアサービスであるAirbnbは世界展開を進めており、現在では日本でも見られるようになりました。しかし、法律の兼ね合いもあり、国内ではまだ十分に普及しきれてない領域のひとつです。
使わない場所を、使いたい人とマッチング! 国内企業 スペースマーケットとは?
日本で盛んなスペースのシェアといえば、定番の会議室の他、球場からお化け屋敷まで幅広いスペースがレンタルできるサービスのスペースマーケットが有名。一時的、または長期的に使わないスペースを所有するオーナーが、それらをサイトに登録すれば、ユーザーはその中から目的に見合ったスペースを申し込むことができます。オーナーとユーザーで直接やり取りをしながら、予約を行っていきます。ここでも利用代金は事前決済され、金銭のやり取りは運営であるスペースマーケットが代行します。
もともと「週末企業の会議室や、平日の結婚式場など、時間帯や時期によって使っていないスペースを有効活用したい」というニーズから始まった本サービス。2016年春、国内での民泊解禁を受け、今後は宿泊にも対応できるシステムのリニューアルを進めていくと取締役CTO 鈴木氏は語っています。
「評価制度」で、ゲストもホストも安心!
「知らない人に家を貸すのは抵抗がある…」「本当にこの家借りちゃっていいのかな…」という、シェアならではの不安もあるはず。そんな悩みに、Airbnbは評価制度が対応しています。これにより、ゲストがホストを、ホストはゲストを相互的に評価することによって、借りるべきまた貸すべき相手を事前に確認できる仕組みになっています。
3. リソースのシェア
モノだけじゃなく、スキルもシェア! AnyTimes
労働力・スキルなど、「人手・能力」(リソース)の貸し借りもシェアリングエコノミーの醍醐味といえます。モノと同様、多彩なサービスが展開されています。たとえば「誰かに手伝ってもらいたいこと」や「自分の得意なこと」をマッチングさせるAnyTimesでは、家事の手伝いや家具の組み立ての他に、語学レッスンや写真撮影、旅行間のペットの世話など、様々な依頼が提供されています。
全体の流れとして細かい契約条件を依頼者が、決済などのお金のやり取りを運営側が取りまとめます。まず、依頼者であるユーザーはその依頼内容をカテゴリから選んで、希望日時や予算などの質問に答えることで、見積もりを作成していきます。そのあと、依頼の受け手である「サポーター」を募ったり、依頼者直々にサポーターを指名したりして、マッチングしていきます。
やっぱり安心の「評価制度」! 事前に信頼度チェック
AnyTimesも評価制度を採用しており、ユーザーがサービス提供者であるサポーターの評価できます。リソースのシェア領域を扱う企業のなかでも、スマホ向けアプリとしていち早く走り出せたAnytimesはユーザーのこうした不安によく対応できているといえます。
Webで“お手伝いさん”を雇う?! 国内企業 クラウドワークスやLancers
また、日常生活のちょっとした手伝いに限らず、ライターやエンジニアなど、専門知識が求められる仕事をWebで外注、クラウドソーシングすることもリソースのシェアといえるでしょう。この分野では、クラウドワークスやLancersが有名です。
非正規雇用が広がっている日本の現状を考えると、クラウドソーシングという新しい働き方は大きな可能性を秘めており、益々浸透していくとみられています。今後も規模が拡大していくことは間違いないでしょう。
4. 移動のシェア
シェアリングエコノミーの旗手 Uber
シェアリングエコノミーのなかでも、乗り物のシェアは認知度も高いです。そのなかでも、有名なのが米国発の配車サービスUber。日本にも上陸している大手サービスで、短距離のライドシェアの中でも、Lyftや他の配車サービスの先を行く存在です。Airbnbとならび、シェアリングエコノミーの旗手とされ、現在もその成長は止まるところを知りません。
具体的なサービスの内容として、ユーザーはアプリひとつで現在地と行き先を指定し、登録ドライバーがそのリクエストを受け、依頼人であるユーザーを送迎する仕組みとなります。また、アプリにはナビ機能も特徴的。ドライバーはその指示に従って運転しますが、今の乗客の届け先と、次の乗客候補の現在地によって、アプリが自動でそれぞれマッチングしてくれます。そして支払い方法はユーザーが事前に登録しているクレジットカードを使っての決済となり、ドライバーへの報酬は毎週まとめて運営から支払われるというシステムとなっています。
また、他領域のサービス同様、Uberにも評価機能が導入されており、匿名で乗り手もドライバーも互いに評価されています。
国内にもあった! nottecoのライドシェアサービス
国内のライドシェアサービスでは、nottecoが最大規模と言われています。こちらの支払い方法は、当日の現金決済を採用しています。(下図) 交通費を浮かせるなど金銭面だけでなく、ドライバーと乗客が初めて出会って時間を共有するといったメリットがライドシェアにはあります。
国内外で勢いを増しているライドシェアですが、「白タク」に該当する、違法ではないのかというタクシー業界からの反発もあります。その一方で、今後政府の規制緩和に期待のできる領域でもあります。法律という壁がもっと今以上にクリアになれば、さらなる市場の拡大が見込めます。
まとめ
いかがでしたか。インターネットの普及が進みデバイスも進化し続けている今日、シェアリングエコノミーの各領域、さまざまなサービスが出てきています。そうしたなかで、金銭のやり取りは運営側が担うことでトラブルを防いだり、評価制度によって事前に相手のことが分かり抵抗感が和らげられたり、各社がシェアリングのサービスに工夫を凝らしています。“民泊”や“白タク”など、国内の法律上の動きをふくめ、今後のシェアリングエコノミーの展開には目が離せません。