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楽器演奏を楽しみたいのに楽器の入手や演奏場所の確保が難しい人、遊休資産になってしまった高価な楽器の処遇に頭を悩ませる人、自身が製作した楽器の販路を見出せずにいる職人など、潜在的なニーズが多く存在する楽器業界。今回は、利用者・出品者それぞれに有益なシステムとして、新たに登場した楽器のシェアリングサービスについてご紹介します。世界中の人々と交流し、世界中の楽器に触れることができるプラットフォームとは、一体どのようなものなのでしょうか。

目次

  1. 楽器のシェアアプリ「atsumari」とは
    ・サービス概要について
    ・サービスが生まれた経緯
    ・利用方法について
  2. 関連するサービスについて
  3. まとめ

1.楽器のシェアアプリ「atsumari」とは

サービス概要

https://www.atsumari.tokyo/

個人間での楽器シェアリングサービスを提供している合同会社atsumariが、世界中の人々と楽器のシェアが可能になる新サービスを2018年12月25日(予定)に始動させます。このサービスは、楽器のシェアを通して世界中の利用者と楽器の所有者や楽器職人などをつなぐシステムです。

そもそも楽器に対しては、音楽を学ぶ生徒やサークルでの活動などで気軽に使用したい人、購入は難しいけれど憧れの楽器を趣味で楽しみたい人、一定期間だけ特定の楽器を使用したい奏者など、さまざまなニーズが存在します。さらに、楽器という資産の有効活用や売却を検討している所有者、購入者との新たな接点を探している楽器職人など、楽器を提供する側にも多くのニーズが存在しています。

こうした楽器の利用者と提供者にとって、今回新たに提供が開始される双方向のシェアリングサービスは、国境を越えた有用なプラットフォームとなり得るでしょう。利用者が海外にある「運命の楽器」に出会えたり、職人の手による高品質な楽器を安価で購入したりできるようになります。すでに海外の楽器職人や楽器指導者などから賛同の声が多く寄せられていることをみても、この個人間楽器シェアリングへの期待のほどがうかがわれます。

また同サービスは、移動困難な楽器の所有者と演奏者をマッチングし、楽器がある場所をシェアする「スペースとモノのシェア」も展開を予定しています。

サービスが生まれた経緯

サービスを提供する合同会社atsumariは、中学時代からの友人である木附篤人さんとカポラリ真亮さんが、楽器を取り巻く現状を改善しようと共同設立した会社です。現在の楽器販売には、職人がバイオリン製作だけでは生活していくことが困難で、買い手も購入価格に見合った品質の楽器を入手する手段が確立されていない、という状況があります。楽器シェアリングのプラットフォームを提供することによって、これらの課題の解決を図りたいと考えたそうです。

実際、楽器を使いたい人、楽器の保有者、楽器の職人、それぞれが楽器市場に対する不満を潜在的に抱えています。楽器を使いたい人がインターネットで購入しようとすると、試奏できなかったり楽器についての情報が少なかったりといった理由から、購入になかなか踏み切れないケースが少なくありません。対して楽器保有者にとっては、保管している楽器を売却しようとしても売却自体が困難だったり安値で取引されたりしがちです。また、楽器職人にとっても、無名の時期には作品を奏者に直接売ることが難しく、購入者との接点を持てる場もなかなかないという状況があります。

こうした背景から、楽器を使いたい人には「信頼できる情報を元に世界各国の楽器を利用できる場」を、楽器保有者には「所有の楽器を評価して継続収入を得る機会」を、そして楽器職人には「販路拡大の場」を提供するべく、このサービスが創出されたのです。

利用方法について

https://www.atsumari.tokyo/

まず出品者が登録した情報を元に利用者が楽器を選択します。そして質問・発送先やシェア期間の各種情報・価格交渉などをやり取りした後、取引の内容にお互いが納得したら利用料の支払い、楽器の受け取りへと進みます。シェア期間終了後は、楽器をオーナーに返却するだけでなく、利用の延長依頼や楽器の買い取りなども可能。また取引終了後には対応や満足度の評価制度があり、双方の取引への信頼度が担保されることで、次回以降の取引につながりやすくなるというシステムです。

同サービスにおけるユニークな特長は、出品者枠に「楽器職人」を設けていること。利用者はプロフィールページから楽器職人と直接つながることができ、その職人や楽器の情報を得やすいようになっています。また、公式コミュニティの他にも利用者が作成できるコミュニティ機能があり、仲間を募って世界中の音楽仲間と交流することができます。

 

2.関連するサービスについて

上述の「atsumari」以外にも、楽器に関連するシェリングサービスがあります。ここでその一部をご紹介しましょう。

ReReレンタル

https://www.rere.jp/rental/

株式会社マーケットエンタープライズ運営の、カメラや家電、旅行用品など、さまざまな品をレンタルするサイトです。この中に楽器のカテゴリーがあり、1500件を超える商品がそろっています。レンタル期間は3泊4日からで、初心者用のおすすめ入門セットや自宅以外への往復送料無料制度などがあります。

SHARE PARK

https://share-park.com/

株式会社シェアカンパニーが運営するシェアハウスのマッチングサイト。東京や横浜などで楽器演奏ができるシェアハウスの紹介もしています。

Spacee Music

https://music.spacee.jp/

楽器販売や音楽教室で有名なヤマハ株式会社と、会議室などのスペースシェアサービスを運営する株式会社スペイシーが提携した、音楽教室や防音室のシェアリングサービスです。音楽教室の空き時間や、ヤマハの防音室「アビテックス」を設置した商業ビルの空きスペースを利用し、楽器演奏を楽しむことができます。

 

3.まとめ

楽器のシェア取引にとどまらず、利用者と出品者の双方が交流できる場も備えた、世界の音楽人同士がつながる新形態のプラットフォームの誕生です。

従来のシェアリングサービスのような、利用者の利便性向上と資産活用による収入獲得の場を提供するだけでなく、無名の楽器職人が潜在顧客と交流し、世界を相手に販路の開拓を行えるチャンスを設けることは、とてもユニークな試みとなります。将来的には演奏・製作技術のシェアなども視野に入れている「atsumari」が、個人間を起点とした楽器業界の活性化を図れるかどうか、今後の動向に注目です。

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