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2018年に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)により、全国で民泊が解禁される見通しです。それに先駆け、JTBや楽天のような企業も民泊事業に続々と参入してきています。そんな中、民泊大手のAirbnbが、航空業界大手のANAおよびPeach Aviationとパートナーシップを締結したことを発表しました。このように民泊事業に企業が参加する背景や、AirbnbとANAおよびPeach Aviationとの民泊に関する取り組みについて、すでに始まっているキャンペーンなどをご紹介しながら解説していきます。

目次

  1. 民泊事業に続々と参入する企業、その理由とは
  2. パートナーシップ締結におけるAirbnbの狙い
    • ANAとAirbnbの取り組みについて
    • PeachとAirbnbの取り組みについて
  3. まとめ

1.民泊事業に続々と参入する企業、その理由とは

矢野経済研究所が発表したシェアリングエコノミー市場に関する調査結果(2017年)によると、2016年度における国内シェアリングエコノミーの市場規模は前年度と比べて26.6%増の503億4000万円にのぼります。この成長の背後には、民泊新法成立を受けて加速した事業者の参入があり、2021年度には現在の2倍以上の1070億9000万円規模の市場に拡大すると試算されています。

2018年には全国で民泊を解禁するための住宅宿泊事業法、通称民泊新法が施行されることとなり、JTBや楽天など大手企業が民泊への事業展開を進めています。

JTBでは、仙台の百戦錬磨が子会社を通じて運営している「STAY JAPAN」で取り扱っている民泊物件を、JTBグループの訪日客向け旅行商品販売サイトである「ジャパニカン・ドット・コム」を介して予約できるように進めています。ただし民泊を単品で取り扱う予定はなく、地域経済の活性化策として、農家に泊まる農泊やお祭りの際に利用できるイベント民泊という事業モデルを地方自治体に提案しており、社会的な課題解決をしながら収益を得ようという計画です。

また、楽天はLIFULLと共同で民泊サービスの専業会社である「楽天LIFULL STAY株式会社」を設立しました。

同社は観光庁に住宅宿泊仲介業者としての登録を受けた上で「Vacation Stay(仮称)」というサイトを立ち上げ、Airbnbのような民泊提供プラットフォームとして民泊を貸したい人と借りたい人とを結びつけるサービスを構想しています。サービス開始は民泊新法が施行される2018年1月以降に予定しています。

旅行の際にただ観光地を巡るだけでなく、その土地の生活経験や新しい体験をしたいという需要は世界的に高まっています。民泊はそのようなニーズを手軽に満たせるため、これからも盛り上がっていきそうです。

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2.パートナーシップ締結におけるAirbnbの狙い

新しい旅行スタイルの普及と拡大を目指し、AirbnbがANAおよびPeach Aviationと提携して新たな旅行予約サービスを開始することが発表されました。

世界最大の民泊サイトAirbnbは、現在世界191か国以上の国で400万件の宿泊施設が登録されており、現地ならではの体験を提供していることも特徴の一つです。

「暮らすように旅する」をコンセプトとするAirbnbと日本が誇る日本の価値を発信するANA、そして「空飛ぶ電車」をコンセプトに気軽な旅を提案するPeach Aviationの三社が目指す新しい旅の方向性が共鳴したことから、今回のパートナーシップ契約締結に至りました。

Airbnbは今回の提携について、世界をリードするエアラインであるANA、Peach Aviationと手を組むことにより、新しい旅のスタイルを広め、地域への送客を含めた地方創生への貢献を目指しています。

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ANAとAirbnbの取り組みについて

https://www.ana.co.jp/ja/jp/domestic/promotions/special-info/ana-airbnb-campaign/

パートナーシップ締結が発表された11月6日より「ANA|Airbnb暮らすように旅しよう♪キャンペーン」特設サイトがオープンしています。このサイトでは「京町屋に泊まろう」「国内リゾート生活」「週末別荘生活」「日本を知ろう!」「農業体験」の5つのテーマを選ぶことで厳選されたユニークな宿を探すことが可能です。

表示されるテーマから希望する民泊テーマを選択するとAirbnbのサイトに移動し、このキャンペーンに合わせて厳選された全国各地の宿を予約することができます。

また、予約に先駆けてANAマイレージクラブ会員としてログインした上でこのキャンペーンサイトにアクセスすることで、Airbnbのサイトで予約する際に宿泊代金から3000円割引されるAirbnbクーポンコードを取得できます。

さらにはANAマイレージクラブ会員がこの特設サイトを経由してAirbnbを予約・宿泊することで、チェックアウト後に届くAirbnbのメールから、宿泊代金に応じたマイルを貯めることもできます。

このようなキャンペーンによって、ANAは旅行の需要を喚起することができ、Aribnbはマイレージクラブ会員に向けて宿泊利用を促進することが可能となっています。

PeachとAirbnbの取り組みについて

Peach AviationでもANAと同じく、パートナーシップ締結が発表された11月6日よりAirbnb×Peach コラボレーションページ「COTABI」が開設されました。

http://www.flypeach.com/campaign/airbnb/

実際のサービスは2018年春からとなりますが、「COTABI」は女性、カップル、ファミリーなどの属性を元に旅を検索することのできるプラットフォームです。

COTABIは言ってみれば個人の旅行体験のキュレーションサイトです。これまでに体験した旅を実際の移動手段や宿泊施設、旅先でのアクティビティや観光スポットなど旅のスタイルを登録することで、他のユーザーがCOTABI上で検索できるようになります。

この旅のスタイルをユーザーが気に入れば、旅のプランを一括、あるいは一部を予約することが可能になります。

第一弾先行コラボレーションでは、インフルエンサーによる「大自然でのんびり古民家旅」「DEEP KANSAI TRIP」「東京おしゃれライフ旅」の三つの旅スタイルが紹介されています。

また、Airbnb初回利用者に限り予約料金から3000円割引できるクーポンコードを入手できるなど、これまでAribnbを使ったことのない層の取り込みを行っています。

3.まとめ

住宅宿泊事業法による民泊の解禁にともない、企業の民泊事業への参入が始まっており、これからも東京オリンピックに向けて市場は拡大していくことが予想されています。

ANAとPeachによるAirbnbとのパートナーシップ締結は、送客と宿泊を組み合わせた事業であり、お互いの理にかなっているともいえるでしょう。

すでに民泊事業を手掛けている企業と提携することで、他業種からの民泊事業参入のリスク軽減を図ることもできるため、今後もさまざまな企業のコラボレーションが増えていく可能性もあります。これからも民泊業界の動きには注目です。

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