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近年、欧米ではUberやLyftを中心に、ライドシェアが普及しています。手軽で快適、安価であることが大きな理由。日本にもUberが進出しているほか、notteco(のってこ!)といった日本独自のサービスも誕生。今後、東京オリンピックを迎えるにあたって、外国人観光客のニーズも増加することが予想されており、注目が集まっています。

また、国家戦略特区改正法により、政府は地方ビジネスに注力しようとしており、今後ライドシェアを使って過疎地の交通網を補完するようなサービスが期待されています。一方、ライドシェアに関してはタクシー業界の猛反発が起こっており、その解決が今後の鍵となります。
本記事では、今まさに注目の真っただ中にあるライドシェアについて紐解いていきます。

※編集部注:

2019年2月25日に加筆修正しました。

2018年9月3日に加筆修正しました。

2018年3月8日に加筆修正しました。

2017年1月31日に加筆修正しました。

目次

  1. ライドシェアとは?
  2. ライドシェアにおけるトラブルや対処法
  3. ライドシェアに関する国内の法律や国家戦略
    ・国内の法規制事情
    ・訪日外国人観光客へ向けての対応
    ・過疎地や高齢者向けの対策について
    ・Uberとタクシー会社との初のパートナーシップによる実証実験開始
    日本各地の実証実験について
  4. まとめ

1.ライドシェアとは?

基本は、他人同士で「相乗り」すること

アメリカを中心に、交通手段のひとつとして発展を見せているライドシェア。分かりやすくいうと、「相乗りのこと。どこかへ行くときに、ガソリン代や高速代を割り勘にし、友達同士で相乗りするのは一般的だと思いますが、この流れを他人同士で行うシステムこそ、ライドシェアの醍醐味です。世界的なライドシェアのサービスにはUberやLyftが挙げられます。上記2社では、登録しているドライバーが自家用車を使って、同乗希望者を送迎する仕組みとなっています。

Uber:海外事例から学ぶ、ライドシェアサービスの基本

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https://www.uber.com/ja/

2009年にサンフランシスコで生まれたUberは、今や世界77か国600都市以上で利用される巨大サービスに成長。スマホなどを活用し、移動ニーズのある利用者とドライバーをマッチングさせています。

Uber

各地域のタクシー・ハイヤー会社に加えて、個人ドライバーとも提携しており、利用者はスマホから配車依頼をすることができます。都市によって違いもありますが、移動の目的や人数に合わせて、ユーザーはUberX(エコカー)、UberTAXI(タクシー)、UberBLACK(ハイヤー)、UberSUV(ミニバン)などからサービスを選べます。
また、決済方法も従来のタクシーとは異なっています。「事前に登録したクレジットカードからの運賃の電子決済」、「同乗者との割り勘決済」といった選択肢のなかから行われ、基本的にキャッシュレスです。

日本にも進出しているUber、欧米の大都市よりも2~3倍の需要が

Uberは日本にも既に進出しています。日本では、タクシー・ハイヤー会社と提携してこのサービスを展開しており、タクシー事業者ではなく旅行業者としての許可を得ています。つまり、旅行業者が一般乗用旅客自動車運送事業者と提携する形で展開しているため、タクシー規制は回避しているのです。

日本で正式にハイヤーとタクシーの配車サービスを開始したのは2014年。サービスを開始すると、欧米の大都市にくらべて日本では2〜3倍の需要が見受けられ、とくに東京では高品質なサービスへの感度が高かったとUber Japan執行役員の高橋氏は語っています。

同サービスは、乗車した著名人や多くのユーザーの口コミにより即座にその名が広まりました。多言語対応もしているので、2020年の東京オリンピック時にも活発化が期待されます。

その一方で、タクシー業界の反発は根強く、日本ではライドシェアの普及が遅れているのも事実です。全国ハイヤー・タクシー連合会は「ライドシェアに対し、一丸となって闘う」との意向を示し、Uberをはじめとしたライドシェアの参入へは断固反対の構えを見せています。消費者側としても、日本人のライドシェア利用意向はアメリカや中国に比べて低くなっており、新しいサービスへの抵抗感が見て取れます。

しかし、マレーシアやシンガポールなどアジア諸国でもライドシェアの人気は高く、日本でもサービスの利便性が認知されれば需要は一気に高まりそうです。

Uberは次の一手として、東京以外の都市や観光地にタクシー配車システムを導入するプロジェクトを計画中です。当面はタクシー業界との連携を強めるとともに、実証実験や特区などの活用を通して消費者へのサービスの認知を行うものとみられます。

日本におけるライドシェアサービス

一方日本発のライドシェアサービスでは「notteco」があります。2008年に開始したnottecoは、中長距離移動をターゲットとしたライドシェアです。

中距離の自動車移動をターゲットにしているので、タクシーが競合となるUberと異なり、どちらかというと長距離バス寄りの市場なのだと、notteco代表の東氏は語っています

これまでのBtoBでは提供できなかった値段の安さや、乗る側と乗せる側の密なつながりに加え、バスが運行しないようなエリアのニッチな需要にこたえるべく、ユーザー数の拡大に取り組んでいます。

また、国内企業もライドシェアへ積極的に投資しています。

楽天はSaudi Telecom Company(STC)などとともに、中東や北アフリカ諸国を中心に47都市11カ国にライドシェアを拡大中のCareem3.5億ドルの投資を行いました。その後も楽天はCareemへの資金調達をリードしており、Careem は2018年12月にはさらに5億ドル超の資金調達を行うことを発表しています。

ソフトバンクは Uber株全体の15%を77億ドル(約8700億円)で取得して、Uberへの出資を行いました。ソフトバンクはこのほかに中国の滴滴出行(Didi Chuxing、以下「DiDi」)やインドのOla、シンガポールのGrabなど、世界中の大手ライドシェア企業に投資をしており、ライドシェアビジネスに対する関心の高さがうかがえます。

ソフトバンクグループの孫正義氏は、ライドシェアをロボティクスや自動運転、バイオメディカルなど次世代のインフラとなり得るプラットフォームであると位置付け、より密接にコラボレーションしていきたいとしています。

この孫氏の方針どおり、ソフトバンクは日本国内での取り組みも始めています。2018年2月に日本のタクシー業者向けサービスにおいてDiDiとの協業を発表、2018年6月には両社の出資でDiDiモビリティジャパン株式会社を設立しました。DiDiの革新的な人工知能(AI)とデータ分析技術を活用した日本の全てのタクシー事業者が利用できるオープンなタクシープラットフォーム提供を掲げ、2018年の秋から順次、大阪、京都、福岡、沖縄、東京やその他の主要都市でトライアルとして無償で提供開始すると発表しました。

このようにライドシェア事業者の持つテクノロジーや運用ノウハウと、ソフトバンクの持つ強固な国内事業基盤という双方の強みを活かすことで、今後も大きなシナジー効果が生まれていきそうです。

 

2.ライドシェアにおけるトラブルや対処法

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ウーバライゼーションという新たな課題

ライドシェアの旗手Uberがその語源となったウーバライゼーション(ウーバー症候群)は、インターネットテクノロジーを利用した新サービスの参入で、既存の業界構造の存続が危ぶまれる状態を言います。
ウーバライゼーションがもっとも顕著に現れているのが現在はタクシー業界ですが、これはカーシェア・ライドシェアに限ったことではなく、シェアリングエコノミーが普及していく中で、新しいビジネスモデルが既存業界を侵食するという構図は今後どの業界にも起こりうると予想されています。

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ライドシェアリングへの海外および日本での法規制について

白タク問題

日本でライドシェアリングサービスを行うには、合法・違法の論争があります。一般人が一般車両を使って第三者を乗せ、報酬を得る「白タク」と呼ばれる違法行為に該当するのでは、との解釈があるからです。

2015年2月には、Uberが福岡市で始めたライドシェアの検証実験に対し、国土交通省が道路運送法に違反するおそれがあるとして、ただちに中止するよう指導した事例があります。つまり、その検証実験は国から白タク行為に当たると判断されたのです。

一方で、シェアリングエコノミーの法規制を緩和する動きもあります。楽天の三木谷浩史氏が理事である新経済連盟が、新しい経済成長の施策のひとつにシェアリングエコノミーを掲げ、自民党の規制改革推進委員会や経済好循環実現委員会、さらに政府の規制改革会議などに対し、法的環境整備を働きかけています。新経済連盟が見せるような動きは、ライドシェアをふくめたシェアリングエコノミーの将来性や潜在需要の期待を表しています。

そもそも白タク行為とは、営業許可を受けず自家用車でタクシー業務を行うことを指しています。タクシーは事業用車両なのでナンバープレートが緑であるのに対し、自家用車は白であることから、このように呼ばれるようになりました。

タクシードライバーは二種免許という商業活動用の自動車免許を取って営業しており、安全性について十分な知識と経験を証明されていますが、ライドシェアのドライバーは自家用車運転のための一種免許で登録できるので、安全性が担保されないというのがタクシー業界の主張です。

一方Uber Japanの高橋氏はこれに対し、「白タクは運転手の素性が不明で、料金も不透明な営業形態で、何かあっても連絡先がわからない。きちんとした保険に入っているかも不明で、大変危険なもの。一方でUberは、ドライバーのバックグラウンド・チェックや評価システムが存在し、リアルタイムで走行データを記録しています。過去に問題があるドライバーは参加できませんし、ユーザーは事前にドライバーを知り、評価が低いときは乗車をやめることもできます。リアルタイムで運行を管理しているので、万が一の事故やクレームにも対応でき、保険も完備しています。」とコメントをしています。

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世界のライドシェアに関する法整備、普及状況まとめ

下記に、先を行く世界の流れをまとめてみました。世界中の国、自治体でライドシェアへの対応が進んでいます。

世界のライドシェア(2016年4月調べ)

アメリカ

州を含む60以上の自治体で、ライドシェアを安全に運行するための法律や条例が制定。法律の主旨は、安全性の担保、保険の適用、適正な競争環境の確保。

メキシコシティ(メキシコ)

2015年7月、市民・政府間の議論を経て、ライドシェアを運行するための法律的な枠組みが制定。

プエブラ(メキシコ)

2015年8月、「エグゼクティブ・サービス」という名のもと、ライドシェアを可能にする法律が制定。

フィリピン

2015年5月、政府が掲げる長期的な交通課題解決の一環として、世界で初めて国レベルでライドシェアが正式認可。

キャンベラ(オーストラリア)

2015年9月、世界で初めてUberサービス開始前に、ライドシェアに特化した規制が成立。

オタワ(カナダ)

2016年4⽉にライドシェアに関する条例を制定し、Private Transportation ‎Company (PTC)という事業者カテゴリーを新設、2016年9月に施行。

ロンドン(イギリス)

関係条例を改正して法的環境を整備。

中国

新法を策定し、ライドシェア企業を⼀定の要件のもとで認める。2016年11月に施行。

ベトナム

2015年8⽉にライドシェアに関するパイロットプログラムを運輸省が提案、2016年1月から実施。同プログラムではGrabとVinasunに対してサービス提供を許可。

台湾

タクシー業法を⾒直し、プラットフォームを介した配⾞を可能にする新しい規則を制定。

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国内外のライドシェアサービス企業による、安全対策まとめ

あくまで一例ですが、各企業でどういったことに配慮してサービスが展開されているのかまとめてみました。

企業のライドシェア安全対策

notteco (のってこ!)の安全対策

  • 本人確認書類の提出
  • 携帯電話番号・メールアドレス認証プロセス
  • ソーシャルメディアとの連携
  • レビュー・評価機能(会員間で5段階評価)
  • 年齢制限(登録時に18以上であることを確認)
  • 会員の監視(トラブル、評価が著しく低いユーザーについて、利用停止措置)
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Uberの安全対策

  • キャッシュレス決済
  • 迅速な対応 (トラブル発生時、解決までドライバーの利用停止処理が可能)
  • 電話番号の匿名化
  • 流し営業禁止 (夜間に外で空車待ちをする必要をなくす)
  • 有効期限切れ免許証や車検証の場合、自動的に利用停止

3. ライドシェアに関する国内の法律や国家戦略

国内の法規制事情 

日本においては、道路運送法によってタクシー事業に関する規制が設けられています。

本来はドライバーの技術を担保して乗客の安全を守るためのものですが、この法律に照らし合わせるとライドシェアはいわゆる「白タク」に該当するため、規制の対象となってしまいます。

例外として、過疎地のような交通空白地では移動手段の確保という名目で、市町村やNPO法人などによる運送は認められています。

一方で、シェアリングエコノミーの法規制緩和を求める動きもあります。

楽天の三木谷浩史氏が理事である新経済連盟は、新しい経済成長の施策のひとつにシェアリングエコノミーを掲げ、自民党の規制改革推進委員会や経済好循環実現委員会、さらに政府の規制改革会議などに対し、法的環境整備を求め働きかけています。

2018年5月には「ライドシェア新法」の提案を国土交通大臣を始めとする関係大臣宛てに提出しました。この提案では、タクシードライバー不足による需要構造の変化、観光立国、経済効果、生産性向上、消費者利便性の観点から、ライドシェアの必要性を訴え、ライドシェアを実現するための具体的な新法案を示しています。

新法案は、ドライバーを届け出制、プラットフォームを登録制にして、プラットフォームとドライバーの双方に規制・責任を課すことで、安全・安心を担保する仕組みです。

現在タクシードライバーに保有が義務付けられている二種免許について、国土交通省はその理由として、実車時の乗客による急な方向転換の指示などに対応する高度な運転技能や知識が必要であること、空車時に利用者を見つけたら速やかに安全を確保しつつ路端に停車しなければならないことを挙げています。これに対し新法では、ライドシェアは降車地点と乗車地点があらかじめ決まっていることから、この理由はライドシェアには当てはまらず、ライドシェアのドライバーに二種免許は不要としています。

他にも様々な具体的根拠を掲げ、住宅宿泊事業法(民泊新法)のようにライドシェアの分野でも新法を作り、道路運送法の適用除外にすべきだとして、規制改革推進会議に新法制定の早急な議論を呼びかけています。

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訪日外国人観光客へ向けての対応 

政府は2016年3月2日、国家戦略特別区域諮問会議を開催し、訪日外国人観光客などの受け入れに関する規制改革案を提示しました。そのひとつが、過疎地での観光客に対する自家用車を使った有償運送サービスの制度拡充です。

具体的には訪日外国人観光客を地方に呼び込むため、特区の認定を受けた区域では有償でのサービス提供を認める、つまりライドシェアのビジネスを認めるといった趣旨が改革案に盛り込まれています。計画策定にあたって、市町村や他のバス・タクシー事業者と事前協議の実施が必要となり、運転者は2種免許保持者や大臣認定講習の受講者などに定めるとしています。これらは、「白タク」行為を禁じている道路運送法に抵触しないためのものといえます。

2016年6月には国家戦略特区改正法が公布され、特区認定を受けたエリア内において、道路運送法の特例としてライドシェアの運用が認められるようになりました。これは外国人観光客へ交通手段を提供するのに、ライドシェアを活用しようというものです。

しかし、運営はNPO法人や市町村などが非営利で行う場合に限られており、ライドシェアの全国的な展開を認めるものではないとしています。そのためUberなどの民間企業が、配車アプリでマッチングするような形のライドシェアビジネスを行うのはまだ難しいといえるでしょう。

訪日外国人観光客数について日本政府は、東京オリンピックが開催される2020年までに訪日外国人の数を年間4,000万人、2030年までに年間6,000万人とする成長戦略をまとめています。この急増する海外からの旅行者への対応として、注目が集まっているのがシェアリングエコノミーです。

しかしシェアリングエコノミーは、インターネット技術の進化に伴って実現可能になったこともあり、日本の既存法では対応しきれないサービスであることがほとんど。そのため日本政府は国家戦略特別区の規制改正法案を提示し、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県)関西圏(大阪府、兵庫県、京都府)など、対象地域を指定しました。

一方Uber Japanの塩濱氏によると、2014年の時点で利用者の3割がすでに世界72都市で展開しているUberユーザーを含む外国人の方々なのだといいます。こういった海外からの観光客のニーズにライドシェアはうまくマッチしている現実が見えます。

過疎地や高齢者向けの対策について 

地方の観光地や過疎地でもライドシェアの活用が始まっています。京都府京丹後市丹後町では、市営オンデマンドバスを受託しているNPO法人が運行を担当する「ささえあい交通」がリリースしました。

これはマイカーを保有するボランティアドライバーと、高齢者など移動が困難な住民をマッチングさせるサービスで、配車マッチングにはUberのスマートフォンアプリを使用しています。

Uberのアプリは外国語にも対応しているため外国人観光客でも利用でき、乗車した際はクレジットカードで決済ができます。

しかし、高齢者の中にはスマートフォンやクレジットカードを保有していない人も少なくありません。そういった人のために「代理サポーター制度」を導入し、アプリでの配車手配とカード決済の立替を代理サポーターに依頼できるようにしました。これにより、利用者の実情に即したサービスの提供ができるようになっています。

地方の過疎地では人口減少から公共交通が赤字で廃止、または運行数の極端な削減にいたるケースが頻出しています。さらに高齢化により自家用車の運転を諦めなくてはいけない状況が増え、住民の快適な日常生活が脅かされています。

都市部では、タクシーとライドシェアの競合で業界間の軋轢が問題になっていますが、サービスが撤退していく過疎地であれば、同様ではありません。政府、行政、サービス事業者はこの丹波町での事例に大きな期待を寄せています。

実際に、2018年5月には導入2周年を迎え、利用数も1年目から4%微増しています。約6割は地元利用者で、丹後町地域における重要な交通手段として定着しつつあります。

「代理サポーター制度」によって、スマートフォンやクレジットカードがない人からの利用が増えたため2016年12月からは現金支払いが導入されました。約8割が現金で支払われていることから考えても、利用者側の意見を取り入れた利便性の向上は大きな意味があったと思われます。

目的地としては病院や市役所、自宅から民間バスの停留所の往復など利用が多い傾向で、鉄道やバスとの連携などによって今後も拡大が期待されます。そのほか、ライドシェアを利用した地元住民や商店とのコラボイベントで、住民の外出機会を創出するという試みもされています。

このように、利用者の声を反映して使いやすくしたり、住民や団体と連携したりすることで地域に浸透しつつある「ささえあい交通」。全国的にも大きな注目を集めており、さらに使いやすい交通手段としての普及が目指されています。

また、利用者の5%は海外からの観光客で、ライドシェアを取り入れた旅のプランを提案する宿なども出てくるなど、今後は観光分野でのさらなる活用も期待されています。

他にも、全国の過疎地で住民の自家用車を使ったライドシェアの実証実験が広がりを見せています。

北海道中頓別町では、2016年8月から「なかとんべつライドシェア」の実証実験が行われました。町内に16人いるボランティアドライバーが自家用車で利用者を搬送する仕組みで、配車にはウーバーのシステムを利用しています。利用者は主に高齢者で、買い物や通院目的での利用が大部分です。中頓別町も過疎化と高齢化に加え、行政だけで公共交通を支えきれなくなる問題に直面し、解決方法としてライドシェアに活路を見出したのです。

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Uberとタクシー会社との初のパートナーシップによる実証実験開始

2018年、Uberと兵庫県淡路県民局、タクシー会社との3者による実証実験の契約が国内で初めて締結され、2018年7月から実証実験が淡路島で開始されました。これにより、観光客や淡路島地域の住民が、Uberの配車アプリを利用して地元タクシーを配車できるようになります。

約50の言語で利用でき、世界の600以上の都市で利用されているアプリは母国語で目的地を指定できるため、海外からの観光客にとってもより簡単に島内を移動できる交通手段として浸透すると期待されています。自治体は諸外国で慣れ親しまれているアプリを使うことによってインバウンド需要を取り込み、淡路島観光戦略の一環とする考えです。

タクシー会社にとっても利用客が増えれば実車率の上昇が期待でき、Uberにとっても、規制によってライドシェアが浸透しづらい日本における配車アプリの普及率アップなど、あらゆる面での相乗効果が期待されます。

アプリではGPSによって利用者の現在地が自動的に表示されますが、配車位置を別の場所に指定することもできます。行先や降車位置を乗車前に指定し、ドライバーや車両番号などの情報、予想到着時刻や予定料金もあらかじめ知ることができること、移動中の現在位置が地図上に表示され土地勘がなくても分かりやすいこと、領収書が登録メールに送信されるため紛失の心配がないことなど、安心して利用できるというのが大きなメリットです。

配車、目的地指定、支払いなど、すべてがアプリで完結し、運転手とのやりとりなしで利用できるというのもインバウンド顧客にとっては重要なポイントでしょう。

また、島内の住民も二次交通として活用できるため、京丹後市丹後町のように地元の交通手段として浸透することも期待されます。

配車地域は原則として淡路島内に限られますが、島内で乗車し島外で降車することは可能です。2019年3月までのこの実証実験によって日本におけるライドシェアがさらに拡大するか、高齢化やタクシー業界の人材不足などを背景に、時代に合った課題解決へつなげていけるかなどが注目されます。

日本各地の実証実験について

兵庫県や京都、北海道での取り組みの他にも、日本各地でライドシェアの様々な実証実験が行われています。

2013年創業のベンチャー企業Azitは、自社が提供するライドシェア・アプリCREW(クルー)を利用して鹿児島県与論島で2018年8月に実証実験を実施、長崎県久賀島でも2019年4月から実証実験が行われます。

鹿児島県与論島の実証実験では、Azitとヨロン島観光協会が連携。島の住民10名程度をドライバーとして登録し、移動ニーズがある観光客はCREWをダウンロードすれば近くにいる車を呼べるようになるという仕組みです。またアプリでは自家用車だけでなく、タクシーも呼べるようにし、既存のタクシー事業者の収入への影響を配慮した策をとる方針としています。

同じくCREWを利用した長崎県久賀島の実証実験では、五島市と地場系のタクシー会社「久賀タクシー」とCREWが連携。タクシーが不足した場合、車を保有する島の住民がCREWドライバーとして観光客の移動を手助けする仕組みを作りました。乗った人は実費のガソリン代とシステム利用料を支払うほか、任意で謝礼を支払うこともできます。

これらはいずれも、観光客の増加に対して不足する交通手段という課題の解決を目指しています。

また、熊本県荒尾市は三井物産などとともに、2019年1月21日から2月1日までの期間でAI(人工知能)を活用した相乗りタクシーの実証実験を九州で初めて行いました。実証実験には地場系のタクシー会社「荒尾タクシー」が協力し、乗車希望者がスマートフォンや電話で配車依頼をすると、AIが複数の利用希望者を効率運行を踏まえてマッチング、利用者はタクシーに相乗りします。マッチングには、北海道函館市の公立はこだて未来大学発スタートアップである未来シェアが開発したシステムが使われました。

他にも、広島県三次市のマツダ株式会社、広島県、三次市によるライドシェアの実証実験、愛知県豊明市のアイシン精機株式会社、株式会社スギ薬局によるライドシェアサービス「チョイソコ」、三重県菰野町のあいあい自動車の実証実験など、全国でライドシェア導入を試みる様々な取組みが広がっています。なお、三重県菰野町のあいあい自動車の実証実験はその後事業化されています

また、実証実験だけでなく、兵庫県養父市の地元住民が自家用車を活用する有料相乗りライドシェアサービス「やぶるく」、横浜市の相乗り仲介スマホアプリ「ノリーナ」、「notteco」など、自家用車による合法的な配車・相乗りサービスは既に全国に拡大しています。

 

4. まとめ

2016年11月のAirbnb発表によると、同社の2015年にAirbnbを利用して日本を訪れた海外からの旅行者数は約130万人、2017年には585万人に達しています。

一方でライドシェアは巨大ユニコーン企業であるUberに加え、Lyftの時価総額は55億円といわれています。2012年の創業から数年でここにいたっていることから、その成長率はUberをしのぐという見方もあるほどです。

日本に先駆けて、海外ではすでにライドシェアサービスが急成長しています。サービスに登録しているドライバーとユーザー双方にメリットの大きいライドシェアは、日本でも安全性が確かめられれば、今後ますます拡大していくでしょう。また、国家戦略特区でのライドシェアも、地域との協力・連携が可能になれば活発化すると予測できます。

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