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民泊やカーシェアなど、シェアリングエコノミーへの大手企業の参入は日本でも大きな流れとなっています。ANAもシェアリングエコノミーに力を入れていくという方針のもと、体験シェアリングサイトのTABICAと提携して地方創生に積極的に取り組んでいく考えです。

ANAでは他業種の事業者とも次々と提携を進めるなど、多方面からの顧客の囲い込みにも挑戦しています。

少子高齢化や地方の過疎化が問題となっている現在の日本で、ANAは旅行業界でどのようにビジネスを展開していくのでしょうか。この記事で詳しく解説していきます。

目次

  1. シェアリングエコノミーに注力する理由
  2. 地方創生への貢献について
    ・シェアリングシティ推進パートナーに
    ・TABICAとの取り組み
  3. 次々と提携を進めるANA
  4. まとめ

1.シェアリングエコノミーに注力する理由

ANAグループといえば国内線・国際線・貨物船の運航や旅行パッケージツアーの販売など、航空事業大手として日本の旅行業界を牽引する存在といえるでしょう。

そんなANAが、2016年4月に新しい組織「デジタル・デザイン・ラボ(DD-Lab)」を立ち上げました。ここではさまざまなキャリアの人材が集まり、既存の発想にとらわれない破壊的イノベーションに挑戦していくというミッションを打ち立てています。

すでにロケット開発やドローン運用などに取り組んでいる中で、積極的に注力しているのがシェアリングエコノミーです。

シェアリングエコノミーとは民泊やカーシェアなどのような、個人が所有する住居や物を多くの人と共有して利用するというサービスのことです。

DD-Labがこのシェアリングエコノミーに注力する理由として、地方での人口減少とミレニアル世代の取り込みを挙げています。

国内の少子高齢化や都市部への若者流出に伴い、地方の人口減少は深刻なものとなっています。医療サービスの不足などが社会問題化しており、2040年には小規模な自治体の多くが消滅するとまでいわれています。

このことは地方の観光業にも大きな影響は避けられず、国内旅行や国内線サービスを提供するANAとしても地方の活性化は重要な課題と位置付けています。

また1980年代半ばから2003年の間に生まれた若者であるミレニアル世代は、10年後の主力ターゲットとなる顧客層です。幼い頃からインターネットやデジタル機器に触れているミレニアル世代は新たな購買行動を生み出している一方、ANAではミレニアル世代にとって魅力的なエアラインになっていないという危機感があるといいます。そのためANAがミレニアル世代の間で関心の高いシェアリングエコノミーに力を入れることで、彼らを顧客として取り込んでいきたいという考えがあるようです。

 

2.地方創生への貢献について

・シェアリングシティ推進パートナーに

前述したとおり、地方における人口減少は地方自治体にとって問題となっているだけでなく、人や物の流動にも大きな影響を与えています。

この問題を解決する糸口としてもシェアリングエコノミーは注目されており、政府の新成長戦略「未来投資戦略2017」の中ではシェアリングエコノミーが地域活性化を担う重要な施策だと位置づけられました。

その施策の一環として、シェアリングエコノミーを活用して実際に地域の課題解決に取り組む自治体を「シェアリングシティ」に認定。ANA総合研究所はこの活動に賛同する「シェアリングシティ推進パートナー」として、シェアリングエコノミー協会が主催する「SHARE SUMMIT 2017」への協賛など、地域の活性化に協力する活動にグループ全体で取り組むとしています。

空きスペースを活用したイベントの開催や、スキルシェアを利用した雇用の創出など、地方自治体によるシェアリングエコノミーは少しずつその成果が出始めています。これについて詳しくは以下の記事も参考にしてください。

関連記事:

地方自治体にも広がる、シェアリングエコノミー活用の動きと導入事例

シェアリングエコノミーの最先端!世界が注目する「シェアリングシティ」の実態とは!?

 

・TABICAとの取り組み

https://tabica.jp/entry/feature/ana/

ANAはシェアリングエコノミーへの取り組みの中で、「TABICA」との提携を発表しました

TABICAは田舎暮らしや農業、漁業などの、さまざまな体験をしたい人と体験を提供する人とをつなぐプラットフォームです。体験を通して地方の魅力を伝えることで地方創生につなげたいという思いがあり、地域活性化で国内旅行の魅力向上を目指したいANAとの思惑が一致した形となります。

この提携による企画の第一弾として、長崎県で「島原地酒飲み比べ!ライトアップされた夜の島原城を眺めながら地元民と地酒を楽しもう!」などの4つのツアーが販売されました。両社が連携して、体験のみの予約だけでなく航空券と宿泊と体験がセットで予約できるようになっています。

そのほか宮崎県小林市では市民向けTABICA体験プラン開発ワークショップの開催が予定されるなど、地元の市民を巻き込んで地方創生に取り組んでいます。

シェアリングエコノミーのノウハウを持っているTABICAと、おもてなし技術や語学力に長けているANAの人材が協力することで、地域の課題解決に変革を起こそうとしています。

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3.次々と提携を進めるANA

ANAではTABICAのほかにも、Airbnbとのパートナーシップ締結トリップアドバイザーとの提携も発表しています。

https://www.ana.co.jp/ja/jp/domestic/promotions/special-info/ana-airbnb-campaign/

Airbnbは世界最大の民泊サイトとして知られており、世界中で民泊の仲介をしています。

ANAとの提携によって特設サイト「ANA|Airbnb暮らすように旅しよう♪キャンペーン」を開設し、このサイトを経由してAirbnbを予約すると宿泊代金に応じてマイルがたまる仕組みです。Airbnbはマイルの付与によって民泊の利用を促進でき、ANAは民泊を使うことによる気軽な旅や新しい旅行体験を提案することで、旅行需要の喚起を目指しています。

https://www.tripadvisor.jp/ANAMileCampaign

旅行口コミサイトを運営するトリップアドバイザーでは、旅行の口コミを投稿するとマイルがもらえるキャンペーンを以前から実施していましたが、ANAとの提携によってより多くのマイルがたまる内容へと変更しました。旅行に関心の高いトリップアドバイザーのユーザーにマイルをためてもらい、ANAの航空機やパッケージツアーを利用してもらうことが狙いです。旅行のあとは口コミ投稿で体験を共有することで、より旅行の価値を高めることができるとしています。

http://www.keiyobank.co.jp/LP/keiyo_ana/index.html

京葉銀行との提携では、インターネット支店に口座を開設したり、定期預金を10万円以上預け入れたりした顧客にマイルをプレゼントするキャンペーンを実施。金利が低下している中、マイルによるお得感を出して預金の確保につなげるとともに、京葉銀行の主要顧客層である40~50歳代の現役世代をANAの顧客として取り込みたいという狙いです。

関連記事:

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4.まとめ

少子高齢化による人口減少により、国内線や観光業の需要は厳しい状態と言わざるを得ません。そんな中でのANAによるシェアリングエコノミーの注力やさまざまな事業者との提携は、過疎化にあえぐ地方自治体や国内の旅行業界からも大きな期待を集めています。

ANAでは今回ご紹介したほかにもマイルのたまるキャンペーンを複数展開しており、他業種とのコラボレーションを積極的に行うことによって利用客の幅広い取り込みを進めていくとみられています。

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