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シェアリングエコノミーは、資源を個人で所有するのではなく、共有することで低コストと資源削減が実現できると注目が集まる仕組みです。

2016年から江東区・中央区・千代田区・港区でサービスを開始した自転車シェアリングもそのひとつです。そこに新たに新宿区が加わり、隣接しあう都内5区に渡って利用可能になり、自転車シェアリングの広域化が進んでいます。

自転車シェアリング自体は従来からある取り組みですが、IT技術の発達によってGPSでの自転車管理、支払いのオンライン化など運営が容易になってきたことから、海外では欧米、オーストラリア、最近では中国や台湾でも自転車シェアリングが定着しており、日本でも自転車シェアリングへの期待が大きくなっています。

目次

  1. エリア拡大で利便性を増す国内の自転車(サイクル)シェアリング
  2. 世界に学ぶ自転車(サイクル)シェアリング事情
  3. まとめ

エリア拡大で利便性を増す国内の自転車(サイクル)シェアリング

連携が進む東京の自転車(サイクル)シェアリング

千代田区、中央区、港区、江東区が、ドコモバイクシェアのITシステムで運営している東京の自転車シェアリングエコノミーに、2016年10月から新宿区が加わりました。隣接する5区に渡って自転車シェアリングが導入され、サービスの広域連携が実現しています。

この都内5区連携の自転車シェアリングを利用するには、自転車シェアリング広域実験(http://docomo-cycle.jp/tokyo-project/index.html)にアクセスし、個人情報とクレジットカード情報を登録し、開錠のためのパスワードを入手するか、利用のためのFelicaカードを作って開錠します。5区いずれかのウェブサイトから登録すれば全エリア共通で利用できるため、手間が省けます。

基本料金なしで利用できる1回会員は30分150円、月額会員は基本料金2,000円で、月に何回利用しても初めの30分は無料で利用できるシステムになっています。この2つのプランはどちらも延長料金30分100円で、利用できる期間は最大24時間です。

そのほかに1,500円で終日利用できる1日パスがあるほか、この5区の自転車シェアリングは電動アシスト付き自転車を採用しているので、坂道や高齢者の利用もバックアップしています。

利用と返却は、5区内に点在する180か所以上のサイクルポートで行います。返却の際もスマホで最寄のサイクルポートを確認して持ち込むだけなので、借りた場所に返さなくてはいけないレンタサイクルより気軽に利用できます。

国内自転車(サイクル)シェア市場の動向

環境に優しく、健康にも良い、渋滞の緩和にもつながる自転車シェアリングエコノミーは促進される傾向にあります。東京都以外では、横浜・仙台・広島・神戸など地方都市で自転車シェアリングが導入されています。そのほか、増加傾向にあるインバウンドに対して観光での利用も見込まれます。

一方でサイクルポートの設置場所の確保や、収益増加のための広告搭載など、サービスの広域化に向けて乗り越えるべき課題も浮き彫りになっています。また利用促進が進んだ場合、安全確保のための自転車専用道路の整備も不可欠と言われています。

世界に学ぶ自転車(サイクル)シェアリング市場

各国の都市で広がる自転車(サイクル)シェアリング

国外の自転車シェアリングの現状を見てみましょう。人口密集によって渋滞、大気汚染が悪化している大都市では、ひとつの解決策として自転車シェアリングが日本に先駆けて進んでいます。また、自転車シェアリングなど「エコ事業へ積極的に取り組んでいる都市」というイメージアップも期待されているのです。

このような背景で、大規模なシステム運用を取り入れてサービスを開始したのが、Vélib’(ヴェリブ)と呼ばれるパリの自転車シェアリングです。各国はこのVélib’の成功を見て、積極的に自転車シェアリングを導入し始めました。

Vélib’の大きな特徴は、1日の登録料1.7ユーロを払うと何度利用しても初めの30分は料金無料という価格の安さと、運営にIT技術導入したことです。また盗難しにくいパーツや保守の手間がかからない丈夫な車両を採用したことも好例となりました。

パリやロンドン、台北の自転車シェアリングでは24時間利用可能です。公共交通機関が営業していない時間帯にも利用できるため、特に台北では深夜の若者の利用が日中を上回ることもあるようです。

ただしパリでは利用登録時に150ユーロのデポジットが必要で、トラブルがあればここから補填されます。台北も同様に2,000元のデポジットがありますが、ロンドンではデポジットはないものの、トラブルの際には最大300ポンドまで請求されることがあります。

まとめ

以前からあった自転車シェアリングですが、ITシステムを導入し運営の効率化に成功したパリがモデルケースとなって、世界の都市が自転車シェアリングを導入しています。

国内のサービスも大枠はパリの例にならっていますが、各国の状況によって課題や必要なサービス・システムは少しずつ違ってくるでしょう。

日本においてこれからユーザーに真に受け入れられるためは、広域化によるポートと自転車の数の確保、ユーザーが本当に便利だと感じるサービスに徹することがポイントになっていくでしょう。

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