Pocket

1台の自動車を複数の会員が共同で利用する、自動車の新しい形態がカーシェアです。

世界的に見ると、組織的なカーシェは1980年代後半から欧州で普及し、1990年代には欧米全体に広まっていきました。そして、日本でスタートしたのは2002年です。2016年には日本国内、ステーション数10,810カ所(前年比14%増)、車両台数は19,717台(同20%増)、会員数は846,240人(同24%増)と、増加傾向にあります。

本記事では拡大しつつあるカーシェアの事業としての特性をまとめました。

目次

1.カーシェアとレンタカーは同じものではない

  • カーシェアアリングとは
  • カーシェアとレンタカーを徹底比較

2.カーシェアビジネスは難易度が高い?

  • カーシェア市場は大手5社が寡占
  • カーシェアの事業特性

3.まとめ

1.カーシェアとレンタカーは同じものではない

カーシェアリングとは

カーシェアは、その名のとおり「自動車を共同で所有すること」です。相乗りなどとは異なり、会員となった人がそれぞれ時間を変えて、1台の自動車を利用するシステムです。

利用者にとっては一見面倒そうですが、実際は利便性が高くなるようなサービスが提供されているため、好きなときに好きな時間だけ車を利用できるメリットがあります。そのほかに、自動車保有に対する費用(保険、車両維持費、駐車場代)などの費用負担や手間を軽減できる点もメリットです。

そのほかに、自動車による環境負荷を軽減するなどの効果があるとされ、環境や社会に配慮したシステムと言われています。

公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団によると、カーシェア2008年頃から増加傾向にあり、2009年度から2010年度でカーシェアに会員登録している数が1年で2.5倍も増加したことを皮切りに、車両台数、会員数共に増加傾向にあります。

カーシェアとレンタカーを徹底比較

カーシェアに似たサービスとして、より浸透しているのがレンタカーです。カーシェア自体はレンタカーの一種で、レンタカーと同様の規制があり、営業する上では国土交通大臣の許可が必要になります。

ですが、大きな違いは会員制度にあります。カーシェアの場合、会費を支払うことによって、1回ごとに発生する利用料及びガソリン代の支払いが不要になります。また、諸税や保険料もレンタカーの場合はその都度の契約や支払いになりますが、カーシェアの場合は、月会費や車両利用料の中に内包されています。

もうひとつ大きな違いは、利便性の高さです。レンタカーの場合は営業所の営業時間内に出向き、借りるための契約が必要です。カーシェアの場合は、インターネットで予約をすれば、自宅やオフィスなどの最寄りのカーステーションで好きな時間に自動車を利用できます。

カーシェア

利用者

  • 登録会員

利用時間

  • 短時間(長時間のパックサービスもある)

料金

  • 入会金 有料
  • 料金設定 月会費、時間・距離料金
  • 支払い 後払い
  • ガソリン代 利用料金に含まれる
  • 諸税・保険料 利用料金に含まれる

貸し出し

  • 契約 会員登録時
  • 手続き パソコンや携帯電話から予約
  • 場所 無人のカーステーション
  • 返却時間 24時間対応

レンタカー

利用者

  • 登録会員、不特定の顧客

利用時間

  • 6時間以上が多いが、10分単位のものもある

料金

  • 入会金 無料
  • 料金設定 時間・日・週・月単位
  • 支払い 前払い
  • ガソリン代 実費負担
  • 諸税・保険料 レンタル料金に含まれる(諸税・保険料)

貸し出し

  • 契約 毎回契約
  • 手続き 営業所にて書類記入
  • 場所 有人の営業所
  • 返却時間 営業所の営業時間内

2.カーシェアビジネスは難易度が高い?

カーシェア市場は大手5社が寡占

市場が拡大しているカーシェア業界ですが、大手5社が全体会員数の約95%(2015年度調べ)を占めています。もっともシェア率の高いタイムズ24は、他社に比べダントツです。2015年度の会員数68万人に対し、タイムズカープラスの会員数は約45万人と、ほぼ6割以上がタイムズカープラスを利用していることになります。

さらに、オリックス自動車の「オリックスカーシェア」やカーシェアリング・ジャパンの「カレコ・カーシェアリングクラブ」、アース・カーの「アースカー」、名鉄協商の「名鉄協商カーシェア カリテコ」が市場を寡占しています。

最新版カーシェアの国内市場規模・動向まとめで最新カーシェア市場について詳しくまとめていますので、ご覧ください。

カーシェアの事業特性

カーシェアを事業化するためにはどのような課題があるのでしょうか。

まず大きな課題は、車両やカーステーションの用地確保です。カーシェア事業は、基本的に人口の多い都市部でなければ高い稼働率が望めないのが現状です。住友信託銀行(現三井住友信託銀行)の「調査月報」(2009年7月号)によれば、「カーシェア普及用件の1つに人口密度が高いこと」を挙げ、その理由は「カーシェアは半径300m以内に一定の会員がいる必要がある。10分や15分の車利用のためにステーションまで300m以上も徒歩移動する利用者はまれ」と述べています。

というのも、レンタカーが半日から1日の利用に対して、カーシェアは15分単位で利用するのが一般的です。となると、人口の密集する地域での好立地の確保は必須となります。例えば、業界最大手のタイムズ24は、首都圏のほか、ターミナル駅付近での営業が基本となっています。

さらに、カーシェアの利用目的は、「通院や通学の送迎」、「ホームセンターや家電量販店での大きな買い物の時」、「出張先での移動」などが大半です。いかに、タクシー代わりに低コストで利便性の高い利用ができることを利用者にうったえられるかが鍵となりそうです。実際に、パーク24の会員アンケート調査でも、予約のタイミングは、「前日26%、当日45%、ほぼ直前70%」(重複回答)となっており、タクシーやバスの代わりとしての利用が多いことが証明されているようです。

3.まとめ

用地と車両の確保が必須なことから、黒字へと事業展開するのは時間がかかると言われているカーシェア業界。とはいえ、日本でカーシェアがスタートして10数年たった今でも、市場は拡大傾向にあります。さらなる成長のためにはサービス向上だけでなく、パーク24の「TONIC」のような、新しい利用者層を開拓するための新たなマーケティング手法が重要になってくるのかもしれません。


関連カテゴリー

プラットフォームビジネスモデル入門&実践【第1回】〜プロダクトのデザインから関係性のデザインへ〜
Pocket