日本で初となる看護師のシェアリングサービス「生存確認ドットコム」が、2019年2月より提供開始されました。日本では看護師の離職が深刻で、人材不足にも関わらず経験や資格を眠らせている看護師が全国に多数存在しています。「生存確認ドットコム」が看護師の新しい働き方を提案し、高齢者福祉や介護の人材不足を解決する一助となることが期待されています。
この記事では「生存確認ドットコム」の詳しいサービス内容を紹介し、高齢者の福祉・介護分野におけるシェアリングエコノミーについて解説します。
目次
- 「生存確認ドットコム」とは
・サービス概要について
・サービスの狙いについて - 利用のメリットとは
- 高齢者福祉・介護とシェアリングエコノミー
- まとめ
1.「生存確認ドットコム」とは
サービス概要について
「生存確認ドットコム」とは、離れて暮らす高齢者の家族と、家事や育児の空き時間に短時間だけ仕事をしたい看護師や休職中の潜在看護師をマッチングして、高齢者の生存確認や生活支援を行うという看護師のシェアリングサービスです。
これまでも介護施設や行政福祉による訪問看護というものはありましたが、「生存確認ドットコム」のサービスはそれらとは異なり、高齢の家族が孤独死などしていないかちょっと様子を見てもらいたい、という家族のニーズに応えるものとなっています。
そのため、看護師が行うのはバイタルチェックや健康についての相談など医療行為の範囲外のものとなっており、あくまでも高齢者の生存確認や生活のサポートをするということに主眼を置いています。
個人同士でやりとりするため希望の日時や相談したいことを個別に対応できるというシェアリングエコノミーの利点を生かして、看護師の柔軟な働き方を支援するとともに、高齢者とその家族が安心して暮らす手助けとなるサービスを目指しています。
サービスの狙いについて
このようなサービスの背景には、結婚や出産などの理由で看護職を退職せざるを得ない、いわゆる潜在看護師と呼ばれる人が増加しているという問題があります。高齢化社会によって看護師の需要はあるものの、看護職の時間外労働の多さや育児との両立の難しさによって退職をする看護師は後を絶たず、潜在看護師は全国で71万人にのぼります。
一方で一人暮らしの高齢者は毎年増加しており、そういった一人暮らし世帯で亡くなったあとに発見される、いわゆる孤独死と考えられる死亡者数も多数発生しています。
これらの問題を踏まえ、看護師シェアリングのサービスを提供することで潜在看護師の人材リソースを有効活用するとともに、一人暮らしをする高齢者の孤独死を減少させ、地域社会に貢献していくことが狙いです。
社会全体で働き方改革が叫ばれる中で「生存確認ドットコム」は看護師の新しい働き方として注目され、看護師不足や看護師の離職問題を解決する糸口となることが期待されています
2.利用のメリットとは
「生存確認ドットコム」を利用する場合、高齢者本人やその家族がスマートフォンやパソコンを使って希望の日時に訪問できる看護師を検索し、条件が合う看護師へ訪問を依頼します。依頼を受けた看護師は高齢者の自宅へ訪問して健康や生活チェックを行い、その結果は写真とともに家族へ報告されます。1回の依頼は1時間につき5000円からとなっており、オンライン決済で支払いが完了するということです。
看護師は自分の働きたい曜日や時間、場所を自分で設定することができるので、育児中やダブルワーク中でも都合に合わせて働き方をコントロールできるというのが、看護師にとっての最大のメリットです
仕事内容はバイタルチェックや健康相談などにとどまり医療行為は行わないことになっているため、ブランクがあって看護技術に不安があるなどの理由で復職に一歩踏み出せなかったという人や、コミュニケーションを大切にして穏やかに働きたいという人が、資格を生かして仕事をすることができます。
また、高齢者にとっても自宅に訪問してもらえて出かける必要がないことは心身の負担を抑えられ、病院に行くほどではない体調についての相談などを気軽にすることができます。
依頼する際は事前に看護師のプロフィールや評価が確認でき、どんな人物が訪問するのかが分かるようにすることで利用者の不安を解消しています。遠方に住んでいたり忙しかったりしてなかなか家族の元へ行くことができない人にとって、看護師が直接訪問して様子を見てくれるということは大きな安心感を得られることでしょう。
3.高齢者福祉・介護とシェアリングエコノミー
日本国内の少子高齢化はこれからもますます進んでいくとみられ、高齢者福祉や介護分野におけるサービスの需要は拡大しています。
特に介護職は他の産業に比べて離職率も高く慢性的な人手不足の状態が続いており、福祉や介護の現場でもこれまでと労働形態を大きく変えていく必要に迫られています。
このような問題に対し、都合のいい時間に好きな場所で働けるシェアリングエコノミー型のサービスは資格や経験を持つ人材を有効活用でき、人手不足を解消する糸口となることでしょう。
すでに介護や医療の現場では、ヘルパーをマッチングするシェアリングサービスやUber型の医療サービスもリリースされています。海外でも移動式クリニックや医師派遣など、オンデマンド型の医療サービス、高齢者を遠隔操作で見守ることができるIoTシステムが展開されており、国内外ともに高齢者の介護福祉分野でのシェアリングサービスは今後も広がっていくことが予想されます。
医療や介護に関するシェアリングサービスについて、詳しくは以下の記事も参考にしてください。
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4.まとめ
「生存確認ドットコム」を提供する株式会社メディカルアジュールでは、離れて暮らすことで希薄になりがちな家族のコミュニケーションのきっかけを増やし、緊急時だけでなく日頃からの健康管理を通して家族に安心を届けたい、としています。
少子高齢化が進む中、やむを得ず医療現場を離れた潜在看護師が活躍できることは、社会的にも意義のある事業といえるでしょう。
介護業界では、2025年に約38万人もの介護人材不足に見舞われるという予測データがあります。シェアリングエコノミーは、そういった人材不足解決の一端を担うものとなるのではないでしょうか。