「お手伝い」と「宿泊」を交換できる新しいシェアリングプラットフォーム「RONIN BANK」がサービスを開始しました。ゲストのRONINは得意分野を活かした「お手伝い」をすることで、主人であるホストから「宿泊先」の提供を受けることができます。副業収入を目的とせず、ゲストとホストの交流に重点をおいたユニークな仕組みです。若者の力が借りたい地方と若者とを繋ぐマッチングサービスとして地方創生の役割も期待されます。RONINや主人になる方法、サービスの仕組みやメリットなどを解説していきます。
目次
- 「RONIN BANK」とは
・サービス概要について
・RONINと 主人について - 利用のメリットとは
- 旅行とシェアリングエコノミー
- まとめ
1.「RONIN BANK」とは
サービス概要について
一般社団法人「かかしの一本足かえるのあぐら」は「お手伝い」と「宿泊場所」の交換ができるマッチングプラットフォーム「RONIN BANK」の提供を2月19日に開始しました。「必要な人を必要な場所に」をコンセプトに、自分が持っているスキルを提供することで、対価として宿泊のサービスを受けることができる仕組みです。
「主人(ホスト)」は、誰かに手伝って欲しいことを「RONIN BANK」のホームページ上に記載します。スキルを提供できる人は「RONIN」として登録し、エリアや求めるスキル、お手伝い内容などの条件から、「これなら自分にでも手伝うことができる」と思うものを選択。主人にコンタクトを取り、事前に両者で条件などのコミュニケーションを重ねた上で、合意に至れば実際に主人のところに赴き、お手伝いをする代わりに無料で宿泊させてもらうことができます。
サービスを提供する「かかしの一本足かえるのあぐら」は、宮城県で古民家や空き家を改装し宿や飲食店経営を行なっていました。改装の際に「大工とまで行かなくても、誰かDIYが得意な人に頼むことができたらもっと手軽に早く改装が進められたのではないか」と感じたことが「RONIN BANK」設立のきっかけです。
通常はスキルに対してお金を支払い、宿泊場所に対してお金を支払いますが、「RONIN BANK」では「お手伝い」と「宿泊場所」を交換する点に特徴があります。お金を介さないことでホストとゲストの交流に重点を置いているのです。
RONINと主人について
「RONIN BANK」ではスキルを提供できる人を「RONIN」、宿泊場所を提供できる人を「主人」と呼び、それぞれの役割や登録方法を示しています。
RONIN BANKによると、RONINは自分自身が持っている「スキル」を提供し「主人」を助ける人のことで、18歳以上であれば職業や年齢上限なく誰でもなることができます。「RONIN BANK」に会員登録を行い、3,000円の年間登録費用を支払えば手続きは完了。年間登録費用以外の追加費用はなく1年間に何度でも利用することができます。
実際のお手伝い内容は、農作業や掃除、建物や備品などの修理や補修、プログラミング、ホームページ作成、接客など、主人の業種や要望次第で多岐にわたります。1日の奉公時間は6時間程度としつつも、詳細は主人と事前相談して両者で決めることとしています。
一方、RONINの受け入れを行う人が「主人(ホスト)」です。主人になるには、旅館業や民泊の営業許可の取得している、もしくは取得を予定している必要があります。他にも「RONIN」ときちんとコミュニケーションが取れること、多種多様な価値観を尊重できること、宿泊場所を提供できること、毎月「RONIN BANK」に利用状況を連絡できることが求められます。これらの条件を満たしていれば、「RONIN BANK」に利用登録を行い、5,000円の年間登録費用を支払えば手続き完了です。
2.利用のメリットとは
「RONIN BANK」が提供するサービスでは、RONINと主人それぞれにメリットがあります。
RONINにとっては、自分が持つちょっとしたスキルや知識などの得意なことを生かしたお手伝いをすることで、日本全国に無料で宿泊することができます。将来同業の独立を考えている場合は、滞在先の主人から宿泊や飲食業の運営方法を学ぶことができます。また、他の旅行者とコミュニケーションを取ったり、地域の人々との交流を通してその土地ならではの知識や経験を積んだりする機会にもなります。
主人にとっては、宿泊先の提供と引き換えに、自分が手伝ってほしい内容に合うスキルを持った人に来てもうことができます。また主人もRONINとの交流を通して知識や経験を得ることができます。
「RONIN BANK」には秋田県や宮城県といった地方のホストがお手伝い募集を掲載しており、過疎化や少子高齢化が年々顕著になっている地方にとって、若者の力を借りる一つの手段になります。また、RONINのメインターゲットである20〜30代とっても、普段馴染みのない、その土地それぞれの暮らしを体験できる機会になるのです。
3.旅行とシェアリングエコノミー
「RONIN BANK」の他にも、旅行に関わる様々なシェアリングエコノミーが広がりを見せています。
旅行者とガイドを繋ぐCtoCマッチングサービスサイトとして、2017年に旅行系Webサイトやアプリ制作会社の株式会社loudが「RootTrip(ルートトリップ)」提供を開始しました。また「TABICA(タビカ)」は地元の人との交流に重点を置いたCtoCマッチングサービスを提供しています。
インバウンドの外国人やシニアに人気が高まる車中泊のシェアリングサービスも始まっています。「Carstay(カーステイ)」は自動車で旅をして車中泊やテント泊をしたい旅行者と、駐車場や空き地を収益化したいホストを結ぶマッチングサービスです。
大企業の新規参入やシェアリングエコノミー先導企業との連携も盛んです。ANAホールディングスは、2018年9月に「Look for your style」を立ち上げました。AirbnbやVacation STAYなど9社と連携し、宿泊や移動を始めとした各分野のシェアリングサービス利用した新しい旅を提案しています。
他拠点居住を促すシェアエコとしては、定額で全国複数の拠点にどこでも住み放題になる「ADDress」が2019年4月から順次サービスを開始します。「ADDress」は全国にある空き家や古民家などの使われていない物件を活用しており、空き家問題の解決法としても注目が集まります。
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4.まとめ
旅行に関するシェアエコが広がる中、ホストとゲストの交流を促す新しいマッチングプラットフォーム「RONIN BANK」がサービスを開始しました。RONINや主人という概念を取り入れ双方に心構えも提案するなど、ユニークな仕組みを構築しています。現在はホストを「旅館業の営業許可または民泊営業許可を取得している人」に限定していますが、今後Airbnbのように互いを評価することで個人もホストに登録できるようにするとのこと。今後の展開から目が離せません。