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乗り捨て型の自転車シェアリングサービスは、事前に登録すると分単位で無人ステーションから自転車をレンタルすることが可能です。ICカードやクレジットカードで簡単に決済することができ、首都圏や地方で、観光客や地元民、通勤通学の公共交通機関として活躍しています。

※編集部注:

2019年5月28日に加筆修正しました。

2018年4月23日に加筆修正しました。

2018年2月22日に加筆修正しました。

2017年12月20日に加筆修正しました。

目次

  1. レンタサイクルと自転車シェアリングの違い
  2. 自転車シェアリングの市場規模と歴史
    ・市場規模について
    ・自転車シェアリングの歴史
  3. 海外の自転車シェアリング事例
    ①フランス・パリ「Velib」
    ②アメリカ・ニューヨーク「Citi Bike」
    ③カナダ・モントリオール「BIXI」
    ④デンマーク・コペンハーゲン「Bycyklen」
    ⑤台湾「YouBike」
    ⑥中国
  4. 国内の自転車シェアリング事例
    ・まちのり(金沢)
    ・川越自転車シェアリング
    ・東京23区初の台東区の取り組み
    ・沼津でのシェアサイクル事業
  5. 今後の課題
  6. 新たな企業参入の動き
    ・NTTドコモ
    ・HELLO CYCLING
    ・ソフトバンクグループが参入
    ・セブンイレブンとの提携

    ・メルカリの参入
    ・LINEの参入
    ・ヤフーの参入
    ・アパマングループの参入
  7. まとめ

 1.レンタサイクルと自転車シェアリングの違い

まずレンタサイクルと自転車シェアリングの違いとはなんでしょうか?

一言で言うと、「複数の駐輪場(ステーションやサイクルポートとも呼ばれる)で乗り捨てできるかどうか」です。

レンタサイクルは鉄道の駅等に隣接された拠点で乗り降りをします。借りた場所に返却するという往復型のシステムです。一方、自転車シェアリングは一定区域内にある複数のステーションのどこからでも乗ることができ、借り場所ではなく最寄りのステーションに返却することが可能で、利用者の回遊性を高めるのです。

Webや携帯で事前登録するだけでいつでも利用できる利便さもあり、観光だけではなく通勤やちょっとした買い物やお出かけにも使い勝手の良いシステムです。GPSで管理された自転車の使用料金はオンラインで決済することができます。IoT化が進み、より便利で簡単な利用方法が提供されています。

日本では、環境に優しい移動手段として、自転車シェアリングの導入が地方自治体ごとに始まっています。導入の目的としては交通機関が十分でないエリアでは、公共交通機関の補完として期待されており、他にも、観光戦略や地方活性化を意図した自治体も増えています。東京都も都市インフラとして、文京区、千代田区、中央区、港区、江東区、新宿区で広域実験が始まりました。東京都内では、7区内で333ポート(2017年10月1日現在)が設置されました。

 

2.自転車シェアリングの市場規模と歴史

市場規模について

日本国内での自転車シェアリングの整備は公共団体、民間事業者、行政などが、70都市以上で、自転車シェアリングを運営しています。収益は自転車の利用代のほか、広告料があり、観光促進、地方活性化に一役買っています。

自転車シェアリングは利用者、提供者の双方にとってメリットを共有できるシェアリングエコノミーサービスと言えます。

公共交通機関よりも安い金額から同程度の料金体系で、ちょっとした買い物や、通勤・通学手段、健康作りに利用できます。一方、提供者は収益が上げられるだけではありません。ステーションには人を配置する必要がなく、人件費がかかりません。利用者が事前に登録や決済するので、窓口を設置して、申し込み手続きや支払いなどのランニングコストがかかりません。そして地方自治体は観光促進の手段として期待しています。地方に行くほど、公共交通機関のカバー範囲は狭くなってしまいます。タクシーでお金をかけるほどの移動ではない、レンタカーを借りるほどの距離ではない、そういった交通事情を解決してくれる自転車シェアリングを導入することで、観光客がいつでもどこでも気軽に移動することができます。

自転車シェアリングの歴史

初期の自転車シェアリングの導入は、 いくつかの理由で難航していました。

自転車シェアリングの歴史は1960年代の自転車大国のオランダにさかのぼります。オランダで導入された自転車シェアリングは盗難や破壊などが原因で運用停止になりました。

しかし近年は IT技術の活用でリスクを減らした仕組みができました。まずはGPSで自転車を管理することが可能です。利用者は事前に身分登録やデポジットを支払います。また、転売や解体が不可能な特別モデルを発注することで、盗難や破壊を防ぐことができます。さらに保守運用が最低限で済むモデルの導入より、より長く使えてメンテナンスが少なくて済むシステムになりました。

ITの活用や新しい自転車の導入で継続的に運用できるビジネスモデルになり、IDカードや携帯電話、アプリを使うことで利用者にとっても使い勝手の良いシステムになりました。

 

3.海外の自転車シェアリング事例

日本は世界的に見ても、まだまだ自転車シェアリング後進国です。他国のケースを見てましょう。

➀フランス・パリ「Velib」

http://en.velib.paris.fr

2007年にスタートした「Velib」は、パリ市内に1,800箇所のステーションが設置されています。ステーションは300メートルごとに1箇所ある計算になり、23,600台の自転車を借りたり返したりがスムーズに行えます。

利用料金
登録料:1日1.7ユーロ/7日で8ユーロ
使用料:使用開始から最初の30分は無料/30分を超えるとその後30分ごとに1ユーロ

②アメリカ・ニューヨーク「Citi Bike」

https://www.citibikenyc.com

2013年にスタートした「Citi Bike」は、シティバンクがメインスポンサーになっています。マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ジャージーシティの全域で10000台の自転車と600箇所以上のステーションが設置されています。観光客向けの1日パスや3日パスと、地元住民向けの年間会員制度があります。利用できるのは16歳以上で、パス購入は18歳以上限定となっています。

利用料金
1日パス:24時間12米ドルで1回につき30分無料/その後は15分ごとに4米ドル
3日パス:72時間24米ドルで1回につき30分無料/その後は15分ごとに4米ドル
年間会員:年間163米ドルで1回につき45分まで無料/その後は15分ごとに2.50米ドル24時間パス 12米ドル、72時間パス 24米ドル

③カナダ・モントリオール「BIXI」

https://montreal.bixi.com/

BIXI」は、2009年4月にスタートし、6250台の自転車と市内540箇所にステーションがあります。短期旅行者、ビジネストリップ、モントリオール在住者向けの様々な料金プランがあり、仲間とメンバーシップをシェアすることができます。冬季は雪のため、サービス利用期間は4月15日から11月15日となっています。

利用料金
30分未満:2.95カナダドル
24時間:5カナダドル
3日間:14カナダドル
30日間:30カナダドル
90日間:55カナダドル
年間パス:89カナダドル

④デンマーク・コペンハーゲン「Bycyklen」

https://bycyklen.dk/en/

主要な道路にはたいてい自転車専用レーンがついているコペンハーゲンの「Bycyklen」は、一台一台に端末がついています。この端末から、目的地や使用料金を見られるだけでなく、観光情報、アクセスも閲覧が可能です。GPSがついているため、目的地までの所要時間や距離、近くの観光施設を検索することができます。

利用料金
1時間:30クローネ
1か月:70クローネで月に140分まで使用可能。学生や若者は半額。
10時間:300クローネ
20時間:500クローネ
デポジット:200クローネ

⑤台湾「YouBike」

https://www.youbike.com.tw

台湾の自転車メーカー GIANT社と台北市政府交通局が2009年から提携し運営しています。台北ではレンタルステーションが222箇所、約7000台以上の自転車が設備されています。

利用料金
最初の2時間は30分10元
2時間から4時間までは30分ごとに20元
4を超えると30分ごとに40元
1回につき2000元を保証金として預ける

⑥中国

シェアリングエコノミーの成長が著しい中国では、サイクルシェア市場も盛り上がっています。「ofo」や「モバイク」など複数の企業が参入し、シェア争いも盛んです。サイクルシェアの拡大によって自動車の利用が減少し、環境問題にも影響を与えているというデータがあるほどです。このような中国のサイクルシェア事情やシェアリングエコノミーの現状については、以下の記事で詳しく解説しています。

参考記事:

中国発自転車シェアリングサービス「モバイク(mobike)」が日本上陸!中国の都市交通を変えたサイクルシェアの実態とは?

爆発的に成長する中国のシェアリングエコノミー市場!その背景と日本との違い

 

4.国内の自転車シェアリング事例

まちのり(金沢)

http://www.machi-nori.jp

石川県金沢市の自転車シェアリングサービスの「まちのり」は、地方活性化に一役買っています。

金沢市内の主要のホテルに連携窓口が設置されており、そこから申し込み手続きをすることができます。まちのり事務局では手荷物預かりサービスもしており、まちのりを利用しなくてもサービスを使うことができるため自転車シェアリングを知らない観光客への宣伝、誘導することができます。

さらにまちのりクーポンを発行しています。ステーションから紙のクーポンを発行するか、Web経由でクーポンを表示することで、お得に市内観光や買い物を楽しむことができます。

飲食店だけではなく陶芸教室などの体験施設もあり、自転車で回遊しながら観光を楽しむことができます。まちのりのポートでの公衆無線LANサービスや、ベビのりというベビーカーのシェアリングサービスも同時に展開しています。

川越市自転車シェアリング

http://kawagoe.hellocycling.jp/

川越市が提供する「川越市自転車シェアリング」は、商業施設、病院、市役所、観光施設にステーションが設置されています。それぞれ10台から25台ほどが用意されており、1回につき40分までなら基本料金のみで何回でも利用できる手軽さで、市民の足としても活躍しています。

ICカードやクレジットカードが使えるのはもちろんですが、現金対応窓口があり現金でも利用が可能です。電子マネーを持たない方やWebが使いこなせない方でも使えるように、シンプルな現金支払いができるのです。

また「川越で遊ぼう」というスマートフォン向けアプリを使うことで、街のおすすめやグルメ情報、現在地のルート確認をすることができます。

金沢市のコミュニティサイクル「まちのり」との相互利用を進めており、川越市民であれば基本料無料でまちのりを利用することができます。

 東京23区初の台東区の取り組み

https://www.min-chu.jp/

自転車シェアリングが広がり、自転車を利用する人が増えると問題になるのが、駐輪場の不足です。201812月、東京23区では初となる、台東区と民間企業の駐輪場シェアサービスが協定を締結し、駐輪場不足と不正駐輪の問題解決に乗り出しました。

アイキューソフィア株式会社が提供する駐輪場シェアサービス「みんちゅうSHARE-LIN」は、わずかな時間から空いている土地・スペースを誰でも貸し出すことができ、誰でも借りることのできる駐輪場のシェアサービスです。Webやアプリから、駐輪場の貸し出し・利用予約を行うことができ、Web上でのクレジットカード決済や、コンビニ支払いが可能です。

管理面では、「みんちゅうSHARE-LIN」と台東区が連携してサービスを運用します。放置自転車の処分、トラブル対応はアイキューソフィア株式会社が、区内のみんちゅう駐輪場の監視、警告等は台東区が実施。自転車ユーザーにとって、目的地により近い駐輪場を探すことができるようになり、利便性が向上するだけでなく、歩行者や商店街、駅前店舗にとっても快適な空間となることが期待できます。

沼津でのシェアサイクル事業

https://harenohi.hellocycling.jp/

静岡県沼津市では、2019424日から沼津港を拠点とした自転車のシェアサービス「ハレノヒサイクル」が始まりました。このシェアサイクルサービスは、「ハレノヒサイクル」を運営する加和太建設(三島市)と、沼津観光協会が共同で運営。沼津市と、すでにサービスが始まっている三島市・長泉町・清水町と合わせて36か所のステーションで、電動アシスト付き自転車を借りることができます。利用にはスマートフォンアプリの登録が必要で、支払いはキャリア決済のほか、クレジットカードや電子マネーにも対応しています。利用料金は15100円から、1日あたり1,500で、専用ステーションであればどこでも借りることができ、そして返すことができます。

沼津市の新しい6か所のステーションは、沼津港をはじめ、市内ホテル、沼津御用邸記念公園など、観光利用者を意識して設置されました。関係者は、「このシェアサイクルが活用されることで、沼津港周辺の施設から新しい観光メニューや周遊性が高まるサービスが生まれてくれれば」「国内の利用客だけでなく、近年多くなっている海外旅行者にも勧めていきたい」と、観光客の新たな回遊ルートやインバウンド需要に期待を寄せています。

 

  5.今後の課題

IoT化やキャッシュレス決済も追い風となり、自転車シェアリングの普及エリア、ステーション、自転車が増えています。しかし安全面、法律など今後の課題についても考えなければなりません。

日本では自転車は子供からお年寄りが乗ることができます。しかし国によっては自転車に乗れる年齢が決まっており、中国では16歳未満は自転車を利用することができません。こういった法律を遵守するために、自転車シェアリングサービスは利用前にWebやスマートフォンで利用者登録することで、スクリーニングをしています。

また安全面での配慮も求められます。

交通事故に巻き込まれるだけではなく、自転車が交通事故を起こしてしまう場合もあります。自転車は免許なく誰でも乗ることができため、利用者は安全を守る交通マナーを求められます。世界各地で提供されている自転車はヘルメット、反射板が付いており、前輪・後輪にブレーキが設置されています。また自転車専用レーンが主要都市やメインエリアに設置されている国も多数あります。

さらに、ステーションの設置場所も肝になります。商業施設や、公共交通機関との連携も求められるでしょう。自転車ステーションにたどり着くまでには、最寄りに公共交通機関があればとても便利です。公共交通機関が通らない場所へ行く際に、自転車を利用し、返却する際も、最寄りの公共交通機関があれば、回遊性も高まりますし、行動範囲が格段に広がります。

 

6.新たな企業参入の動き

海外での自転車シェアリング市場の盛り上がりや訪日外国人の増加に伴い、国内では新たな企業が参入の動きを見せています。

NTTドコモ

https://docomo-cycle.jp/tokyo-project/

国内では、NTTドコモが自治体と社会実験を実施しています。

自転車1台ごとにGPS機能を持つ端末が付いており、決済は、クレジットカードやドコモケータイ払い、SuicaやPASMOなどのICカード、FeliCaカードが使えます。一部を除き24時間営業で、年中無休で稼働しています。

法人向けの料金プランも用意されており、通勤や買出し、外回りに活用されています。

2017年1月からは、「自転車シェアリング広域実験」として、東京都内7区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、渋谷区)で展開されている、すべてのステーションで貸出・返却することが可能となりました。

通常なら、地方自治体や企業ごとに運営されており、新宿区内で乗り始めたら、返却も新宿区内となっていましたが、自治体を横断して、自転車を利用することができるようになりました。

大田区、練馬区、品川区でもドコモ・バイクシェアの運営で自転車シェアリングを実施していますが、こちらで7区広域実験の自転車を返却することはできず、相互乗入れは不可となっています。

参考記事:

新宿区が遂に自転車(サイクル)シェアリングへ!都内5区の連携で広域のポートマップを実現

盛り上がる自転車シェアリング セブンイレブンがドコモ子会社との協業でサービスを順次拡大!

HELLO CYCLING

https://www.hellocycling.jp

ソフトバンクグループが参入

ソフトバンクも2016年に自転車シェアリング事業に本腰を入れ始めました。

ソフトバンクが提供する「HELLO CYCLING」と他のサービスの違いは、GPSと通信機能を搭載したスマートロックと呼ばれる専用の鍵と、液晶操作パネルを自転車に取り付けるだけで、運用が開始できる点です。ソフトバンクが開発した鍵やソフトを利用するため、新しく自転車を購入・用意する必要がありません。利用料金はサービス提供会社ごとに異なりますが、1日の上限金額が設定されているため使い過ぎて高額になってしまう心配がありません。

利用状況などを独自のシステムで簡単に管理することが可能で、運営に関するサポートも万全。地域に合わせたブランド戦略など、町おこしにつなげられる可能性もあります。

放置・放棄自転車の再利用ができ、少量の規模で実施するのであれば自治体や企業にとっては始めやすいサービスとなるでしょう。

セブンイレブンとの提携 

2017年11月HELLO CYCLINGは大手コンビニエンスストアのセブン-イレブンと提携を明らかにしました。2018年度末までに首都圏と主要都市のセブンイレブン1,000店舗に5,000台を設置する見通しです。

これによってHELLO CYCLINGは、サービス展開の要である駐輪ステーションをセブンイレブンの駐車場に設置できるようになります。日本での自転車シェアの普及は拠点の設置場所が大きな課題となっていたため、この提携は最大の障壁を排除する一助となりえます。

一方セブンイレブンは、自転車シェアの利用者が来店することによる売り上げアップを狙っています。もともと利便性の高いところに出店しているコンビニと自転車シェアの協業は、利用者にとっても自転車シェアがより身近なものになる大きな一歩になるかもしれません。

メルカリの参入

フリマアプリ事業大手のメルカリが2018年2月27日にサービスを開始した「メルチャリ」。地方自治体やパートナー企業との連携を行い、アプリを使って気軽に自転車を借りられる仕組みです。導入第一弾として、福岡市の博多と天神、ウォーターフロントエリアに50の駐輪ポート、400代以上の自転車が用意されました。フリマアプリと連携して同じIDを使えるようにし、メルカリのユーザーを取り込んでいくと見られます。

また、住宅用スマートキー「TiNK」を手がける株式会社tsumugと共同で、シェアサイクル用のコネクティッド・ロックの開発を進めています。TiNKとはスマートフォンをかざすだけで解錠できる鍵で、テンキーを搭載しているためスマートフォンを使わなくても解錠できるのが特徴です。アプリを使って、キーのシェアやシェア解除も手軽に行うことができます。

自転車用に最適化することでシェアサイクルのセキュリティと利便性を確保する考えです。

サービスが開始されてから1年以上がたった福岡では、アプリを使って簡単にロックを外せ、ライド時間もすぐに確認できる利便性や、1分4円というリーズナブルな料金が受け、メルチャリは多くの人に利用されています。しかし、手軽に利用できるが故に、自転車放置禁止区域内に乗り捨てられ、撤去されるケースが問題になっています。撤去されたメルチャリは、運営側が移動保管料1台2,500円を払って引き取っており、メルカリ工法は「放置を繰り返す利用者には利用停止の措置をとる場合もあります」と注意喚起をしています。

LINEの参入

メッセージアプリのLINEは2017年12月に自転車シェアリングサービスのモバイク・ジャパンと提携を発表しました。モバイク・ジャパンは世界各国でサービスを展開する中国発の自転車シェアリングサービス、モバイクの日本法人です。同年日本に進出し、札幌と福岡でサービスを開始しています。

この提携にあたり、両社は2018年上半期をめどにLINEアプリでモバイクにアクセスできるようになると発表。モバイクのアプリをダウンロードしなくても利用できるようになる見込みです。これにより、モバイク・ジャパンは月間利用者数7,100万人以上のLINEユーザーを囲い込むことを狙っています。

今後両社はLINEが日本で築いた官公庁・自治体・民間企業とのネットワークを活かして、多くの市町村で展開していく予定です。

一方国内の自転車シェアで一歩先行くドコモ・バイクシェアは、ナビタイム・ジャパンとの提携を開始しました。ユーザーはドコモ側のアプリからナビタイムの『自転車NAVITIME』にアクセスし、走行時に快適な経路のナビゲーションを得ることができるようになります。

ヤフーの参入

インターネット検索大手のヤフーも、シェアサイクルへの新規参入を発表しました。ソフトバンクグループのOpenStreet株式会社に資本参加し、ヤフーの子会社「Zコーポレーション」と連携するという形です。

OpenStreetでは、すでに「HELLO CYCLING」というシェアサイクルプラットフォームを運営し、東京都を中心に電動自転車のシェアサイクル事業を行っています。

また、シェアサイクルを展開したい自治体や事業者へシェアサイクルのシステム提供も行い、静岡県の伊豆や栃木県小山市などで導入されています。これは各自治体や事業者によって運営されていますが、今回の参入によってユーザーはそれらの異なるシェアサイクルサービスを、1つのヤフーIDで利用することができるようになるということです。

ヤフーは月間約4,100万アクティブユーザーという顧客基盤を活用し、さらに「Yahoo!MAP」などのナビゲーションアプリや、決済サービス「Yahoo!ウォレット」などの各サービスとも連携し、利便性の向上を図る考えです。

アパマングループの参入

賃貸住宅仲介大手のアパマングループも、「HELLO CYCLING」を活用したシェアサイクルサービスへの参入を発表しました。HELLO CYCLINGのプラットフォームを使って「ecobike(エコバイク)」のブランド名でサービスを展開します。

シェアサイクルを提供するには自転車を借用、返却できるステーションの設置が必須となります。そこでアパマングループの管理する約7000の不動産管理者へ交渉し、ステーションの設置を進めていく方針です。サービスの利用者は、あらかじめ登録した交通系ICカードをタッチするだけで予約なしで自転車を利用することができます。自転車が放置された場合には料金が加算され続けるなど、放置自転車の対策も実施するということです。

運営は100%子会社のecobike株式会社が担い、シェアサイクルによる社会貢献やオーナー資産の有効活用、入居者の利便性向上、キャンペーンによる販促、コミュニティの活性化などに取り組みたいとしています。

まずは2018年5月から福岡エリアでスタート。今後はアパマンショップのフランチャイズ加盟店と取引のある約20万人の不動産所有者ともステーションの設置について交渉するとしており、全国レベルで大規模に展開を図る考えです。

 

7.まとめ

自転車シェアはレンタサイクルという形で古くからあるサービスですが、借りた場所に返さなくてはいけないため自由に乗り捨てしたいという利用者の要望を満たすことができず、自治体主導で成り立つ公共性の高いサービスと捉えられがちでした。

しかしIoTとの連携でかつてのサービスよりはるかに便利に生まれ変わり、すでに敏感な消費者はその利便性の高さに気付き、にわかに需要が高まっています。

今や自治体だけでなく民間企業も自転車シェアへの参入に積極的。新たな企業の参入も次々と発表され、今後市場はさらに盛り上がることが予想されます。2018年は自転車シェアから目を離せない年になりそうです。

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