民泊やライドシェアなど、シェアリングエコノミーの裾野は広がりつつあります。
シェアリングエコノミーのサービス利用者が増えるにしたがって、法制度や社会政策の整備が大切になってきます。新しいサービスであるがゆえ現行のままでは対応しきれない部分もあり、行政にとっても軽視できない存在となるのです。
シェアリングエコノミーによって生まれるリスクには各プラットフォームが準備している部分もありますが、まだまだ不足しているのが現実です。
今回はこの様な現状の中で生まれつつあるリスク回避の動きを紹介します。
目次
- 国内での保険サービスの動き
・シェアエコにおけるトラブルについて
・シェア事業に初めての保険サービスとは
・「オールインワン」と「シェアビジネス総合補償プラン」について
・シェアリングエコノミーに対応した自動車保険の販売開始
・専用保険の広がりについて - 海外での保険サービスの動き
・Uberにおける課題と取り組み
・Uberがドライバーアプリで新テスト開始 - まとめ
1.国内での保険サービスの動き
シェアエコにおけるトラブルについて
民泊をはじめとするシェアリングサービスが話題になり久しいですが、それに伴うトラブルも多発しています。
例えば部屋の貸し借りの場合なら「部屋を荒らされた」「備品を壊されてしまった」「ものを盗まれた」といったホスト側が被害を受けるケース。逆に「部屋が写真と違った」「ホスト側の事情で突然借りられなくなった」など利用客側が被害を受けるケースもあります。
部屋の貸し借り以外にも、不在の飼い主に代わってペットの世話をするペットシッターでもトラブルがあるようです。
例えば「ペットに怪我をさせられてしまった」、逆に「ペットに噛まれて怪我をした」など怪我に関わるもの。あるいはシッターとして部屋に出入りするのをいいことに、業務に関係のないことをする(テレビを見てくつろぐ、勝手にシャワーを借りる、など)、物を盗む、といった事例もあります。
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シェア事業初の保険サービスとは
そんな中、東京海上日動火災保険株式会社は一般社団法人シェアリングエコノミー協会と共に、シェアリングエコノミー専用の賠償責任保険の販売を始めました。
シェアリングサービスの提供に伴う対人・対物事故が生じた際に負う法律上の賠償責任を補償するもので、こうした「シェアリングエコノミー」に対応する保険の販売は業界初となります。
これはシェアリングエコノミー協会に加盟している、シェアリングサービスのプラットフォーム事業者を対象としており、提供サービスの種類ごとに商品が設計されています。
補償の対象となるのは事業者だけでなく、実際にサービスを提供する個人にも対応。月ごとなどではなく、マッチング(1回の利用)ごとの料金で設定されているため、サービス提供があった時のみ保険料を支払うシステムになっています。
また、プラットフォーム事業者独自の要請に合わせて補償の内容等をカスタマイズすることも可能とのこと。様々な形で発展していくシェアリングサービスに最適な保険といえるでしょう。
「オールインワン」と「シェアビジネス総合補償プラン」について
損害保険ジャパン日本興亜株式会社は、シェアリングエコノミーのプラットフォーム事業者向けに「オールインワンパッケージ(認証制度対応型)」を販売しています。これは日本初となるシェアリングエコノミー認証取得事業者向けの商品で、認証を受けたプラットフォーム事業者は最大で60%の保険料割引を受けられます。
移動、スキル、空間、モノ、お金、サイクルシェアなど幅広いシェアリングエコノミー分野に対応しているところが特徴です。
また、一般社団法人シェアリングエコノミー協会とあいおいニッセイ同和損害保険株式会社は、2016年12月から加盟しているプラットフォーム事業者を対象に「シェアビジネス総合補償プラン」を販売しています。
これは、プラットフォーム事業者のみならずサービス提供者や利用者が起こしてしまった事故や人格権侵害、経済的損失に対して賠償責任を総合的に補償する保険です。
例えば、シェアを予定していた部屋をサービス提供者が何らかの都合で損壊し、利用が困難となったとします。そしてサービス提供者が他の部屋を提供し、利用者からは損害賠償を請求された場合、保険金が支払われます。
補償内容は事業内容によってカスタマイズできるため、自分に合った保険を見つけられるはずです。
シェアリングエコノミーに対応した自動車保険の販売開始
個人が所有する遊休資産の仲介を行うシェアリングエコノミーの内容はさまざまですが、その中でも駐車場や自動車をシェアするサービスには注目が高まっています。自動車のサービスではどうしても人身事故や物損事故が発生する可能性がつきものですが、シェアリングエコノミーサービスでの事故となると免責などの関係で、一般的な自動車保険では損害が補償されないこと可能性もあります。
このような事態に備えて、マッチングビジネス事業者が保険加入者になり、不足した補償を提供する業界初となる「シェアリングに対応した自動車保険」が、東京海上日動火災保険株式会社より誕生しました。
被保険者はマッチングビジネス事業者またはシェアリングエコノミーのサービス利用者で、被保険者が使用する自動車が保険の対象となります。万が一サービス利用中に事故が起こってしまったとしても、保険でカバーされるため、安心してサービスを利用・提供できるでしょう。
サービスを提供・利用中に発生した対人・対物事故の場合、被保険者等が加入している自動車保険の補償額では支払いきれない損害賠償額が負担されるのです。この商品は2017年12月27日より販売されていて、今後の拡大が期待されます。
専用保険の広がりについて
カーシェアや民泊など、シェアリングエコノミーのサービスにはここ数年注目が集まっていますが、残念ながらトラブルが起こったときに補償される保険はほとんどありませんでした。しかし、2017年6月からはシェア事業に関する国内認証制度が開始され、事業環境が急速に整備されつつあります。
大手保険会社はこの新制度を土台として、シェアリングエコノミー認証事業者向けの専用保険を作りました。
専用保険は、シェアリングエコノミーのサービスのプラットフォーム事業者とサービスを提供する個人の両方を対象に、対人・対物事故が生じた際に発生する賠償責任を補償してくれる内容です。さらに個人情報漏洩や事故が起きてしまった場合、これらの対応に必要な各種費用までを補償する大変心強い存在といえます。シェアリングエコノミー協会認定事業者には最大60%の保険料割引を提供している保険です。
東京海上日動火災保険や三井住友海上、損保ジャパン日本興亜、あいおいニッセイ同和損害などさまざまな保険会社で専用保険の取り扱いがあります。
2.海外での保険サービスの動き
Uberにおける課題と取り組み
ドライブシェアの分野でもリスク回避の取り組みが進んでいます。
配車サービスで有名なUberも、便利だと言われる影にドライバーと乗客とのトラブルが起きています。
インドやアメリカでは、ドライバーが乗客の女性に対し誘拐・強姦をする事件がいくつか発生しているほか、逆に乗客がドライバーに暴行を加える事件も起こっています。
Uberには元々ドライバーにも乗客にも評価をつけることによって安全性を確保するシステムが存在していますが、こうした事件を受け、更なる安全性の強化に乗り出そうとしているようです。
カスタマー・サービスの強化やスタッフの教育により一層力を入れるなど、新たな安全基準を確立する方針を掲げています。
Uberがドライバーアプリで新テスト開始
Uberが新たに導入しようとしているのが、ドライバーの監視システムです。
スマートフォンのGPS機能やジャイロスコープ、加速度計などのデータを解析し、運転速度や急ブレーキ、急発進を検知する新システムで、Uberが提供するドライバー用アプリの機能のひとつとして導入されます。現在はアメリカの一部の地域でテストを行っている段階とのこと。
長時間の走行に対し休息を呼びかける、スピードの出し過ぎに対して警告を出すという機能が備わっているほか、ながら運転を阻止するために走行中に端末を操作すると警告を通知する機能があります。
また走行終了後には、急ブレーキ・急発進の回数やそれらが発生した場所などのデータをもとに、ドライバーに安全運転のためのアドバイスをします。
これまでの乗客からの評価だけでなく、何が問題なのかを具体的に見ることができるため、更なるサービス改善に繋がるとして期待が寄せられています。
3.まとめ
様々な分野にどんどん広がっていくシェアリングエコノミー系サービスですが、利用者が増え、広がれば広がるほどリスク回避の需要もどんどん高まっていくはずです。
こういった新しい需要に対し、今後どのようなIT企業や保険会社が参入してくるのか。シェアリングサービスそのもの以外にも、それを支えるリスク回避のためのサービスにも注目です。