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3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)大手の日立物流は、出荷までの一連の工程を自動化し省人化した最新設備などを複数のEC事業者にシェアするプラットフォームを2019年9月に稼働をスタートさせると発表しました。こうした動きを筆頭に、物流業界でもさまざまなシェアリングサービスが拡大しています。

荷主と倉庫や車両、ドライバーを直接マッチングさせることで、無駄なく効率的な配送業務を実現するなど、さまざまな事業者によって展開されるシェアリングサービス。これらの取り組みで、物流環境はどのような改善が期待できるのか考えてみたいと思います。

目次

  1. 日立物流がシェアリング型プラットフォームセンターの稼働開始
    ・稼働開始の経緯
    ・プラットフォームセンターの内容
    ・今後の狙い
  2. 物流業界におけるシェアエコサービス
    ・荷主と倉庫のマッチングサービス
    ・荷主と車両のマッチングサービス
    ・荷主とドライバーのマッチングサービス
  3. まとめ

1.日立物流がシェアリング型プラットフォームセンターの稼働開始

稼働開始の経緯

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http://www.hitachi-transportsystem.com/jp/swh/

急成長するEC業界において、配送コストの値上げや人件費の高騰・人材不足など危機的な物流環境の改善は深刻な課題です。そこで、20194月、株式会社日立物流が「複数のEC事業者で物流センター内の設備やスペースなどをシェアする」という画期的なサービスの開始を発表しました。初期コストのかかりすぎる物流設備への投資は、特にスタートアップや中小のEC事業者にとって実現が難しいため、使用に応じた従量課金制でそれらをシェアすることによって課題を解決しようという考えです。

日立物流は、20184月には京都府乙訓郡の日立物流グループ大山崎AE営業所内に佐川急便の営業所を開設しており、自社施設のリソースを有効活用することで稼働率を向上させる取り組みも始めています。

これは佐川急便にとっても「好立地の営業所を低コストで確保できる」という大きなメリットとなっており、具体的には以下のような効果が得られています。

まず、企業間物流の拠点となる地域への営業が拡大できるということ。次に、従来の営業所からの移動時間がなくなることで配送リードタイムが短縮され顧客満足度も向上すること。さらにこれによってスタッフの労働環境改善されること。また、これまで1日あたり大型車4台を使用しておこなわれていた日立物流グループ大山崎AE営業所への納品や、そのほか10台以上の集配車両の移動が大幅短縮されたことにより、最大約32%のCO₂排出量が削減されるなど環境負荷低減効果も期待されます。

プラットフォームセンターの内容

日立物流が今回展開するECビジネス向けのシェアリング型プラットフォームセンター(ECスマートウエアハウス)」は、物流システムやスペース、倉庫スタッフなどをシンプルな従量課金制で共同利用できるサービスで、まさに物流業界のシェアリングエコノミーとなります。

1号として埼玉県の春日部センター内で20199月よりサービス稼働を開始し、以降全国規模で拡大していく予定です。

具体的には、物流センター内の以下の4つを複数事業者でシェアすることによって、出荷までのプロセスの効率化を実現する考えです。

・「アセット」

多額の初期コスト投資をしなくても、使用した分に応じて支払う従量課金制で最新の最新自動化・省人化設備を利用でき、出荷までの作業が標準化され効率化が図れます。

「システム」

EC物流向けの標準システム、大手通販サイト受注管理システムとのデータ提携や一元管理も可能。さらに販売や経営の戦略も支援します。

「スペース」

保管や作業のための空間が物量に応じて、従量課金制で柔軟に利用できます。

「マンパワー」

管理者や作業者を安定して確保。自動化・標準化されたオペレーションによって人的作業や作業ミスを低減します。

これらを複数の事業者で共有することにより、各EC事業者の物流コスト抑制やサービス向上につながると期待されます。

今後の狙い

日立物流は中心となるBtoB物流のほか、近年はEC専用倉庫を新設するなどEC物流にも注力しています。今回の新設プラットフォームにも生かされているAIIoTを活用した「スマートロジスティクス」のテクノロジーによって、EC物流の危機解決に取り組み、EC業界のさらなる成長を後押しする考えです。

出荷までの自動化や省人化だけでなく、AIによって受注管理や在庫管理、需要の予測などまで担うことも可能となります。データをもとにさまざまな配送ルートをシミュレーションし、拠点配置や倉庫内オペレーションを構築します。特に「物流拠点の配置を最適化すること」が重要視されており、それこそがEC物流の危機解決に向けた最大のポイントであると考えられています。

このように、日立物流は「スマートロジスティクス」を軸に、EC事業者や大手配送事業者などと設備やリソースを共有したり相互活用したりすることによって、事業を超えた領域を拡げ新たなイノベーション実現を目指しています。そして、これらの取り組みによって、自社はもちろん各業界の課題を改善し、さらなる成長へつなげることを願っています。

2.物流業界におけるシェアエコサービス

荷主と倉庫のマッチングサービス

物流業界にもさまざまなシェアリングエコノミーサービスがあります。その代表的なもののひとつが、倉庫と利用したい事業者をマッチングさせるサービスです。

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https://www.chuko-matehan.com/logiplanners/ai-logi/

株式会社フジテックスが運営する、荷主と物流倉庫のマッチングサービス「アイロジ」。拠点や広さなど、荷主の希望条件をヒアリングした上で最適な物流倉庫をピックアップします。匿名で荷主の要望や条件が提供され、倉庫側はその時点で提案を希望するか否かを選べます。そして荷主は提案を希望された物流倉庫の中から最適な物件を選定できます。Web上で簡単に登録ができ、手数料は完全無料のサービスとなっています。

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https://corporate.souco.space/

また、同じく倉庫を借りたい企業と空いている倉庫をマッチングさせるサービスsoucoもあります。荷主は期間や面積・荷物情報などを登録することで希望にマッチした倉庫を検索でき、利用を申し込んで倉庫提供者が同意すれば契約成立という形になります。1パレット1日単位から利用できるため、急な返品や一時的な在庫保管などにも対応できるサービスです。

荷主と車両のマッチングサービス

荷主と車両を直接マッチングさせるサービスも浸透してきています。

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https://www.docomap.jp/

運送業界の空車回送率に着目して、そのリソースを有効活用しようとNTTドコモや運送業界によって立ち上げられたのが、空車車両と荷主をマッチングさせるサービスdocomapJAPANです。

現在、運送業界の平均空車回送率は30%ともいわれており、空車回送にともなう燃料や通行料などのコスト、ドライバーの待機時間や労働時間に無駄が生じています。

NTTドコモ社のGPS専用端末「かんたん位置情報」の車載専用版・クラウド型車両位置情報共有デバイス「DoCoMap」が開発され、全国の空車車両の位置をリアルタイムに見える化しました。これを複数の運送業者間で共有することによって、空車車両の回送率や待機時間を低減。初期導入コストや保守などの高額費用の負担をなくし、端末1台当たりのクラウド利用料1,480円(月額・税別)のみで効率的な配車業務を実現します。

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https://www.hacobell.com/

ラクスル株式会社によって運営されているBtoBの配送サービスが「ハコベルカーゴ」です平均6という圧倒的なスピードで荷主と運送会社をマッチングさせるサービスで、荷量や移動距離・移動時間などに応じて最適な車両や料金プランを選ぶことができるため、無駄なく効率的な配車が実現できます。

その場で配車できるため、中小から大手まで1,500社以上の企業に利用されており、特に単発の配送などに利用しやすい形態であるといえるでしょう。

荷主とドライバーのマッチングサービス

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https://www.dia-9.com/

EC業界発展に比例したBtoC物流増加にともない、ドライバー不足も深刻な課題です。そこで、プロの運送業者だけでなく、学生や主婦など多種多様な人の空き時間や移動時間を利用した配送サービスを提供するのが、配送クラウドソーシングアプリDIAq(ダイヤク)」です。

今すぐに荷物を届けてほしい人と、近くにいるドライバーやライダー、メッセンジャーのリソースをスマートフォンアプリでマッチングさせるという、まさにシェアリングエコノミー思想そのもののサービスとなっています。

20195月現在のサービスエリアは東京23区のみとなっていますが、順次拡大していく予定です。

20168月に世界最大手の配車サービスUberによって開始されたフードデリバリーサービスUberEatsと同様に、個人の空き時間を利用した新しい働き方としても注目されます。

関連記事:

レストラン、配達ドライバー、ユーザーが喜ぶ新しいデリバリーUberEATSとは

3.まとめ

このように、物流業界でも施設や設備、情報の共有などのシェアリングエコノミーが浸透してきています。またAIIoTを利用することにより、配送コストや人件費の高騰など、EC物流拡大に比例して深刻化する物流環境の改善や効率化が期待されます。

さらに、空車や空きドライバーなどの人材を荷主とマッチングさせることで、効率的な配送業務を実現できる上、空き時間や移動時間を利用した個人の新しい働き方としても注目されるでしょう。

物流業界の問題点を改善し、それぞれの事業者がさらに成長するには、シェアリングエコノミーが不可欠であるといっても過言ではないかもしれません。

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