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中国発のシェアサイクルofo(オフィ)は、アリババの支援のもと大規模な資金調達に成功し、短期間で世界に名を連ねるユニコーン企業へと成長しました。2017年に日本に上陸し、2018年春に本格的にサービスを提供します。すでに大手企業や新興IT企業が参入している日本のシェアサイクル市場で、ofoがどのようなポジションを得るのか注目されます。また、市場の課題として、公共交通機関との連携や気軽に利用できるための取り組みが求められます。

目次

  1. 世界最大のシェアサイクル「ofo」とは
    「ofo」について
    「ofo」が展開されている国や地域
  2. 「ofo」の日本における本格始動について
  3. 日本を取り巻くシェアサイクルの現状
  4. まとめ

1.世界最大のシェアサイクル「ofo」とは

「ofo」について

https://www.ofo.com/jp/ja

中国のシェアリングエコノミーの代表的なサービスであるシェアサイクル。そのうちの1つofoがこのたび日本に上陸し、2018年3月末から本格的にサービスを開始しました。

ofoは2014年に北京で創業し、その翌年に創業したMobike(モバイク)とともに、中国の2大シェアサイクル企業として中国のみならず世界のさまざまな国でサービスを提供しています。この2つの企業が短期間で急成長を遂げた理由の1つに、大規模な資金調達に成功したことが挙げられます。

ofoは2017年に中国の大手IT企業アリババが主導する資金調達ラウンドで7億ドルの調達に成功しました。一方Mobikeは、こちらも中国のIT企業テンセントの支援のもと、2017年に入ってから6億ドルを調達しています。

このことからわかるように、ofoとMobikeの企業競争は、すなわち中国の巨大IT企業であるアリババとテンセントの競争でもあるのです。そのため中国国内のみならず、世界中の投資家たちの注目の的となっています。

ofoはMobikeとの競争に勝つために様々な施策を講じていますが、その1つとして昨年、自転車に広告をつける取り組みを行いました。ofoの自転車に、ユニバーサル・ピクチャーズの映画『怪盗グルー』シリーズの人気キャラクター・ミニオンのカスタマイズが施されました。ofoによると、同社のシェアサイクルを利用する人は1日1000万人にも上るため、莫大な広告効果が得られたのではないでしょうか。

ofoのライバル企業Mobikeについては、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:

中国初自転車シェアリングサービス「モバイク(Mobike)」が日本上陸!中国の都市交通を変えたサイクルシェアの実態とは?

「ofo」が展開されている国や地域

ofoは中国のみならず、世界21カ国250以上の都市でサービスを展開しています。ofoは2016年後半から海外に進出し始め、1年足らずの間にシンガポール・イギリス・カザフスタン・タイ・マレーシア・日本・アメリカ・オーストラリア・フランスなどの国や地域に進出を果たし、驚異的なスピードでグローバル企業へと成長を遂げました。2018年にはチェコ・イタリア・ロシア・オランダの欧州4カ国にも拡大しています。

ofoが進出した(あるいはこれから進出する)国や都市は、どこも交通渋滞の問題や自動車による環境汚染の問題を抱えており、シェアサイクルの普及によってこれらの問題が解決に向かうことを期待されています。そもそも、中国でシェアサイクルが普及した背景の1つとして自動車の普及による大気汚染や交通渋滞の深刻化が挙げられており、ofoが環境改善の実現を目標とするのも当然と言えるでしょう。

 

2.「ofo」の日本における本格始動について

ofoは2017年7月に日本法人を設立しました。そして、日本でサービスを開始するにあたり、ソフトバンクコマース&サービス株式会社とソフトバンクコマース&サービス株式会社と独占的協業を行うことを発表しました。

ソフトバンクコマース&サービス社の得意とするICT分野を活用し、ofo拠点網の企画・開発およびマーケティングなどを行い、日本でのサービス提供をより効率よく進めようとしています。

そして、2018年3月より和歌山市と北九州市で、本格的にofoのサービスが開始されることになりました。

和歌山市は公共交通の利便性向上、経済・観光振興、環境対策等を目的としたプロジェクト『スマートサイクルシティわかやま』を運営しており、シェアサイクルの活用に前向きな姿勢を示していました。そこで今回、この構想の実現に向けて、魅力あるまちづくりを一層進めるするためにofoと提携をすることを決めました。

和歌山市は都度利用の他に定額利用料金を設定し、街乗り、観光、通勤・通学といったあらゆる場面でシェアサイクルが活用されることを想定しています。

北九州市では、「環境モデル都市」として低炭素社会実現を目指しています。公共交通機関や自転車での移動を推進する「北九州市環境首都総合交通戦略」を策定し、その一環として、シェアサイクルの普及を推進しています。このような背景があり、シェアサイクルのさらなる普及を目指してofoと提携を開始しました。

 

3.日本を取り巻くシェアサイクルの現状

日本では、70を超える自治体にシェアサイクルが導入されています。またその運用は自治体のみではなく、NTTドコモ・ソフトバンクグループ・セブンイレブンといった大手企業も参画しています。このことは、自治体・ユーザー双方に大きなメリットをもたらします。

例えば、NTTドコモ・ソフトバンクグループがICT技術を導入すると、利用料金の決済などの場面で便利になりますし、セブンイレブンは店舗を自転車のポート(貸し借り・返却場所)として提供することで、ユーザーに利便性を提供できます。

さらに、今後はメルカリやLINEといった新興IT企業も参入を表明しており、より一層シェアサイクル市場が活発化するものと思われます。

今後、シェアサイクル市場をより活性化し、より多くのユーザーに使ってもらうためには課題もあります。

1つは公共交通機関との連携です。ofoが「ラストワンマイル(公共交通から目的地までの最後の短距離移動)」の移動手段となるためには、自転車ポートと駅やバス停が近接であることが求められます。

もう1つは気軽に利用できるきっかけ作りです。東京都に住む1万人を対象にしたシェアサイクルに関する調査では、「(シェアサイクルを)知っているが利用したことがない」という回答が最多の63%という結果でした。今後は、この層に向けてシェアサイクル利用してもらう取り組みが必要とされるのではないでしょうか。

自治体のシェアリングの詳細や一般企業との協業、またシェアサイクルの抱える課題については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:

環境に優しく観光促進。自転車(サイクル)シェアリングの市場動向まとめ

盛り上がる自転車シェアリング セブンイレブンがドコモ子会社との協業でサービスを順次拡大!

 

4.まとめ

交通渋滞や環境問題といった社会問題を解決し、地域活性化や観光振興を後押しすることも期待されているシェアサイクルは、ますます需要が高まり、重要な移動手段の1つとなるでしょう。今後は、まだ利用したことのない人が気軽に利用できる施策が求められます。

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