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株式会社スペースマーケットは、スペースシェアのプラットフォーム運営によって、ここ数年で目覚ましい成長を遂げている企業です。日本ではまだまだ普及しているとはいえない民泊にすでに本格的に参入しており、シェアリングエコノミー業界のみならず、空き家や遊休施設を持て余している自治体や企業からも注目されています。

そんなスペースマーケット社の、創業の経緯や目指すビジョン、民泊サービスなどについて、自治体や企業との提携事例も交えてご紹介します。

※編集部注

2019年4月22日に加筆修正しました。

目次

  1. 創業から現在まで
    ・スペースマーケットの概要
    ・創業への想い
  2. 民泊サービス参入について
  3. 積極的な自治体や企業との提携
    ・自治体との提携実績
    ・企業との提携実績
    ・働き方改革にも貢献
  4. まとめ

1.創業から現在まで

スペースマーケットの概要

株式会社スペースマーケットは、東京都新宿区に本社を置く日本企業です。2014年に代表取締役の重松大輔氏が設立しました。重松氏は前職でウェディング事業を立ち上げた際、披露宴会場が平日などに遊休スペースとなってしまうという課題をヒントに、スペースマーケットの企画を考えたのだそうです。

2014年の創業と同時に空きスペースのマーケットプレイス「スペースマーケット」のサービスを開始し、結婚式場や映画館、古民家、野球場、お化け屋敷などといったユニークな施設を手軽に借りられるということが話題となりました。2014年10月には総額約1億円の資金調達を実施し、2016年までの2年間で取り扱いスペース数は当初の10倍以上である8000件を超えるまで伸びています。さらに2016年8月には総額約4億円の資金調達を実施し、中・長期的な事業・経営基盤を強化するとしています。

国内での民泊やスペースシェアへのニーズの高まりも追い風となり、これからも利用者数は順調に増加していくとみられています。

創業への想い

前述のとおり、創業者の重松氏がウェディング事業に関わる中で、披露宴会場を有効活用できないかと思ったことがスペースマーケット創業のきっかけとなりました。結婚式や披露宴の会場は豪華な施設であるにもかかわらず、平日はほとんど開店休業状態です。一方で、広告代理店などの企業が会社のセミナーやイベントに使うスペースの場所探しに苦労しているという話を耳にし、これらをマッチングできないかと考えました。

借り手であるユーザーは用途に合わせたスペースを簡単に予約して使うことができ、スペースを貸し出すオーナーは遊休スペースの有効活用ができるという、双方にメリットのあるビジネスモデルを通して「世界中のあらゆるスペースを自由に流通させることで、新たな価値を創造する」をミッションとしています。このようなスペースシェアは地方の空き家や古民家の有効活用もできると考え、地方経済の活性化や地方の過疎化、高齢化といった社会問題を解決する一助たることを目指しています。

 

2.民泊サービス参入について

2017年6月に、民泊を全国的に解禁する「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が国会で成立したのを受けて、スペースマーケットは民泊サービスに本格参入することを明らかにしました。新しいプラットフォーム「スペースマーケットSTAY」をリリースし、”安心・安全で、ユニークな宿泊体験”を提供していくそうです。

スペースマーケットSTAYでは、ゲストが宿泊施設を探す際にスペースマーケットの専任担当者が要望に合ったスペースを紹介し、予約成立までサポートをしてくれるというコンシェルジュサービスが用意されており、初めて民泊を利用するゲストの不安感を払拭することができます。

さらに登録されているスペースはすべて、ホストの身分証明書提出を必須にし、第3者機関の審査も通過しています。また、物件を民泊に出したいホストは時間単位のレンタルか宿泊の2通りの貸し出し方を選択することができます。そのため、いきなり他人を泊めるのは不安だという人でも、まずは時間貸しから始められることで登録のハードルも下がるのではないかとみています。

さらに、予約が成立する前でも電話番号やメールアドレスを公開することなくホストに質問や連絡を送れるメッセージ機能や、実際にスペースを利用したゲストのレビュー機能、ゲストからの問い合わせや予約リクエストに対する返信率や返信時間の表示なども行っています。

このように、スペースマーケットSTAYは日本企業が運営しているという信頼感を前面に出し、ホストとゲスト双方に安心して利用できるような環境づくりに取り組んでいます。このほか、民泊を始めてみたいホストと直接会って疑問や不安を解消するミートアップイベントの開催も予定しており、日本での民泊の普及に力を入れています。

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3.積極的な自治体や企業との提携

スペースマーケットの目指している地方創生や地域経済活性化には、自治体や企業との協力も欠かせません。地域課題の解決のため、スペースシェアに興味を示し、推進していこうという地方自治体や企業も出始めています。それでは、実際にスペースマーケットが自治体や企業と提携した事例について見てみましょう。

自治体との提携実績 

・岐阜県美濃加茂市

美濃加茂市と事業連携に関する締結を行い、公共施設をスペースマーケットに掲載を開始しました。公共施設を有効活用するとともに、岐阜県内・市内はもとより名古屋近郊からの利用なども見込まれ、新たな交流及び経済循環を生み出すことが期待されています。

・千葉県千葉市、静岡県浜松市

千葉市と浜松市では、2016年にシェアリングシティ宣言を発表しました。人口減少や税減収などの課題を、シェアリングエコノミーの活用によって解決していこうという取り組みです。その中の一環として、千葉市と浜松市が保有する一部の公共施設をスペースマーケットに掲載し、イベントや会議に誰でも利用できるようになりました。

・長崎県島原市

島原市もシェアリングシティ宣言に参加しており、島原市の観光協会4団体を統合した「島原観光ビューロー」を設立し、観光の推進を目指しています。スペースマーケットとは地方創生に向けた連携協定を締結し、観光・公共施設をスペースマーケットに掲載しています。さらに、ライトアップされた島原城をイベントや社員総会に貸し出すことを提案するなど、観光資源を幅広くアピールしています。

企業との提携実績

・ベネフィット・ワン

福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」を提供する株式会社ベネフィット・ワンと提携し、スペースマーケットに掲載しているスペースを福利厚生メニューとして提供を開始しました。ベネフィット・ワンの会員なら一般利用料金より割安の特別料金で提供し、会員サービスの充実とともにスペースシェアの利用促進を図ります。

・ピザハット

宅配ピザ大手の日本ピザハット株式会社と提携し、スペース利用者に特別割引クーポンを発行しています。もともとスペースシェアはパーティ会場として利用されることも多く、そのようなパーティ時にピザハットの商品を購入してもらうのが狙いです。これにより、スペースシェアを利用した新たなパーティのニーズを喚起することが期待されています。

・USEN Media

『ヒトサラ』などのグルメメディアを運営するUSEN Mediaとの業務提携も始まります。提携では、飲食店が営業していない時間を貸し出して活用するとともに、「スペースの時間貸し」の需要創造も狙いとしています。

USEN Mediaは飲食店舗が抱える課題を解決するソリューションサービスを加盟店舗に向けて提案しています。今回の提携により、飲食店の空き時間活用案として、スペースマーケットの時間貸しサービスの利用を加盟店舗に提案し、スペースマーケットへの掲載をサポートします。さらに両社は、飲食店舗の時間貸しやレンタルスペースの利用拡大を目指し、キャンペーンや特集を両社が運営するメディアを通して実施します。この第一弾として飲食店やレンタルスペースなどの室内でお花見を楽しむ「インドア花見」を発信するとしています。

・秋田銀行

秋田銀行との提携開始も発表しました。提携の狙いは、秋田県内のスペースシェアを活用した地域活性化の推進です。秋田銀行はこれまで、営業網を活かして県外の移住・定住希望者と空き家所有者とのマッチングを推進し、空き家対策として空き家を解体するための低金利ローン空き家をリフォームするための専用ローンを提供するなど、地域内のスペース活用の取組みを積極的に進めてきました。

秋田県内には古民家や景観の美しい施設が多数あり、一方で多くの観光客を集める地域のお祭りなどでのスペース活用の需要が見込まれています。

今回の提携では、秋田銀行が顧客にスペースシェア提案やリノベーション支援などを行い、スペースマーケットが秋田銀行の顧客へのスペース掲載サポートや地域内でのスペース活用勉強会を行うことで、スペースの新たな利用機会創出と地域活性化を目指します。

・東京メトロ

東京メトロとの資本業務提携も始まり、この第一弾として千代田線高架下にシェアリングスペース「むすべやメトロ綾瀬」がオープンしました。このスペースは車両部品のリサイクルを利用するなどの工夫も凝らされており、スペースマーケット上で1時間単位の予約をし、利用することができます。東京メトロは「“つながり”の創出を通じ、持続可能な地域社会形成に貢献する」というテーマを掲げて外部との協業を進め、既にスタートアップとのコラボも行っていますが、今回が初のスタートアップ直接投資となります。

スペースマーケットとの提携により、シェアリングの概念を取り入れ、東京メトロの持つ物件やスペースを「時間貸し」で有効活用することで、沿線地域の人々と連携しながら、賑わいや東京の魅力、活力を一緒に創り上げていくことを狙いとしています。

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働き方改革にも貢献 

スペースマーケットでは、会議や社内イベントに使えるスペースも多く取り扱っているため、法人の利用は2017年までの2年間で10倍以上に伸びました。これを受けて法人アカウント機能を開始し、月締めでまとめて請求書払いができるようになるなど、法人ゲストのさらなる利用促進を図っています。

スペースシェアを利用して会社以外の場所で会議をする「オフサイトミーティング」はフラットでオープンな雰囲気作りにも役立つとされ、個人の効率化やチーム全体の生産性の向上に寄与するとしています。このような、オフィスという枠にとらわれない仕事のしかたを提案することで、働き方改革にも貢献しているといえるでしょう。

また 2019年2月にはADDressとの連携を発表しました。ADDress は登録拠点ならどこでも住み放題になるサブスクリプション型の多拠点居住のシェアサービスです。このサービスを利用することで、利用者は多様化する働き方やライフプランに合わせ生活拠点を気軽に変えることができます。各拠点は空き家や別荘を活用しており、個室を確保しながらも、シェアハウスのようにリビングやキッチンなどを共有するスタイルとなっています。今回の提携では、スペースマーケットがADDress物件のリビングなどの共有スペースを時間単位で貸出し有効活用することで、新しい経済循環を生み出すとともに、地域の人がADDress物件を活用する機会を作り、地域との繋がりを創り出すことを目指しています。またADDress物件の管理者がその地域のスペースマーケット対象物件を開拓することも狙いとしています。

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4.まとめ 

スペースマーケットという企業がまだ日本になじみの薄かった民泊やスペースシェアを普及させている裏側には、安心・安全への真摯な取り組みと、スペースの借り手・貸し主双方の立場に立った気遣いがあったからではないでしょうか。東京オリンピックの開催や副業人気も後押しとなり、スペースマーケットはこれからも盛り上がっていくと思われます。自治体や企業との提携もさらに増える可能性もあり、今後の動向に目が離せません。

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