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自転車のシェアリングエコノミーといえば企業や自治体から自転車を借りるケースが多いですが、個人間で自転車をシェアするビジネスモデルが注目されています。これは民泊のAirBnBにならって「AirBnB型レンタルサイクルモデル」と名付けられました。この事業は「シェアサイクル」という学生のチームが中心となって立ち上げられ、起業イベントで受賞もしています。いったいどのような事業内容なのか、今までのシェア自転車とは何が違うのかについて、詳しく解説していきます。

目次

  1. AirBnB型レンタルサイクルモデルとは
  2. 既存のシェア自転車との違い
  3. 「シェアサイクル」について
  4. まとめ

1.AirBnB型レンタルサイクルモデルとは

空き部屋や空きスペース、自動車や自転車などを必要なときだけ借りるサービスは、シェアリングエコノミーとして世界的に広がりを見せています。日本でもサービス展開が始まっており、最近ではスキルや洋服、バッグなど、あらゆるものがシェアされるようになってきました。

その中で自転車を借りることができる自転車シェアは、現在注目されているシェアリングエコノミーのひとつです。都会での利用はもちろん、地方自治体が観光事業と絡めて自転車シェアを導入するケースもあります。

フリマ大手のメルカリは自転車シェア事業「メルチャリ」の検討を発表。LINEも中国大手のMobikeと資本提携を結んでシェア自転車事業への参入を決めるなど、各社が続々と新規参入に乗り出しており、自転車シェアの事業としての伸びが期待されています。

しかし車体やシステムを導入する際の初期コスト、自転車がきちんと返却されなかったり、自転車の破損や整備不良に対する法整備が整っていなかったりなど課題も多く、参入を見合わせる事業者があるのも事実です。

そんな中、筑波大学の学生が中心となって立ち上げた「シェアサイクル」チームのレンタルサイクルモデルが注目されています。

引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000015035.html

 

「シェアサイクル」では、自転車を貸したい人(ホスト)と自転車を借りたい人(ゲスト)を結び、web上で事前決済して利用します。

このような個人同士を仲介するサービスを、アメリカの民泊サイトAirBnBにちなんで「AirBnB型レンタルサイクルモデル」と呼んでいます。

今後は、すでにAirBnBで民泊のホストをしている人や、都市部コワーキングスペース・自営業者、地方の自営業者・高齢者を中心にホストを募集する予定です。同時にwebアプリの設計・開発も進め、2018年4月にマッチング事業が開始されます。

 

2.既存のシェア自転車との違い

従来の自転車シェアは、街中にあるサイクルステーションなどを起点として自転車を借りたり返したりするものです。

そのため、自転車シェアの事業者がサービスを展開していない地域では利用することができず、サイクルステーションも都市部や観光地にしかないなど不便な点もありました。

しかしAirBnB型レンタルサイクルモデルは、ホストとゲストの間で自転車の貸し出しと返却場所を決めておき、そこで自転車の受け渡しを行います。したがってお互いの条件さえ合えば、全国どのような場所でも自転車シェアの利用が可能です。

また自転車シェアでは、自転車の導入が初期コストとしてかかってきます。コストを抑えるためには、変速ギアなどの機能面を削ったり、乗り心地があまり良くない自転車を採用したりしなければなりませんでした。

AirBnB型レンタルサイクルモデルならホストの所有する自転車をシェアするため、そのようなコストが不要です。「シェアサイクル」では大学に放置されている自転車を回収してホストに提供するため、ホストは所有する自転車を提供せずにレンタルサイクルを始めることもできます。

自転車シェアの盛んな中国では、乗り捨てによって景観が損なわれたり交通の邪魔になったりすることがしばしば問題となっており、日本でも同様の問題が危惧されています。「シェアサイクル」は乗り捨てや大幅な破損が発生した場合は1万円をユーザーに課金。さらに乗り捨て回収者には1万円の報奨金を提供して、乗り捨て自転車のユーザー間の自発的な回収を促します。

 

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3.「シェアサイクル」について

AirBnB型レンタルサイクルモデルを立ち上げた「シェアサイクル」は、筑波大学の旅好き・技術好きな学生たちが所属しています。

このAirBnB型レンタルサイクルモデルは、世界的な起業イベント「Startup Weekendつくば大会」でTFF賞を受賞しました。これにより、筑波大学卒業生が運営するインキュベーター「筑波フューチャーファンディング(TFF)」が事業立ち上げ支援をすることになります。

筑波大学では毎年卒業していく学生の放置自転車が問題となっているため、「シェアサイクル」がその放置自転車をシェアリングに転用することにしました。

大学は放置自転車を処分する必要がなくなるとともに、「シェアサイクル」では高性能な自転車を無料でシェアできるようになり、筑波大ならではの課題を解決する試みとなっています。

また、シェアするための自転車を地方のホストに届けるときは、自転車旅を兼ねて運ぶことにしました。自転車の運搬を「日本横断旅」としてパッケージにし、高くなりがちな運搬コストの削減を目指しています。

 

4.まとめ

AirBnB型レンタルサイクルモデルは、自転車シェアの抱えるさまざまな問題を解決する事業モデルです。シェアリングエコノミーが新しいビジネスモデルだからこそ、若い世代からアイディアがどんどん生まれるのかもしれません。

環境問題の改善や健康のために自転車の利用が見直されており、自転車シェアは今後ますます普及が進むと予想されています。海外でも新しい形態の事業が生まれる可能性もあり、これからも自転車シェア業界の動きには目が離せません。

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